中升 ROOKIE AMG GT3が23時間37分で逆転劇を演じて初の総合優勝!

レポート レース

2023年6月5日

スーパー耐久(S耐)シリーズ 2023 第2戦「NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース」は、5月26~28日に富士スピードウェイにおいて開催。過酷な24時間レースは、残り23分となった14時36分に逆転した中升 ROOKIE AMG GT3(鵜飼龍太/蒲生尚弥/平良響/片岡龍也組)が、730周を走り切って初の総合優勝を遂げた。

ENEOS スーパー耐久シリーズ 2023 第2戦「NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース」
開催日:2023年5月26~28日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C

 2018年にリニューアルスタートし、今年で6回目の開催となったS耐富士24時間レース。すっかり初夏のアウトドア的なイベントとして定着しつつあるようで、コース脇にはキャンプを楽しむ観客のテントが数多く並び、食事時にはバーベキューの煙が上がっていた。

 そしてグランドスタンド周辺やコースサイドではさまざまなイベントも実施され、熱心なレースファンはコースサイドで思い思いに写真撮影を楽しんだ。また夜には会場を彩る花火が打ち上げられ、終日レースを存分に満喫できる週末となり、3日間で約4万7000人の来場客を集めた。

2018年から復活開催となった「富士 SUPER TEC 24時間レース」も今年で開催6回目を数え、毎年さまざまなドラマが生み出されている国内屈指のタフなレースだ。
24時間の走行でもっとも多く周回してトップチェッカーを受けたチームに贈られる総合優勝トロフィーには、2018年からのウィナーのマシン名と選手名が刻まれていた。
アドバンコーナーのアウト側の芝生エリアでは、テント等のキャンプ道具を持ち込んでゆったり観戦するスタイルがすっかり定着している。
レース中の富士スピードウェイを上空から望むFSWスカイクルーズ。普段見ることができない俯瞰の景色が楽しめる遊覧ヘリが有料で運航された。
この大会では恒例行事となっている打ち上げ花火。御殿場市内の夜景をバックに、レース中の富士スピードウェイの夜空を鮮やかに演出した。
グランドスタンド裏のイベント広場には各種ショップのテントがズラリと並ぶ。観戦記念や応援グッズを購入できる他、グルメが楽しめる屋台も建ち並んだ。
放送開始55周年を迎えたウルトラセブンと富士 SUPER TECのコラボレーションにより、イベント広場内ドームテントにはウルトラ警備隊特装車・ポインターが展示された。
夜明けを告げる鮮やかな日の出の時間、SC明けのコース上ではドライバーたちが変わらず周回数を積み重ねていく。
韓国のハンコックタイヤ大田工場の大規模火災の影響により、レースで使用するタイヤの供給が不可能となったため、ブリヂストンが緊急でドライタイヤを供給することとなった。

 レースは8つのクラスに52台がエントリー。26日に行われた公式予選でポールポジションを獲得したのは、ST-Xクラス(FIA GT3車両・全5台)のHELM MOTORSPORTS GTR GT3(鳥羽豊/平木湧也/平木玲次/ヤン・マーデンボロー/ショウン・トン組)で、これに中升 ROOKIE AMG GT3、DENSO LEXUS RC F GT3(永井宏明/小高一斗/嵯峨宏紀/永井秀貴/中山雄一/上村優太組)、KCMG NSX GT3(ポール・イップ/エドアルド・リベラッティ/マーチー・リー/ホーピン・タン/ジョシュ・バードン組)、DAISHIN MPRacing GT-R GT3(JOE SHINDO/藤波清斗/青木孝行/大八木信行/坂口夏月組)が続いた。

ST-Xクラス

 決勝レースは薄曇りの27日14時59分にスタート。最初にトップに飛び出したのは中升 ROOKIE AMG GT3の片岡選手で、これにDENSO LEXUS RC F GT3の嵯峨選手、HELM MOTORSPORTS GTR GT3の鳥羽選手が続いたが、DENSO LEXUS RC F GT3はマシントラブルのためにトップ争いから脱落。中盤からはプロドライバーに交代したDAISHIN MPRacing GT-R GT3がじわじわと順位を上げてきた。

 大きなアクシデントも起きず進んだ耐久レースは、19時半を過ぎたころにこのレース初めてのフルコースイエロー(FCY)となり、19時45分からの打ち上げ花火の最中にST-Zクラスの車両がダンロップコーナー手前で激しくクラッシュ。これでセーフティカー(SC)導入となった。

 日付が変わる直前にST-4クラスの車両が小動物との接触から出火し、2度目のSC導入。このタイミングでHELM MOTORSPORTS GTR GT3は義務づけられたメンテナンスタイムに入ると、その間に中升 ROOKIE AMG GT3がトップに立つことに。ここから追い上げ態勢というHELM MOTORSPORTS GTR GT3だったが、交換したブレーキローターが割れるトラブルのためにピットインし、順位を落とすことになった。

 夜中の3時半にST-4クラスの車両が他車両との接触で、ダンロップ コーナーで激しくクラッシュ。FCYから3回目のSC、さらに赤旗が掲示され、辺りがすっかり明るくなった5時までレースは中断となった。レース再開時に中升 ROOKIE AMG GT3はSCを追い越したとしてピットストップ60秒のペナルティ。これでDAISHIN MPRacing GT-R GT3がトップと同一周回となり、7時前には藤波選手がついにトップを奪った。

 レースはその後もDAISHIN MPRacing GT-R GT3がトップを守っていたが、ジェントルマンドライバーであるSHINDO選手の義務周回数が足らず、他ドライバーへの交代ができない状態となった。2周近い差の総合2番手を走行していた中升 ROOKIE AMG GT3は、蒲生選手が1周につき3秒ほどSHINDO選手との差を詰め、残り23分、718周目の100Rでトップを奪った。その後は蒲生選手が46秒の差をつけて15時過ぎにトップチェッカー。メルセデスの総合優勝は一昨年大会以来2回目だった。

ST-Xクラス優勝は#14 中升 ROOKIE Racingの中升 ROOKIE AMG GT3(鵜飼龍太/蒲生尚弥/平良響/片岡龍也組)。
総合優勝を果たした#14 中升 ROOKIE Racing。左から鵜飼選手、蒲生選手、平良選手、片岡選手が登壇し、誇らしげにトロフィーを掲げた。
2位は#819 GTNET MotorSportsのDAISHIN MPRacing GT-R GT3、3位は#202 KCMGのKCMG NSX GT3。
ST-Xクラス表彰の各選手。

ST-Zクラス/ST-1クラス

 ST-Zクラス(GT4車両・全10台)は、埼玉トヨペットGB GR Supra GT4(山﨑学/吉田広樹/服部尚貴/川合孝汰/野中誠太組)が開幕戦に続き連勝。ST-1クラス(ST-2~5以外の車両・全2台)は、序盤からトップを守ったシンティアム アップル KTM(井田太陽/加藤寛規/吉本大樹/小林崇志/高橋一穂組)が大会を3連覇し、総合でも5位でゴールした。

ST-Zクラス優勝は#52 埼玉トヨペット Green Braveの埼玉トヨペット GB GR Supra GT4(山﨑学/吉田広樹/服部尚貴/川合孝汰/野中誠太組)。
2位は#21 Audi Team Hitotsuyamaのベンチャー投資のファンディーノ Audi R8 LMS、3位は#885 SHADE RACINGのシェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVO。
ST-Zクラス表彰の各選手。
ST-1クラス優勝は#2 Ks フロンティア KTMカーズのシンティアム アップル KTM(井田太陽/加藤寛規/吉本大樹/小林崇志/高橋一穂組)。
ST-1クラスの表彰式。左から2位の#47 D'station Racing、1位の#2 Ks フロンティア KTMカーズ。

ST-2クラス/ST-3クラス

 ST-2クラス(排気量2401~3500ccの4輪&前輪駆動車両・全5台)は、ENDLESS GR YARIS(花里祐弥/石坂瑞基/伊東黎明/岡田整組)が昨年第5戦もてぎ以来の優勝。ST-3クラス(排気量2401~3500ccの後輪駆動車両・全5台)は、最後の1時間でトップの車両がストップする波乱もあり、ヒグチロジスティクスサービス RC350 TWS(近藤説秀/石森聖生/鶴賀義幸/尾崎俊介/石塚崇宣組)が初優勝を飾った。

ST-2クラス優勝は#13 ENDLESS SPORTSのENDLESS GR YARIS(花里祐弥/石坂瑞基/伊東黎明/岡田整組)。
2位は#6 シンリョウレーシングチームの新菱オートDIXCEL夢住まい館エボ10、3位は#743 Honda R&D ChallengeのHonda R&D Challenge FL5。
ST-2クラス表彰の各選手。
ST-3クラス優勝は#38 TRACYSPORTS with DELTAのヒグチロジスティクスサービス RC350 TWS(近藤説秀/石森聖生/鶴賀義幸/尾崎俊介/石塚崇宣組)。
2位は#39 TRACYSPORTS with DELTAのエアバスター WINMAX RC350 TWS、3位は#15 OKABEJIDOSHA motorportの岡部自動車フェアレディZ34。
ST-3クラス表彰の各選手。

ST-4クラス/ST-5クラス

 ST-4クラス(排気量1501~2400ccの車両・全7台)は、予選上位の4台がアクシデントやトラブルで脱落する中、堅実に周回を重ねた全薬工業G/MOTION'GR86(塩谷烈州/瀬戸貴巨/山本謙悟/ピストン西沢/窪田俊浩組)がシリーズ連勝を決めた。そして最激戦区のST-5クラス(排気量~1500ccの車両・全12台)は、予選2番手のDIXCELアラゴスタNOPROデミオ(西澤嗣哲/大谷飛雄/小西岬/野上敏彦/山本浩朗/上松淳一組)が連覇した。

ST-4クラス優勝は#60 チーム ジーモーションの全薬工業 G/MOTION'GR86(塩谷列州/瀬戸貴巨/山本謙悟/ピストン西沢/窪田俊浩組)。
2位は#66 OVER DRIVEのodula TONE MOTUL ROADSTER RF、3位は#18 浅野レーシングサービスのWedsSport GR86。
ST-4クラス表彰の各選手。
ST-5クラス優勝は#17 TEAM NOPROのDIXCELアラゴスタNOPROデミオ(西澤嗣哲/大谷飛雄/小西岬/野上敏彦/山本浩朗/上松淳一組)。
2位は#72 日本自動車大学校のOHLINS Roadster NATS、3位は#65 OVER DRIVEのodula TONE 制動屋ロードスター。
ST-5クラス表彰の各選手。

ST-Qクラス

 開発車両によるST-Qクラスには、トヨタ、SUBARU、マツダ、日産、ホンダから6台がエントリーし、全車が完走。世界初の液体水素燃料レーシングカーとして注目のORC ROOKIE GR Corolla H2 concept(MORIZO/佐々木雅弘/石浦宏明/小倉康宏/ヤリ-マティ・ラトバラ組)は、予定された燃料タンクのポンプを2回交換する作業を行い、24時間を無事走り切った。またGT4 車両をベースとしてCNF(カーボンニュートラル燃料)を使用するNissan Z Racing Concept(平手晃平/佐々木大樹/高星明誠/松田次生組)は、ST-Zクラスに相当する2位でゴールした。

ST-Qクラス1位は#230 NISMOのNissan Z Racing Concept(平手晃平/佐々木大樹/高星明誠/松田次生組)。
2位は#28 ORC ROOKIE RacingのORC ROOKIE GR86 CNF concept、3位は#61 Team SDA EngineeringのTeam SDA Engineering BRZ CNF Concept。
昨年に続き、助っ人ドライバーにTOYOTA GAZOO Racing WRTのヤリ-マティ・ラトバラ代表を迎えた#32 ORC ROOKIE RacingのORC ROOKIE GR Corolla H2 concept。液体水素燃料を採用した新たな挑戦は、MORIZO選手を始め、佐々木雅弘選手、石浦宏明選手、小倉康宏選手、そしてラトバラ選手の好走で、大きなトラブルもなく358周の完走を遂げた。
#55 MAZDA SPIRIT RACINGのMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept(寺川和紘/関豊/井尻薫/前田育男/阪口良平/堤優威組)はトラブルが発生するも無事完走。#271 Team HRCは武藤英紀/伊沢拓也/大津弘樹/小出峻組という布陣で、CIVIC TYPE R CNF-Rで参戦。車名のとおり、CNFに適合する車両の開発をテーマとしている。
ST-Qクラスのセレモニー。
数回のSC導入や赤旗中断もあったが、2023年は730周で24時間チェッカーを迎えた。トップは約3,330kmを走破した計算だ。

フォト/吉見幸夫、遠藤樹弥、今村壮希 レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部

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