細木智矢選手が2023シーズンの全日本ダートトライアルと全日本ジムカーナの両選手権でW優勝達成の快挙!

レポート ジムカーナ

2023年6月12日

6月3~4日に奈良県山添村の名阪スポーツランド・Cコースで開催された全日本ジムカーナ選手権 第3戦では、史上初の記録が生まれた。2023年、全日本ダートトライアル選手権と全日本ジムカーナ選手権の両カテゴリーに参戦する細木智矢選手は、3月開催の全日本ダートトライアル選手権の開幕戦で勝利、そしてこの全日本ジムカーナ選手権でも優勝を遂げ、同一年内で2カテゴリーを制した。

2023年JAF全日本ジムカーナ選手権 第3戦「ALL JAPAN GYMKHANA in 名阪 まほろば決戦」
開催日:2023年6月3~4日
開催地:名阪スポーツランド・Cコース(奈良県山添村)
主催:LAZY W.S、R-7

 昨年末に路面の大改修が行われた名阪スポーツランド・Cコースが舞台となる今大会、路面の凹凸やバンクがなくなってフラット化された新路面は、多くのドライバーから「走りやすくなった」と高評価を得た。その一方で、以前の名阪の路面に慣れていた選手にとっては、「路面の目が細かくなったせいか、タイヤがグリップする感覚が今までとはズレがあり、とくに高速コーナーではアンダーステアが出やすい」と、攻略が難しい路面ともなったようだ。

 その新舗装の路面に施されたコースレイアウトは、前半がターンセクションを含めたテクニカルな設定で、後半は外周区間を中心とした高速コースが主体となる。スタート直後とゴール前の270度ターンはいずれもダブルパイロンが配置され、旋回中のラインコントロールが要求される。また、走行ラインのイン側だけではなくアウト側にも走行ラインを規制するパイロンが置かれた区間もあるため、よりシビアなライン取りが要求される設定だ。

 日本列島付近を通過した台風2号と、活発な梅雨前線の影響により、大会前日の2日は愛知県や静岡県などで線状降水帯が発生。各地では記録的な豪雨に見舞われ、名阪スポーツランドにアクセスする名阪国道も2日夜から3日にかけて一部区間が規制雨量に達して通行止めとなった。これを受け、主催者は3日のスケジュールを2時間遅らせることを決める。各地の通行止めに阻まれ、会場に到着することが遅れた選手も、無事に公開練習を走行することができた。そして台風一過となった3日は好天に恵まれた。

前半はテクニカル寄り、後半は外周を走るハイスピード寄りのレイアウト。そして最初と最後にパイロンの270度ターンが設定された。

BC1クラス

 27台がエントリーしたBC1クラスは、第2ヒートでベストタイム更新ラッシュとなった。第1ヒートでは、野原博司選手(ホンダ・CR-X)の1分17秒539を筆頭に、第2戦優勝の西井将宏選手(ホンダ・インテグラ)、山越義昌選手(ホンダ・シビック)、最上佳樹選手(ホンダ・インテグラ)の4台が1分17秒台に並び、ホンダ車勢が上位を独占する。

 だが第2ヒートに入ると、第1ヒートは2本のパイロンタッチで下位に沈んだ全日本ダートトライアルチャンピオンの細木智矢選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、ベストタイムを一気に1分15秒958まで引き上げてくる。その後、26台のドライバーが果敢にアタックするものの、細木選手のタイムを上回る選手は現れなかった。

 ジムカーナとダートトライアルとの両全日本選手権での優勝は、前週に田辺剛選手に奪われたものの、細木選手が今年の全日本ダートトライアル開幕戦優勝に続き、同じ年での両カテゴリー優勝という快挙を達成した。2位には第1ヒートトップの野原選手が入賞し、シリーズランキングではトップに浮上。開幕戦優勝の最上選手が3位に入賞し、シリーズランキングもトップの野原選手と6点差の2番手に浮上した。

BC1クラス優勝は細木智矢選手(MJTDLSWKスイフト)。
第2ヒート、クラス先陣を切ってベストタイムをたたき出した細木選手。ジムカーナの師匠・松本敏選手、メカニック・今村宏臣選手とともにパルクフェルメで26台のゴールを待ち、初優勝が確定した瞬間に喜びを爆発させた。
2位は野原博司選手(YH丸久Moty's渦CR-X)、3位は最上佳樹選手(YHエムアーツWmインテグラ)。
BC1クラスの表彰式。左から4位の山越義昌選手、2位の野原選手、1位の細木選手、3位の最上選手、5位の西井将宏選手、6位の牧田祐輔選手。

PE1クラス

 PE1クラスは、スーパー耐久シリーズでのアクシデントにより負傷を負った山野哲也選手(アルピーヌ・A110S)が、「回復率は95%」とほぼ万全の体調で挑んだ第1ヒートで早速ベストタイムをマーク。開幕戦以来の出場となる牧野タイソン選手(アルピーヌ・A110S)が0.364秒差で追いかける展開だ。

 第2ヒートで牧野選手が逆転を狙うものの、気負いすぎたか約1秒のタイムダウン。第1ヒートのタイムで逃げ切った山野選手が、第2戦に続き今季2勝目を飾った。2位に牧野選手、3位には大橋政哉選手(アルピーヌ・A110S)が入賞し、大橋政哉選手がシリーズランキングトップの座を死守した。

PE1クラス優勝は山野哲也選手(EXEDY71RS A110S)。
前週には富士スピードウェイで行われたスーパー耐久の24時間レースに参戦、怪我の影響やレース疲れを見せずに全日本ジムカーナ選手権で勝利を飾った山野選手。ナンバー1サインで笑顔を見せた。
2位は牧野タイソン選手(DL★Rz速心A110S)、3位は大橋政哉選手(DLμG-LFWA110S)。
PE1クラスの表彰式。左から4位の飯野弘之選手、2位の牧野選手、1位の山野選手、3位の大橋政哉選手、5位の深川敬暢選手、6位の古谷知久選手。

PN1クラス

 斉藤邦夫選手(トヨタ・ヤリス)と福田大輔選手(マツダ・MAZDA2)が1勝ずつ挙げているPN1クラスは、パイロンセクションをうまくまとめた朝山崇選手(トヨタ・ヤリス)が第1ヒートのベストタイムをマーク。路面温度が上昇した第2ヒートは、ライバル選手が軒並みタイムダウンに終わる中、朝山選手はさらにベストタイムを更新。両ヒートを制する走りで今季初優勝を獲得した。

 2位は第2戦優勝の福田選手が獲得。3位には、第1ヒートで1分21秒台のタイムをマークした中根卓也選手(トヨタ・ヤリス)が入賞した。一方、第2戦を終えてシリーズランキングトップだった斉藤選手はターンセクションに苦しみ7位。その結果、シリーズランキングでは福田選手と朝山選手が同点で並ぶ結果に。

PN1クラス優勝は朝山崇選手(DLETP・BPFヤリスITO)。
ここまで2戦連続で表彰台を獲得している朝山選手が、3戦目でようやくその頂点に立った。視察に訪れた住友ゴム工業株式会社の山本悟代表取締役社長と、チーフエンジニアでレーシングサービスコシミズの小清水昭一郎代表から祝福を受けた。
2位は福田大輔選手(T2レイズWmSPMマツダ2)、3位は中根卓也選手(DLwmRYP弟ヤリスITO)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の阪本芳司選手、2位の福田選手、1位の朝山選手、3位の中根卓也選手、5位の加田充選手、6位の中根康仁選手。

PN2クラス

 事実上、マツダ・ロードスターのワンメイク状態となるPN2クラスは、第1ヒートのタイムで逃げ切った川北忠選手が、今季初優勝を獲得。2位には若手の小野圭一選手が入賞し、シリーズランキングトップの座を死守。3位は第2戦で5位に入賞した古田公保選手が入賞し、全日本では自身初となる表彰台の一角をつかんだ。

PN2クラス優勝は川北忠選手(DL HAL ロードスター)。
2021年の全日本スナガワラウンド以来、久しぶりの優勝となった川北選手。第2ヒートで小野圭一選手にタイムを詰め寄られるも、コンマ6秒差をつけて逃げ切った。勝利の瞬間、拳を強く握りしめてガッツポーズ。
2位は小野選手(DLクスコWm軽市ロードスター)、3位は古田公保選手(505ロードスター)。
PN2クラスの表彰式。左から4位の中田匠選手、2位の小野選手、1位の川北選手、3位の古田選手、5位の柏昇吾選手、6位の奥浩明選手。

PN3クラス

 総勢35台がエントリーしたPN3クラス。第2戦優勝のユウ選手(マツダ・ロードスターRF)が決勝ヒートで新舗装の路面にしっかりと対応し、第1ヒートでクラス唯一となる1分17秒台のベストタイムをマーク。奥井優介選手(トヨタ・GR86)が、第1ヒートでユウ選手に0.131秒差に迫るものの、第2ヒートは脱輪+パイロンタッチのペナルティで逆転ならず。

 逆に、第1ヒートで脱輪+パイロンタッチのペナルティを受けた大多和健人選手(マツダ・ロードスターRF)が、第2ヒートで挽回し、それまで3番手だった久保真吾選手(アバルト・124スパイダー)をかわして3位入賞を果たした。

PN3クラス優勝はユウ選手(BS DRONE☆ロードスター)。
ユウ選手は第2戦TAMADAに続き2連勝を果たした。ディフェンディングチャンピオンとしての貫禄を見せる走りを披露し、クラス唯一1分17秒台をマーク。激戦が予想された35台のライバルたちを圧倒した。
2位は奥井優介選手(DL☆コサリRSK☆茨トヨ86)、3位は大多和健人選手(熊王TMW身延牧速ロードスター)。
PN3クラスの表彰式。左から4位の久保真吾選手、2位の奥井選手、1位のユウ選手、3位の大多和選手、5位の大坪伸貴選手、6位の若林隼人選手。

PN4クラス

 PN4クラスは、第1ヒートで茅野成樹選手(トヨタ・GRヤリス)がベストタイムを奪うものの、強い日差しが雲に遮られた第2ヒートになると展開が変わる。クラス先頭ゼッケンの折茂紀彦選手(トヨタ・GRヤリス)から次々とタイムアップを果たしていった。だが、茅野選手が第1ヒートでマークしたタイムには届かない。

 このまま茅野選手が逃げ切るかと思われたが、第1ヒートをリタイアで終えた松本敏選手(トヨタ・GRヤリス)がついにベストタイムを0.162秒更新してくる。残すは茅野選手のみとなったが、その茅野選手が松本選手のタイムをさらに1.016秒更新。

「第2ヒートは久々に会心の走りでした」という茅野選手が、開幕戦以来となる今季2勝目を挙げた。2位に松本選手、3位には三菱・ランサーエボリューションⅩの石原昌行選手が入賞し、トヨタ・GRヤリスの表彰台独占を阻止した。

PN4クラス優勝は茅野成樹選手(EXEDY☆SCTAヤリスDL)。
住友ゴム工業の山本代表取締役社長からウィナーズキャップを受け取り、ガッチリと握手を交わす茅野選手。第1ヒートで出した自身のタイムを約1.1秒も縮め、1分15秒861で逆転勝利を決めた。
2位は松本敏選手(ADVICS☆VT☆DLヤリス)、3位は石原昌行選手(SエボTS☆DLランサーBPF)。
PN4クラスの表彰式。左から4位の折茂紀彦選手、2位の松本選手、1位の茅野選手、3位の石原選手、5位の片山誠司選手、6位の西川佳廣選手。

BC2クラス

 BC2クラスは、第1ヒートで2番手を2秒以上引き離す1分15秒016のベストタイムをマークした広瀬献選手(ホンダ・S2000)が、第2ヒートでもベストタイムを1分14秒904まで更新し、後続を寄せつけず今季2勝目を飾った。

 2位には、第1ヒートでパイロンタッチのペナルティを受けた梅村伸一郎選手(ロータス・エキシージ)が、第2ヒートで挽回して入賞。3位は第1ヒート5番手の野本栄次選手(マツダ・RX-7)が、ポジションをふたつ上げて今季初表彰台を獲得した。

BC2クラス優勝は広瀬献選手(WMマロヤAR林歯科S二千YH)。
第1ヒートは1分15秒016、第2ヒートは1分14秒904と、広瀬選手はアタマひとつ抜け出したタイムを刻んだ。他選手の追随を許さない走りでクラスを席巻、競技後は穏やかな表情を見せた。
2位は梅村伸一郎選手(ブリッドDLエキシージ)、3位は野本栄次選手(BSエナペタルジアロRX-7)。
BC2クラスの表彰式。左から4位の若林拳人選手、2位の梅村選手、1位の広瀬選手、3位の野本選手、5位の天満清選手、6位の藤井雅裕選手。

BC3クラス

 津川信次選手(トヨタ・GRヤリス)と菱井将文選手(トヨタ・GRヤリス)が第1ヒートで1分13秒台のタイムでトップと2番手を分けたBC3クラス。第2ヒートは、飯坂忠司選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)と大橋渡選手(スバル・インプレッサWRX)が1分13秒台に突入してくるものの、第1ヒート2番手の菱井選手のタイムには届かない。

 一方、第1ヒートトップの津川選手は、第2ヒートで1分12秒台に突入。クラス最終ゼッケンの菱井選手も逆転を狙って果敢にアタックするが、ゴール前のパイロンセクションで痛恨のパイロンタッチという結果に。「次の北海道2連戦は菱井選手が得意なコースなので、その前に勝つことができて良かった」という津川選手が、両ヒートを制する走りで今季2勝目を挙げた。2位に菱井選手、3位に大橋選手がそれぞれ入賞した。

BC3クラス優勝は津川信次選手(DL☆BRIDE☆URGヤリス)。
菱井将文選手からのプレッシャーを跳ねのけ、津川選手が2ヒートともにベストタイムで名阪ラウンド勝利。車両から降りてすかさずガッツポーズ、そしてサムズアップでうれしさを表した。
2位は菱井選手(BS・クスコヤリス)、3位は大橋渡選手(DLプレジャーインプレッサ)。
BC3クラスの表彰式。左から飯坂忠司選手、2位の菱井選手、1位の津川選手、3位の大橋選手、5位の一色健太郎選手、6位の堀隆成選手。
PN2クラスでは、暫定入賞者たちが後続選手に抜かれないようにコースに対して念を送っていた。松本選手いわく「意外と効くから、みんなやったほうがいいよ(笑)」とのこと。
AT車のBRZでPN3クラスに挑んだ河本晃一選手。PE2クラスの車両ながら不成立ゆえ、AT車でMT車クラスへの参戦を余儀なくされていたものの、10位でポイントを獲得した。
若手スラローマーとしてこれからの活躍に期待が高まるBC3クラスの堀選手。昨年の開幕戦・筑波ラウンド以来の6位入賞を果たした。メカニックとして帯同するのは、同じ北陸の若手全日本ダートトライアル選手、浦上真選手だ。

フォト/CINQ、大野洋介、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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