WRC勝田貴元選手、第2戦はリタイアを喫するも、SS4でベストタイムを奪取!

レポート ラリー

2023年2月17日

2023年FIA世界ラリー選手権(WRC)の第2戦「ラリー・スウェーデン」が2月9~12日、スウェーデン北部最大の都市、ウーメオーを拠点に開催された。2023シーズン唯一となるフルスノーラリーにTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加中の日本人ドライバー、勝田貴元選手もコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とともにワークスチーム、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)に初のワークスノミネート。サードドライバーとして、GR YARIS Rally1 HYBRIDをドライブした。

2023年FIA世界ラリー選手権 第2戦「ラリー・スウェーデン」
開催日:2023年2月9~12日
開催地:スウェーデン・ウーメオー周辺

2月9日:デイ1 / 2月10日:デイ2

 ラリー・スウェーデンに5回の出場経験を持つ勝田貴元選手は、2018年にWRC2で日本人初のクラス優勝を果たしたほか、2022年には総合4位で入賞するなど豊富な実績を持つ。さらに今回においても「シェイクダウンからフィーリングが良くて2番手タイムとか4番手タイムを出せていました」と好感触を見せていた。

 事実、9日のデイ1にナイトステージとして開催されたSS1こそ6番手タイム、翌日デイ2のSS2は4番手タイムにとどまっていたのだが、「SS1とSS2は様子を見ながら走っていました。SS3からハイスピードのSSが始まったのでプッシュを始めましたが、とてもフィーリングが良かった」と語るようにSS3で3番手タイムをマークする。

 さらに「SS3でミスをしてロスをしたんですけど、それでもトップとは僅差だったので、ミスをしなければベストタイムを出せるかなぁ……という手応えはありました」と語るように勝田貴元選手はデイ2最長のSSとなるSS4で今シーズン初のベストタイムをマークし、総合順位でも5番手につけた。

 しかし、続くSS5で予想外のハプニングが発生した。「昨年のスウェーデンもそうだったんですけど、2ループ目になって路面が荒れた状態になった時が難しいので、トップに離されないように、なんとか喰らいついていきたいという思いがあったんですけどね。SS5の終盤で轍に足をすくわれて、オーバースピードでコーナーに侵入してしまいリアをぶつけて、その後にフロントをひっかけてロールしてしまいました」と語るように勝田貴元選手は痛恨の転倒を喫した。

 なんとかこのSSを走り切るものの、「ラジエターから水が漏れていたんですけど、応急処置をすればポイント圏内でフィニッシュできると思い、修復を行って次のステージへ向かったんですけどね。走行中に新たなダメージを受けて水漏れが酷くなったので、SS6の走行途中でマシンを止めました」と語るように、SS6を走り切ることなくデイリタイアを決断することになったのである。

スウェーデンの隣国、フィンランドを拠点としている勝田貴元選手は、過去のラリー・スウェーデンで好成績を残し、今回は初のワークスノミネートもされて期待は大きかったが、SS5でまさかの転倒。しかし、直前のSS4では今シーズン初のベストタイムを奪うなど、光る速さも見せた。

2月11日:デイ3 / 2月12日:デイ4

「今回は競争力もあって、いいところで戦えると思っていたんですけど、自分のドライビングミスでクルマをロールさせてしまって走行できなくなったので、チームに申し訳なかった」と悔しがる勝田貴元選手。とはいえ、デイ3で再出走を果たすと素晴らしい走りを披露した。

 出走順が先頭となったことで勝田貴元選手は路面の掃除役に苦戦を強いられたものの、「フィーリングは良かったので最終日のパワーステージではいい仕事ができそうな手応えはありました」と好感触。事実、SS15では3番手タイムをマークするなど着実にペースを取り戻していた。

 しかし、デイ4では「データ上ではデイ3の段階から不具合の兆候があったんですけど、デイ4に入ってからエンジンのフィーリングが良くなくてリタイアすることになりました」と語るように勝田貴元選手はパワーステージを走ることなくリタイアを決断。

「初のワークスノミネートだったので意気込んでいたし、いい戦いができそうな手応えはあったんですけどね。自分のクラッシュで落としてしまっているので悔しいし、チームに申し訳ないと思います」と語るように、無念の一戦となった。

「フィーリングも良かったし、クルマに対する理解も深まっているので、昨年の大会よりもリスクをとって走っていました。でも、2ループ目の荒れたコンディションのなかで、突き詰める必要はあったのかな……というのは感じています。長い目で見た戦い方を考えていかないといけない」と振り返る勝田貴元選手。

 その一方で「再出走したことで荒れたコンディションの走り方など得られた経験がありますし、競争力の高いSSもあって、パワーステージでトップを争えるだけのフィーリングはありました。どこでワークスカーの3台目にノミネートされるのか分かりませんが、5ポイント(トップタイム)を取れる自信ができました」と手応えを語る。

 3月16~19日に開催される第3戦のラリー・メキシコは勝田貴元選手にとって初出場となることから「ステップ・バイ・ステップで自分のペースを見ながら上げていくアプローチが必要だと思います。他の選手のインカー映像を見たり、暑さもあるのでフィジカルトレーニングを行うなど、しっかり準備をしたい」とのことだ。

 さらに「ポルトガルやサファリのように2022年の大会で競争力があったイベントは自分の持っているパフォーマンスをしっかりと見せて、それを結果に繋げていきたいと思っています」と語っているだけに、今後も勝田貴元選手の動向に注目したい。

 なお、このラリーの優勝はM-SPORT FORD WORLD RALLY TEAM(Mスポーツ)のオイット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組がフォード・プーマRally1ハイブリッドを武器にチーム移籍後、初優勝を獲得。HYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)でヒョンデi20 N Rally1ハイブリッドを駆るクレイグ・ブリーン/ジェームズ・フルトン組が2位入賞を果たし、チームメイトのティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーテガ組が3位で表彰台に登壇した。

 一方、「僕も含めてTOYOTA GAZOO Racingは3台とも轍に苦戦していました。クルマのセッティングを外していたんじゃないかと思います。1ループ目はドライバーがトレースしながら戦えたんですけど、2ループ目になってラインができてしまってからはアンダーステアが強くてクルマが曲らなかった」と勝田貴元選手が語るように、TGR-WRCは苦戦の展開。その結果、TGR-WRTはカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組の4位が最上位で、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が5位でフィニッシュした。

2023年のラリー・スウェーデンの表彰台には、左から2位のクレイグ・ブリーン/ジェームズ・フルトン組(ヒョンデ)、チーム移籍後初優勝を果たしたオィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組(Mスポーツ)、3位で2戦連続表彰台となったティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーテガ組(ヒョンデ)が上がった。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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