岡山で開催のチャレンジカップレースはウェットコンディションでも各カテゴリーで熱戦!

レポート レース サーキットトライアル

2023年3月7日

2023年もレースは西から、岡山国際サーキットで幕を開けた。2月19日に開催された「OKAYAMAチャレンジカップレース 第1戦」は、前日の練習走行を含めて終始ウェットコンディション。路面が完全に乾くことがなかったのは「この時期だから」と、レコードタイム更新を目論んでいたドライバーにとっては残念だったに違いない。

2023 OKAYAMAチャレンジカップレース 第1戦
開催日:2023年2月19日
開催地:岡山国際サーキット(岡山県美作市)
主催:株式会社岡山国際サーキット、AC

JAF地方選手権 岡山国際サーキットトライアル選手権 第1戦

 今年も岡山のサーキットトライアル地方選手権は全4戦で競われる。あいにくの天気ではあったが、雨が降り続いていた午前のヒート1に対し、午後のヒート2では雨が止んで路面状態も向上。ほぼ全員がヒート2でタイムアップを果たしていた。

 ヒート1で総合トップは、CT4クラスでスイフトスポーツをドライブする松橋豊悦選手だった。この時点でスイフトスポーツを駆る2番手の工藤丈弥選手を5秒以上も離していた。ヒート2になると、工藤選手が大幅にタイムを縮めて肉薄するも、松橋選手はコンマ単位での短縮ながら、逃げ切りを果たして優勝を飾った。

「岡山を走るのは2回目ですが、鈴鹿を含め、他のサーキットでウェットの練習をしてきたので、それが活きたかなと。正直、目標のタイムには届かなかったのは残念です」と松橋選手。ちなみに今年は「SUGOから筑波、岡山で、13戦を戦おうと思っています」と意欲的だ。

 その一方で、CT4クラスで昨年は4戦4勝でチャンピオンを獲得したGR86の大住拓選手が4位留まり。「さすがに雨はFFですね。こればっかりは仕方ない。ただ今年は後進のため、岡山はこの一戦だけの予定です」と昨年、最高の達成感を得ていたからか、意外とサバサバした表情で語っていた。

 総合3位はCT3クラスでFD2シビックの三谷崇選手。昨年のチャンピオン渡邊敬司選手が伸び悩む中、ヒート1からトップに立ち、ヒート2では4秒以上のタイムアップを果たし、岡山での初勝利を飾っている。

「チーム内に強力なライバルがいましたので、必死に走りました。結果が伴ったので満足です。ただひと言、恐ろしかったです(笑)」と三谷選手は本音をポロリ。2位は木村芳次選手が獲得し、渡邊選手は3位だった。

 総合5位はCT1クラスで孤軍奮闘の福冨航平選手がGRヤリスで獲得。これに続く総合6位はCT2クラスの赤石憲俊選手。昨年のCT1クラスチャンピオンは、本来のクラスでの参戦となった。「昨年はCT2クラスが台数集まらなかったので、CT1クラスなら表彰できますよ」というのがその理由。

 2ヒートとも後半にしっかりタイムを伸ばしてライバルを寄せつけなかった。「難しかったですね、全然グリップしなくて。岡山では初めてのウェットだったのでちょっと苦戦しました。もう少し(総合でも)上に行きたかったです」と会心の走りではなかった模様。2位もFK8シビックの石田泰久選手が獲得。

 CT5クラスではノートニスモのディフェンディングチャンピオン山下猛選手が思うようにタイムを伸ばせぬ中、ヒート1の半ばでヤリスの小倉由浩選手がトップに浮上。ヒート2では周回ごとタイムを縮め続けて逃げ切った。

「うまいこといきました。雨でしか上手く走れないので(苦笑)。ヒート2は途中からブレーキが効かなくなって……。だから、もうちょっとだったかな。一応ブレーキだけ気をつけて上手く合わせ込んだ感じです」と小倉選手。山下選手は2位だった。

CT4クラス優勝は松橋豊悦選手(スイフトスポーツ@N-TEC)。
CT3クラス優勝は三谷崇選手(RG-O☆IDI☆FD2)。
CT1クラス優勝は福冨航平選手(狂猿レーシングGRヤリス)。
CT2クラス優勝は赤石憲俊選手(シビック FK8 1010)。
CT5クラス優勝は小倉由浩選手(小林モータース山&健さんヤリスSTF)。

チャレンジカップレース ポルシェトロフィー Rd.1/Rd.2

 ポルシェトロフィーはダブルヘッダー開催。予選のベストタイムを第1戦の、そしてセカンドベストタイムを第2戦のグリッドとするも、いずれもMUSASHI選手に大差をつけてトップだったのが神取彦一郎選手。

 だが、「全然ダメです、アクセルを半分も開いていません。このウェットタイヤは初めてなので、どのぐらい行けるのか分からないんですよ。探り探りで……。」と走りには納得がいかぬよう。また昨年の全勝チャンプ松島豊選手がエントリーを取り消し、さらに1台が予選でクラッシュしたため、第1戦は3台での争いとなった。

 雨は止んでいたが、まだ路面には水をたっぷり残す中、MUSASHI選手がスタートに出遅れたため、神取選手はオープニングの1周だけで実に13秒ものマージンを獲得。そのまま逃げ続けて、最後は23秒差の圧勝となった。

「次のレースはドライになってくれればね。1回ぐらいまともに走りたいよ」と神取選手。その願いは届き、最終レースとなった第2戦は何とかドライタイヤが履けるようになるも、さらに1台が体調不良のためリタイアとなり、神取選手とMUSASHI選手のマッチレースに。

 今度はふたりともスタートを決め、終始コンマ差でのバトルを繰り広げた。8周目と最終ラップにはMUSASHI選手が1コーナーでインを刺すも、その都度、神取選手はしっかりガードし、逆転を許さず。

「路面は中途半端で、完璧ドライになっていなかったので、逃げるのが大変でした。ふたりしかいないから楽しく煽り合いができました。お互い分かり合っているので、ぶつかりもしないで全然行けました」と神取選手は白熱の戦いに満足そうだった。

Rd.1優勝は神取彦一郎選手(GRENA Racing)。
2位はMUSASHI選手(TAROracing)、3位は滝澤智幸選手(Fach AutoTech)。
Rd.1表彰の各選手。
Rd.2優勝は神取選手(GRENA Racing)。
Rd.2の表彰式。左から2位のMUSASHI選手、1位の神取選手。

チャレンジカップレース N1ロードスター

 予選がN1-86とNゼロ-86との混走だったN1ロードスターは、5年連続でチャンピオンを獲得してきた金森成泰選手がスプリントからの勇退を決めたため、新たな覇権争いが注目された。

 そんな中、初めてのポールポジション(PP)を奪ったのは「86と混走だったから、バランスが乱れてしまって上手くまとめきれなかったんですが、1番が獲れたから良しとしましょう」と語る下坂和也選手だ。しかし、決勝ではスタートに出遅れて最後尾に後退。大井正伸選手がトップに躍り出る。

 それでも下坂選手は2周目のアトウッド、そしてパイパーで相次いで2台をかわし、3周目のダブルヘアピンふたつめで大井選手をパスしてトップに浮上。その後、いったんは大井選手の再逆転を許すも、5周目の2周目に抜き返すと一気にペースを上げて独走体勢に持ち込んで、下坂選手は1年ぶりの優勝を飾った。

「スタートはクラッチミートに失敗しました。トップに立ってからは冷静さを取り戻しました。バトルの最中はカッとなっていて。でも、楽しめましたよ、もちろん」と下坂選手。なお、1台が参加のNDクラスは植村真一選手が総合2位でゴールしている。

NAクラス優勝は下坂和也選手(FIRST SPEC-D ロードスター)。
2位は大井正伸選手(OTPアクレTSモリモトAZUR)、3位は武智公一選手(FIRST AFロードスター)。
NAクラス表彰の各選手。
NDクラスの植村真一選手(MmNDロードスター植村産業)は総合2位でフィニッシュ。

チャレンジカップレース NゼロVitz/NゼロYaris

 NゼロVitzは、今年からNゼロYarisとの混走に。Yaris4台を加え、12台での争いとなった。チャンピオンの三浦康司選手ら上位3人が卒業したNゼロVitzでは、久山陽平選手がPPを獲得し、「今回で3レース目で、人生初のウェットは大変緊張したんですが、教えていただいた方々のおかげでPPを獲ることができました。決勝は先行逃げ切りで行きたいです」と語る。

 一方、NゼロYarisでは「このクルマでの雨の日の走り方、基本的に分かっていなかったので、ラインを探りながら走ったんですけど、全然まともなラインが取れなくて……。まだまだ勉強不足ですね」と語っていたmasashi yamazoe選手がトップで、総合では3番手につけた。

 決勝は久山選手と日野皓介選手の一騎討ちとなった。着かず離れずの展開がしばらく続いたものの、7周目のワンチャンスを日野選手が見逃さず。ヘアピンで並んで、久山選手をリボルバーでオーバーテイク。そのまま逃げ切って、昨年の最終戦に続く連勝を遂げた。「速いところと遅いところが違っていたので、なんとかうまいこと突けたという感じですね」と日野選手。

 NゼロYarisはyamazoe選手がトップ発進も、2周目の1コーナーで痛恨のスピン。そこでトップに躍り出たのが川上真人選手。これで勢いをつかんだのか、一時は4秒半あったNゼロVitzの木村和明選手との差も詰め、8周目の最終コーナーで逆転、総合でも3位でゴールした。

「目の前でクルッと回られたので、自分も釣られなくて良かったです。滑りやすかったので、その後もガチャンとならないことだけに気をつけて走っていました」と語る川上選手にとって、初めての優勝ともなった。

NゼロVitz優勝は日野晧介選手(GarageN SALTO Vitz)。
2位は久山陽平選手(GRG東岡山ウッドビレッジVitz森川組)、3位は木村和明選手(WURTHナビラボZK ProμVitz)。
NゼロVitz表彰の各選手。
NゼロYaris優勝は川上真人選手(コンプリートスピードまこさんYaris)
2位はmasashi yamazoe選手(コンプリートスピード新車販売専yaris)、3位は大和武人選手(東和・大協RT Yaris)。
NゼロYaris表彰の各選手。

チャレンジカップレース N1-86/Nゼロ-86

 N1-86とNゼロ-86の混走レースでは、ただひとりGR86でエントリーしたNゼロ-86の山崎竜生選手に、予選であと一歩で快挙の一幕が。ウェットタイヤを履くN1-86勢をも抑え、一時は総合トップタイムを記していたからだ。だが、タイヤに熱が入ると本来の速さをN1-86の佐藤俊介選手が発揮し、後半に逆転。意地のPPを獲得する。

「ウェットで怖くてイケてないから、あまりね……。午後のコンディションは分からないですけど、決勝は気持ち良く走りたいです」と佐藤選手。一方、山崎選手は「そのまま行けたら良かったんですけど、あれが限界。2秒ぐらい離れています? そこまではいけなかったなぁ」と悔しがる。総合3番手もNゼロ-86の大崎達也選手が獲得。

 決勝では山崎選手が好スタートを切るも、1コーナーまでに佐藤選手が逆転。ところが、その直後に佐藤選手はスピンを喫し、最後尾に後退してしまう。これで山崎選手が再びトップに立つも、大崎選手が食らいついて離れない。コントロールタイヤの違いによってコーナーでは差を詰める大崎選手ながら、排気量+400ccの違いもあって、ストレートでは山崎選手が離す展開が続く。

 何度もダブルヘアピンふたつ目でインを刺そうとした大崎選手に対して山崎選手は冷静に対処し、逆転を許さず。「タイヤの違いは大きかったですね。ブレーキは止まらないし曲がらないし。でもとくに焦ることはなかったですね」と山崎選手。

 そして大崎選手は「クラスが違うので直線は離されるんですけど、タイヤでは勝っているので、その分で帳消しになる感じでしたが、やっぱり抜けませんでしたね」と語っていた。ちなみに山崎選手はクラス2として1台での参加だったために表彰の対象とはならず、ポディウムには立てなかった。

 一方、佐藤選手は他を圧するスピードで追い上げ、7周目の1コーナーでN1-86のトップに浮上。Nゼロ-86のふたりには追いつかなかったものの、当初24秒もあった差を10秒まで詰めていた。「いきなりスピンして最悪でしたけど、また走れて良かったです。雨は難しかったですが、こうやって追い上げられて良かった」と、しみじみと語っていた。

Nゼロ-86クラス1優勝は大崎達也選手(GarageN SALTO BS 86)。
2位は西村宏樹選手(旭モータースHIROKKIERacing)、3位は柳堀翔太選手(アクセス86)。
Nゼロ-86クラス1表彰の各選手。
Nゼロ-86クラス2の山崎竜生選手(広島トヨタ GR Garage 五日市)は総合1位でゴール。
N1-86優勝は佐藤俊介選手(リキモリオイル86)。
2位は永井良周選手(GRGarage倉敷withNATEC)、3位は長尾秀義選手(GRGarage倉敷withWCG)。
N1-86表彰の各選手。

チャレンジカップレース WEST VITA

 今年も一番人気はWEST VITAで、今回も23台のエントリーを集めていた。そんなクラスにある変化が。コントロールタイヤは『ウェットでの発熱性』が向上し、スペックが変更されたのだ。おあつらえ向きに練習、本番ともにウェットコンディション。しかし、スピンやコースアウトが相次いだ。実際に「雨の安心感が増した」、「直線の安定性は抜群にいい」、「ブレーキロックがしにくくなった」というポジティブな意見もあったのだが……。

 予選は3回も赤旗が出る大波乱。久々登場の大八木龍一郎選手はその都度タイミングを逸していたが、最後の最後にしっかりまとめてPPを獲得する。「新しいタイヤはよく止まるし食いつくので、グリップは全体的に上がっています。縦方向のグリップも上がっている感じで、ブレーキングも雨でも思いっきり行けるので、いいと思いますけどね。ただ、みんなまだ慣れていないんじゃないですかね? グリップするという感覚で、ちょっと行きすぎちゃうのかもしれません。基本の走り方は変わらないと思うので」と、新スペックの印象と他のドライバーが苦戦する理由を分析してくれた。ちなみに2番手の下垣和也選手こそコンマ差で続いたものの、3番手以下とは5秒以上の開きがあった。

 決勝の路面は一部、ドライのラインで走れるまでに状態を回復。そんな中、スタートを決めた大八木選手は1周目を終えた時点で早くも2秒以上のリードを獲得し、少しもアクセルを緩めることなく逃げ続ける。対照的に2番手争いは激しく、まずは下垣選手と清水選手による攻防が繰り広げられていた。

「ウェットは得意」と語る下垣選手だったが、路面状態の向上により堪えきれず、7周目に清水選手の先行を許す。だが、その清水選手も抗えなかったのが増本千春選手。予選9番手から追い上げを果たして、9周目に清水選手をパスして2位を獲得した。「予選はアタックできなくてタイミングを逸したので。でも面白かったよ!」と満足そう。

 その間にも逃げまくっていた大八木選手は、実に27秒差の圧勝に! 「気持ち良かったですね! 容赦なんかできないじゃないですか、レースなんでね。路面はバラバラでまだウェットラインじゃないと行けないところもあって、難しい路面でしたね。頑張りました(笑)。来週の鈴鹿ではレコード出ると思います、というか出します!」と大八木選手は満面の笑みを浮かべてそう語っていた。一方、下垣選手は総合では3位ながら、ジェントルマンドライバーを対象とするトロフィークラスではしっかりと優勝を飾っていた。

優勝は大八木龍一郎選手(DAISHIN☆Progrexx☆萬雲塾)。
2位は増本千春選手(SANNO MST SHIELD 01)、3位は清水康友選手(カーブティッククラブ☆Trace☆制動屋)。
表彰の各選手。
VITAトロフィー優勝は下垣和也選手(SOUEISHA-VITA)。
2位はTAKEchan選手(恵比寿アキランドVITA制動屋)、3位は藺牟田政治選手(NUTECアキランドJOKERVITA)。
VITAトロフィー表彰の各選手。

フォト/吉見幸夫 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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