2023年の全日本ラリー選手権がAPRCとの併催で開幕! JN1クラスは鎌田卓麻/松本優一組が優勝
2023年2月10日
今シーズンの全日本ラリー選手権の開幕戦「Rally of Tsumagoi 2023」が、群馬県嬬恋村を舞台に2月3~5日の日程で開催された。2020年は台風被害、2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響、2022年は全日本ラリーのカレンダーからは外れていたため、実に4年ぶりの開催となった。
2023 FIA APRC ASIA RALLY CUP
2023 FIA INTERNATIONAL JAPAN SUPER RALLY
2023年JAF全日本ラリー選手権 第1戦
「Rally of Tsumagoi 2023」
開催日:2023年2月3~5日
開催地:群馬県嬬恋村周辺
主催:TMSC、JAC、M.O.S.C.O.
FIAアジア・パシフィック・ラリー選手権(APRC)との併催として開催された今大会は、2日間にわたり計11SS(SS総距離61.12km)を設定。雪不足を理由にSS5/SS7のNitazawa Baragiのフィニッシュラインがそれぞれ990mずつ短縮されたため、SS総距離は59.14kmで開催されることとなった。
今年は例年よりも降雪が少なく、スタート&フィニッシュとサービスが設営されている嬬恋村の中心地にある嬬恋会館周辺は、アスファルトが完全に顔を出し、積雪はゼロという状態。SSが設定されている山岳地帯も 例年よりも降雪量が少なく、圧雪アイスバーンの路面と舗装路面がパッチワークのように連なるコンディションとなった。
さらにレグ1がスタートする4日は昼ごろまでにサービスパーク周辺の気温が8度付近まで上昇。山岳地帯も6度付近まで温度が上がり、レッキの時点では圧雪アイスバーンだった路面がシャーベット状の雪に変わるというコンディションに。
また、このレグ1は日が暮れた19時過ぎまでSSが設定されているために、昼間に融けた路面が今度はブラックアイスバーン状態に一変するという、例年よりもさらに難易度が高い路面コンディションの中でラリーが行われることとなった。
全日本ラリー選手権 JN1クラス
JN1クラスは、「レッキの時よりも気温が高いため、雪壁がどれくらい信用できるか不安があったので、雪壁を使わずに無理せず走りました」というスバル・WRX STIの鎌田卓麻/松本優一組が、今シーズンから同じチーム体制で走る新井敏弘/小藤桂一組に4.4秒差のベストタイムをマークする幕開け。
続くSS2(Omae Suzaka 1)では、シュコダ・ファビアR5の福永修/齊田美早子組が「SS1(Kadokai Panorama 1)で遅かった原因は明らかだったので、それを修正しながら走っています」とベストを叩き出し、その後もSS3(Kadokai Panorama 2)とSS4(Omae Suzaka 2)でベストを重ね、SS1では8.3秒あった鎌田/松本組との差を3.0秒差に縮める2番手に順位を上げてくる。
だが、日が暮れた夜のステージとなったSS5で福永/齊田組は痛恨のスピン。15秒近くタイムロスし、一時は順位を3番手に下げるが、初日最終SSとなるSS7でこの日4回目となるベストタイムをマークし、夜のステージに入りSS5とSS6(Omae Suzaka 3)でベストタイムを奪い、2番手に浮上した新井/小藤組を0.1秒逆転。トップの鎌田/松本組とは12.9秒差で初日を終えることとなった。
「初日前半のリードでラリーをコントロールすることができました」という鎌田/松本組は、2日目のオープニングとなるSS8(Omae Suzaka 4)とSS9(Panorama Kadokai Long 1)でも連続ベストタイムをマークし、2番手以降との差を30秒以上に広げることに成功する。初日と同様、ラリー前半で築いたマージンをしっかりと活かし、2020年の第5戦丹後以来となる全日本優勝をつかみ取った。
0.1秒を競う2位争いは、福永/齊田組がSS9のジャンクションで2回転スピンを喫して3番手に順位を落とすものの、WRCラリージャパンでクラッシュした影響が残り、体調が万全ではない状態でラリーに挑んだ新井/小藤組が、最終SSとなるSS11(Panorama Kadokai Long 2)で福永/齊田組と同じジャンクションでスピン。最後の最後に福永/齊田組が2位をつかむこととなった。
全日本ラリー選手権 JN2クラス
GRヤリスのワンメイク状態となったJN2クラスは、KAYABA Rally Teamとして挑んだ奴田原文雄/東駿吾組を抑え、11SS中9SSでベストタイムを刻んだ堀田信/河西晴雄組が優勝。ドライバーの堀田選手は、1996年の全日本ラリー選手権(第2部門)第2戦以来となる全日本優勝となった。
2位には、ラリー用スタッドレスタイヤではなく街乗り用の一般的なスタッドレスタイヤで挑んだ奴田原/東組が入賞、3位にはAPRCラリー北海道など国際格式ラリーを中心に参戦している野苅家宏一/新井正和組が入賞した。
全日本ラリー選手権 JN3クラス
JN3クラスは、今大会唯一となるFR車で挑んだ上原淳/漆戸あゆみ組が、ステージによっては大会規定で装着が認められているスタッド付きタイヤを駆使するなど奮闘し、「FRで雪道を走るのは初めてなんですが、FFとFRでこんなに違うのかという驚きと、新たな発見がたくさんあったラリーでした」と、自身初となるスノーラリーを振り返った。
全日本ラリー選手権 JN4クラス
JN4クラスは、昨年のチャンピオン西川真太郎/本橋貴司組が、すべてのSSでベストタイムをマークする走りを披露。2輪駆動車のみに使用が認められたスタッド付きタイヤを装着したSS8では総合2番手タイムを叩き出すなど、ライバル勢を圧倒した。
全日本ラリー選手権 JN5クラス
JN5クラスは、かつてマレーシアラリーなどの国際ラリーに出場していた経緯を持つ鶴岡雄次/山岸典将組が出場。鶴岡選手は、全日本ダートトライアル選手権で注目を集める若手ドライバーの鶴岡義広選手の父でもある。
「勝負にこだわらず完走を目指し、ラリーを楽しみたい」という鶴岡選手は、「良いコ・ドライバーと良いチームスタッフのおかげで走りきることができました」と無事完走を果たし、クラス優勝を獲得。「出場できる機会があったら、また全日本を走ってみたいですね」と今シーズンの抱負を語った。
全日本ラリー選手権 JN6クラス
JN6クラスは、今シーズンにトヨタの新型アクアを投入する予定の天野智之/井上裕紀子組が、昨シーズンのJN6クラスチャンピオンを獲得した海老原孝敬選手のラリー北海道を走った旧型のアクアをレンタルして出場。一方、海老原選手は遠藤彰選手と組んで、JN6クラスの新規定に合わせて新たにGK5型ホンダ・フィットハイブリッドRSを投入してきた。
この2台の勝負は、スタッド付きタイヤを装着したステージでは総合6番手や7番手という驚異的な速さを見せた天野/井上組が、海老原/遠藤組に1分30秒以上の大差をつけ、優勝を飾った。
全日本ラリー選手権 OPENクラス
APRC ASIA RALLY CUP
JAPAN SUPER RALLY SERIES
フォト/CINQ、遠藤樹弥、中島正義、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部