WRC勝田貴元選手、第6戦はSS3でベストタイムを奪うも、2戦連続のデイリタイア
2023年6月15日

2023年FIA世界ラリー選手権(WRC)第6戦「ラリー・イタリア サルディニア」が6月1日~4日、地中海に浮かぶリゾートアイランドのイタリア・サルディニア島で開催。高速かつ道幅が狭い過酷なグラベルラリーに、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加中の日本人ドライバー、勝田貴元選手もコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とともに参戦、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)の4台目のGR YARIS Rally1 HYBRIDでチャレンジした。
2023年FIA世界ラリー選手権 第6戦「ラリー・イタリア サルディニア」
開催日:2023年6月1~4日
開催地:イタリア・サルディニア島
6月1日・シェイクダウン、デイ1 / 6月2日・デイ2
2022シーズンのラリー・イタリア サルディニアで6位入賞の経験を持つ勝田貴元選手。だが、このラリーには苦手意識を持っているようで、「SSによってキャラクターが異なるセクションが多いうえに、基本的にグリップレベルも低い。そのうえ、道幅が狭くてイン側、アウト側にコンクリートがあって、クルマをコンパクトにプッシュしなければならない。思い切ったトライができない」と語っている。
それでも「コストの削減で、今年からテストの日程が大幅に削減されたこともあり、今回のサルディニアに合わせたテストは行われなかったんですけど、ラリー・ポルトガル前に行われたテストがサルディニア島だったので、その時からフィーリングは悪くありませんでした。クルマに対する自信を持っていました」とのことで、勝田貴元選手はシェイクダウンで7番手タイムをマーク。
さらにデイ1唯一のステージ、オルビア市内でスーパーSSとして行われたSS1では、TGR-WRT勢の最上位となる4番手タイムをマークする、素晴らしい走りを披露した。
そして、舞台を山岳エリアに移したデイ2から、本格的なラリーが始まった。「金曜日のデイ2は出走順が後ということもあって、できるだけタイムを稼いでいきたいところだったんですけど、レッキの期間中から午後に雨が降ることが多く、路面が湿っていたので、ドライほど出走順の差が出ませんでした」と語った勝田貴元選手だが、オープニングステージとなるSS2で4番手タイムをマークしたほか、SS3でベストタイムをマークし、総合3番手につける好調なスタートを切った。
とはいえ、大会最長のステージとなる49.9kmのSS4では「タイヤのこともあって、すごく気をつけて走っていたので序盤から中盤にかけてタイムを失っていました。後半でプッシュしようとしたところオーバーシュートしてタイムをロスしていましました」と苦戦し、トップから27.7秒遅れの6番手タイムに留まった。
「今大会はメインのタイヤがハードに指定され、ソフトタイヤが12本に制限されました。ソフトとハードで比較すると、ドライであれば1kmあたり0.3秒から0.5秒ぐらい差があるので、ソフトタイヤをいかに使うかがポイントとなっていました。」とラリー攻略のカギになる、タイヤについて語った勝田貴元選手。
さらに、デイ2については「午前中は悪くないペースだったんですけど、午後は不安定な天候のなかで自分の思ったようなパフォーマンスが発揮できなかった」と反省した勝田貴元選手だが、SS6では3番手タイムをマークし、総合5番手でデイ2を終えた。

6月3日・デイ3 / 6月4日・デイ4
タイヤ選択に悩みながらも、まずまずのラリーを見せていた勝田貴元選手だが、デイ3のオープニングステージとなるSS8で、「ステージ終盤のウォータースプラッシュで、マシンを破損してしまいました。」と、予想外のハプニングに見舞われた。
「ウォータースプラッシュは全開で行けるところと、手前でブレーキを踏んで、アクセルを開けてフロントを上げた状態で入ったりと、いくつか種類があるんですけど、今回は窪みが深いところだったので、ブレーキングをして、スロットルを開けて行きました。でも、アクセルを開けるタイミングが遅くて、フロントが沈み込んだ状態で水に入ってしまった。小さなミスで大きな代償を払うことになりました」と原因を語った勝田貴元選手の車両は、水圧でバンパーおよびラジエター、インタークーラーを破損。デイ3の走行を断念することになったのである。
勝田貴元選手にとって悔しい結果となったが、デイ4で再出走を果たした。他クラスでのアクシデントで一時中断されたデイ4は、雨が止んだことから勝田貴元選手にとっては不利な状況となった。それでも、パワーステージの最終SS19で素晴らしい走りを披露した。
「タイヤの状態が悪くなかったので、普通にドライビングしながらパワーステージに挑みました。天候が不安定で、最初の3km~4kmは水溜りがひどかった。困難なドライビングでしたが、いいタイムは刻めたかな……という感覚でした」と、3番手タイムをマーク。総合順位としては40位に終わったが、貴重なボーナスポイントを獲得した。
第5戦に続き、この第6戦もデイリタイアを喫した勝田貴元選手だが、「本当に悔しいし、もう少し様子を見るべきだったと思うところもあるんですけど、今後に活きる経験を得ることができました」と前を向いた。
さらに「サルディニアはセバスチャン・オジエ選手のようにクルマを横滑りさせないように、コンパクトにプッシュしなければならないんですけど、その見極めがすごく難しい。でも、ポルトガルの事前テストでオジエ選手の横に乗る機会があって、コーナーの手前で向きを変えるアプローチの仕方やブレーキングの仕方が明確になった。」と事前テストでカギを掴んだことを明かした勝田貴元選手。
「その結果、自分の苦手意識があったサルディニアの狭くて細々したセクションでベストタイムを出せたり、パワーステージでも3番手タイムを出したりと高いパフォーマンスを発揮できたので苦手意識が無くなってきました」とのことで、結果以上に多くの収穫を得たようだ。
6月22~25日に開催される、グラベルラリーの第7戦「サファリ・ラリー・ケニア」について勝田貴元選手は「ラリー・フィンランドは全てのコーナーを全開でいかないと離されてしまいますが、サファリ・ラリーはいろんなトラブルが起こり得るので、いいバランスでマネジメントしないといけない。」とラリーの特長を語る。
さらに「ペース的に劣っていると思っていませんし、3度目の開催でチャレンジングなラリーになると思うので、焦らずにコマを進めたい」と意気込みを語った勝田貴元選手。2021シーズンは2位、2022シーズンは3位と連続表彰台を獲得しているだけに、動向に注目したい。
なお、第6戦はHYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)でi20 N Rally1 HYBRIDを駆るティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組が今季初優勝を獲得。チームメイトのエサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組が2位入賞を果たし、TGR-WRTのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が3位で表彰台の一角を占めた。
TGR-WRTはヒョンデに23ポイント差に迫られるも、マニュファクチャラーランキングのトップをキープ。ここまでの7戦全てでトップ4フィニッシュを続けている、ロバンペラ/ハルットゥネン組もドライバー/コ・ドライバーランキングのトップを守っている。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部