関東の新鋭・鶴岡義広選手がPN2クラスで全日本初優勝の快挙!

レポート ダートトライアル

2023年5月10日

2023年全日本ダートトライアル選手権 第3戦「DIRT-TRIAL in NASU」が、4月29~30日に栃木県那須塩原市の丸和オートランド那須を舞台に開催された。第2戦として予定されていた恋の浦ラウンドが、昨年末のスピードパーク恋の浦閉鎖に伴い中止となったため、この第3戦が実質的な2戦目となる。

2023年JAF全日本ダートトライアル選手権 第3戦「DIRT-TRIAL in NASU」
開催日:2023年4月29~30日
開催地:丸和オートランド那須(栃木県那須塩原市)
主催:FSC、M.S.C.うめぐみ、Team-F

 開幕戦から1か月以上のインターバルで開催されたこの第3戦には、全クラス合わせて156台がエントリーリストに名を連ねた。また、大会はゴールデンウィークということもあり、決勝日は雨天にもかかわらず多くの観客が来場。コースを囲む土手の上に設けられた観戦エリアから、各クラスで繰り広げられる0.01秒を争う熱戦に声援が送られた。

 決勝前日の土曜日に行われた公開練習は好天に恵まれたものの、決勝当日は朝から小雨が降り注ぐウェットコンディション。第1ヒートが終わるころには雨が上がり、一時陽が差す時間帯もあったが、PN3クラスが走行するころには気温が下がり、路面温度も低温状態に。

 路面整備がしっかりと施され、レコードラインは小雨が降る午前中も固く締まった状態が維持されていたことに加え、ターマック路面の区間もあるため、ウェット路面用タイヤとドライ路面用タイヤのどちらを選択するか、出走寸前まで頭を悩ませるドライバーが多かった。

第1ヒートはウェット路面だったが、第2ヒートになると路面も乾き始め、各クラスとも2本目勝負の様相となった第3戦。
ゴールデンウィーク中ということもあって、多くのギャラリーが会場に詰めかけた。ダートラを体感できる同乗走行会も好評を博した。
第2ヒートのPN3クラスとNクラスの合間にはコース整備が実施される。コースのうねりがある部分がフラットになった。
コースレイアウトは、前半にいくつかタイトコーナーが設定されてはいるものの、全体的にハイスピード。各クラスで僅差の勝負が展開された。

PN2クラス

 昨年のJAFカップを制した鶴岡義広選手が、第1ヒートでクラス唯一となる1分58秒台のタイムをマークし、トップに立ったPN2クラス。第2ヒートになると各選手ともベストタイム更新ラッシュとなったが、鶴岡選手は2位以下を1秒以上引き離すタイムでベストタイムを更新。

 唯一、1分53秒台を記録した鶴岡選手がそのまま逃げ切り、うれしい全日本初優勝を飾った。2位は第1ヒートでも2番手につけた中島孝恭選手が入賞。3位には、第1ヒート7番手から追い上げた北海道の山田将崇選手が入賞した。

PN2クラス優勝は鶴岡義広選手(S・DL・クスコ・WMスイフト)。
両親や夫人など家族ぐるみで応援を受けながら競技に臨んだ鶴岡選手。その期待に応え、初優勝の瞬間はパルクフェルメが祝福ムードに包まれた。
2位は中島孝恭選手(DLルブロスTEIN☆スイフト)、3位は山田将崇選手(AIG☆TS-S☆DLスイフト)。
PN2クラス表彰の各選手。

Dクラス

 Dクラスの第1ヒートは、鎌田卓麻選手と谷田川敏幸選手との4WD仕様のBRZが、3番手以降を2秒以上引き離す1分44秒台の攻防を見せた。第2ヒートは、路面コンディションとSC2クラスの戦いを見て、出走前に「1分39秒台の戦いになると思う。もし、1分38秒台の選手が出てくると……」と読んでいた鎌田選手だが、その心配が的中してしまう展開となった。

 第2ヒート、前半のハイスピード区間を攻めきった谷田川選手が、後半セクションもしっかりとまとめ、クラス唯一となる1分38秒台のタイムをマーク。2位以下を1.5秒近く引き離し、待望の今季初優勝を飾った。1分39秒台の攻防となった2位争いは、1分39秒767の炭山裕矢選手が獲得。炭山選手から0.078秒差で亀山晃選手が3位、亀山選手から0.035秒差で鎌田選手が4位と、2位の炭山選手から4位の鎌田選手までが0.113秒差という僅差の勝負となった。

Dクラス優勝は谷田川敏幸選手(トラストADVANクスコBRZ)。
谷田川選手は第2ヒートで1分38秒台の驚愕タイムをたたき出し、2位に約1.5秒も引き離すぶっちぎりのタイムで勝利した。
2位は炭山裕矢選手(ZEALbyTSDLミラージュ)、3位は亀山晃選手(ベストDLランサーDS1)。
Dクラスの表彰式。左から4位の鎌田卓麻選手、2位の炭山選手、1位の谷田川選手、3位の亀山選手、5位の河内渉選手。

PNE1クラス

 先頭ゼッケンの葛西キャサリン伸彦選手がいきなり1分54秒587のタイムをたたき出し、トップに立ったPNE1クラス。この葛西選手がマークしたタイムは、結果的にPN車両全クラスでの第1ヒートオーバーオールとなり、2番手以降を大きく引き離す。第2ヒートに入っても、葛西選手が第1ヒートでマークしたタイムを更新する選手はなかなか現れず、第2ヒートのタイヤ選択に悩んだ葛西選手自身もタイムダウンに終わる展開に。

 このまま葛西選手が逃げ切るかと思われたが、クラス最終ゼッケンのノワールシゲオ選手が、第1ヒートの自己タイムを約4秒詰める走りで、葛西選手のタイムを0.021秒更新。開幕戦に続き、ノワールシゲオ選手が逆転勝利で開幕2連勝を飾った。2位に葛西選手、3位には第2ヒートでポジションをひとつ上げた鈴木正人選手が入賞した。

PNE1クラス優勝はノワールシゲオ選手(ADS☆VTX☆DL☆スイフト)。
2022年王者の威厳を見せたノワールシゲオ選手は、第1ヒートの4秒差をひっくり返して優勝を獲得。
2位は葛西キャサリン伸彦選手(YHGC ATSスイフトRSK)、3位は鈴木正人選手(スマッシュSRP33スイフト)。
PNE1クラス表彰の各選手。

PN1クラス

 PN1クラスは、2021年チャンピオンの太田智喜選手がベストタイムをマークし、第1ヒートのトップに立つ。雨が止んだ第2ヒートはベストタイム更新ラッシュとなる中、徳山優斗選手が太田選手のタイムを0.87秒更新してトップを奪還。

 2022年チャンピオンの工藤清美選手は、徳山選手から1.394秒差の3位に終わる。雨の第1ヒートはドライ路面用タイヤ、雨が止んだ第2ヒートはウェット路面用タイヤという、路面の荒れ方にタイヤ選択を合わせた徳山選手、「天候ではなく、路面状況でタイヤを選択しました」と、今季初優勝を飾った。

PN1クラス優勝は徳山優斗選手(ADVANオクヤマFTヤリス)。
1本目はドライ、2本目はウェットという丸和独特の路面に対応する逆張りタイヤチョイスで勝利の徳山選手。オクヤマの奥山正社長と歓喜の握手。
2位は太田智喜選手(DLMotysクスコS+デミオ)、3位は工藤清美選手(工藤ホンダDLワコーズフィット)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の児島泰選手、2位の太田選手、1位の徳山選手、3位の工藤選手、5位の川島秀樹選手、6位の川島靖史選手。

PN3クラス

 開幕戦2位の浦上真選手が第1ヒートでトップに立ち、0.641秒差でAT車両の小関高幸選手が2番手につけたPN3クラス。この2台が1分59秒台で、3番手の和泉泰至選手は2分1秒台で、浦上選手と小関選手が後続を大きく引き離す展開となった。

 だが、第2ヒートは小関選手が3位表彰台を獲得するものの、浦上選手と和泉選手は大きくポジションを落とす結果に。優勝は、「第1ヒートで悪かったところを、しっかりと修正して走ることができました」という竹本幸広選手が獲得。開幕戦に続き2連勝を飾った。2位には、旧型86で奮闘するパッション崎山選手が入賞した。

PN3クラス優勝は竹本幸広選手(FKS・YH・KYB・GR86)。
開口一番「緊張しました」と言う竹本選手は開幕2連勝を達成。勝利へのプレッシャーから解放されて満面の笑顔を見せた。
2位はパッション崎山選手(DL☆LOVCA☆RR86PS)、3位は小関高幸選手(DL・KIT・BRZ-AT)。
PN3クラスの表彰式。左から4位の森戸亮生選手、2位の崎山選手、1位の竹本選手、3位の小関選手、5位の上野倫広選手、6位の湯本敬選手。

Nクラス

 岸山信之選手が第1ヒートを制したNクラスは、第2ヒートで宝田ケンシロー選手がベストタイムを更新。第1ヒートは前走車のサイドステップがコース後半のレコードラインに落下したために再出走となり、その再出走では「クルマがオーバーヒート状態になり、まともに走れる状況ではなかった」と途中でアタックをあきらめリタイアとなった宝田選手だったが、第2ヒートの逆転劇で優勝。

 宝田選手自身にとってはGRヤリスに乗り換えて以降、初となる全日本優勝を飾った。2位には、宝田選手に0.089秒差まで迫った北條倫史選手が入賞、3位は第1ヒートトップの岸山選手が入賞した。

Nクラス優勝は宝田ケンシロー選手(YHオクヤマFT小松GRヤリス)。
これまで数々の優勝経験があるも、GRヤリスに乗り換えて初めての優勝となっ宝田選手。第2ヒートでしっかりと決めた。
2位は北條倫史選手(MJT☆DL☆NTランサーXP)、3位は岸山信之選手(BRIDE☆DL☆GRFヤリス)。
Nクラスの表彰式。左から4位の大橋邦彦選手、2位の北條選手、1位の宝田選手、3位の岸山選手(欠席)、5位の信田政晴選手(代理)、6位の影山浩一郎選手。

SA1クラス

 SA1クラスは、丸和を得意とする小山健一選手と稲葉幸嗣選手の関東勢が1分56秒台のタイムを刻み、後続を大きく引き離す展開。第2ヒートは、稲葉選手が土手にヒットしてリタイアとなる中、小山選手はベストタイムを1分50秒台まで引き上げてくる。だが、「大ヘアピンの進入で挙動が大きく乱れてしまって……」と、ゴール後に語る小山選手。

 その心配が的中し、後半セクションを冷静に攻めた佐藤卓也選手がベストタイムを更新。昨年のJAFカップを制した佐藤選手だが、全日本では2016年の切谷内ラウンド以来、7年ぶりとなる優勝を飾った。2位に古沢和夫選手、3位に河石潤選手が入賞し、第1ヒートトップの小山選手は4位までポジションを落とした。

SA1クラス優勝は佐藤卓也選手(DLΩKYBオクヤマ・スイフト)。
佐藤選手が優勝したことで、オクヤマからのサポートを受けるドライバーが3クラスを制した結果となる。
2位は古沢和夫選手(YHテイン☆セラメタミラージュ)、3位は河石潤選手(モンスタースポーツDLスイフト)。
SA1クラスの表彰式。左から4位の小山健一選手、2位の古沢選手、1位の佐藤選手、3位の河石選手、5位の志村雅紀選手。

SA2クラス

 九州期待の若手ドライバー、岡本泰成選手が第1ヒートでトップに立ったSA2クラス。第2ヒートも1分44秒台でベストタイムを更新してくるが、シードゼッケン勢がコンマ差で次々と岡本選手のタイムを塗り替える展開となった。

 まずは、開幕戦を制した浜孝佳選手が、岡本選手のタイムを0.115秒上回りトップに立つ。続く林軍市選手は1分43秒台に突入し、浜選手に0.923秒差をつけるトップに。そして荒井信介選手はトップの林選手に0.225秒届かず2番手。黒木陽介選手は浜選手のタイムを上回るものの、1分43秒台には届かず3番手。

 第1ヒートで0.033秒差の2番手だったクラスラストゼッケンの北村和浩選手は、コース途中でエンジントラブルが発生し、リタイアという結果に。昨年のJAFカップを制した林選手が、2020年以来3年ぶりとなる全日本優勝を果たした。

SA2クラス優勝は林軍市選手(YHクスコWMトラストランサー)。
「(優勝は)うれしいけど、北村さんとちゃんと勝負して勝ちたかった!」と語る林選手だが、久々の勝利によろこびをあらわにした。
2位は荒井信介選手(クスコADVANWMランサー)、3位は黒木陽介選手(MJT五十嵐クスコKDLヤリス)。
SA2クラスの表彰式。左から4位の浜孝佳選手、2位の荒井選手、1位の林選手、3位の黒木選手、5位の岡本泰成選手、6位の増村淳選手。

SC1クラス

 SC1クラスは、開幕戦を制した山崎迅人選手が両ヒートでベストタイムを奪う走りで完勝。2位には、第1ヒート3番手からひとつポジションをあげた深田賢一選手が入賞。3位には、第1ヒートは2番手につけるものの、第2ヒートは「後半セクションでミスしてしまった」という山下貴史選手が入賞した。

SC1クラス優勝は山崎迅人選手(YHマックスゲンシンミラージュ)。
トップ3ドライバーが集まって記念撮影。山崎選手は第2ヒートでコンマ7秒もタイム更新して貫禄の勝利となった。
2位は深田賢一選手(BFAベリティ摩摺セラシビック)、3位は山下貴史選手(YHセラメタμnagiFTO)。
SC1クラス表彰の各選手。

SC2クラス

 第1ヒートは杉尾泰之選手と亀田幸弘選手、吉村修選手、目黒亮選手の4台が0.01秒を競う僅差の攻防を見せたSC2クラス。第2ヒートに入ると、関東の熊川嘉則選手がマークしたベストタイムをシードゼッケン勢がなかなか抜けない状況が続いたが、第1ヒート6番手の上村智也選手が1分42秒台に突入し、ベストタイムを更新。

 第1ヒート3番手の吉村選手もタイムを1分42秒台に乗せてくるが、上村選手には0.059秒届かず。第2ヒートの逆転劇で、上村選手が開幕戦に続き2連勝を飾った。2位に吉村選手、3位に熊川選手が入賞した。

SC2クラス優勝は上村智也選手(ナナハitzzYHランサー)。
上位勢が僅差の勝負を繰り広げる中、上村選手が第2ヒートで逆転して見事優勝をつかんだ。
2位は吉村修選手(FORTECナビクDLランサー)、3位は熊川嘉則選手(ザッパーDLワコーズランサー)。
SC2クラスの表彰式。左から4位の亀田幸弘選手、2位の吉村選手、1位の上村選手、3位の熊川選手、5位の坂田一也選手、6位の杉尾泰之選手。

フォト/CINQ、大野洋介、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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