リタイアやペナルティ頻発で混戦となったFIA-F4開幕戦は、小林利徠斗選手と中村仁選手のTGR-DC RS勢が掌握

レポート レース

2023年5月15日

スーパーGTと併せて行われるFIA-F4地方選手権シリーズが、ゴールデンウィーク真っ只中の5月3~4日に富士スピードウェイで今シーズンの幕を開けた。現行車両ではラストシーズンとなるものの、9シーズン目を迎えてなお活況を呈している。今大会は史上最多となる46台がエントリーで、1台の予選落ちが出たほどだった。

2023年FIA-F4選手権シリーズ 第1戦/第2戦
(2023 SUPER GT Round.2内)

開催日:2023年5月3~4日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:株式会社GTアソシエイション、富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C

 予選は2組に分けて行われ、計測はそれぞれ20分間。ベストタイムがレース1、セカンドベストタイムがレース2のグリッドを決するのは従来どおり。青空の下、ほど良いコンディションの中、タイムアタックが繰り広げられた。

 A組でウォーミングアップの最中、いきなりトップに立ったのは小林利徠斗選手。昨年のランキングは6位ながら、第11戦で初優勝を飾るなど、右肩上がりのドライバーだ。そのままタイムを縮め続けて一度もトップを譲らず。ベストタイム、セカンドベストタイムともにトップで、まずは2戦ともフロントロー当確となった。

 ラストアタックで2番手につけたのは、昨年のJAF-F4(現フォーミュラ・ビート)のチャンピオン、佐藤樹選手。3番手はフランスF4帰りでルーキーの野村勇斗選手、そして4番手はチームを移籍して参戦の奥本隼士選手だった。ベストタイム、セカンドベストタイムはここまで同順位。

 B組もまた、ウォームアップ中の計測1周目から三井優介選手がトップ。昨年は3勝を挙げてランキング2位、今年の大本命と目されるドライバーもタイムを短縮し続けて、一度もトップを開け渡さなかった。2番手は昨年1勝を挙げてランキング5位だった中村仁選手で、古巣に返り咲いての参戦となる荒川麟選手が3番手。

 そしてスーパーFJ鈴鹿チャンピオンにして、同時に受講していたHRS(ホンダ・レーシング・スクール)鈴鹿Formulaクラスを主席で卒業し、スカラシップで参戦するルーキーの森山冬星選手が4番手だった。この4人もベストタイム、セカンドベストタイムとも同順位だったのは、果たして何かの偶然だろうか。

 結果、小林選手の方がタイムで三井選手を上回ったことから、アウト側グリッドにはA組のドライバーが並ぶこととなった。「富士ではスリップストリームを使ってタイムを出すのがセオリーですが、僕は単独で自分の走りだけに集中しました。2戦ともポールポジション(PP)が獲れて良かったです。クルマの状態もすごく良くて、昨日から今日に向けて少しアジャストしただけ。今年は自信を持ってシリーズチャンピオンを目指します」と小林選手。

小林利徠斗選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)が開幕大会の予選で好走を見せ、2戦ともにフロントローからの発進となった。

 第1戦はいきなり大波乱のスタートとなった。PPの小林選手が1コーナーへのホールショットを決めたのに対し、三井選手と中村選手が接触! ともにあえなくリタイアを喫したのだ。これで2番手に上がったのが佐藤選手。スタートにやや出遅れたことで、怪我の功名となった格好だ。さらに13コーナーでも多重クラッシュが発生。4台が早々に戦列を離れ、セーフティカー(SC)が導入される。

 ストップ車両の回収は早く、2周後にはリスタートが切られることに。その直後にもアクシデントが発生。1コーナーで佐藤選手のスリップストリームから抜け出し、アウトから迫った野村選手が接触し、コントロールを失った後、リタイアとなってしまう。その間にトップの小林選手はリードを広げ、ダメージのなかった佐藤選手も2番手をキープ。3番手には奥本選手が浮上し、12番手スタートながら1周目の混乱を、誰より巧みにかわしてきた大宮賢人選手が4番手につける。

 中盤にはトップの小林選手、2番手の佐藤選手とも単独走行になるも、9周目に佐藤選手にはドライビングスルーの指示が。リスタート直後の接触が理由だった。これで小林選手はさらにリードを広げるが、アクセルを緩める素振りは一切ない。

 対照的に激しさを増していたのが2番手争いだった。7周目に奥本選手を抜いていた大宮選手、さらに森山選手と佐野雄城選手を加えて4台で競われ、中でも勢いに満ちていたのが森山選手。10周目の1コーナーで奥本選手をかわし、さらに12周目の1コーナーでも大宮選手を抜いて2番手へ。

 その後方でのバトルはなおも続き、最終ラップの1コーナーで奥本選手が大宮選手に迫るが、ともにオーバーシュートで、その隙を佐野選手に捕えられてしまう。しかし、ダンロップコーナーで大宮選手、次いで奥本選手が佐野選手をかわし、最後のストレートでは1000分の33秒差ながら、奥本選手が前でゴール。

 その間に小林選手は悠々と逃げ切り、まず1勝をマーク。しかし、続いてゴールの森山選手は走路外追い越しのペナルティで10秒加算されて9位へ降格、さらに奥本選手に続いた大宮選手も他車を走路外に押し出したことで、やはり10秒加算のペナルティで15位に降格となっていた。その結果、2位は奥本選手、そして3位は佐野選手という結果に。

 上位陣ではひとりバトルなく走り抜いた小林選手は「17歳の僕が言うのも変ですけど、みんな走りが若過ぎる。昨年から思っていたんですけど、ついていけないというか、すごく派手な走りをする人が多くて。だから、そこは何かしら危険を伴うので、巻き込まれないことをずっと意識していました。これからも巻き込まれない力を重視していきたいです。まだ1勝ですけど、シリーズに向けてはいい出だしになりました」とレース後に語っていた。

 インディペンデントカップでは、クラス3番手からスタートを切った鳥羽豊選手がオーバーテイクの連続で逆転優勝。連覇に向けて幸先の良いスタートを切った。

第1戦優勝は小林選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)。
2位は奥本隼士選手(TGR-DC RS フィールド F4)、3位は佐野雄城選手(TGR-DC RS フィールド F4)。
第1戦の表彰式。左から暫定2位の森山冬星選手はペナルティで9位へ降格、1位の小林選手、暫定3位の奥本選手は2位に。
第1戦インディペンデントカップ優勝は鳥羽豊選手(HELM MOTORSPORTS F110)。
第1戦インディペンデントカップの表彰式。左から2位の仲尾恵史選手、1位の鳥羽選手、3位の今田信宏選手。

 第2戦もまた、いきなりSCが入ることとなった。1コーナーでは混乱なく、小林選手、三井選手、中村選手の順でクリアしていったが、ダンロップコーナーで多重クラッシュが発生。その中にはレース1でインディペンデントカップ優勝を飾った鳥羽選手も。実に5台が早々にリタイアとなった。

 SCの先導は4周に及び、リスタートを決めたのが三井選手だった。一方、小林選手は1コーナーでクロスをかけて再逆転を狙うも、2コーナーで痛恨のオーバーシュート。その間に中村選手が2番手に躍り出る。しばらくは3台で激しくトップを争っていたが、8周目を過ぎたあたりから三井選手が逃げ出し、やがて独走態勢へと持ち込んでいく。

 レース1をリタイアしていただけに、タイヤも残っていた三井選手は終盤にファステストラップを連発、完璧なレース運びと思われたのだが……。最終ラップに入って耳を疑うアナウンスが! なんと三井選手はSC再スタート違反のペナルティとして、ゴール後にタイム加算されるという。スタートライン前で、小林選手を抜いていたのが原因だ。

 トップでチェッカーを受けた三井選手ながら、40秒の加算で28位に降格。繰り上がって優勝は中村選手で、「結果に対してはうれしいですが、内容に対しては悔しい部分があります。リスタートも悪くはなかったんですが、自分がイン開けちゃったので入られて、という感じで。そこは自分の足りないところでした。複雑ですね。次の鈴鹿でトップ快走できるよう頑張ります」とは、偽らざる本音だったに違いない。2位は野村選手で、3位入賞の小林選手が第1大会をポイントリーダーとして終えた。

 インディペンデントカップでは、藤原誠選手がデビュー2戦目で初優勝。終盤は終始、植田正幸選手を背後に置くも、プレッシャーに屈することなく1000分の69秒差で逃げ切っていた。

第2戦優勝は中村仁選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)。
2位は野村勇斗選手(HFDP RACING TEAM)、3位は小林選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)。
第2戦表彰の各選手。
第2戦インディペンデントカップ優勝は藤原誠選手(B-MAX ENGINEERING)。
第2戦インディペンデントカップの表彰式。左から2位の植田正幸選手、1位の藤原選手、3位の仲尾選手。

フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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