レーシングカートに新風が吹き込んだ! GPR KARTING SERIESが鈴鹿で開幕!

レポート カート

2023年6月1日

2023年5月、上級カートレースのシリーズ戦として新たにスタートした“GPR”こと「GPR KARTING SERIES」の最初の大会が、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット南コースで開催。最高峰クラスのOKでは鈴木悠太選手(TEAM EMATY)が2連勝を飾った。

2023 AUTOBACS GPR KARTING SERIES Round1/Round2
開催日:2023年5月27~28日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:ホンダモビリティランド株式会社、SMSC

「よりドライバーファースト、参加者ファーストのカートレースシリーズを創造したい」という理念から立ち上がったGPR KARTING SERIESは、プロモーション組織Global Promotion of Raceがシリーズ戦を運営する珍しい形態のカートレースとして、2023年から本格始動した。

 実施されるレースは3つの世代を想定したOK/Junior/Cadetsと、ホビーレースのトップエンドにあたるShifterの計4クラスから成る。いずれもタイムトライアル(TT)方式の予選→決勝第1レース→決勝第2レースの1大会2レース制で行われ、初年度の今季は全5大会10戦のシリーズ戦が組まれている。

 迎えた最初の大会は鈴鹿サーキット南コースが舞台だ。決勝日の天候はほぼ薄曇り。ただし空は明るく、時折り雲の切れ間から陽光が注ぐ時間帯もあり、5月下旬としてはやや暑い陽気のもとで開催された。

鈴鹿サーキット南コースにはプロモーターのGPRを始め、大会スポンサーカラーの横断幕が各所に飾られ、いつもとは違った雰囲気に包まれていた。
スーパーGTなどで採用されているデジタルサイネージが表彰台のバックボードに用意された。レースのライブタイミングや中継映像が映されたり、表彰式の演出を彩るなど、大会の盛り上げを担った。
表彰対象者の一生の記念になるよう、トロフィーは趣向を凝らしたデザインが採用されている。レース結果1~3位までの選手と、1位の選手が所属するチーム代表に授与される。
大会前日に行われたブリーフィングでは、ニュートラリゼーションやジャッジラインなどの確認が行われた。シリーズを通したレーシングディレクターは塚越広大氏が務める。

OK

 OKには24名がエントリー、うち23名がレースに参加した。このOKは全日本カート選手権でも開催されているスプリントカートの最高峰カテゴリーだ。なお全日本カート選手権とGPRでは、最低重量やレースフォーマットなどに違いがある。

 出走台数が21台を超えたため、規定により予選は全参加者を2グループに分けて行い、各グループの上位4名ずつによるスーパーポールも行われた。このスーパーポールは、いわば6分間計測のTT第2セッションで、このセッション用のタイヤもレース用タイヤとは別に支給される。Round1決勝のスターティンググリッドは、上位8番手までがスーパーポールの結果で、9番手以下が予選の結果で決定される。

 スーパーポール計測時間の終了間際に46秒520のトップタイムをマークしたのは土橋皇太選手(ラムレーシング)。OKカテゴリーのレース初参戦の16歳が、名うてのトップドライバーたちを相手にポール獲得の快挙をやってのけた。「まさか自分がポールを獲れるなんて思ってなかったので、驚きました」と土橋選手。

 セカンドグリッドは4週間前の全日本カート選手権 OK部門開幕戦でTTのトップを獲った新鋭、鈴木悠太選手。グリッド2列目には全日本OK部門での優勝経験を持つ鈴木斗輝哉選手(K.SPEED WIN)と、2022年全日本FS-125部門でランキング4位の中井陽斗選手(TEAM EMATY)が並んだ。

予選上位8台で争われるスーパーポールを制したのは土橋皇太選手(ラムレーシング)。

 決勝は両ヒートとも20周だ。Round1のレースがスタートすると、土橋選手がまず先頭の座をキープしたが、オープニングラップの最終コーナーで鈴木悠太選手が土橋選手を急襲、トップを奪ってラップリーダーとなった。鈴木悠太選手はここから4台一列の2番手争いにも乗じてリードを広げ、後続との間に1秒以上のギャップを築いた。一方、土橋選手は序盤の集団戦でさらにポジションを下げ、やがて6番手まで後退した。

 しかし、レースは鈴木悠太選手のワンサイドゲームとはならなかった。中盤戦に差しかかるあたりから、中井選手をパスして2番手に出た鈴木斗輝哉選手が、鈴木悠太選手との間隔をじわじわと縮め始めてくる。残り3周で両者の差は目に見えて詰まり、ついにギャップは0.5秒を切った。

 だが、鈴木斗輝哉選手がトップのテールを捕らえるにはあと数周足らなかった。鈴木悠太選手は0.4秒差で鈴木斗輝哉選手から逃げ切り、GPRで最初のOKウィナーとなった。2位の鈴木斗輝哉選手に続いてゴールした中井選手にはプッシングのペナルティが。これで、序盤のポジションダウンから諦めずに挽回を続けて4番手でゴールした土橋選手が、繰り上がりで3位表彰台に立つこととなった。

シリーズ開幕戦でまず1勝を挙げたのは鈴木悠太選手(TEAM EMATY)。「グリッドが(1コーナーに対して)イン側だったので、スタートでトップに出て逃げ切る作戦だったけど、スタートが決まらなくて土橋選手に行かれてしまいました。でも、自分はクランクが速かったので、最終コーナーで抜きに行くプランに変更してトップを奪えました。そこからの展開も良くて、逃げ切ることができてうれしいです。こうして優勝できて、GPRにも、チームにも、そして手伝いに来てくれた方々やエンジンをつくってくれた方にも、すごく感謝しています」とコメント。
2位は鈴木斗輝哉選手(K.SPEED WIN)、3位は土橋選手(ラムレーシング)。
OK Round1の表彰式。左から2位の鈴木斗輝哉選手、1位のTEAM EMATY代表と鈴木悠太選手、3位の土橋選手が登壇。
Round1決勝でベストラップを刻んだ選手に贈られるチャンネル700賞は鈴木斗輝哉選手が受賞。

 Round2のスターティンググリッドは、Round1のベストラップタイムで決定される。その結果、Round2のポールとなったのは鈴木斗輝哉選手だった。土橋選手は2番グリッドを得て2戦連続のフロントローに。グリッド2列目は中井選手と鈴木悠太選手だ。

 そしてRound2は、波乱の幕開けとなった。スタートとともに土橋選手がトップに浮上。一方、ポールの鈴木斗輝哉選手はプッシュされたか、スピンして1コーナーを飛び出し、レースを終えてしまった。これで2番手に上がった鈴木悠太選手は、この周の最終コーナーで土橋選手を抜き去り、Round1のリプレイのような展開で先頭に立った。

 2番手の座は土橋選手からクインティン・ルー選手(TEAM EMATY&CFS)、中井選手と序盤戦で変遷して移り変わっていく。そんな背後の戦いを尻目に、鈴木悠太選手は0.5秒ほどのリードを築いた。TEAM EMATY勢がトップ集団を形成する。

 レースが中盤戦に入ると、中井選手がじりじりと鈴木悠太選手に接近し、2台は残り7周でついに一丸となった。だが、鈴木悠太選手はここで踏ん張りを見せ、中井選手との間にオーバーテイクを許さないほどのギャップを開いてチェッカーまで走り切った。勝者は今度も鈴木悠太選手だ。

 鈴木悠太選手と0.259秒差でゴールした中井選手は、フロントフェアリングのペナルティで4位に降格。代わって全日本OK部門第1戦ウィナーの吉田馨選手(Drago CORSE)が2位となった。そして3位は、19番グリッドからスタートした落合蓮音選手(YAMAHA Formula Blue)だ。

 Round1ではアクシデントで1周リタイアを喫した落合選手だが、たっぷり残ったタイヤで目の醒めるような追い上げを披露し、15台抜きで表彰台の最後の一席を手に入れた。そして吉田選手と接近戦を展開していた土橋選手は、最終ラップにコースアウトを喫してレースを終えたが、ファステストラップをマークして特別賞を受け、大ブレイクの一日を締めくくった。

「(このレースを)得点で表すなら90点です」と、優勝を遂げながらもやや辛口評価の鈴木悠太選手(TEAM EMATY)だったが、「2連勝は『まさか? まさか!』でうれしいです」とコメント。だが「気持ち的には、やっぱり1レース目の初優勝の方が感動が大きいかな」と冷静にシリーズを振り返った。次の大会は出られるかどうかまだ分からないと前置きしつつ、「参戦の機会があればぜひ出させてもらいたいし、チームのみんなと4連勝を目指して、もっと良いレース展開にしていきたいです」と鈴鹿大会を締めた。
2位は吉田馨選手(Drago CORSE)、3位は落合蓮音選手(YAMAHA Formula Blue)。
OK Round2の表彰式。左から2位の吉田選手、1位のTEAM EAMTY代表と鈴木悠太選手、3位の落合選手が登壇。
Round2決勝でベストラップを刻んだ選手に贈られるチャンネル700賞は土橋選手が受賞。

Shifter

 Shifterは、6段変速機構を備えたボルテックスRok Shifterエンジンのワンメイクで行われるレースだ。そのRound1ではポールの豊島里空斗選手(HRTCSIRacing Juran μ)がスタンディングスタートを成功させてトップのまま走り切り、このクラス初の優勝を果たした。約0.5秒差の2位は東拓志選手(NEXT-ONE Racing)。安堂祐選手(APSPEED with SOVLA)が3ポジションアップの3位となった。

「最初は逃げられたんですけど、ブレーキがおかしくなったみたいで、バランスが後ろ寄りになってしまい……、途中で前寄りにしたらだんだんペースが上がってきたのでホッとしています」と安堵の表情を見せた豊島里空斗選手(HRTCSIRacing Juran μ)。レースについては「そんなに楽な展開ではありませんでした。でもRok Shifterのレースは初優勝です。これまで2位が多かったので、優勝できてうれしいです」と1位獲得を喜んだ。
2位は東拓志選手(NEXT-ONE Racing)、3位は安堂祐選手(APSPEED with SOVLA)。
Shifter Round1の表彰式。左から2位の東選手、1位のHRTCSIRacing Juran μ代表と豊島選手、3位の安堂選手が登壇。

 続くRound2では2番グリッドの東選手が得意のスタートダッシュでトップに立ったが、ポールの丸山陽平選手(HRT)が焦らずこれを逆転し、独走優勝を飾った。HRTはチームとして2連勝だ。丸山選手の後方には東選手と安堂選手が続き、2位と3位はRound1と同じ顔触れとなった。

優勝の丸山陽平選手(HRT)は「素直にうれしいです」とはにかんだ。「1レース目でスタートを大失敗しちゃったので、2レース目は普通にスタートできればOKでした。2番手には下がってしまったけれど、その後は冷静に走れたと思います」と言い、チームメイトの豊島選手がRound1を制したことについて「チームから『次はお前が勝つ番だな』ってプレッシャーをかけられ、負けるわけにはいかなかったんで頑張りました」と明かした。
2位は東選手(NEXT-ONE Racing)、3位は安堂選手(APSPEED with SOVLA)。
Shifter Round2の表彰式。左から2位の東選手、1位のHRT代表と丸山選手、3位の安堂選手が登壇。

Junior

 Juniorは当該年11歳以上のドライバーが対象のレース。エンジンは水冷125ccのイアメ・パリラX30Jrのワンメイクだ。Round1では澤田龍征選手(LUCE MOTOR SPORTS)が酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)を二転三転のバトルの末に下して優勝。酒井選手が2位、白石麗選手(HRS JAPAN)が3位となった。

レースを終えて「うれしいです!」とは澤田龍征選手(LUCE MOTOR SPORTS)のひと言。「抜かれてもすぐにクロスでやり返そうと思っていました。(酒井選手が激しくアタックしてきた)最終ラップも、もし抜かれてもクロスで抜き返せると思っていたので、あまり焦りませんでした。2レース目も正々堂々と戦って優勝したいです」
2位は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)、3位は白石麗選手(HRS JAPAN)。
Junior Round1の表彰式。左から2位の酒井選手、1位のLUCE MOTOR SPORTS代表と澤田選手、3位の白石麗選手が登壇。

 Round2では酒井選手と松井沙麗選手(BEMAX RACING)の先頭集団に、スタートで6番手まで後退した澤田選手が追いつきトップ争いを繰り広げた。だが、劇的な逆転でトップチェッカーを受けた澤田選手にはフロントフェアリングのペナルティが。2番手、3番手でゴールした酒井選手と松井選手にもペナルティの裁定が下り、4番手ゴールの関口瞬選手(ERS with SACCESS)がウィナーとなった。2位の白石麗選手は2戦連続の表彰台。3位は元田心絆選手(APSPEED with SOVLA)だった。

「自力で勝ちたかった……」と4番手チェッカーを受けた関口瞬選手(ERS with SACCESS)は繰り上がり優勝に少し悔しさを滲ませる。「バトルでミスしたところもあり、駆け引きの部分で負けていたんですけれど、最後に前がバトルしてくれて追いつければいいなと思っていました」と最後まであきらめなかった結果、勝利をつかんだ。
2位は白石麗選手(HRS JAPAN)、3位は元田心絆選手(APSPEED with SOVLA)。
Junior Round2の表彰式。左から2位の白石麗選手、1位のERS with SACCESS代表と関口選手、3位の元田選手。

Cadets

 Cadetsは当該年13歳以下のドライバーが対象。エンジンは空冷100ccのヤマハKT100SECのワンメイクだ。Round1では横山輝翔選手(PONOS HIROTEX RACING)、林樹生選手(APSPEED with SOVLA)、森谷永翔選手(ERS with SACCESS)のトップ争いが最後までもつれ、最終ラップでこの戦いに松尾柊磨選手(brioly racing)も加わってきた。最終コーナーの立ち上がりは4台横並び。その結果、森谷選手が7番グリッドからの逆転優勝を果たした。2位は横山選手、3位は松尾選手。林選手までの上位4台が0.116秒の中に固まってゴールする大接戦だった。

森谷永翔選手(ERS with SACCESS)がチェッカー目前の混戦を制して見事な優勝を果たした。「ゴールの瞬間、自分が勝ったと分かりました。うれしかったです。予選はマシンが完調じゃなくていいタイムを出せませんでした。レースが始まったら調子がいいことが分かって、勝てる手応えがありました」
2位は横山輝翔選手(PONOS HIROTEX RACING)、3位は松尾柊磨選手(brioly racing)。
Cadets Round1の表彰式。左から2位の横山選手、1位のERS with SACCESS代表と森谷選手、3位の松尾選手が登壇。

 Round2では序盤で抜け出した森谷選手に、残り5周で横山選手が追いつきトップが入れ替わったが、森谷選手はこれを再逆転して2連勝を飾った。2位は横山選手、3位は松尾選手で、表彰台にはRound1と同じ顔触れが並ぶ結末となった。

「2連勝できてうれしかったです」と波に乗る森谷選手(ERS with SACCESS)。「最初は調子が良かったけれど、そこから思いの外ペースが上がらなくて抜かれてしまいました。でも、絶対に逆転できると思っていました。この先も全部勝ってシリーズチャンピオンになります」と抱負を述べた。
2位は横山選手(PONOS HIROTEX RACING)、3位は松尾選手(brioly racing)。
Cadets Round2の表彰式。左から2位の横山選手、1位の森谷選手、3位の松尾選手が登壇。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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