北海道稚内大沼で開催のスノーアタックが3年ぶりに復活!
2023年2月13日
1月28~29日、北海道稚内市で伝統の大沼スノーアタックが開催された。
第26回大沼スノーアタック2023
開催日:2023年1月28~29日
開催場所:稚内市声問大沼氷上特設コース(北海道稚内市)
主催:SASA
日本最北の地である宗谷岬から西へ約20Kmの距離にある稚内市声問の大沼で行われる大沼スノーアタックは毎回、道内外から数多くのエントリーを集めることで知られ、糠平湖氷上タイムトライアルと並ぶ北海道を代表する冬のモータースポーツイベントだ。
2021年、2022年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で開催できなかったが、今年は参加者らにPCR検査または抗原検査の陰性結果提出を義務付け、また入場口での検温を徹底するなどの万全の体制を敷いて、開催に至った。
主催のJAF加盟クラブ、宗谷オートスポーツアクション(SASA)の丸山衛代表は、「開催するにあたって必要となる事項を稚内市と事前に確認しつつ、協力し合ってようやくここまで辿り着けた、という感じです。昨年も開催するために全力を尽くしましたが、直前で中止となってしまいました。年に1度、ここでしか会えない人もいますし、今年は何としても開催したかったんです」と、3年ぶりの開催となった今大会への思いを語ってくれた。
今年の氷の状況は「平年並み」の出来栄えとのことだが、開催される直前に記録的寒波が押し寄せ、猛吹雪でコースが全く作れない状況が続いたため、設営が完了したのは何と練習走行が行われる27日土曜日の早朝とのことだったという。
決勝前日の土曜の夜も、稚内市内には暴風雪警報が発令されるなど、荒天が続いた。当日の29日日曜の朝には警報は解除されたものの、慣熟走行開始を予定していた午前6時の時点でも吹雪により、100m先ですら視認できない状況であったため、やや視界が改善した6時40分に慣熟走行がスタート。当初は1人3本までしか走行が許されていなかったが、視界が悪くコース確認が難しいことから、時間内であれば何度も走行可能という形に変更された。
今大会のコースは全長2.6Kmで、スタートして長い直線があり、まず1つ目のテクニカルセクションとなるS字カーブが続く。その後また長いストレートがあり、最後にS字カーブやWヘアピンを配置した超低速区間を通過してフィニッシュとなる。
しかし、前述の悪天候により急遽、安全を考慮して1つ目のテクニカルセクションをキャンセルとしたため、1.5Kmのショートコースとなった。参加者からは、「ロングコースを走れなくて残念」という声もあったが、「大沼らしい高速区間もありつつ、最後はテクニカルな部分もあって楽しかった」と、ショートコースながらも好評を博していた。慣熟走行の後、ヒート1が始まる9時には青空が見えるほどに天候は回復。時折雪混じりの風は吹くものの、朝の悪天候が信じられないほどの良いコンディションで2本の決勝ヒートが行われた。
前半のS-1、S-2、S-3、S-4の4クラスは、2ヒートの合算タイムで順位が決まる形で行われた。FR/MR車両で争われるS-1クラスから競技は開始。各車、第1ヒートではやや苦戦しながらの走行となったが、第2ヒートでは路面が良くなったこともあり、全車5秒から8秒前後のタイムアップを果たした。
優勝は2021年JAF北海道ジムカーナ選手権P-ATクラスチャンピオンの猿川仁選手が優勝。合算したタイムでは2位と0.96秒差という僅差での勝利だったが、「今日の走りはまずまずで85点っていうところでしょうか。今日も2年前に地区戦でタイトルを獲ったプログレで参戦しましたが、久し振りに大沼で勝てて良かったです。招待してもらえるよう、次は3連覇を目指して頑張ります!」と意気込んでいた。
FF車両で競われるS-2クラスも、S-1クラスと同様、全車タイムアップを果たした。その中でも両ヒートでトップタイムを記録するという圧勝劇を魅せたのは、地元稚内市の浅利孔太選手で2大会連続優勝をマーク。「まずは2連勝できてほっとしています。今日の結果は120点です!(笑)。来年は人生2度目の3連覇を狙いに行きます!大沼スノーアタックは18歳の頃から参加していますが、主催のSASAの皆さんには、いつも最高の大会を開催してくれて感謝しています!」と終始、笑顔だった。
インプレッサ・ランサー・GRヤリス以外の4輪駆動車が参加できるS-3クラスでは、レガシーを操る二階堂泰平選手が初優勝。「今日は微妙でしたね。60点くらいの出来です」と苦笑の二階堂選手は、「2本目は路面が良くなり、前のクラスの車両がタイムアップしていたので、最初はやるぞ!と意気込んでいたのですが…。1本目がトップだったので慎重に行くべきかと悩んでしまって、思いっきり行けませんでした」と振り返った。
S-4クラスはインプレッサ・ランサー・GRヤリスの車両で争われたが、このクラスでは大半のドライバーが2本目、タイムを落とすことになった。しかしそんな中でもタイムを上げたインプレッサを操る西浦友幸選手が優勝。「今日の走りは100点です。1本目は抑えすぎてあまりタイムが良くなかったので、2本目は必死になって走りました(笑)」と、第1ヒートの4秒近いビハインドから大逆転で優勝を飾った。
一方、競技後半のマスター、エキスパート2WD、チャレンジ、エキスパート4WD、プロフェッショナルの5クラスは、2本のヒートの内、良かった方のタイムで順位を競った。今大会最多16台のエントリーとなったマスタークラスの優勝は両ヒートともトップタイムをマークした徳山優斗選手で、2番手に2秒7の差をつけての快勝。前週に行われた糠平湖氷上タイムトライアルに続いて2週連続の優勝となった。
「僕は2019年のこの大会からモータースポーツを始めたので、大沼は思い入れのあるコースです」という徳山選手だが、「今日の走りは、攻め切れていないので60点ですかね。コースは面白かったし、氷の状況も良かったので、まだタイムは出せたと思いますが、来年も勝って3連覇を達成して招待していただけるよう頑張ります」と語った。
エキスパート2WDクラスの第1ヒートでトップタイムを記録したのは、こちらも1週間前の糠平を制した笹原孝志選手。内藤修一選手が0.16秒の僅差で続いた。注目の第2ヒートでは内藤選手が約0.9秒ものタイムアップを果たして1分07秒28をマークするが、笹原選手は痛恨のタイムダウン。最後までトップタイムを維持した内藤選手が優勝を果たした。
「まずはリベンジが達成できてホッとしました」と安堵の表情の内藤選手は、「というのも、先週の糠平と前回のこの大会で勝利を逃していたので、今日はリベンジに賭けていたんです。2本目は高速コーナーからの立ち上がりで車速を上げられるようなライン取りを意識したのがタイムアップに繋がったと思いますが、正直、色々な所でミスもしました。でも、結果が出たので今日の走りは90点です(笑)。来年も出ますし、連覇を目指します!」と振り返っていた。
チャレンジクラスは、第2ヒートでこのクラス唯一の1分2秒台をマークした西村俊希選手が優勝。「糠平では車両が壊れて走れなかったので、必ず勝ってやると思って大沼に来ました。今日は勝ったから100点と言いたいところですが、ミスが多くてまだ何秒か縮められたはずなので、そこは少し悔しいです。でも、トップタイムが獲れたのは凄く嬉しいです」と笑顔を見せた。
またエキスパート4WDクラスでは第2ヒートで1分1秒台までタイムを詰めた小西重幸選手が、糠平からの連勝を狙った太田清隆選手らを抑えて優勝。国内外のラリーで活躍した実績を持つ小西選手だが、大沼は今回が初出場だった。
「1本目は裏のストレートでアクセルを踏みすぎて失敗してしまったので、2本目は丁寧な操作を心がけました。ラリーは気持ちを落ち着かせて競技に挑むのですが、一発勝負のダートラは最初からテンションを上げて走らなければいけないので難しかったですね」と大沼初走行を振り返った小西選手。
「でも今回はプロフェッショナルクラスに参戦した大ベテランの三上(悟)選手と大会中は一緒に行動させてもらったので、ライン取りなど凄く勉強になりました。大沼のことは昨年知って、周りからも“楽しいよ”と聞いていたので是非出たかったんですよ。ロケーションも良いので来年は自分のクルマで出たいですね」と振り返った。
最後のクラスとなるプロフェッショナルクラスでは、一番最初に出走した寺澤伸俊選手が第1ヒートでトップタイムをマーク。第2ヒートでも約2秒のタイムアップを果たし、今大会のオーバーオールタイムとなる1分1秒06を記録して優勝した。
“最後の勝利から12年・・・そろそろかランサー”とエントリー名にも記した通りの、2011年以来の優勝を実現した寺澤選手は、「1本目にトップタイムを出してからずっと胃が痛くて(笑)。2本目を走り終わった後は、攻め切れた感じがなかったのでタイムを更新した実感はなかったです。昔はダートトライアルにも出ていたのですが、最近は大沼にしか参戦していません。日本一の氷上イベントだと思っている大沼の年一回のお祭りで勝てて良かったです!来年は皆から狙われる立場になるので、楽しみです」と会心の笑顔を見せていた。
大会の最後で丸山代表は、「草レースであるため、皆さんに車両を壊さずに無事、帰ってほしいと思いながら毎年、企画をしています。若い人の参加が少ないのが実情ですが、是非氷上の楽しさを一度体験していただきたい。eモータースポーツの選手にも参加していただきたいですね!」と締め括った。来季の大沼スノーアタックのさらなる盛り上がりを期待していきたい。
フォト/加藤和由、遠藤樹弥 レポート/遠藤樹弥、JAFスポーツ編集部
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