四国ジムカーナ第2戦、後輪駆動対決となったPNクラスは徳永秀典選手が二連勝!

レポート ジムカーナ

2023年5月9日

徳島県吉野川市に建つ徳島カートランドは、ダイナミックな勾配があるストレートと、目まぐるしく変わる路面が特徴の、山を切り開くように作られたコース。2023年JAF四国ジムカーナ選手権、第2戦がここで競われた。

2023年JAF四国ジムカーナ選手権 第2戦
2023年JMRC全国オールスター選抜ジムカーナ第2戦
’23 TECテクニカルジムカーナ

開催日:2023年4月30日
開催地:徳島カートランド(徳島県吉野川市)
主催:TEC

 四国地区のJAF地方選手権では、ロングライフのタイヤで参戦コストを抑えてジムカーナを競うことができる、R部門を組み込んでいる。そして、2023シーズンは日本ジムカーナ選手権規定に合わせて、PNクラスを除く全てのクラスにB車両規定を導入した。

「なにせ四国はジムカーナ人口が少ないので、やっている人たちが辞めないようにしないといけないので、規定もそれに合わせて皆で楽しめるようにしたいですね」とはJMRC四国ジムカーナ部会長の徳永秀典選手。

 しかも、PNは二輪駆動車を一括で対象とすることで、より参加台数を増やし、競う楽しさを創出している。徳永選手は「実際に走ってみるとND5型ロードスターもGR86もそんなにタイム差がないんですよね。四国のサーキットだと逆にロードスターの方が速いサーキットも多いくらいです」と語ってくれた。

2023シーズンのクラス区分について語ってくれたJMRC四国ジムカーナ部会の徳永秀典部会長。PNクラスで卓越したテクニックも見せる“走る部会長”だ。

 そんな今シーズンのJAF四国ジムカーナ選手権は瀬戸内海サーキット、徳島カートランド、ハイランドパークみかわジムカーナコース、モーターランドたぢかわ、という4つの会場で全7戦に渡って争われ、第2戦は徳島カートランドが舞台。ドリフトでも人気のコースとなっているため、数年前に路面改修が行われ、舗装の新旧で大きくグリップが変化する。また、元々が山場だっただけに勾配を活かしたコーナーもあり、長いストレートが取りづらいためにテクニカル重視のセットアップが求められる。

 第2戦のコース設定を担当したのは主催したトータルエクセレンスクラブ(TEC)の渡辺浩史氏。「ポイントは気持ちよく走ってもらえるようなコースを作りました。地区戦ということもありテクニカルは厳しくしてみたり、ガードレールギリギリを攻めるようなセクションも作ってみました。また、コースに慣れ過ぎてる人対策も施しました」とのことだ。エントラントからは下りのS字がスリリングだ、という声もあがっていた。

 残念ながらR1とATは参戦台数が規定を満たさず不成立となってしまったが、全40台の精鋭が集う一戦となった。

徳島カートランドの隅々まで使ったコースレイアウト。ハイスピードなS字やフィニッシュ直前のパイロンセクションなど、「'23 TECテクニカルジムカーナ」の名のとおり高速から低速まで、多彩なテクニックが求められるレイアウトを渡辺浩史氏が設定した。

R2クラス

 2023 JMRC四国ジムカーナ競技会共通規則で定められたタイヤを履いて競うR部門。その中でも排気量1500㏄を超える前輪駆動のB車両で争われるのがこのR2だ。CR-Xやシビック、インテグラのホンダ車と、スズキ・スイフトスポーツが競うこのクラス。第1戦の優勝はEF8型CR-Xを操る土居清明選手。63歳のベテランが先勝を挙げ、第2戦を迎えた。

 1本目は明け方まで降り続いた雨が路面に残るダンプコンディション。オフィシャルの懸命な作業で大きな水たまりは少なくなったものの、まだまだライン上にはウォーターパッチが残っている状況だ。そんな中でトップタイムをマークしたのはEG型シビックを駆る地元のジュウガワ貴行選手。しかし、1秒以内に3台がひしめく接戦となった。2本目には路面はほぼドライになり、この1本が勝負の予感がコースを覆い尽くす。

 しかし、路面グリップの急激な変化もあり、多くのドライバーがパイロンペナルティで勝負権を失っていく。誰もジュウガワ選手の1本目タイムを更新できないまま、クラス最終ゼッケンの土居選手がスタートした。

「1本目は大分路面を探ってしまった上に、テクニカルセクションで大失敗をしてしまったので2本目は絶対タイムが上がるはずと信じて行きました」という土居選手。その言葉のとおり、最初のS字から高いスピードでしっかりと攻め切って見せる。最後のテクニカルセクションも、1本目よりも大きくステアリングを切ってしっかりと回り込み、クラスで唯一タイムアップに成功した土居選手が逆転優勝を飾った。

「しっかりグリップ感がありました。後半セクションでサイドターンが厳しいかなぁ~!? と思ってターンセクションに入っていったんですけど、思いっきりサイドを引いてしっかり巻くことができました。ちょっと回し過ぎた感じもありますが(笑)」と開幕二連勝の喜びを語ってくれた。

R2クラスは2020シーズンをはじめ、四国で幾度もチャンピオンを獲得している土居清明選手(SPEC-DポテンザΩCR-X)が開幕二連勝を達成。2本目のミスコースで5位に甘んじた、2022シーズンの雪辱も果たした。
R2の上位3選手。右から優勝した土居選手、2位のジュウガワ貴行選手(YHクスコMOTIVEシビック)、3位獲得の菊地慎一郎選手(Rスポーツ・インテグラBS)。

R3クラス

 排気量1150ccを超える後輪駆動のB車両が集うR3クラス。この一戦最多タイの10台を集めたクラスをリードしているのは、ロータス・エキシージをドライブする山﨑聡一選手。2022シーズンもこの一戦を制している山﨑選手を上回るタイムを、誰が出せるかにも注目が集まった。

 徳島カートランドはライトウエートスポーツカーのエキシージに有利なコースといえる。これに待ったをかけようと気合が入ったのはここで開催される、ワコーズMOTIVEジムカーナ ビギナーズCUP出身の地元勢。特に気を吐いたのは青いホンダS2000を駆り、2018シーズンから連覇を続けている仙波秀剛選手だ。

 しかし、山﨑選手はR2が走り終わり、徐々にライン上が乾いてきてはいるものの、まだ十分ドライとはいえない路面状況の1本目で、クラス唯一となる1分26秒台に突入。このコースをホームとしている仙波選手に対し1秒近いタイムギャップで突き放す。

 それでも勝負は2本目。先に出走する仙波選手が自身の1本目でタイムを落としていたラインを修正。大きくタイムを上げて、山﨑選手を0.726秒上回る暫定トップタイムをマークした。このタイムを聞いて出走した山﨑選手は中間で仙波選手を0.138秒上回ってくる。しかし、最終ターンセクションでまさかのミス……。このミスが原因で、仙波選手に0.318秒届かず。「もっと練習してS2000に負けないように頑張ります」とは2位に終わった山﨑選手。

 見事、ホームコースで優勝を飾った仙波選手は「1本目、慣熟歩行のときから歩いているところが悪くて、それをきちんと修正できたのが良かったですね。2本目の最後のターンはちょっと失敗しましたけど、車速を落とさずに回れたので良かったです。今シーズンもチャンピオンを獲れるように頑張りたいですね」と自身の走りを振り返った。

R3の仙波秀剛選手(YHポリバケツブルーS2000)は2本目勝負となったホームコースでの一戦で見事な逆転優勝を果たし、ディフェンディングチャンピオンの力を見せた。
R3の上位5選手。右から優勝の仙波選手、2位の山﨑聡一選手(SPEC-DLオメガEXIGE)、3位は高芝大輔選手(BS・CP55・NSX)、4位は土居明生選手(BSP-DAE, Ωロードスター)、5位の北上宰選手(カントリーガレージMOGS86)と、異なる車種を操る5選手となった。

R4クラス

 そしてジャイアントキリングが起こったのは、1500ccを超える四輪駆動のB車両とPN車両が対象のR4クラス。昨シーズンのチャンピオン、山下和実選手を筆頭にベテランたちの活躍が目立つこのクラスで、三菱・ランサーエボリューション勢に対して、スバル・インプレッサWRX STIで戦いを挑む瀧本恭之選手が気を吐いた。

 難しい路面コンディションだった1本目はランサー勢の西原貴志選手がトップで折り返す。瀧本選手は中間で1秒近く遅れをとっていた1本目に対し、2本目で大きくタイムアップを果たす。「1本目は前半セクションで気持ちよく走れると思ってつまってしまったところをしっかり修正しました」と瀧本選手は西原選手を0.742秒上回るタイムでトップに躍り出た。

 そしてクラス最終ゼッケンの山下選手。しかし、このタイムを聞いて気負ってしまったのか、山下選手は最初の高速S字で痛恨のスピン。大きくタイムを落としてしまい、瀧本選手がシリーズ初優勝を果たした。

「ランサーが強いので、ランサーをぎゃふんと言わせるために(インプレッサで)頑張っています(笑)。おじさん達にいじめられ続けてきましたが、ようやく勝つことができました(笑)」と瀧本選手は喜びをあらわにした。

4WDターボ車が競うR4で、GDB型インプレッサで奮闘する若手、瀧本恭之選手(YHモーティブインプレッサ)がベテラン勢を抑えて念願のシリーズ初優勝。第1戦の3位に続き、トップ3に入った。
R4の上位3選手。(右から)優勝した瀧本選手、2位の西原貴志選手(R☆にしはランサー)、3位の山下和実選手(SMCランサーエボ6)。

BSC1クラス

 二輪駆動のB・SC・AE車両で争われるBSC1は、R2でも活躍しているインテグラが中心。昨シーズンの西日本ジムカーナフェスティバルで総合トップタイムを叩き出した、窪田竜三選手がひとつ上の速さを1本目から見せつけてトップタイムをマーク。路面が好転した2本目も、窪田選手の1本目のタイムを誰一人抜くことはできない。その窪田選手の2本目は、1本目からさらに1.5秒近く上げて圧勝した。

「2本目は路面が良くなると思い、ドライ路面用のタイヤでいったので、しっかりタイムアップできて良かったですね。フロントタイヤの入りも良くって安定してくれました。最後のターンもしっかり回せたのが良かったですね。いつも2位だったので、今年は地区戦で2019年ぶりのチャンピオンを目指したいですね。今年は全日本にもチャレンジしていきたいと思っています」と窪田選手は2本目の走りを振り返った。

BSC1では窪田竜三選手(ダンロップ☆RSK☆インテグラ)が圧巻の走りで、昨シーズンの西日本ジムカーナフェスティバルから三連勝。2020シーズンから続く、3シーズン連続ランキング2位を覆すチャンピオン獲得に向けて前進した。
BSC1の上位3選手。右から優勝した窪田選手、2位の右城義文選手(DL SPEC-Dインテグラ)、3位はラリーやダートトライアルにも参戦するベテラン、竹下俊博選手(ダンロップ BRIGシビック)。

PNクラス

 四国地区のPNは参戦台数を保持するために排気量などで細分化することなく、二輪駆動のPN車両は全て1クラスに集約している。その規則の影響もあったか、この一戦ではR3と並ぶ、最多タイの10台によって競われた。

 昨シーズンのチャンピオン、一色健太郎選手は全日本に集中するため、今シーズンは地区戦への参戦は見送り。ともにND5型マツダ・ロードスターを駆る昨シーズンのランキング2位、金森峰史選手とランキング3位の鎗内良壮選手の争いに期待がかかる。

 しかし、1本目のトップタイムを奪ったのは、第1戦で優勝を飾った“走る部会長”新型スバルBRZを操る徳永選手だ。手狭なコースが多い四国では、BRZの大きなボディは諸刃の剣。ありあまるパワーを発揮しないまま終わってしまうコースもある。互いにストロングポイントが異なる車両の争いで、徳島カートランドを得意とする徳永選手が先手をとった。1本目から最終セクションでも手堅いターンでまとめた。

 2本目、肌寒さを感じるほど気温が下がりはじめ、路面温度も少し低下してタイムアップが微妙なコンディションに……。この状況でも気を吐いたのは、1本目4番手の鎗内選手だった。

「1本目やりすぎたところを是正しようとアタックしました。特に最初のS字とターンセクションをしっかり回すことを心がけたんでタイムアップできました」と語った鎗内選手は、中間タイムでも徳永選手を0.256秒上回る勢いで最終セクションへ突入。しっかりとターンも回し切り徳永選手の1本目のタイムを0.523秒上回ってターゲットタイムを更新する。

 このタイムを聞いて焦ったのは徳永選手。「第1戦は1本目ぶっちぎりで2本目に追いつかれそうになって……。第2戦は1本目ぶっちぎって2本目逆転されて……。絶対に抜かさないかん!」と気合を入れてスタートした。

 しかし、序盤の2本パイロンを巻くセクションでサイドターンを引いたときにリアがわずかに出すぎてしまった徳永選手。タイムアップは難しいかと思われたが、その後のセクションを絶妙なスピードで駆け抜ける。そして最終ターンセクションを見事に決めてフィニッシュ。終わってみれば、2位の鎗内選手を1秒近く引き離す大差での優勝を飾った。

 徳永選手は「1本目は結構走ったことのあるコースなんでいける、という自信はあったんですが、まだ路面が乾いていないところもあり滑りましたね。でも、試走の田中(康一)選手の目標タイムに届かなかったのが残念ですね。満点チャンピオンは難しいと思いますが、シリーズチャンピオンをまた目指して頑張ります」と今シーズンの目標を掲げてくれた。

コンパクトで旋回性能に優れるND5型マツダ・ロードスターが多いPNクラスに、新型スバルBRZを投入してR3から復帰した徳永秀典選手(TKM56BSMTV乱人BRZ)。パワーで優り大柄なBRZを巧みに操り開幕二連勝を達成、2021シーズン以来のチャンピオンを狙い好発進した。
PNの上位5選手。右から優勝した徳永選手、2位の鎗内良壮選手(BS55レイズWmロードスター)、3位の内田憲作選手(MOTIVEクスコロードスター)、4位の金森峰史選手(MOTIVE ROADSTER)、5位の西村修一選手(スペDテック☆嫁ロードスター犬)と、2位以下はロードスター使いが占めた。

 この一戦を終えて、主催したTEC会長の佐藤忍氏は「無事に終わって良かったですね。各クラスで2本目ベストタイム更新があって、抜きつ抜かれつの白熱の戦いが見れたのも良かったです。天気もなんとか持ってくれたのも助かりました。四国はオフィシャルもエントラントも皆仲良く楽しくやってるので、距離が近くて楽しい運営をできたのも良かったですね」とまとめてくれた。

 次戦、第3戦は5月28日、ヒルクライムの開催でも知られる高知県大豊町に建つ、モーターランドたぢかわに舞台を移して開催される。

排気量1150cc以下の後輪駆動および、排気量1500cc以下の前輪駆動と四輪駆動のB車両が対象のR1クラスは、ホンダS660を駆る小森敦文選手(アウルSMC S660)が参戦した。
地方選手権がかからず、オートマチックやCVTを搭載するB車両が対象のATでは、徳島工業短期大学で教諭を務めているという鎌田孝選手(徳島工業短期大学ボミープリウス)がトヨタ・プリウスで制圧した。
ATに参戦した選手たち。右から優勝した鎌田選手、2位の小松信之選手(ワークスおざきSMCi)。
CL1を制した梶原隆成選手(SMCランサーエボ10)はこの完走で国内Bライセンスを取得し、ステップアップを公言!
CL1に参戦した選手たち。右から優勝の梶原選手、2位は女性ドライバーの菊地結祈音選手(三菱勤務の86娘)。
最後にこの一戦を総括してくれた、主催したトータルエクセレンスクラブ(TEC)の会長を務める佐藤忍氏。
この一戦を主催した、TECのクラブ員のみなさん。おつかれさまでした!

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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