【PR】進化し続ける“デブリフェンス”

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2023年3月1日

安全で、臨場感あふれるレース観戦のために

世界のサーキット/市街地レースで採用される 「FIA公認デブリフェンス」の気になる中身

 サーキットでは観客席とコースの間には、必ず“フェンス”が存在している。これは業界では“デブリフェンス”と呼ばれる、観客やコースマーシャルなどを保護するための、サーキットレースには欠かせない安全装備だが、実際のところ、観客席からは「コースを走るマシンがよく観えない」といった思いを抱く人も多いだろう。

 しかし、そんな思いを払拭するデブリフェンスが存在する。現在、F1グランプリやフォーミュラEをはじめ、世界のサーキットでは新設はもちろん、改修時にもこの最新のデブリフェンスが続々と導入されているのだ。

 高い安全性を確保しながらも「観やすさ」を追求する。この難しい課題に日夜取り組んでいるのがスイスの企業「GEOBRUGG(ジェオブルッグ)」社で、2018年に世界で初めてデブリフェンスのFIA公認を取得したメーカーとして、現在、世界のサーキットから注目を浴びている。

観客やコースマーシャルなどを保護するモータースーツ用デブリフェンスのスペシャリストとして知られるジェオブルッグ社。

 ジェオブルッグ社は自然災害向けの防護柵の開発から製造までを手掛けるスイス企業で、1951年に最初の雪崩予防工を設置して以降、落石や土石流、斜面崩壊対策へとその領域を広げ、金網やワイヤロープを使用した「ネット系」と呼ばれる防護柵の分野では世界的に有名な企業である。同社の防護柵は人命やインフラ設備を守るために、日本をはじめ世界50か国以上で採用されている。

落石や土石流など、自然災害向けの対策を本業としているジェオブルッグ社。その歴史は1951年から始まっている。

 同社とモータースポーツの関係は2008年頃から始まり、FIA(当時はFIA Institute)から既存のデブリフェンスのパフォーマンス試験について協力を依頼されたことに端を発する。そこで高い評価を得た同社は、デブリフェンスの製造と展開を本格的にスタート。試行錯誤を続けながら安全性と商品力を高めて、2018年には世界で初めてデブリフェンスのFIA公認(FIA基準3502-2018)を取得。以降、F1グランプリが開催されるFIA公認グレード1サーキットをはじめ、世界中のモータースポーツ施設への導入が進んでいる。

FIAが規定した試験をクリアし、世界で初めてFIA基準3502-2018によるデブリフェンスのFIA公認を取得している。

 ジェオブルッグ社のデブリフェンスは、FIAの要件を満たした鋼材で組み上げられ、かつFIA基準の試験をクリアしている。同社の特徴である「超高強度金網」には、直径わずか4.0mmながら2トンの車両を持ち上げられるほどの強力な鋼線が使用されており、変形を最小限としながらもエネルギーを最大限に吸収してくれる。しかも、同社ではこれらをシステムとして展開しており、それぞれが連携して機能するように設計されている。施工や設置、修復などがしやすくなるため、サーキットには大きなメリットになるだろう。

ジェオブルッグ社が誇る「超高強度金網」。変形しながらエネルギーを吸収してくれる“編み方”がポイントとなっている。

 製品ラインナップは、常設型の「FIAデブリフェンス」と、移動式のコンクリートバリアにフェンスを建てる可搬型の「FIAモバイルデブリフェンス」を主軸とする。このうちFIAデブリフェンスは、支柱間隔4.0mモデルに加え、FIA公認タイプでは業界唯一となる、支柱間隔6.0m(「FIAデブリフェンス6m」)モデルのバリエーションを用意する。ほかにもピットレーンに設置する「ピットウォールフェンス」や、トラックサイドに設置する「マーシャルポスト」など、サーキット運営に欠かせないフェンスシステムも提供している。

ガードレールの後方に設置する、サーキット常設型の「FIAデブリフェンス」。写真は最新テクノロジーが凝縮された支柱間隔6.0mモデル。
こちらは仮設や市街地レースなどに使われる「FIAモバイルデブリフェンス」。近年では常設サーキットでの利用も多くなっているという。
観客や関係者にとってもっとも身近な存在となるピットウォールも用意。サーキットの規模に応じて拡張できるシステムとなっている。
コースマーシャル用とカメラマン用の開口部。カメラマン用は、使用しない際に閉じておけるといった工夫にも細かな気配りが感じられる。

 そして、ジェオブルッグ社ではデブリフェンスを構成するフェンス部材だけではなく、コンクリートバリアやピットウォールを現地で製造するための金型や主要材料の提供も行う。さらに、建設レイアウトの設計、現地施工業者へのバリア製作研修、フェンスパネルの組み立て訓練、モバイルデブリフェンスの設置訓練から、設置後の最終検査まで実施している。つまり、デブリフェンスの導入をワンストップで任せることができるのだ。

デブリフェンスは設計どおりに設置しないと機能しないことから、計画や施工のノウハウも研修や訓練とともに提供してくれる。

 ジェオブルッグ社のデブリフェンスは、F1グランプリが開催されるFIA公認グレード1のサーキットや市街地レースなどでの導入が進んでおり、F1シンガポールGPやマイアミGP、サウジアラビアGPなどでも採用されている。また、英国のシルバーストン・サーキットやオランダのザントフールト・サーキット、ベルギーのスパ・フランコルシャン、フランスのポール・リカール・サーキット、オーストリアのレッドブル・リンク、UAEのヤス・マリーナ・サーキットなど、世界の著名なサーキット施設でも採用実績がある。

FIAデブリフェンスとFIAモバイルデブリフェンスなどを主軸に、世界の名だたるサーキットや市街地レースでの採用が進んでいる。

 もちろん日本でも導入されており、2017年に東京・台場で開催された「FIA Intercontinental Drifting Cup 2017」で採用されたほか、プライベートコースでも採用されている。そして、2024年の東京開催が発表され、日本でも大きな話題となっているフォーミュラEについては、ドイツで行われたベルリンE-PrixやメキシコシティE-Prix、2023年2月にインドで初めて開催されたハイデラバードE-Prixなどでの採用実績を持っている。

2017~2018年に東京・台場で開催されたドリフト世界一決定戦「FIA Intercontinental Drifting Cup」でも採用された。

 ジェオブルッグ社のデブリフェンスは絶えず進化を遂げており、最新型の進化ポイントは「透過性の向上」にあるという。デブリフェンスにとって、堅牢であることと観客の視界を妨げないことは相反するが、同社では、金網の補強材の間隔を通常の25cmから50cmに広げたり、一般的には4m以内とされる支柱間隔を6mに広げたりして、透過性を高めたモデルでもFIA公認を取得している。これにより、観客席からの視界を広げ、ナイトレースでは光量アップにも寄与し、世界へ配信する国際映像の品質向上にも貢献しているのだ。

モバイルデブリフェンスの第3世代で進化したのは「透過性」。よりクリアに、臨場感あふれるレース観戦が可能になる。

 ここからは、ジェオブルッグジャパン株式会社のゼネラルマネージャーである西村信人氏と、ジェオブルッグ本社モータースポーツ・ソリューション部長のヨハン・ブラウンワース氏に登場いただき、“FIA公認デブリフェンス”のより深いところを掘り下げていく。 まずは、西村ゼネラルマネージャーにFIA規則の詳細や製品の特徴などについて伺った。

ジェオブルッグ本社のヨハン・ブラウンワース氏(写真左)とジェオブルック・ジャパンの西村信人氏。

Q:デブリフェンスにはどのような要件が設定されているのでしょうか?

 西村氏:FIAが示す要件は、以前は推奨素材だけでしたが、FIA基準ができた2018年以降は、推奨素材のほかに2種類の試験に合格する必要があるという規則になりました。

 試験の一つは「正面衝突球体試験」と呼ばれ、約780kgの球体を約60km/hで射出して、デブリフェンス中央に90度の角度に衝突させます。もう一つは「有角度衝突車両試験」というもので、約1トンの車両を約120km/hで射出して、デブリフェンス中央に20度の角度で衝突させる試験です。

 FIA基準では、鉄球も車両も突き抜けず、後方3メートルに大きな物が飛ばないことを条件としています。耐腐食性や難燃性、耐温度性に加え、メンテナンスマニュアルや設置のガイドラインの作成も求められます。これらがそろって初めて、デブリフェンスにFIA公認ラベルを貼ることができます。

一般的な菱形金網では突き抜けてしまう鉄球も、ジェオブルッグ社の超高強度金網は変形しながら、しっかり受け止めてくれる。
車両を120km/hでデブリフェンスに当てる試験。FIAの要件では120km/hだが、同社では150km/hでもクリアできる強度を持つ。
試験に合格したフェンス部材をシステムで展開する同社のデブリフェンス。支柱に貼られたFIA公認ラベルが安全・安心の証なのだ。

Q:観客にとって“観やすい”というメリットもあるんですよね?

 金網に使用される鋼線の直径はどのデブリフェンスもたいてい4mmですが、我々の超高強度金網で使用する鋼線は、同じ4mmでも強度がかなり高いため、一般的な金網で同じ強度を再現しようとすると、鋼線には9~10mmの太さが必要になってしまいます。それではレースを観戦する際に金網が邪魔になりますし、設置するときも重たいので、時間も手間もかかってしまいます。

 また、金網に張る補強材は、一般的なデブリフェンスは金網の強度が弱いため25cm間隔で張る必要がありますが、我々の超高強度金網は、補強材を50cm間隔にしても試験に合格しています。常設のデブリフェンスの場合、ケーブルを1本張るにも時間やコストがかかりますから、本数を減らせることは施工する際のメリットになると思います。改修工事の場合はサーキットの営業を早く再開できますからね。

 そして、サーキットのデブリフェンスはたいてい4m間隔で支柱がありますが、我々のデブリフェンスは6mの支柱間隔でFIAの試験に合格しています。補強材を減らせることに加え、この6mモデルを導入したことにより、視界をさらに広げられるようになりました。

 実は、視界の問題だけではなく、これはFIAからも要望があったことなのですが、支柱の間隔を広げられると、車両が支柱に当たる確率を減らせます。金網部分と違って、支柱は柔軟に変形してくれませんから、支柱の間隔は広い方がより安全だと言えます。

 また、英国のシルバーストン・サーキットでは、サーキットデザイナーが我々のデブリフェンスでシミュレーションした結果、既存のデブリフェンスより観客席を15mほどトラックに近づけられることがわかりました。安全性を確保しながら、観客に臨場感のあるレースを提供できるという評価を得られたことで、導入していただいたと捉えております。

 飛んでくるものを受け止めるという意味では、落石などの自然災害防護柵の技術を導入できます。ジェオブルッグは、最大25トンのブロックが103km/hで落ちてきても止められる規格外のフェンスも持っています。これまでスピードがある落石を受け止めてきたノウハウが、モータースポーツ用フェンスの開発に活かされていると考えています。

ジェオブルッグ社の超高強度金網なら支柱や補強材の間隔を広げられ、高い安全性と観やすさを両立させることができるのだ。

 ここからは、ジェオブルッグ本社のモータースポーツ・ソリューション部長のヨハン・ブラウンワース氏に登場いただき、これまで世界中のモータースポーツ現場においてデブリフェンス導入に関わってきた経験を踏まえて、製品の概要を解説してもらった。

Q:ジェオブルッグ社製品の「利点」はどこにあるのでしょうか?

 ブラウンワース氏:我々のデブリフェンスは、すでにモータースポーツ業界において15年以上の導入実績があります。あらゆる規模のサーキットやプルービンググラウンド、近年では多くのプライベートコースにも導入していただいています。カスタマーの皆様から多くのフィードバックをいただいて改良を重ね、経験を蓄積してきたことが強みになりますね。

 そして、サーキットだけではなく、レースのオーガナイザー(主催者)からもフィードバックをいただいています。FIAについても、最初のオーダーは“試験”でした。それが数年後にはセーフティフェンスに対する公認制度をFIAが導入することになり、デブリフェンスやバリアに安全性を確保することがスタンダードになりました。

 最初のデブリフェンスがサーキットに導入されて以来、システムは多くの進化を遂げています。F1グランプリやフォーミュラE、ワールドラリークロス、MotoGPなど、関係者の皆様からいただいた多くの声が現在の製品に活かされ、進化しています。

F1グランプリだけではなくMotoGPやワールドラリークロスなど幅広いカテゴリーでの導入が進み、得られた知見が改良に活かされている。

Q:具体的にどのような進化を果たしてきたのですか?

 もちろん安全性が大きく進化していますが、モバイルデブリフェンスの場合、第1世代から第2世代についてはユーザーフレンドリー面、つまり設置のしやすさが進化しました。市街地レースでは、設置や撤去の際に交通を止める必要があるわけです。我々のデブリフェンスはこれまでの経験を活かしてシステムとして展開しているため、とてもスピーディーに施工することができますし、あらゆる面で洗練されていると自負しています。

 第3世代は“観え方”が進化しました。F1グランプリやフォーミュラEでは、世界中の視聴者が美しい映像を求めています。また、F1グランプリのナイトレースでは、多くの機材が観客やカメラの視界を遮ってしまいます。第3世代の進化は、観客席からの観やすさ、そして視聴者からの観やすさが大きく進化しています。

 (西村氏の補足):第3世代では観え方に加え、施工のさらなる簡便さを向上させました。市街地レースではバリアの数が2000個以上になることもあるため、道路の封鎖時間を削減するために、吊り具を数秒で固定できる「ドッグボーンシステム」を導入しています。

第1世代から第2世代への進化ポイントは、フェンス部材のシステム展開などにより、設置のしやすさを高めている点。
第3世代では観客やテレビ視聴者を意識した改良が加わった。高い安全性を保ちながら補強材や支柱間隔を拡大し、透過性を向上させている。

Q:デブリフェンスのメンテナンスについては如何ですか?

 基本的にはメンテナンスフリーですが、常設サーキットには年1回の簡易点検と、4年ごとのメンテナンスを推奨しています。多くのサーキットでは、設置するとそれで満足されてしまうことも多いのですが、安全に係る設備には定期的なメンテナンスが必要だと考えていますので、定期的にサーキットへ伺ってヒアリングさせていただいています。

 また、サービスの一環として、F1グランプリやフォーミュラEなどのビッグイベントでは、FIAとのタスクフォースを組んで、レースウイークにアクシデントが起きた際の応急措置などを行っています。インドで行われたフォーミュラEでは、デブリフェンスの設置だけではなく、アクシデント発生時のサポートと、できるだけ早く修復する体制を備えました。

 施設のライフタイムを考えると、多くのサーキットにとってデブリフェンスの設置はわずか数回のみとなるでしょう。だからこそ、安全性の高いデブリフェンスの設置がベストソリューションであることを重視しています。また、とても小さな市場ですから、導入したユーザーがハッピーであることも重要です。その評判が次につながると考えています。

Q:日本市場に関しては、どのように考えていますか?

 日本は安全に対してとてもシビアだと聞いています。自動車業界ではエアバッグやディスタンスコントロールが標準化していますよね。これらは導入が進んだことで製品自体も進化しています。それはサーキットも同様で、より安全なシステムの導入が今後も進むはずです。ジェオブルッグとしては、この安全面を地道にアピールしていくことになります。

 今では、自動車にエアバックが必要ないと思う人はいないはずです。モータースポーツにおけるHANSデバイスなども同様で、ドライバーは自分を守るためにその必要性を理解しています。我々のシステムは、高い安全性が確保されながら、観客や視聴者に観やすい環境を提供できます。きっとだれもが「以前よりも良くなった」と感じられるはずですから、日本市場においても、我々のシステムの導入が進んでいくと信じています。

 皆さんは新車を買うときに、安全装備は最新のものを選びますよね。サーキットのデブリフェンスも同様で、設置された当時は最新技術であったかもしれませんが、現在の基準における性能は確認されていません。新設または改修をされる際には、最新の安全基準が確認されたデブリフェンスの導入をぜひ検討いただきたいです。

 超高強度金網を使うことで、支柱や補強材などの部材を減らすことができているため、条件によっては一般的なデブリフェンスよりも導入コストを抑えられることもあります。日本には西村がいますから、気軽に相談してみてください。

日本でも2024年に東京・台場での開催が期待されているフォーミュラE。ジェオブルッグ社は数々の大会で採用実績を持っている。

 最後に西村氏は「ヨハンは、様々なイベントに立ち会って、色々な立場の方々からフィードバックをいただいています。ビッグレースでアクシデントが起きた際には、交換すべきか否かを判断するサポートも行っています。そして、皆様の声にすぐ反応して、様々なオプションも開発しています。その点においても進化の速度は上がっています」と語る。

 そして、デブリフェンスに対するFIAの評価は“パフォーマンスベース”であるとも教えてくれた。つまりこれは、試験にクリアできることが重要視されるということで、モータースポーツの進化を先回りして、自社製品を自発的に、常に進化させ続ける必要があるのだ。

 モータースポーツにおける安全装備はパッシブ・セーフティが基本だ。それ故、同社では多くのカスタマーから得たフィードバックを元に、机上でわからないことはすぐさま“実験”で確認して改良につなげ、予防安全への理解を深めてもらう努力を積み重ねている。

 計画から施工、修復や撤去まで、デブリフェンスに関するすべてのサービスを提供し、サーキットや市街地レースの安全を、良好な視界とともに守ってくれるジェオブルッグ社。今後のレース観戦では、ぜひ“デブリフェンス”の存在にも想いを寄せてみてほしい。

お問い合わせ:ジェオブルックジャパン株式会社 西村 信人
TEL: 04-7140-9911 お問い合わせ

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