ホテル広島サンプラザで開催された2022年のJAF中国モータースポーツ表彰式
2023年2月17日

JAF地方選手権やJMRCシリーズの表彰式開催を長らく待ち望んだ中国地区の選手たち。ようやく3年ぶりに開催が実現となり、会場もホテル広島サンプラザと一新。2月11日、優秀な成績を収めた選手が一堂に会し、モータースポーツ表彰式が執り行われた。
JAF中国地方選手権/JMRC中国シリーズ
2022年モータースポーツ表彰式
開催日:2023年2月11日
開催地:ホテル広島サンプラザ(広島県広島市)
主催:JAF中国本部、JMRC中国
JR広島駅の駅前一等地に建つホテルセンチュリー21広島は、長らくJAF中国地方選手権/JMRC中国シリーズのモータースポーツ表彰式の会場として使用されてきたが、2022年8月末をもって閉館となった。そこで2022年の表彰式会場となったのは、広島市西区商工センター内に位置するホテル広島サンプラザだ。
複合型大型ショッピングセンターのアルパークで賑わうエリアに隣接する会場で、2月11日に表彰式が執り行われた。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を考慮して、第二部の懇親会となる立食パーティは行われず、表彰式のみを短時間でまとめた式典として、3年ぶりの開催となった。
表彰式の前にはジムカーナおよびダートトライアル専門部会による会議がそれぞれ行われ、配布された資料をもとに地方選手権ジムカーナBRクラス使用可能タイヤの確認や、2024年以降のダートトライアル地区戦クラス分けの展望案など、各専門部会で情報が共有されていた。
続いてJAF中国地域クラブ協議会(JMRC中国)総会が開かれ、2022年JMRC中国の活動報告となる第1号議案、各部会や事務局などの2022年会計報告となる第2号議案、2022年の監査報告となる第3号議案、2023年運営委員および役員の確認となる第4号議案、2023年の監査役選出となる第5号議案、2023年JMRC中国予算や共催予算についての第6号議案を、時間いっぱいに討議や報告がなされた。



10時30分から開始された式典の冒頭では、1980~1990年代の全日本ダートトライアル選手権に参戦し、長らく中国地区のダートラ部会長を務めつつ、モータースポーツの楽しさを広げることに勤しんだ“きよっちゃん”こと宮本清氏が2022年末に亡くなったことを受け、故人を偲んで黙祷が捧げられた。
3年ぶりとなる表彰式は中国地区オリジナルのオープニングの映像からスタート。JAF中国本部の神吉靖視事務局長とJMRC中国の岩根つもる運営委員長が主催者代表挨拶を行った。そして式典の司会は“アナ西元”こと西元直行氏が軽快な喋りで盛り上げながら進行する。
来賓として株式会社ブリヂストンwith株式会社フォルテシシモの山内真理氏、住友ゴム工業株式会社の畑中巧氏、楠ハイランドパークの大谷美紀夫氏と戸田元秀氏、株式会社タマダwithスポーツランドタマダの玉田敬司氏、JMRC中国顧問の藤田直廣氏と三好瑛二氏、JAFモータースポーツ部の脇田康平課長が紹介され、席上で挨拶。
JAF中国ジムカーナ選手権/JMRC中国ジムカーナチャンピオンシリーズ、JAF中国ダートトライアル選手権/JMRC中国ダートトライアルチャンピオンシリーズ、JAF地方選手権岡山国際サーキットトライアル選手権の順で表彰が行われ、表彰対象の選手たちはステージに上がって賞典を受け取っていた。プレゼンターはJAF中国地方選手権がJAF神吉事務局長、JMRC中国シリーズは専門部会の難波眞部会長と太田智喜部会長が務めた。
なおラリーの表彰については、JAF中四国ラリー選手権/JMRC中国・四国ラリーシリーズの表彰式として2月25日に岡山県玉野市で別途開催される。正味1時間30分のJAF中国地方選手権/JMRC中国シリーズのモータースポーツ表彰式はあっという間に終了。最後はJAF脇田課長が閉会の挨拶を行い、集合写真の撮影で表彰式は閉幕となった。


































■2022年JAF中国地方選手権「初」チャンピオンインタビュー

現在、50歳の西島公一選手は「2022年はジムカーナで初チャンピオンになったり、孫が生まれておじいちゃんになったりと、この上ない喜びのシーズンでした」と顔をほころばせる。「ジムカーナをやっていた兄から影響を受け、クルマ好きも高じて18歳のころから始めました。結婚して子供が生まれた後は資金難で10年くらい休んでおりましたが、いつかは復活したいなという想いを秘め、ここ数年はやっとやりたいことができたという感じです。昨年は『とりあえずやれることは全部やってしまおう』という気持ちで勝負できるクルマで競技に臨みたいと考え、235サイズの太いタイヤをスイフトのフロントにどうにか履かせて挑みました。T28クラスはタイヤ規制があるので、グリップしないタイヤ(UTQG表示のトレッドウェア280以上)でないといけませんから。結果、トラクションがしっかりとかかり、これが大きなメリットとなりました」と語る。2023年は連覇を目指すとのこと。

中部でジムカーナを始めるも、仕事の都合で他地域でのモータースポーツ活動となり、現在は中国地区で競技を行っている宮部貴盛選手。「2022年は“頑張らない”を目標に、エンジョイすることに主眼を置きました。というのもクラス的にPNタイヤに疲れてしまって……、お金をかけずにラジアルで心機一転、R2クラスに移行しました。B車両なのでなんでもアリなんですけど、フロントタイヤだけを太くして、ほかはPN仕様のままです。シリーズは低速主体のコースが多かったこともあって、成績が良かったですね。その結果、運良く初タイトルを獲ることができましたが、数ポイント差でJMRCの方は獲れず……(苦笑)。チャンピオンになれたことについては、長く続けると良いことはあるんだなという感想です。クラスを変えて西フェスも出て、普段あまり話をしない人たちと仲間になれて、狭いながらもジムカーナの輪が構築できたので、実りあるシーズンだったと思います!」

物心ついたころにジムカーナをやっていた父親の影響を受け、ごく自然にクルマが好きになっていった藤木拓選手、将来は父親がやっていた競技をやってみたいと思うようになり、ジムカーナを始めたという。「2021年のチャンピオンとなった多田淳選手が2022年は参戦されないと聞き、多田選手のタイムを基準としながら、そのタイムを上回れるよう納得のいく走りをすることに努めました。午前午後の気温の変化にアジャストできなかったり、気合いと速さが比例しない大会もあって、終わってみれば五分五分の自己評価ですが、結果としては素直に満足しています。一番のライバルが不在ながらも、他選手を相手にチャンピオンが獲れたことはうれしいですね。また、自分の走りを見つめ直すことができた収穫のある1年でもありました」とコメント。2023年についてはクルマの修理が終わり次第でS4クラスに参戦、戻ってくる多田選手との直接対決を楽しみにしている様子だった。

計時のオフィシャルとして競技に携わる傍ら、全参加車両がトヨタ・アクアというAEクラスに参戦している小野守選手が初チャンピオンを獲得。「アクア限定クラスに乗っかり、勢いでクルマをつくって出始めました。成立/不成立のギリギリのクラスなのであまりガツガツしてはいなかったのですが、盛り上がるにつれてどうやったらタイムが出るようになるか、クルマそのものの研究を重ねていきました。主にクルマの制御方法についてで、カテゴリー問わずジムカーナやラリーにも参戦してクルマの習熟度を高めていきましたね。成立した3戦中2戦は河野鉄平選手にいい感じにやられましたが(笑)、個人的には楽しんだ結果、タイトルが獲れて良かったなという印象です。ですが“チャンピオン”と呼ばれると少しお尻がむず痒い感じはしますけどね(笑)。今年も同じAEクラスに参戦予定で、不成立になりそうなときは別クラスとのダブルエントリーで行こうかなと考えています」

山口大学の自動車部に所属し、ジムカーナとダートトライアルの“二刀流”選手である西村颯人選手。全日本学生選手権大会をメインに、JAF地方選手権やJMRC中国シリーズと、2022年の競技活動は大忙しだったそうだ。「舗装のジムカーナも未舗装のダートラも、クルマの挙動や操り方という意味では通じるものがあって、両カテゴリーやっています。昨年は自動車部OBである太田智喜選手に『ATクラスで走ってほしい』と誘われ、準備していただいたクルマで挑戦しました。実はクルマ好きとしてはマニュアル車での競技にこだわりを持っていましたが、いざ乗ってみるとシフト/クラッチ操作がなくても十分にモータースポーツの楽しさが感じられましたね。左足ブレーキも意識的に多用しました(笑)。ATクラス設立初年度のチャンピオンという名誉は非常にうれしいです。太田選手のおかげで獲れたと思っています。今後、ATクラスに参加する人が増え、盛り上がってくれるといいですね!」

初チャンピオンという響きに意外性を感じつつも、当の本人である西元直行選手は「チャンピオンになれてもなにも全然変わらないですね。うれしくないと言ったらウソになりますが、自分自身はうまいドライバーではないし、モータースポーツを楽しむ延長でたまたま獲れたので……」と謙遜する。その2022年を振り返ってもらうと「梶岡(悟)さんが会場に来てくれてクルマの準備やメンテをしてくれたので、クルマに対する不安がありませんでしたね」と感謝の言葉を述べつつ、「気負わず楽しかったシーズンでした。1988年にカルタスでオールスターのチャンピオンを獲った大ベテランの松井繁往選手に焼肉に誘われて、出るつもりがなかった8月の楠(第6戦)のポイントが効いてますね(笑)。松井選手のおかげでチャンピオンが獲れました」とアナ西元節を展開。「2023年は地区戦が改造車で継続参戦、全日本はアナウンス、あとは中国地区のオートテストで盛り上げます!」

「クルマを上手く走らせることができたときや、他人より速いタイムが出たときが一番楽しいですね」と、広いサーキットを存分に走ることができるサーキットトライアルの面白さを語った渡邊敬司選手。「2021年の終盤に、2022年の新しいレギュレーションなら勝てるかなと思い始め、タイヤの準備やメンテナンス等の資金を用意して、2022年は絶対にチャンピオンを獲るという意気込みで臨みました。またCT4クラスの大住拓選手に車載映像の確認や同乗走行をお願いして、練習ではライン取りやシフト操作などの指導を受け、運転全般の見直しを図りました。その甲斐あって、以前より1秒くらいタイムが縮まったんです。1/100秒や1/1000秒差の勝負もありましたが、第4戦ではコースレコードを更新して初の優勝も遂げることができました。20年近くクルマに乗っていて初めてモータースポーツのタイトルが獲れたので、非常にうれしいです。振り返ると最高のシーズンでした」

EP71スターレットから始まったモータースポーツ人生、現在はホンダ車のスポーツ専門ショップ“レーシングガレージ大住”を営む傍ら、鈴鹿クラブマンやサーキットトライアルなど競技活動にも精を出す大住拓選手。「2022年は新型GR86で参戦することに大きな意義を見出し、またサーキットトライアルをより根づかせるために力を注いだ1年でした。なのでチャンピオンを獲るというより、若手や後進育成のためというニュアンスが強かったですね。新しいクルマを投入したことで苦労もありましたが、周囲に刺激を与えられたことは大きな収穫でした。Bライ競技はプライベーターでも1人で始められて完結できるところが魅力で、中でもサーキットトライアルはコースを存分に走ることができる醍醐味があります。いつかはJAFカップや全日本選手権の開催と、まだ伸びしろがある競技だと思っています。2023年はなるべく裏方に徹して、競技の発展と後進の育成に励みたいです」

山下猛選手は67歳で地方選手権の初戴冠、だがモータースポーツは還暦を迎えて始めたそうだ。「ハタチくらいからクルマ遊びはしていましたが、家庭の事情などでしばらく止めていたんです。そして50歳のころに息子がクルマに興味を持ち始めたのがきっかけで、息子の活動の手伝いをしながらとあるショップへ行ったところ、70代でも競技をしている方がいると聞き、背中を押されて一念発起しました。自分の年齢でもチャレンジできる遊びとしてサーキットトライアルデビューしたんですよ。自分のベストを追求し続ける、この競技がぴったりハマりました。選手の皆さんにはご迷惑をおかけしたかもしれませんが、一緒に競技をやらせてもらってありがたい気持ちでいっぱいです。皆さんがいたからレコードタイムや目標値があり、そこに自分がどこまで近づけられるか一生懸命戦いました。チャンピオンが獲れたことは、周りにも言っていますがいい冥途の土産になりました(笑)」
フォト/西野キヨシ、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部