北海道を舞台とする全日本ダートトライアル選手権 第4戦の高速バトルは3クラスで全日本初優勝が誕生!

レポート ダートトライアル

2023年6月2日

北海道砂川市郊外のオートスポーツランドスナガワ ダートトライアルコースで、5月27~28日にかけて開催された全日本ダートトライアル選手権 第4戦「北海道ダートスペシャル in スナガワ」。今シーズンの実質的な3戦目となるこのラウンドは、全クラス合わせて122台がエントリーの盛り上がりとなった。

2023年JAF全日本ダートトライアル選手権 第4戦「北海道ダートスペシャル in スナガワ」
開催日:2023年5月27~28日
開催地:オートスポーツランドスナガワ ダートトライアルコース(北海道砂川市)
主催:AG.MSC北海道

 ハイスピードコースとして全国的に名高い、北海道のオートスポーツランドスナガワ ダートトライアルコースに設定された決勝コースは、タイトコーナーは下段から上段に登った左コーナーのみという、近年でも稀にみる超ハイスピードコースが採用された。

 路面コンディションは、前半ゼッケンのPNE1やPN1などのクラスが散水の影響を受けてハーフウェット路面となったが、両ヒートとも雨が路面を濡らすことなく3戦ぶりのドライコンディションの中での戦いに。スナガワ名物とも言われている下段にできる大きなギャップも今年は2~3か所に留まり、各クラスとも路面の砂利が掃けた第2ヒートの走りが勝敗を分けるポイントとなった。

 決勝ヒートが行われる28日には、朝の慣熟歩行終了後に選手や関係者がパドックに集まり、5月上旬に逝去したJMRC九州運営委員長の中村善浩氏と、ダートトライアル選手会の広報担当だった林恵一氏に対し、これまでのダートトライアル界の発展や振興に尽力されたことへ敬意を表し、黙祷が捧げられた。

全日本ダートトライアル選手会が主体となり、急逝した中村善浩氏と林恵一氏のご冥福をお祈りし、参加者全員で黙祷を捧げた。
スタート直後の長い直線を一気に駆け抜ける、スナガワ名物のハイスピードレイアウト。道中にはタイトコーナーも設けられている。

Dクラス

 同日に開催されているスーパー耐久シリーズ 第2戦のNAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レースに出場のため、鎌田卓麻選手(スバル・BRZ)はこのラウンドをスキップ。また全日本ダートトライアル選手権の第3戦でクラッシュした田口勝彦選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)も、修復が間に合わずスキップとなったDクラス。

 第1ヒートは地元・北海道の田辺剛選手(三菱・ミラージュ)が、炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)と亀山晃選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)を抑え、クラス唯一となる1分26秒台のタイムをたたき出して暫定トップに立つ。

 続く第2ヒートでも田辺選手がベストタイムを0.224秒縮める走りを見せた。谷田川敏幸選手(スバル・BRZ)や炭山選手が1分26秒台に飛び込んでくるも、田辺選手のタイムには届かない。結局、両ヒートを制する走りで田辺選手が全日本ダートトライアル選手権初優勝を獲得。

 その田辺選手は、さかのぼること2013年の全日本ジムカーナ選手権 第8戦イオックスラウンドでも、当時のN-4クラスで優勝を獲得している。全日本ダートトライアル選手権と全日本ジムカーナ選手権の両カテゴリーで優勝を飾るという快挙を成し遂げた。

Dクラス優勝は田辺剛選手(SPヤマダTRSYHミラージュ)。
Dクラスの表彰式。左から2位の谷田川敏幸選手、1位の田辺選手、3位の炭山裕矢選手、4位の河内渉選手。

SA2クラス

 SA2クラスは、第1ヒートで黒木陽介選手(トヨタ・GRヤリス)と昨年のチャンピオン北村和浩選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)、さらに昨年のスナガワラウンドで話題を集めた20歳ドライバーの笠原陸玖選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が1分28秒台の攻防を展開。

 そんな中、第2ヒートは増村淳選手(トヨタ・GRヤリス)が、ベストタイムを1分27秒380に引き上げてくる。この増村選手のタイムがシードゼッケン組に入ってもなかなか更新されず、第1ヒートでトップタイムだった黒木選手も0.39秒届かず3位。

 一方、第1ヒート3番手の北村選手は、後半セクションで追い上げるものの、前半セクションでの遅れが響いて0.11秒差の2位。ラリーからダートトライアルに転向して3年目の増村選手が、待望の全日本ダートトライアル選手権での初優勝を獲得した。

SA2クラス優勝は増村淳選手(ALEXリコーセイAKMヤリス)。
SA2クラスの表彰式。左から4位のマイケルティー選手、2位の北村和浩選手、1位の増村選手、3位の黒木陽介選手、5位の浜孝佳選手、6位の笠原陸玖選手。

PN1クラス

 川島靖史選手(スズキ・スイフトスポーツ)と徳山優斗選手(トヨタ・ヤリス)が1勝ずつ挙げているPN1クラスは、第1ヒートで徳山選手と昨年のチャンピオン工藤清美選手(ホンダ・フィット)、さらに開幕戦2位の奈良勇希選手(スズキ・スイフトスポーツ)の3台が1分40秒台に並ぶという結果になった。

 路面が掃けた第2ヒートは、クラス前半ゼッケンの竹花豪起選手からベストタイム更新ラッシュとなる中、第1ヒート3番手の奈良選手がベストタイムを1分36秒048に更新。第1ヒートトップの徳山選手は「タイヤ選択を外してしまいました」と奈良選手に約0.8秒届かず3位に。

 第1ヒート2番手の工藤選手も「ゴール前をもう少し頑張らないとダメだね」と約0.3秒差の2位に終わり、昨年後半戦から2位がずっと続いていた奈良選手が、待望の全日本ダートトライアル選手権で初優勝を獲得した。

PN1クラス優勝は奈良勇希選手(DLクスコWMレプソルスイフト)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の飯島千尋選手、2位の工藤清美選手、1位の奈良選手、3位の徳山優斗選手、5位の内山壮真選手、6位の児島泰選手。

PNE1クラス

 ノワールシゲオ選手(スズキ・スイフトスポーツ)が2連勝を挙げているPNE1クラスは、第1ヒートでシリーズランキング2番手につける葛西キャサリン伸彦選手(スズキ・スイフトスポーツ)が1分39秒019のベストタイムをたたき出す。一方、ランキングトップのノワール選手は1分40秒台のタイムで2番手。

 葛西選手は、第2ヒートでもベストタイムを約1秒縮めて今季初勝利に向けて王手をかけるが、クラス最終走者のノワールシゲオ選手が、「第2ヒートはアクセルを踏みすぎてキックダウンしないよう、スピードを保ちながら走るように心掛けました」と、それまでのベストタイムを大きく凌ぐ1分35秒887のタイムをマーク。

 3戦連続となる第2ヒートの逆転劇で、ノワールシゲオ選手が開幕3連勝を飾った。2位に葛西選手、3位には第2ヒートで順位をひとつ上げた鈴木正人選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞した。

PNE1クラス優勝はノワールシゲオ選手(ADS☆VTX☆DL☆スイフト)。
PNE1クラスの表彰式。左から2位の葛西キャサリン伸彦選手、1位のノワールシゲオ選手、3位の鈴木正人選手。

PN2クラス

 スズキ・スイフトスポーツのワンメイク状態となったPN2クラスは、第1ヒートでベテランの中島孝恭選手と若手の鶴岡義広選手が1分38秒台の攻防戦を展開。第1ヒートは0.053秒差で鶴岡選手がトップタイムを奪う。第2ヒートは、地元ドライバーの張間健太選手が、ベストタイムを1分35秒864に引き上げてくるが、すぐさま第1ヒートトップの鶴岡選手が0.188秒更新し、ふたたびトップの座を奪い返す。

 だが、クラス最終走者の中島選手が、「今年は思ったよりも路面が荒れていなかったので、落ち着いて走ることができました」と鶴岡選手のタイムを0.586秒更新、待望の今季初優勝を飾った。2位の鶴岡選手は2点差でシリーズランキングトップの座を死守。3位には全日本初出場の張間選手が入賞した。

PN2クラス優勝は中島孝恭選手(DLルブロスTEIN☆スイフト)。
PN2クラスの表彰式。左から2位の鶴岡義広選手、1位の中島選手、3位の張間健太選手。

PN3クラス

 前日の公開練習では地元の和泉泰至選手(トヨタ・GR86)が両ヒートでベストタイムを奪う好調さを見せていたPN3クラス。だが決勝の両ヒートで開幕2連勝中の竹本幸広選手(トヨタ・GR86)がベストタイムをマーク。開幕以来、土つかずの3連勝を遂げた。2位には、「地元のスナガワでは勝ちたかったですね。悔しいです」という和泉選手が入賞、3位は全日本初出場のいりえもん選手(トヨタ・86)が第2ヒートで大きく順位を上げ、入賞した。

PN3クラス優勝は竹本幸広選手(FKS・YH・KYB・GR86)。
PN3クラスの表彰式。左から4位の上野倫広選手、2位の和泉泰至選手、1位の竹本選手、3位のいりえもん選手、5位のパッション崎山選手、6位の佐藤秀昭選手。

Nクラス

 北條倫史選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)と宝田ケンシロー選手(トヨタ・GRヤリス)という、北海道出身のドライバーが1勝ずつを挙げているNクラスは、第1ヒート3番手の岸山信之選手(トヨタ・GRヤリス)が第2ヒートでクラス唯一となる1分27秒台のタイムをたたき出し、今シーズン初優勝を獲得。

 2位には矢本裕之選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が入賞、3位に北條選手が入賞した。この結果、岸山選手が北條選手に5点差をつけてシリーズランキング2番手に浮上。今回、エンジンが不調になり8位に終わった宝田選手はシリーズランキング3番手となり、同4番手の矢本選手とは1点差の僅差となった。

Nクラス優勝は岸山信之選手(BRIDE☆DL☆GRFヤリス)。
Nクラスの表彰式。左から4位の三枝光博選手、2位の矢本裕之選手、1位の岸山選手、3位の北條倫史選手、5位の小林茂則選手、6位の馬場一裕選手。

SA1クラス

 第3戦を終えて、今季未勝利ながらも安定した上位の成績を残してシリーズランキングトップに立つ古沢和夫選手(三菱・ミラージュ)が、土曜日の公開練習で転倒リタイアという波乱の展開となったSA1クラス。決勝では、スナガワがホームコースの内藤修一選手(スズキ・スイフトスポーツ)が両ヒートを制する走りで今季初優勝を獲得。

 2位には第3戦優勝の佐藤卓也選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞し、シリーズランキングでは3番手から2番手に浮上、3位は福山重義選手(スズキ・スイフトスポーツ)が今シーズン初表彰台を獲得した。

SA1クラス優勝は内藤修一選手(DL☆XP☆SCENEスイフト)。
SA1クラスの表彰式。左から4位の志村雅紀選手、2位の佐藤卓也選手、1位の内藤選手、3位の福山重義選手。

SC1クラス

 山崎迅人選手(三菱・ミラージュ)が2勝を挙げているSC1クラスは、この第4戦でも山崎選手が両ヒートを制する走りで今季負け知らずの3勝目を獲得。2位には、第1ヒート4番手から追い上げた坂井秀年選手(ホンダ・シビック)が入賞、3位に深田賢一選手(ホンダ・シビック)が入賞した。

SC1クラス優勝は山崎迅人選手(YHマックスゲンシンミラージュ)。
SC1クラスの表彰式。左から2位の坂井秀年選手、1位の山崎選手、3位の深田賢一選手。

SC2クラス

 SC2クラスの第1ヒートは、今シーズンからSC2クラスに移った昨年のJD3クラスチャンピオンの坂田一也選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)がベストタイムを奪う。第2ヒートも坂田選手がベストタイムを更新してくる中、第1ヒートは坂田選手と0.008秒差だった亀田幸弘選手(スバル・インプレッサ)が、坂田選手のタイムを0.021秒更新。

 0.01秒を争う攻防戦は、「今シーズンは勝てそうで勝てないラウンドが続いたんですけど、まさかこれまで1勝もできていないスナガワで勝てるとは思いませんでした。シーズンオフに練習した甲斐がありました」という亀田選手が逆転優勝。シリーズランキングもトップに躍り出た。2位に坂田選手、3位には第3戦2位の吉村選手が入賞した。

SC2クラス優勝は亀田幸弘選手(YH栗原オート企画インプレッサ)。
SC2クラスの表彰式。左から4位の岩下幸広選手、2位の坂田一也選手、1位の亀田選手、3位の吉村修選手、5位の平塚忠博選手、6位の大西康弘選手。

フォト/CINQ レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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