若手ドライバーから週末ドライバーまで鎬を削る鈴鹿クラブマンレースが盛況!
2023年3月10日
上空には青空が広がり、陽気はすでに春の気配を漂わせていたものの、吹く風が極めて冷たかった鈴鹿サーキットを舞台とした「鈴鹿クラブマンレースRound 1」が2月25~26日に開催された。逆に言えば、それは絶好のタイムアタック日和でもあって、いくつかのクラスではレコードタイムも更新されていた。
2023 鈴鹿クラブマンレース Round.1
開催日:2023年2月25~26日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:AASC、SMSC
JAF地方選手権 鈴鹿・岡山スーパーFJ選手権シリーズ 第1戦
今年から鈴鹿サーキットだけではなく、新たに岡山国際サーキットでの3戦も組み合わされて、全8戦で競われる予定の鈴鹿・岡山スーパーFJ選手権シリーズ。新装となったシリーズ開幕戦には24台がエントリーした。
コントロールタイヤの仕様変更があり、本来重視されたのはライフだったはずがグリップも向上。予選前に行われた練習走行では、昨年の同時期のレースよりほぼ1秒のタイムアップがあった。しかし、いざ予選になると2回も赤旗が出て連続周回がほとんど許されない状況となり、昨年並みのタイムに甘んじた。
そんな状況においてもひとり他を圧する速さを見せたのが、今年も引き続き参戦する岡本大地選手。「もうちょっとタイムを出したかったんですが、赤旗が残念でしたね。タイム的にはまだまだ上がっていくところだったので……。練習ではグリップも上がって、ピックアップ(タイヤカス)が着きにくくなっている印象でした。その分すぐにピークを迎えるのではなく、緩やかにタイムが落ちていく感じです」と岡本選手。
決勝では後続が激しいバトルを繰り広げていたこともあって、オープニングの1周だけで岡本選手は2秒のリードを獲得。そのままファステストラップを更新し続け、終盤には予選タイムを上回ったばかりか10秒のリードを広げていく。だが、8周目のシケインで1台がストップ。素早い回収作業によってセーフティカー(SC)の先導は1周で済んだものの、せっかくの大差が水の泡となってしまう。
ところが岡本選手はラスト1周でのバトル再開のリスタートを完璧に決めて、その1周だけで2秒6の差をつけフィニッシュ。まずは今季1勝目を挙げた。「スタートが結構良くて、そのまま逃げることができました。タイヤは最後までペースが落ちずに済んだしライフも十分。いいタイヤです」と、改められたタイヤに高評価を下していた。
一方、2位争いは最後まで熾烈を極めた。予選2番手だった髙口大将選手はスタートに出遅れ、3番手の板倉慎哉選手の先行を許すも、ぴたりと背後について離れず。5周目のワンチャンスを逃さず髙口選手が前に出るも、板倉選手も同様に遅れず続く。その後、リスタート後にヘアピンで仕掛けた板倉選手の逆転は許されず、髙口選手、板倉選手の順位のままチェッカーを受けた。
2023 Formula Beat地方選手権シリーズ Round.1
かつてのJAF-F4が名称をフォーミュラ・ビート(F-Be)に改め、30周年の節目となる今シーズンに新たなスタートを切った。ただし、引き続き地方選手権としてシリーズが開催され、コンセプトには一切の変更はない。
予選では昨年1戦のみスポットで参戦した冨田自然選手がトップタイムをマーク。カートやスーパーFJの経験を持ち、昨年はスーパー耐久に出場していた22歳の新鋭が非凡な走りを見せるも、ピットロードの速度超過で2グリッド降格のペナルティ。繰り上がってポールポジション(PP)を獲得したのはベテラン佐々木孝太選手だった。
「本当にラクをさせてもらえない(苦笑)。練習で感じの悪かったところを修正したんですけど、ちょっとやりすぎたか、コンディションが変わったことで合わなかったのか……。かえって乗りにくくなったので、これではまずいといろいろ走り方を試して、最後に行ったけど足りなかったという感じです。決勝は老体に鞭打って頑張ります」と佐々木選手。ところが、直前のスタート練習でドライブシャフトが折れ、グリッドに並ぶことが叶わず無念のリタイア。
これにより予選2番手のハンマー伊澤選手がトップに立ち、予選4番手から絶妙のスタートを決めた鈴木智之選手が2番手に浮上。鈴木選手は2コーナーで伊澤選手のインを差そうとするも、ここでの逆転は許されず。一方、冨田選手は加藤智選手にも抜かれ、4番手に後退。鈴木選手は1周目のシケインで一旦はトップに立つも、続く1コーナーで伊澤選手に抜き返されてしまう。
このままトップは一騎討ちで争われていくのかと思われたが、3周目のダンロップで鈴木選手が再びトップに立つと、徐々にリードを広げていくようになる。その後は伊澤選手と加藤選手、冨田選手によって2番手が激しく競われ、9周目には冨田選手が3番手に。さらなる上昇が期待されたが、伊澤選手はコンマ4秒差ながら逃げ切りに成功する。
「このクラスで優勝は初めてですね。PPはあったんですが、優勝までは届かなくて。スタートは人生でいちばん決まったんですよ! 今までストールか、大ホイールスピンだったんですけど(笑)。昨日はマシンバランスが悪くて、でも直してもらったらメッチャ乗りやすくて、アウトラップで分かるぐらい良かったんで、マシンのおかげです。だからバトルしている間も焦らなかったですね。今シーズンは出られるだけ出たいですね」と鈴木選手。
45歳以上のドライバーを対象とするジェントルマンクラスは、予選トップだった安井和明選手がスタート直後のドライブシャフト破損でリタイアを喫し、代わってトップに立った植田正幸選手は反則スタートでドライビングスルーペナルティを課せられてしまう。強者ふたりの脱落で中島功選手が優勝を飾っている。
JAF地方選手権 鈴鹿ツーリングカー選手権(FIT1.5 CHALLENGE CUP)
FIT 1.5チャレンジカップことツーリングカー地方選手権の鈴鹿シリーズは、昨年あと一歩のところで連覇を逃した西尾和早選手がPPを獲得。しかし「一発目にタイムを出してきましたが、実は二発目でコースレコードを狙っていたんです。でもちょっと130Rの手前で5速がレブって息尽きしちゃって……、悔しかったですね」と苦笑いしつつ語っていた。
加えて「スタートが心配」とも言っていたが、決勝ではそつなく決めてトップに浮上。ひとつ順位を上げていた松尾充晃選手を1周目で1秒8も引き離す。しかも、その松尾選手が反則スタートのペナルティでドライビングスルーを課せられると、リードはさらに広がるように。
「チームの人には『もうガンガン行っちゃっていいから』と言われていて、自分としてもアベレージを揃えつつ、ずっとアタックラップ的な感じで走り続けました。狙いどおりのレースになりました」と西尾選手。最後は13秒差の圧勝となった。
一方、その後方では清水悠祐が単独で2番手を走っていたが、最終ラップにガス欠の悲劇が……。3台でバトルを繰り広げていた杉原悠太選手が、やはり最終ラップの130Rで山内拓磨選手をパス。2位は杉原選手で、山内選手、岸元優選手の順位でチェッカーを受けていた。
フォーミュラEnjoy
今年も鈴鹿と岡山を舞台とするフォーミュラEnjoyでは、T.山口選手が初のPPを獲得。しかし「こんなこと言ったら失礼なんですが、もっとタイムが……。結果は良かったんですが、思いどおりの走りができなくて、自分の中では残念でした。頑張り過ぎちゃってシケインで2回、3回と行き過ぎて。まとめきれなかったですね」と、内容には納得がいかぬようだった。
その分を決勝に遺憾なく叩きつけたのは間違いない。スタートを決めて1コーナーへのホールショットを決めると、誰よりアクセルを踏み込んで後続を寄せつけず。5周目には7秒3にまで差を広げたほど。しかし、その直前にシケインでストップした車両があって、SCが導入されてしまう。しかも回収に時間を要したため、そのままチェッカーが振られてレースは終了。
「スタートで失敗しないように注意して問題なくできました。ちょっと差も開いたので、タイムを出しに行こうと思っていたらSCが出てしまって残念でしたが、結果は出たので」と、これまた不完全燃焼の様子だった。
対照的に2番手争いが激しく、東幸夫選手と安田知弘選手、亀蔵選手の三つ巴に。最後まで続いたバトルを制し、2位で安田選手がゴール。参戦5年目にして初めての表彰台を獲得した。これに続いた亀蔵選手は57歳以上を対象としたマイスターズ・カップを制したはずが、再車検で重量不足が発覚して失格。優勝は森下吾郎選手の手に。
CS2
昨年のクラブマンスポーツのチャンピオン大八木龍一郎選手は今年もダブルエントリー。先に行われたCS2では、予選開始直後に赤旗が出る波乱の展開となった。「タイヤに熱を入れるのに時間かかり、赤旗が出て止まっているうちに内圧が上がっちゃって。次に出たときはもう結構いいところに来ていて、二発アタックして、最初のアタックの時には『これはもう……』という感じがしたんで、早めに戻りました」と大八木選手。その後に成瀬茂喜選手の肉薄を許すも、PPを獲得。「タイヤを使っていない分、ちょっとだけ有利かな」とつけ加えた。
決勝では予選こそ6番手ながら激しい追い上げが期待されたいむらせいじ選手に、フォーメーションラップでドライブシャフトが折れる不運が発生。スタートはディレイとなって周回数は1周減らされた。またも波乱の展開の中、成瀬選手が好スタートを切るも、大八木選手は1コーナーで並んでS字までにパス。その後は完全に独壇場、ファステストラップの連発で、最後は予選タイムを上回って見せた。
「スタートはちょっと失敗して、成瀬さんに抜かれちゃって。でも2コーナーでアンダー出された感じだったので、落ち着いてうまいこと抜けました。まずひとつ獲りました、頑張りました」と大八木選手。2位は成瀬選手がそのままキープし、3位はVITAから乗り換えて初戦の関正俊選手が獲得した。
VITA
クラブマンスポーツは、今年からズバリそのもの「VITA」に名称を変更。全国的にコントロールタイヤの仕様変更があったことから、レコードタイムの更新が最も期待されたが、やはりと言うべきか……。自ら持つ記録を上回ってきたのは大八木選手だった。
「もうちょっと行けたと思うんですけど、タイヤを見ていたわって『このへんで止めとこう』って感じでした。先週みたいなレース(OKAYAMAチャレンジカップレース 第1戦)になったら、見ている方は絶対つまらないでしょうね。映像にいなくなるので(苦笑)」と自虐とも聞こえるコメントを発したが、どうやら本音ではなかったようだ。
決勝では自らも好スタートを決めたが、予選2番手の増本千春選手がストールしたことで、よりギャップが開くように。1周目を終えた時点で実に1秒9に! なおもアクセルを緩めることなく周回を重ね、ついには決勝中だというのに新レコードを記録して見せた。
「今度は無事にスタートも! ひとりで前を走っていたのでペースも良かったし、気温も昨日より下がってコンディションも良くなっていたのが効いていたかもしれません。このまま行きたいところなんですけど、みんな手強いんで、今のうちに稼いで逃げ切りたいです。強者ばっかりなんで、気を抜いたらやれちゃいますからね」と、最終的には14秒差での圧勝にも、勝って兜の尾を締める気持ちは欠かしていなかった。2位はTOMISAN選手で、最後は上岡広之選手が真後ろまで迫ったが、逆転はしっかり阻んでいた。
FFチャレンジ
このレースウィークで最も多いエントリーを集めたのはスーパーFJでもVITAでもなくFFチャレンジで、実に30台にも及んだ。今年で最後という発表がされているにも関わらず……。継続嘆願の表れでもあるのだろう。さてこのクラス、昨年の最終戦でHIROBON選手が、レジェンドこと松下裕一選手が長年持ち続けてきたレコードタイムを更新。もちろん、松下選手が再逆転に躍起になって臨んでいたのは言うまでもない。
結果、松下選手がワンアタックで更新するも、直後によりドラマチックな展開が待っていた。ディフェンディングチャンピオンの林陽介選手、そしてチームメイトの開勇紀選手が、さらなる短縮を果たしたからだ。それを知った松下選手は再アタックに打って出るも、先のタイムを上回れず。「自分でもビックリなぐらい、S字区間でもアクセル踏みちぎりました。チャンピオンとして意地を見せられました」と林陽介選手は興奮を抑えられない様子でそう語った。
決勝では林陽介選手が好スタートを切り、開選手が続き、松下選手は林大輔選手に1コーナーで差されてしまう。シケインで抜き返した松下選手だったが、トップを争うふたりからは1秒半の遅れを取ることに。だが2周目のスプーンでクラッシュが発生、赤旗中断となる。
SCスタートでレースが再開されると、松下選手は即座に開選手を1コーナーでかわして2番手に。その間にトップの林陽介選手との差は2秒以上に広がっていたが、5周目の130Rでクラッシュが発生したため、6周目からはSCが導入されてしまう。
これでもしリスタートが切られれば、林陽介選手と松下選手のマッチレースが見られたはずだ。しかし、車両回収に要した時間は長く、無情にもチェッカーが……。「2回ともスタートが決まってギャップをつくれたから、後は自分のペースで走るだけでした。最後のSCがもったいなくて、あれは仕方ないのかなと思うんですが、もう1周ぐらいしたかったですね、松下選手が怖かったですけど、なんか物足りない」と勝ってなお、林陽介選手は正直な胸の内を語っていた。
サーキットトライアル 第1戦
FFチャレンジ同様、今年限りの終了が発表されている併催のサーキットトライアル(CT)は、5クラス合わせて20台がエントリーした。コンディションはヒート2の方が気温は高く劣ったようで、ほとんどのウィナーがヒート1のうちに決着をつけていた。
ヒート1の計測1周目で最速タイムを記し、そのまま逃げ切って総合優勝を飾ったのは、B5クラスでポルシェ911GT3RSを走らせる田中誠也選手だった。「普段とは違うタイヤだったので、慣れていなかったこともあり、なかなかうまくつかめなくて」と語るも、ロータスエキシージの勝田裕貴選手に6秒差をつけ大勝に。「レース経験はありますが、CTは初めて。これからも挑戦していきたいですね」と田中選手は語っていた。
総合3位はホンダS2000でB3クラス優勝の北村琢磨選手が獲得。「まだまだ勉強するところがありましたので、さらに走り込んでタイムアップを果たしたいと思います。CTは今回が3回目で、優勝は初めて。これでもっとハマりそうです」と北村選手。
総合4位はB4クラスでトヨタGRヤリスを走らせる小嶋健太郎選手が獲得。昨年は日産GT-RでB5クラスを制した経験を持つが、今回は車両を入れ替えての参戦となった。「実は先週納車されて、今日初めてサーキットを走ったので、いろいろ設定が分からなくて、試しながらの走行だったのでヒート2で上がったんでしょうね。きちっと準備できていたらと思うと残念です」とは正直な心境だろう。
B2クラスはホンダFD2シビックの酒井利恭選手が優勝。「昨年も2回出て、いずれも勝っています。自分では納得いっていないですけど、もうちょっとタイムを縮めたかった。仕方ないかな? でも順位はうれしいです」と常勝ドライバーだからこそ、目指すところの高さをうかがわせた。
また、ホンダFITでB1クラス孤軍奮闘の牧田紗江香選手は、総合では16位。しかし、ヒート2でコンマ7秒のタイムアップを果たし、「ヒート1は失敗が多かったので、うまくまとめるように、自分では整えて走っていました。良かったです」と語っていた。
フォト/吉見幸夫 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部