全日本/ジュニアカート選手権が神戸で開幕。FS-125JAF部門を始め、各部門で2レースずつの熱闘が繰り広げられた!
2023年4月17日

2023年の全日本カート選手権が兵庫県神戸市の神戸スポーツサーキットで開幕。FP-3部門では横山優之介選手(SPS川口)が第1戦でデビューウィンを果たし、酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)が第2戦を制した。また、FS-125JAF部門では第1戦で伊藤聖七選手(Formula Blue Ash)が、第2戦で中尾正義選手(Energy JAPAN)が勝利を飾った。
2023年JAF全日本カート選手権 FS-125JAF部門/FP-3部門 第1戦/第2戦
2023年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第1戦/第2戦
開催日:2023年4月8~9日
開催地:神戸スポーツサーキット(兵庫県神戸市)
主催:KSC
2023年の全日本カート選手権は、開催部門の編成やレースフォーマットに大きな変更があり、新たなスタイルに生まれ変わった。まず、従来のFS-125部門とFP-3部門は東西の地域分けがなくなった上で、FS-125部門が「FS-125CIK部門」と「FS-125JAF部門」のふたつに分けられ、FS-125JAF部門とFP-3部門で全国のサーキットを転戦する全5大会のシリーズ戦になった。
そのレースは両部門とも新たに、タイムトライアルに続いて予選ヒートと決勝をふたつずつ続けて行う1大会2レース制を採用。1セットのタイヤでこの2レースを戦い抜くため、とくにセミハイグリップタイヤを使用するFS-125JAF部門では、タイヤを最後まで持たせる技術も問われることとなる。
そんな新生・全日本カート選手権の記念すべき最初の大会となったのが今回の神戸大会だ。残念ながらどちらの部門も2022シリーズのトップ10ランカーの姿はゼロ。参加者が大きく入れ替わったフレッシュな顔ぶれとなった。
全日本カート選手権FP-3部門 第1戦/第2戦
今大会最多の12台が参加したのがFP-3部門だ。タイムトライアルではFP-Jr部門から上がってきた横山優之介選手がトップ、FP-Jr部門チャンピオンの酒井龍太郎選手が2番手、藤村太郎選手(Formula Blue HKC)をはさんで柳沼光太選手(ガレージC)が4番手と、関東からはるばる兵庫に遠征してきたドライバーたちがそろって速さを披露した。
第1戦では14歳のルーキー、横山選手がレースを圧倒する。予選、決勝ともスタート直後に酒井選手の先行を許した横山選手だったが、間もなくトップに戻ると、2番手以下を着実に引き離してフィニッシュ、堂々のデビューウィンを果たした。
横山選手の後方では酒井選手と柳沼選手の2番手争いが繰り広げられたが、酒井選手はエンジンの不調で中盤にこの戦いから脱落。柳沼選手が2位の座を得ることとなった。酒井選手は柳沼選手から大きな後れをとったが、なんとかゴールまでマシンを運んで3位表彰台を手に入れた。



横山選手優位で推移してきた状況は、第2戦の予選で変化を見せた。酒井選手が最終ラップの最終コーナーで一閃、横山選手をパスしてトップでゴールし、決勝のポールを獲得したのだ。そして迎えた第2戦の決勝は、白熱の好バトルとなった。
まずトップのまま発進したのが酒井選手。すると4周目、横山選手が先頭の座を奪う。両者の戦いに柳沼選手も割って入り、中盤にはラップリーダーに躍り出た。イーブンのスピードで接戦を展開する3台に4番手以下も続き、岩崎壮一郎選手(Energy JAPAN)、植原愛月選手(HIGUCHI RACING TEAM)、山代諭和選手(quaranta sei YRT with GEMINI)もトップグループに加わって6台一列のラップが展開された。
中盤以降のラップをほとんど先頭で終了したのが酒井選手。しかし残り3周、柳沼選手が満を持してトップを奪う。すると翌周、酒井選手が180度ターンの2コーナーで逆襲。柳沼選手はその立ち上がりで失速して横山選手の先行を許してしまう。これでいくらか楽になった酒井選手は、0.3秒強のリードでフィニッシュラインを通過し、第1戦の悔しさを晴らすステップアップ1勝目を挙げた。
2位は横山選手、3位は柳沼選手。この日の表彰台は、すべて関東勢に占められた。次回、新東京サーキットでの第3戦/第4戦は、酒井選手がFIAカーティングアカデミートロフィーとの日程重複で欠場するため、ライバルたちは必勝を期してくるはずだ。



全日本カート選手権FS-125JAF部門 第1戦/第2戦
FS-125がふたつの部門に分かれたのは前述の通りだが、FS-125CIK部門のワンメイクエンジンがイアメ・パリラX30エンジンのシニア仕様であるのに対して、FS-125JAF部門は排気規制(排気ソケット)で8psほどパワーを抑えたX30エンジンのジュニア仕様を使用する。
その参加は7台に留まったが、2022年FP-3部門王者の春日龍之介選手(Formula Blue SPS川口)、FP-Jr部門で酒井選手と激烈なチャンピオン争いを繰り広げた伊藤選手、2019年FP-Jr Cadets部門王者の松本琉輝斗選手(HRS JAPAN)、そして速さが光る女性ドライバーの佐藤こころ選手(チームナガオ)と白石いつも選手(HRS JAPAN)と、注目株が顔をそろえた。
そんな中で一頭地を抜くスピードを披露したのが、FS-125カテゴリー初レースの14歳、中尾正義選手だった。中尾選手はタイムトライアルで2番手の福岡主税選手(EHRE MOTOR SPORTS)に0.2秒もの大差をつけてトップを奪うと、第1戦の予選ではスタート直後からの独走で悠々と決勝のポールを手に入れた。
だが、22周の決勝でレースの神様は中尾選手からそっぽを向いた。オープニングラップを先頭で終えたのは、3番グリッドの伊藤選手。タイムトライアル6番手からの大躍進だ。中尾選手は2周目に松本選手と福岡選手にも先行を許し、表彰台圏外の4番手に後退してしまった。キャブレターのリード弁が割れていることに中尾選手が気づいたときには、もう手遅れだった。
伊藤選手は背後のバトルに乗じて1秒強のリードを築き、ひとりトップを疾走していった。ところが、間もなくその間隔が詰まり始め、10周目には松本選手と福岡選手が伊藤選手の背中を捕らえた。それでも伊藤選手は踏ん張りを見せ、後続の逆襲を許さない。
残り4周、福岡選手が松本選手の前に出たところで、伊藤選手の後ろに再び0.5秒ほどのギャップができた。粘りの走りを演じた伊藤選手の逃げ切りだ。伊藤選手は右手を挙げてデビューウィンのチェッカーをくぐった。福岡選手は、昨年3位を得たゲンのいい神戸大会で2位フィニッシュ。僅差で松本選手と中尾選手の順でチェッカーをくぐった。



午後の第2戦は、中尾選手の独壇場だった。予選でライバルたちを圧倒して再び決勝ポールとなった中尾選手は、決勝の1周目で0.5秒以上のリードを築き、最初の5周で実に2.5秒も後続を突き放してみせた。ホームコースで圧巻のスピードを披露した中尾選手は、最終的に2番手以下を5秒以上も突き放し、第1戦の屈辱を払拭する1勝を遂げた。第3戦以降の参戦は未定とのことだが、東日本のサーキットでも中尾選手の走りをぜひ見てみたいものだ。
2番グリッドから決勝をスタートした佐藤選手は、初体験の125ccレースとグリップが上がった新路面に体が悲鳴を上げ、序盤で大きくポジションダウン。伊藤選手が4台一列のセカンドグループの戦いを制して2位に、松本選手が2戦連続の3位になった。



2023年のジュニアカート選手権は、全日本カート選手権FS-125JAF部門/FP-3部門との同時開催で全5大会のシリーズが行われる。その部門名は、昨年のFP-Jr部門がジュニア部門に、FP-Jr Cadets部門がジュニアカデット部門に変更。エンジンは2022年同様のヤマハKT100SECながら、デリバリー制が廃止されて各自所有のエンジンを積むこととなった。
さらにレースフォーマットも一新。タイムトライアルに続いて行われる予選ヒートの結果をスターティンググリッドとして、決勝を2レース行う形になった。全日本選手権と同じ2レース制で、この大会では第1戦と第2戦が行われた。
ジュニアカート選手権ジュニア部門 第1戦/第2戦
ジュニア部門では地元ドライバーの中西凜音選手(Energy JAPAN)が緊迫の接戦を制して2連勝を果たした。第1戦では石田馳知選手(SUPERCREW’S with ZEAL・WM)がポールの中西選手の背中に貼りつき、序盤には先頭を奪う場面も披露。だが、中西選手はすぐトップに戻ると、以降は石田選手の逆転を許すことなく走り切って初優勝を達成した。



第2戦では石田選手に加えて村田鉄麿選手(Ash)も中西選手に追いすがり、優勝争いは3台一丸の展開に。今度は石田選手がたびたび中西選手の前に出る展開となったが、中西選手はラスト5周のトップをきっちりキープしてフィニッシュ、見事2連勝を遂げた。



ジュニアカート選手権ジュニアカデット部門 第1戦/第2戦
ジュニアカデット部門では2022シリーズ4位の元田心絆選手(APSPEED with SOVLA)が飛躍のレースを演じた。元田選手は、まず予選で佐藤天斗選手(TIGRE)の追い上げを凌いでふたつの決勝のポールを獲得すると、第1戦も第2戦も序盤から独走。昨年、いっしょに勝利を競い合ったライバルたちが抜けたレースで、一日を通じて一度もトップの座を譲ることなく走り切り、パーフェクトウィンで2連勝を達成した。
2位は両レースとも佐藤選手。3位は、第1戦では中野遼選手(チームナガオ)のものに、第2戦では林樹生選手(APSPEED with SOVLA)のものになった。






フォト/JAPANKART、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部