第3戦を迎えた中部ダートトライアル選手権で若手たちが躍動、新風を吹き込む!!

レポート ダートトライアル

2023年5月23日

2023年中部ダートトライアル選手権の第3戦が、5月14日に福井県南越前町のオートパーク今庄で開催された。3月26日、石川県の輪島市門前モータースポーツ公園で開幕した中部地区戦は4月23日、愛知県豊田市の池の平ワンダーランドでの第2戦を経て、今庄に舞台を移しての開催。全8戦で競われる2023シーズンは、この3カ所が戦いの舞台となる。

2023年JAF中部ダートトライアル選手権 第3戦
2023年JMRC中部ダートトライアル選手権 第3戦
2023年JMRC全国オールスター選抜 第3戦
SHALETダートトライアル

開催日:2023年5月14日
開催地:オートパーク今庄(福井県南越前町)
主催:SHALET

 JAF全日本ダートトライアル選手権も開催される今庄には、今季最多の90台が集結。コース設定は、インフィールドの中速セクションから、今庄の醍醐味とも言えるギャラリーコーナーからバックストレートを駆け抜けるハイスピードセクション、そしてゴール手前のテクニカルセクションというレイアウトで争われた。

 当日は朝からあいにくの空模様で、雨が降りしきるなかゼッケン1番がスタート。その後は時折薄日が射すほど回復に向かうも再び雨が降り出し、第2ヒート中盤からは強い日差しが照りつけるという、変わりやすい天候のなかでの競技となる。それに伴い、刻々と変わる路面状況を、どこまで読み切れるかが重要な攻略要素になった。

島々を大きく回る前半から、外周を隅々まで駆け抜けるハイスピード区間、そしてフィニッシュ直前に小さな島を360度回る、低速から高速まで満遍なくテクニックが問われるレイアウトで競われた。

S1クラス

 この一戦最多の24台で競われたS1クラス。第1ヒートをトップで折り返したのは、ベテラン鳥居晴彦選手。2番手には石川純也選手、3番手に森大士選手が続くが、3選手ともに1分27秒台で、タイム差は鳥居選手と石川選手は0.17秒、石川選手と森選手にいたっては0.04秒差と、第1ヒートから僅差の戦いが繰り広げられる。

 第2ヒートで鳥居選手は1.03秒のタイムアップを果たすも、第1ヒートで大きく出遅れていた広上徹選手が鳥居選手のタイムを1.42秒更新しトップに躍り出る。さらに石川選手が広上選手のタイムを0.68秒更新、1分24秒47の好タイムを叩き出し再びトップが入れ替わる。

 逆転を狙いたい森選手は石川選手のタイムに0.69秒及ばず3番手止まり。ラストゼッケン、ディフェンディングチャンピオンの横内由充選手は第1ヒート8番手から追い上げるも4番手タイムとなり、石川選手が逆転で中部地区戦初優勝を果たした。

「これまで今庄では中々成績が出せませんでした。ウェット路面の方がクルマを素直に動かせるので、今回は天候に助けられた感じです。チームの方々が協力してくれたおかげで獲れた成績でもあるので、今後もチーム全体で好成績が残せていければと思います」と、26歳の若手が笑顔で語った。

2022シーズンは第6戦で3位表彰台を獲得し、S1クラスのランキング6位だった石川純也選手(M2factoryスイフト弐号)。2023シーズンは第2戦で2位、この1戦で念願の中部地区戦初優勝を果たしてランキングトップを奪取。チャンピオン争いのリードにも、期待がふくらむ。
第1戦でS1の4位を獲得していた広上徹選手(クアトロデゥエYHインテグラ)は20番手と不発だった第1ヒートから第2ヒートで復活、昨季の第4戦以来となる2位を獲得した(左)。昨季は第5戦を制し、ランキング2位とチャンピオンを争った森大士選手(和合DLニューテック☆シビック)は3位を獲得し、ランキングも2番手につけた。
S1の上位8選手。左から4位の横内由充選手(e’Tune☆YH久與MR2)、2位の広上選手、優勝した石川選手、3位の森選手、5位の栢康弘選手(オートリンクス インテグラ)、6位の鳥居晴彦選手(Bオクヤマ☆エナペタルスイフト)、7位の松原功治選手(DLたまご足VTスイフト)、8位の増田拓己選手(オクヤマYH☆FAスイフトμ)。

RWDクラス

 毎戦盛況のRWDクラスは、20台がエントリー。若手からベテラン、そして様々な車種で争われているが、第1ヒートでトップタイムをマークしたのは山崎裕汰選手だった。

 山崎選手は全日本ドライバー山崎利博選手の実息で、ダートラ歴は今季で3シーズン目、2022シーズンからトヨタ86を駆り中部地区戦に参戦している。その山崎選手の第1ヒートは、クラス唯一の1分29秒台。2番手以降が1分31秒台以下のなか、頭一つ抜きん出たタイムで第1ヒートを折り返す。

 そして第2ヒート。山崎選手はタイムダウンを喫してしまい、第1ヒートのタイムで後続を待つことになった。しかし、後半ゼッケンのドライバーはタイムアップこそ果たすものの、1分30秒を切るドライバーは現れず、山崎選手が逃げ切りを果たした。

「昨年は2回、5位入賞したのですが、中々その先に上がれず。今年も2戦ともノーポイントだったので、そろそろ成績を出さないといけないな、と思ってました。今回は慣熟歩行で色々な方から教えてもらい、多少のミスはありましたが、しっかり実行できたのが勝因だと思います」と語ってくれた山崎選手が地区戦初優勝を飾った。

昨季の第4戦での9位でシリーズ初入賞を果たしたRWDクラスの山崎裕汰選手(TガレクスコWmDLVTX86)は、地区戦デビュー10戦目にして嬉しい地区戦初優勝を達成。第1ヒートで見せた光る速さを、第4戦以降も見せてくれるか、期待が高まる。
第1戦は4位、第2戦は5位を獲得していたRWDの前田蔵人選手(WMクスコVX☆DLuce86)は2位入賞でランキング2番手に上げた(左)。第1ヒート9番手のイデブロック選手(TガレージライズRベルテBRZ)は第2ヒートで3秒以上タイムアップを果たし、3位を獲得した(右)。
RWDの上位6選手。左から4位の三枝聖博選手(クスコWMDLWAKOSBRZ)、2位の前田選手、優勝した山崎選手、3位のイデブロック選手、5位の寺田伸選手(TガレDLセラメタVTX86)、6位の福西貴志選手(ブリッド速心ATSテインD86)。

2Pクラス

 今季から新設の2P(ペダル)クラスは、クラス名どおりクラッチペダルを有さないAE・PN・N・SA・SAX車両が対象。オートマチックやCVT搭載の車両が競うクラスだ。

 第1ヒートは、トップの村瀬秋男選手と2番手の川崎浩一選手が0.04秒差の接戦となったが、川崎選手は第2ヒートでタイムダウン。村瀬選手は0.51秒のタイムアップを果たし、第1戦に続く今季2勝目を獲得。

 JMRC中部の事務局長も務め、1990年代から幾度も地区戦チャンピオンを獲得している村瀬選手は「今年からのクルマで、動きが全然分からず戸惑いましたが、第2ヒートはそれなりに冷静に運転できました。これから盛り上げていきたいクラスですね(笑)」とコメントを残した。

ハイブリッドシステム搭載のコンパクトカーと軽自動車の対決となった2Pクラスは、GP5型ホンダ・フィットハイブリッドを駆るベテラン、村瀬秋男選手(DLワコーズアオイフィットHV)が今季2勝目を挙げた。
2PでNHP10型アクアを駆る川崎浩一選手(RINKEI アクア)は第2ヒートでタイムダウンを喫したが、2位を守り切った(左)。第1戦から軽自動車のスズキKeiで第1戦から参戦を続ける山根勤選手(IBS – 2P – kei)が3位に入り、ランキングトップを2ポイント差で守った(右)。
2Pに参戦した、左から2位の川崎選手、優勝した村瀬選手、3位の山根選手。

PN1・1500クラス

 PN1・S1500クラスは、第1戦、第2戦と連勝中のディフェンディングチャンピオン天野佳則選手が、クラス唯一の1分29秒台のトップタイムを第1ヒートで刻み、三連勝を狙う。

 しかし第2ヒート、深谷文彦選手が1分28秒72を叩き出して一気にハードルを上げる。このタイムがプレッシャーとなったか、天野選手は後半区間でまさかのコースオフを喫してしまい、深谷選手が逆転勝利を収めた。

「優勝は2016年にチャンピオンを獲った年以来なので7年振りかな(笑)。今回は冷静に走れたと思います。スタート直後の1コーナーで掴んだ路面の感触で走りを組み立てて、それを上手く実行できたと思います」と、久しぶりの勝利を笑顔で振り返った。

昨季は第5戦で3位を獲得し、PN1・S1500クラスのランキング9位だった深谷文彦選手(AMフカミ狐様デミオ)。第2ヒートではクラスでただひとり、1分28秒台に突入して逆転優勝。ランキング2位につけて、久しぶりのチャンピオン奪取を射程に入れた。
第2ヒートはまさかのノータイムで開幕三連勝を果たせなかったPN1・S1500の天野佳則選手(オートリンクス☆タクミ☆デミオ)だったが、2位を守ってランキングトップをキープ(左)。3位を獲得した岸貴洋選手(ベルテックス黒スイフト@Tガレ)は昨季の第6戦から6戦連続トップ3に入る安定感を見せた。
PN1・S1500の上位4選手。左から2位の天野選手、優勝した深谷選手、3位の岸選手、4位の宮子祐輔選手(YHクラブオートVTμスイフト)。

Nクラス

 Nクラスは、昨季ランキング上位のシードゼッケン勢が第1ヒートの上位を占めたが、最終ゼッケンの村松俊和選手が大きく出遅れる。しかし、第2ヒートではその村松選手が角皆昭久選手が刻んだトップタイムを0.78秒更新、最後に逆転で優勝を決めた。

「第1ヒートはバックギアを使ってしまいました。後輩にブレーキングのアドバイスを頂き、早めのブレーキがピッタリ決まりました(笑)」という村松選手。2020シーズン以来の王座奪回に向けて、大きな今季2勝目を挙げた。

Nクラスの第1戦を制し、第2戦を欠場した村松俊和選手(テイクスBMSCランサー)は第3戦で復帰するも第1ヒートはまさかの失敗。しかし、第2ヒートをしっかりまとめて今季2勝目を挙げて、ランキングも2番手に上げた。
全日本ドライバーの角皆昭久選手(Aion DL ランサー)はNで第1ヒートのトップを奪取し、第2ヒートもタイムアップを果たすも、村松選手のタイムには敵わず2位を獲得(左)。第1ヒートで3番手だった山内友和選手(DL シロキヤ ランサー)は第2ヒートではタイムダウンを喫するも、3位を守り切った(右)。
Nの上位5選手。左から4位の澤田恭昌選手(ランサー)、2位の角皆選手、優勝した村松選手、3位の山内選手、5位の5L-YAGGIINO選手(DL河童OT垂井燃料ランサー)。

S2クラス・クローズドクラス

 S2クラスでは、ディフェンディングチャンピオンの松原実選手が駆動系のトラブルにより、無念のリタイヤという波乱のなか、鈴木信地郎選手が優勝を遂げた。

「昨年は、走れば走るほどトラブルに見舞われてボロボロでした(笑)。実は今回も第1ヒートはエンジンが回らなくて、またダメかなと思ったのですが、大事には至りませんでした」という鈴木選手は、第1ヒート5番手からの逆転。2020シーズン第1戦以来の地区戦優勝を、総合トップタイムで決めた。

 孤軍奮闘となったクローズクラスは、山本零選手が両ヒートともに無事完走し、タイムを残した。

 序盤の3戦が終わり、チャンピオン争いも熱を帯びてきた中部地区戦。第4戦は6月4日、再び今庄を舞台に熱戦の火蓋が切られる。

S2クラスは鈴木信地郎選手(オセロット・ダンロップランサー)が、第2ヒートでただ一人、1分18秒台に突入する1分18秒57のタイムで優勝。全日本ドライバーの速さを見せて、ランキングトップに立った。
蓮池量之選手(CMSCランサー)は第2ヒートで5秒以上タイムアップし、1分20秒の壁を破ってS2の2位を獲得(左)。トヨタ86の改造車を駆る栗本利也選手(ガレージクロノスYH86D)は第1ヒートでトップタイムをマーク。第2ヒートでもタイムアップを果たすも、3位となった(右)。
S2の上位4選手。左から4位の浦上智明選手(DL Mスポ ランサー)、2位の蓮池選手、優勝した鈴木選手、3位の栗本選手。
クローズドクラスにはマツダ・デミオを駆り山本零選手(ゼロデミオ)が参戦。2ヒートとも完走を果たし、第1ヒートのタイムがベストタイムとなった。

フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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