激戦となったJN4クラスは西川真太郎/本橋貴司組が逆転優勝
2023年6月16日
このラウンドからいよいよ後半戦に突入する、第5戦を迎えた全日本ラリー選手権。第2戦からのターマック4連戦も、このラウンドで一段落することとなる。次戦の第6戦と第7戦はいずれもグラベルラウンドとなるため、ターマックを得意とする選手は、グラベル2連戦の前に少しでもシリーズポイントを加算しておきたい重要な一戦だ。
2023年JAF全日本ラリー選手権 第5戦「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg」
開催日:2023年6月9~11日
開催地:京都府京丹後市周辺
主催:SYMPHONY、OECU-AC
京都府の最北端に位置する京丹後市をホストタウンとした第5戦は、2日間合わせて12SS、SS総距離117.36kmで勝負が繰り広げられる。ラリー初日の6月10日は3本の林道ステージを2ループする6SS/58.08km、ラリー最終日となる11日は初日に走行した2本の林道SSを逆方向に走行する2SSと、新たな林道SS1本を2ループする6SS/59.28kmを設定。初日は上り主体のSSが多く、最終日は下り主体のSSで構成されている。
2017年にすべての区間でリフレッシュ工事を終えた丹後縦貫林道に設定されるSSは、全体的に路面のアンジュレーションが少なく、しっかりと整備されたフラットな路面が続く。コースの両端には深い側溝が配備され、インカットによる砂利や土がコース上に散乱することもなく、2日間ともクリーンな路面での勝負が展開された。
ラリー開催地となる近畿地方は、すでに大会前に梅雨入りしたが、ラリー初日は雨が降ることなくドライ路面。ラリー最終日は早朝に小雨が降り、午前中に行われる1ループ目はほんのりと濡れたウェット路面になったものの、雨が止んで気温が上昇した2ループ目となる午後のSSはドライ路面となった。この路面コンディションの変化にタイヤ選択をどう合わせていくかも、クラスによっては勝敗を分ける大きな鍵となった。
JN4クラス
スズキ・スイフトスポーツのワンメイク状態であるJN4クラス。西川真太郎/本橋貴司組が2勝、内藤学武/大高徹也組と東隆弥選手が1勝ずつで迎えた第5戦は、この3クルーが最終SSまで1秒を争う激戦を繰り広げていた。
初日は、地区戦時代からこのコースをよく知る東選手が西川/本橋組を4.3秒リード、その西川/本橋組から14.0秒遅れて内藤/大高組が追いかける展開となったが、2日目序盤の雨のステージをドライタイヤで挑んだ東/白石認組が大ブレーキ。SS8(Nariai Reverse 1)ではウェットタイヤを選択した西川/本橋組と内藤/大高組にかわされ、3番手にポジションを落とす。
東/白石組は、ドライ路面となったSS10(Oouchi 2)、SS11(Nariai Reverse 2)、SS12(Tsunotsuki Reverse 2)で3SS連続ベストタイムを奪い、2番手の内藤/大高組とのタイム差を詰めてくるものの、反撃もここまで。ウェット路面、ドライ路面のレグ2でベストタイムはなかったが、コンスタントに上位タイムを奪った西川/本橋組が今季3勝目を獲得。2.7秒差で内藤/大高組が2位に入賞、内藤/大高組との差を0.6秒差に縮めた東/白石組が3位入賞という結果となった。
JN1クラス
このラリーからスバル・WRX S4をベースとした新型JP4車両を投入する予定だったJN1クラスの新井敏弘/保井隆宏組と鎌田卓麻/松本優一組の「SUBARU RALLY CHALLENGE」チームの2台は、このラリーへの新型車両投入を見送った。ラリー開催前に群馬県で行われたテスト走行中に鎌田選手がクラッシュして負傷、事故原因の究明が必要であるということを踏まえ、新井敏弘/保井組と鎌田/松本組は欠場することとなった。
ラリーは、「今回のレッキは良いフィーリングだった。日曜日は雨が降る予報もあるけど、今日(土曜日)はドライコンディションで走れるのは良いことだよ。クルマのセットアップも問題ないはずだ」とスタート前に語っていたヘイキ・コバライネン選手が、初日6本のSSすべてでベストタイムをマーク。
コバライネン/北川紗衣組は2番手の福永修/齊田美早子組(シュコダ・ファビアラリー2 Evo)に45.3秒差をつけ、初日を折り返す。また初日3番手でサービスに戻った勝田範彦/木村裕介組(トヨタ・GRヤリスJP4-ラリー2)は、エキマニが割れたために最終サービスで修復作業を行ったが、サービス時間内では修復は不可能と判断したため、初日でレグ離脱を決意した。
午前中のSSがウェット路面となったラリー2日目、コバライネン/北川組は雨が路面に残るオープニングステージのSS7(Oouchi 1)こそクラス3番手タイムだったものの、SS8からSS12までベストタイムを連発。2位でフィニッシュした福永/齊田組との差を1分15秒2に広げ、今季4勝目を飾った。2位に福永/齊田組、3位には2WDのプジョー・208ラリー4で健闘し、雨のSS7ではベストタイムをたたき出した新井大輝/毛利太哉組が入賞した。
JN2クラス
第4戦久万高原では、20代のドライバー山田啓介選手(トヨタ・GRヤリス)が全日本初優勝を飾り、話題を集めたJN2クラス。一方、その久万高原ではエンジンの不調も重なり2位に甘んじた奴田原文雄/東駿吾組(トヨタ・GRヤリス)が、ラリー丹後の初日すべてのSSでベストタイムをマークする。
ウェット路面となった2日目は、山田/藤井俊樹組が3本のSSでベストタイムを奪うものの、奴田原/東組は最終的には2位に1分30秒以上の大差をつけ、今季3勝目を挙げた。初日のSS6(IwatakiOkuyori 2)でパンクを喫し、クラス4番手に順位を落とした山田/藤井組は、2日目のSS7で総合ベストタイムをマークする走りを見せて2位入賞。そしてクラス唯一となるスバル・WRX STIで健闘する三枝聖弥/船木一祥組が今季初表彰台となる3位に入賞し、若手ドライバーが表彰台の一角をつかんだ。
JN3クラス
ターマックラウンド3連勝の山本悠太/立久井和子組(トヨタ・GR86)がシリーズを大きくリードするJN3クラス。初日は、その山本/立久井組の前に、前年度のチャンピオン竹内源樹/木村悟士組(スバル・BRZ)と、開幕戦優勝のベテラン上原淳/漆戸あゆみ組(スバル・BRZ)が立ちはだかり、3台がトップ争いを展開した。
山本/立久井組に3.2秒差のリードで初日を折り返した竹内/木村組は、ウェット路面となったラリー2日目序盤のSS7~SS9で一気にスパート。SS9を終えて、山本/立久井組との差を15.6秒に広げた。最終セクションは長﨑雅志/大矢啓太組(トヨタ・GR86)と山本/立久井組にベストタイムを奪われたものの、最終的には2位の山本/立久井組に8.6秒差をつけ、竹内/木村組が今季初優勝を飾った。2位の山本選手は、シリーズ2番手に浮上してきた曽根崇仁選手とのポイント差を40点差に拡大。3位には、SS10とSS11でベストタイムをマークした長﨑/大矢組が入賞した。
JN5クラス
開幕戦から第4戦まで4人のウィナーが誕生するという、近年稀に見る接戦となっているJN5クラス。第4戦を終えてシリーズランキングトップは、今シーズン未勝利ながらも2位1回、3位1回を獲得している小川剛/梶山剛組(トヨタ・ヤリス)という状況だ。
迎えた第5戦、初日に小川/梶山組と今季2戦目の出場となる松倉拓郎/山田真記子組(トヨタ・ヤリス)が激しい2番手争いを展開する中、第3戦優勝の大倉聡/豊田耕司組(トヨタ・GRヤリス)が初日を終えた時点で2番手の松倉/山田組に41秒のマージンを築き上げていた。
2日目はウェット路面のSS7~9で松倉/山田組が3SS連続ベストタイムを奪い、小川/梶山組との差を21.1秒差に詰めるが、大倉/豊田組もドライ路面のSS10でこの日最初のベストタイムを奪い対抗。SS11とSS12は大倉/豊田組と松倉/山田組がベストタイムを分け合い、トータル19.1秒差で逃げ切った大倉/豊田組が今季2勝目を挙げるとともにシリーズランキングもトップに浮上した。
2位の松倉/山田組はシリーズランキング10番手から2番手に急浮上。一方、シリーズランキングトップだった小川/梶山組はSS9で転倒し、痛恨のリタイア。全日本ラリー2戦目となる地元の与謝野町からエントリーの杉本延重/馬瀬耕平組(ホンダ・フィット)が3位に入賞した。
JN6クラス
JN6クラスは開幕から連勝街道を突き進む天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・アクア)が、初日は6SS中5SSで、2日目はスルー走行のためノーショナルタイムが与えられたSS9以外の5SS中3SSでベストタイムを奪う走りで、今季負け知らずの5勝目を獲得。タイトル獲得に向けて大きな1勝をつかみ取った。
2位はATミッションがオーバーヒートするトラブルを抱えながらも海老原孝敬/蔭山恵組(ホンダ・フィット)が入賞。3位には清水和夫/山本磨美組(トヨタ・ヤリス)が入賞し、第2戦から上位3台は同じリザルトとなった。
フォト/CINQ、遠藤樹弥、中島正義、山口貴利 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部
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