全日本ジムカーナ開幕戦は若手ドライバーが躍進、BC3はクラス初出場の一色健太郎選手が制す
2023年3月29日
3月26日、栃木県茂木町のモビリティリゾートもてぎ南コースで、2023年全日本ジムカーナ選手権 第1戦「MOTEGI SUPER SLALOM 2023」が開催された。雨天決戦となったものの、ベストタイムが塗り替わる好勝負が繰り広げられた。
2023年JAF全日本ジムカーナ選手権 第1戦「MOTEGI SUPER SLALOM 2023」
開催日:2023年3月26日
開催地:モビリティリゾートもてぎ南コース(栃木県茂木町)
主催:SHAKE DOWN、ホンダモビリティランド株式会社、M.O.S.C.
JAFスピードB車両の導入や、クラス区分の再編成&クラス名称の変更、P/PN/AE車両に対するタイヤ規定の変更など、2023年の全日本ジムカーナ選手権は大きく変わる。昨年はJG1~11まで11クラスあったクラス区分が、今年はPE1~BC3までの9クラスとして編成された。
そのクラス名称は全日本ダートトライアル選手権と同様に、2020年まで使われていたPNやB、SCなど競技車両の分類に基づく名称に戻ることとなった。なお、今回はPE2クラス(自動変速機付の車両で2輪駆動のP・AE車両)の参加台数が規定台数に満たなかったため、全8クラスで争われることとなった。
決勝ヒートが行われた26日は前日からの雨が残り、ウェットコンディションでのスタート。早朝は小雨模様だったが、PN3クラスが走行する10時ごろから本降りに。午後から行われた第2ヒートも雨が降り続けるというコンディションだったが、多くのクラスがこのヘビーウェットの中でベストタイム更新ラッシュとなる展開となった。
そしてコースレイアウトは、広大な南コースの敷地に高速スラロームやターンセクションが配置される。全体的にハイスピード寄りのレイアウトながらも、ゴール前に設置された2か所のターンセクションがタイムに大きく影響した。また、第2ヒートはコースにたまった雨水による“川”が一部のセクションに出現。とくに水深が深かった第1コーナー付近では、ハイドロプレーニング現象によりスピンしてしまう車両が続出した。
PE1クラス
今シーズンから新たに「電気式駐車ブレーキが装着されたP・AE車両」によるPE1クラスは、出場予定だった山野哲也選手が、前週に行われたスーパー耐久でのアクシデントで怪我を負ったためにこの大会を欠場。全日本ジムカーナ選手権では通算22回のタイトルを獲得した”絶対王者”が不在の中、誰が勝ち上がってくるかが注目された。
第1ヒートでは、510馬力を誇るAWDのEV車両「テスラ・モデル3」を投入した深川敬暢選手を、0.5秒抑えたアルピーヌA110Sの大橋政哉選手がベストタイムをマーク。2番手に深川選手で、そこから1.777秒差の3番手には2リッターエンジンで421馬力を絞り出すメルセデスAMG A45Sを駆る角岡隆志選手がつける。
雨が強くなった第2ヒートは、第1ヒート5番手の牧野タイソン選手がポジションをひとつ上げてくるが、上位3台は軒並みタイムダウン。結果、第1ヒートのタイムで、20代最後のシーズンとなる大橋選手が全日本初優勝を飾った。
PN1クラス
1500cc未満のFF車(FIA/JAF公認またはJAF登録年が2018年1月1日以降)によるPN1クラス。事実上の新設クラスとなったこのクラスには、全日本ラリー選手権第2戦で話題を集めた18歳ドライバーの木内秀柾選手や、12回のチャンピオン獲得を誇る斉藤邦夫選手など、11名のドライバーが出場してきた。
第1ヒートはヤリスの朝山崇選手がベストタイムをマークしてトップに立つ。2番手には同じくヤリスの斉藤選手、3番手には注目の木内選手が僅差でつける。そして第2ヒートは、雨が強くなった状況にも関わらず、第1ヒートの自己タイムを更新してくるドライバーが増えた。
そんな中、第1ヒート3番手の木内選手がミスコースに終わってポジションアップならず。逆に第1ヒートはパイロンタッチに終わったMAZDA2の福田大輔選手が3番手に食い込んでくる。第1ヒートトップの朝山選手は、わずかにタイムダウンに終わるが、第1ヒートのタイムでトップのまま。
これで勝負あったかと思われたが、第1ヒート2番手の斉藤選手が第2ヒートで自己タイムを2.265秒縮め、朝山選手を0.396秒逆転。この第2ヒートの逆転劇で、斉藤選手が開幕戦優勝を果たした。
PN2クラス
PN2クラスは、昨年のJG8クラスと同様のクラス。2022年JG8クラスチャンピオンの小林規敏選手、ランキング2位の箕輪雄介選手は今シーズンも健在だが、同3位の小林キュウテン選手がBC2クラスへ、同4位の斉藤選手がPN1クラスへ移るなど、シリーズ上位陣に動きがあった。
第1ヒートは若手の小野圭一選手が、ベテランの川北忠選手を0.077秒かわしてトップに立つ。第2ヒートでは、川北選手が第1ヒートと同じく1分18秒台のタイムを刻んでくるものの、わずかにタイムダウンに終わり、第1ヒートのタイムで小野選手が全日本初優勝を飾る結果となった。
2位に川北選手、3位には昨シーズン川北選手とダブルエントリーで全日本選手権に挑んだ20代ドライバーの小倉輝選手が入った。小倉選手は、4輪脱輪を喫してクラス19番手に沈んだ第1ヒートから大きく挽回し、自身初となる3位表彰台をつかんだ。
PN3クラス
昨年のJG7クラスとJG6クラスが合体したPN3クラスは、31台がエントリーという大所帯となった。その中には昨年のJG7クラスを制したアバルト124スパイダーと、JG6クラスを制したロードスターRFに加え、クラスの中では最多エントリーとなるGR86/BRZ勢、さらにスイフトスポーツやシビックなどのFF勢がどのような戦いを展開するかが大きな注目となった。
第1ヒートは若手の奥井優介選手のGR86が、昨年のJG7クラスを制した若林隼人選手の124スパイダーに0.915秒差をつけてベストタイムをマークし、トップに立つ。第2ヒートは、各ドライバーが自己タイムを上げてくるが、奥井選手が第1ヒートでマークしたタイムにはなかなか届かない状況が続く。
その奥井選手自身は、第2ヒートの1コーナーで激しくスピンアウトしてリタイアに終わり、第1ヒート3番手の大多和健人選手がベストタイムを0.127秒更新。昨年のJG7クラスを制した若林選手は5位、JG6クラスを制したユウ選手は3位に終わる中、昨年は2位5回という大多和選手がついに全日本初優勝を遂げた。
PN4クラス
昨年のJG5クラスに該当するPN4クラスは、第1ヒートで上本昌彦選手がベストタイムをマークするが、第2ヒートは折茂紀彦選手、松本敏選手、石原昌行選手といった第1ヒートをパイロンタッチで終えた選手たちが次々とベストタイムを更新。だが、第1ヒートを4輪脱輪で終えた昨年のJG5クラスチャンピオン茅野成樹選手が、クラス唯一となる1分15秒台のタイムをマークして開幕戦優勝を飾った。
BC1クラス
昨年のJG4クラスとJG3クラスが合体し、さらにJG2クラスのFF勢が加わったBC1クラス。SC車両とB車両の戦いだけではなく、シビックやCR-X勢と、インテグラやスイフトスポーツ勢がどのような戦いを展開するかが注目となった。
第1ヒートは若手の石澤一哉選手が、クラス唯一となる1分15秒台のタイムでトップに立つ。第2ヒートは石澤選手のタイムがターゲットとなる中、今年の春に大学を卒業して社会人1年目を迎える最上佳樹選手が、石澤選手のタイムを更新。
この20代ドライバーのタイムが後半ゼッケンに入っても更新されることはなく、昨年のJAFカップを制した最上選手が全日本初優勝。続く2位は石澤選手で、SC車両のシビックを投入した神里義嗣選手が第1ヒートのタイムで3位に入賞した。
BC2クラス
昨年のJG2クラスからSC車両のFF勢が抜け、B車両とSC車両のリア駆動車で構成されるBC2クラス。第1ヒートはJG2クラスで2連覇を達成している広瀬献選手が、スタート直後にボンネットが開いてしまうというアクシデントでリタイアに終わる。
すかさずトップタイムをマークしたのは若手の若林拳人選手。RX-7の葛西悠治選手が2番手につける。第2ヒートは、若林選手がさらにベストタイムを更新。両ヒートを制する走りで開幕戦優勝を飾った。葛西選手が2位、第1ヒートリタイアの広瀬選手が、雨が強くなった第2ヒートで挽回して3位を獲得した。
BC3クラス
昨年のJG1クラスに該当するBC3クラスは、JG8クラスから参入してきた一色健太郎選手が、ベテランの津川信次選手を0.528秒かわして第1ヒートのトップに立つ。1コーナー付近がプールのように雨水が溜まってきた第2ヒートは、その一色選手が第1ヒートと同じく1分14秒台のタイムをマークするものの、わずかにタイムダウン。
第1ヒート2番手の津川選手は1コーナーで激しくスピン。昨年のJG1クラスチャンピオンの菱井将文選手も「あれは無理や」と1コーナーでスピンという結果に終わり、第1ヒートを制した一色選手がBC3クラス参戦1戦目で、オーバーオール優勝を飾った。2位に津川選手、3位には第1ヒートでミスコースに終わった大橋渡選手が入賞した。
フォト/CINQ、小竹充 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部
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