新東京大会はFP-3部門が盛況! 激戦を制したのは角陽向選手と千田琉貢選手
2023年5月25日

全日本カート選手権FS-125JAF部門/FP-3部門の第3戦/第4戦が、千葉県市原市・新東京サーキットで開催された。多くのエントリーを集めたFP-3部門では、第3戦で角陽向選手(FLAX MOTOR SPORTS)が圧勝。第4戦では一転、大混戦の末に千田琉貢選手(Racing Team YRHKS)がウィナーとなった。
2023年JAF全日本カート選手権 FS-125JAF部門/FP-3部門 第3戦/第4戦
2023年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第3戦/第4戦
開催日:2023年5月20~21日
開催地:新東京サーキット(千葉県市原市)
主催:NTC
舞台となる新東京サーキットは、首都圏からアクセス良好な千葉県市原市に位置することもあって、多くのユーザーを集める関東屈指の人気カートコースでもある。ここで全日本カート選手権が行われるのは2021年以来、2年ぶりのことだ。
今大会のひとつの特徴がヒートの周回数。これまでの2レース制の大会ではふたつの予選/決勝が同じ周回数で行われるのが一般的だったが、今回はFS-125JAF部門/FP-3部門とも、第3戦が予選14周/決勝20周、第4戦が予選18周/決勝22周と、第4戦の方が長く設定されている。これがレースにどんな影響を及ぼすのか興味深いところだ。
迎えた5月21日の決勝日。空には雲が留まっているが、前日の午前までコースを濡らした雨は完全に止み、たびたび晴れ間も見えるまずまずのレース日和となった。
全日本カート選手権FP-3部門 第3戦/第4戦
コースの最大出走台数ちょうどの34台がエントリー、うち33台がレースに参加したFP-3部門。参加12台だった前回の神戸大会から3倍近くにも膨らむ盛り上がりだ。その顔ぶれも西日本勢を含む神戸大会からの継続参戦組、地元の雄、元全日本カート選手権チャンピオンや優勝経験者、4輪レースのプロドライバー、OKドライバーなど多岐にわたり、さながら異種格闘技戦の様相を呈していた。
まずタイムトライアルでトップタイムを叩き出したのは、1年ぶりに全日本に参加してきた名うてのKT100Sエンジンマイスター、19歳の角選手だ。2020年FP-3部門ランキング2位の実力は健在、タイムは2番手以下に0.2秒以上の差をつける圧巻の速さだった。
その角選手は第3戦の予選を独走ゴールで終え、20周の決勝をポールで迎えることに。スタートではセカンドグリッドの桑原航佑選手(Team August)がポジションを落とし、代わって西薗勇太選手(TECORSA/OLC)が2番手に上がってきた。
そんな周囲の動きを尻目に、トップを走る角選手は周回ごとにリードを拡大していき、序盤の10周でライバルたちを2秒以上も後方に追いやって、ワンサイドゲームのままゴールへと突っ走った。角選手の優勝は、2020年の開幕戦以来だ。
角選手の後方では西薗選手、岡田聖人選手(Tommy Sport Racing)、田中海輝選手(TECORSA)がセカンドグループを形成して競り合いを展開した。ここは西薗選手がポジションを守り切って2位に。2012年FS-125部門チャンピオンの田中選手が、残り5周で岡田選手をパスし、10年ぶりの全日本で3位表彰台を手に入れた。



続く第4戦の予選でも、角選手はスタート直後からの独走でトップゴールを遂げ、決勝のポールを獲得した。第3戦と同様のレースが予想される中、その決勝には思わぬ展開が待っていた。決勝が始まると、角選手はセカンドグリッドの岡田選手と横並びで1コーナーを回って先陣争いを繰り広げる。この激しい攻防の結果、角選手は1コーナー立ち上がりでコースアウト、レースを終えてしまった。
角選手一強の構図が崩れたレースは、一気に大混戦へと様相を変えた。トップは千田選手から桑原選手、西薗選手へとたびたび交代。そこに9番グリッドから大きな先頭集団を縫うようにポジションアップしてきた柳沼光太選手(ガレージC)が接近し、中盤に先頭へ躍り出た。
ここから柳沼選手は西薗選手とともに先頭集団を抜け出し、マッチレースを展開する。一旦は西薗選手がトップに出たが、前回の神戸大会でもすんでのところで勝利を獲り逃している柳沼選手は、懸命の走りで先頭を奪還。両車は横並びで競り合いながら最終ラップに突入していく。一気にバトルが激化したことで、1秒近く離れていた3番手以降がトップ争いの2台に追いついてきた。
ラスト1周に至って事態は急展開。柳沼選手は後続との揉み合いでレーシングラインを外れ、そのインに大量のマシンがなだれ込んでくる。ここからは肉弾戦のごときポジションの奪い合いだ。そして、真っ先にチェッカーをくぐったのは桑原選手だった。
ところが、歓喜の逆転優勝かと思われた桑原選手は車検で失格に。その真後ろでゴールした岡田選手にもペナルティが下った。代わってウィナーとなったのは、FS-125CIK部門にも参戦中の千田選手だった。予選4番手の千田選手はスターティンググリッドからの発進が遅れてローリングに取り残され、本来のスタート位置に戻れたのは隊列復帰禁止区間のぎりぎり手前。冷や汗もののレース開始から、最高のエンディングにたどり着いた。
2位は西薗選手、3位は鈴木悠太選手(TECORSA)。柳沼選手は力なく首を前に垂れて4位でチェッカーを受けたが、「自分のレースに悔いはない」と清々しい顔を見せた。



全日本カート選手権FS-125JAF部門 第3戦/第4戦
FS-125JAF部門も出走11台と、前大会の7台から大きく参加を伸ばした。その第3戦の決勝で序盤戦をリードしたのは、関西から遠征してきた第2戦のウィナー中尾正義選手(ENERGY JAPAN)。そこに追いついてきたのは、予選のアクシデントで最下位と最後尾のグリッドに沈んだ伊藤聖七選手(Formula Blue Ash)、佐藤佑月樹選手(RT WORLD)だ。
目覚ましいペースで追い上げてきた伊藤選手と佐藤佑月樹選手は、7周目にタンデムで中尾選手の前へ。その翌周には佐藤佑月樹選手が全車抜きでトップに躍り出た。3番手に下がった中尾選手も、この2台に離されることなく先頭集団に加わり続ける。
3台一列のトップ争いはゴール間際まで続いたが、残り3周で中尾選手が伊藤選手を抜き返したことで、佐藤佑月樹選手は背後のプレッシャーから解放され、トップでレースを終えた。しかし、佐藤佑月樹選手はフロントフェアリングのペナルティを課されて5位に降格。代わって伊藤選手が第1戦に続く2勝目を手に入れた。
2位はアウェイのコースでも速さを見せた中尾選手。3位に佐藤こころ選手(チームナガオ)が続き、関西勢が表彰台の二席を占める結果となった。



第4戦の決勝では、ポールの佐藤佑月樹選手とセカンドグリッドの伊藤選手が序盤から後続を引き離し、タンデム状態のまま延々とラップを重ねていった。このしびれるようなトップ争いは終盤まで続いたが、残り3周で両者の間隔が開き、今度こそ佐藤佑月樹選手が勝利を手に入れた。
第3戦で優勝の伊藤選手は3勝目こそならなかったが、2位表彰台でシリーズポイントを伸ばしてランキング首位の座をキープしている。そして3位でフィニッシュしたのは、FP-3部門とダブルエントリーの酒井翔太選手(FIRST GARAGE BEMAX)だった。



ジュニアカート選手権ジュニア部門 第3戦/第4戦
同時開催のジュニアカート選手権・第3戦/第4戦。出走6台のジュニア部門では、木原太一選手(FLARE with HRT)がふたつの決勝で接近戦を勝ち抜き、この部門初参戦で2連勝を果たした。
第3戦では、織田大和選手(RF AOYAMA)が木原選手と0.068秒差のフィニッシュで2位を獲得。神戸大会2連勝の中西凜音選手(ENERGY JAPAN)が3位となった。第4戦でも織田選手は2位に入賞。序盤戦で木原選手を追い詰めた戸谷周選手(FLAX MOTOR SPORTS)が3位を得た。






ジュニアカート選手権ジュニアカデット部門 第3戦/第4戦
ジュニアカデット部門では、前大会に続いて元田心絆選手(APSPEED with SOVLA)が強さを発揮。ふたつの決勝を制して破竹の開幕4連勝を遂げた。また、両レースとも2位は岡本紘吉選手(RT WORLD)、3位は阿部瑠緯選手(ミツサダ PWG RACING)だった。






フォト/JAPANKART、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部