梅雨のウェット路面が生み出したジャイアントキリング! 激戦のPN2クラスで田中勇太選手が初優勝

レポート ジムカーナ JAFWIM

2023年6月23日

全8戦の内、早くも4戦を消化してシリーズタイトルに王手をかける選手も現れた中部ジムカーナ選手権。全日本ジムカーナ選手権の会場にもなっている鈴鹿サーキット南コースで6月11日、第5戦が開催された。19台のエントリーを集めた激戦区PN2クラスでは、東海シリーズからステップアップ2年目の田中勇太選手が初勝利を果たした。

2023年JAF中部ジムカーナ選手権 第5戦
2023年JMRC中部ジムカーナ選手権 第5戦
2023年JMRC全国オールスター選抜 第5戦
2023年JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ 第3戦
「NRC鈴鹿BIGジムカーナ」

開催日:2023年6月11日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:NRC

 今年、創立60周年を迎えた名古屋レーシングクラブが主催する中部ジムカーナ選手権。鈴鹿サーキットで開催されるスーパー耐久シリーズやスーパーフォーミュラ選手権などを主催する名門クラブだ。本大会は同地区の東海シリーズとの併催となっており、多くのエントラントが参加すると予想されたが、集まったエントラントは全日本を凌ぐ計172台。同地区屈指のハイスピードコースでのシリアスな勝負が期待された。

 だが、これに水を差すかの如く、季節外れの大型台風3号が梅雨前線を刺激し、大会当日はウェットコンディション。しかも時折強まる雨はドライバーたちの視界を奪うほどだった。昨年春に全面改修された鈴鹿南コースだが、レインコンディションで走ったことのあるドライバーは極めて少なく、前日練習もドライ路面だったことから、ほぼすべての選手が路面改修後初のウェット路面での勝負となった。

ウェット路面をどう攻略するか考えながら、雨が降る中で大勢のドライバーが一斉に慣熟歩行をスタート。
西パドックハウス前の駐車場を埋め尽くすジムカーナ参戦のエントラントとマシン。総勢172台が鈴鹿に終結する賑わいに。

 コース製作者は全日本ジムカーナ選手権のBC3クラスで活躍する津川信次選手。「今回は東海シリーズとの併催、またウェットコンディションということもあり、あまり長いコース設定にはしませんでした。しかし、コースの中に3か所設けたスラロームがポイントです」と言う。

「スラロームはやはりジムカーナの基本ですからね。どのスラロームも不等ピッチで、先に行くほど厳しい設定なので、進入時の速度コントロールが重要だと思います。難易度の高いターンセクションは設けず、誰でも走れるコース設定にしました。鈴鹿南コースは全面改修でちょっとした広場のようなスペースがなくなってしまって、ジムカーナドライバーにとっては物足りなくなっているので、今回はスラロームというエッセンスを入れて楽しんでもらいたいと思っています」と本大会のコース設定を説明する。

南コースをほぼフルに走り切るコース設定。道中には巧みにパイロンが配置され、終盤にターンセクションが設けられていた。
本大会のコースレイアウトを担当した津川信次選手は「ウェットのグリップが高い鈴鹿南ならではの走りに期待します」とコメント。

PN2クラス

 3台のエントリーがあったPN1クラスは1台の欠場があったため不成立。大会の口火を切ることとなったPN2クラスは、本大会最多の19台がエントリーで激戦が予想された。なお、ここまですべての大会で優勝者が目まぐるしく変わったのもこのクラスである。

 雨が降りしきる中、時折弱くなる間隙をついて最初にターゲットタイムをマークしたのは、全日本ジムカーナ選手権にも参戦する古田公保選手だった。前戦のイオックスラウンドにおいて今季初優勝を飾った古田選手は、クラス2番手出走で1分11秒台を叩き出して後続の選手へプレッシャーをかける。誰ひとりとしてこのタイムに届かぬまま第1ヒートが終了した。

 第1ヒートを終えると徐々に雨が小降りになり、排水性能が向上した鈴鹿南コースはすぐさまグリップを取り戻す。第2ヒート勝負の気配が一気に強まった。そしてすかさず第1ヒートの古田選手のタイムを更新したのは、クラスファーストゼッケンの田中勇太選手だ。

 最初のスラロームからS字を誰よりも速いスピードで駆け抜けていく。鬼門のサイドターンもフットブレーキを踏み足しながら荷重を前にかけ、続けてトラクションのあるターンを成功。田中選手は自身第1ヒートのタイムを4秒も縮めて古田選手の1本目のタイムを更新する。

 続く古田選手は第1ヒートのそれを凌ぐ速さを見せた。中間でも圧倒的な速さを発揮したが、最終セクションでまさかのパイロンタッチという結末。ひとり10秒台をマークするも、ペナルティで沈んでしまう。「自分でも触ってしまったのは分かっていたので『やっちゃった……』って感じですね」と古田選手。

 後に続く選手は誰ひとりとして田中選手を抜くことができず、いよいよシード組の出走へ。だが、この日の田中選手の走りは神がかっていた。シード組でもこの田中選手のタイムを更新できる選手は現れず、田中選手がまさかの逃げ切り初優勝を遂げた。

 うれしい表彰式の後、田中選手は「昨年から地方選手権に参戦するようになって、初めて優勝できました。レベルの高い先輩方の中で難しいと思うことばかりでしたが、なんとか優勝できて良かったです。1本目は本当にダメだったので、2本目はアベレージスピードを上げていく走りを心がけて、行ける範囲で高いギヤを使いながら走れたのが良かったですね」とコメントを残した。

PN2クラス優勝は田中勇太選手(MIμAZURロードスターDL)。
PN2クラスの表彰式、左から2位の古田公保選手、1位の田中選手、3位の渡邉將選手、4位の島倉正利選手、5位の菅野秀昭選手。

PN1クラス

 第1戦から第5戦まで不成立続きとなってしまったが、PN1クラスは2台の出走。トヨタ・ヤリス同士の戦いを制したのは渋谷達也選手。第2ヒートで1分14秒333のタイムをマークしての勝利だ。

PN1クラス1位は渋谷達也選手(DL菅沼自工+1ヤリス)。

PN3クラス

 PN3クラスは14台のエントリー。ここで好調ぶりを発揮したのは、第2戦キョウセイラウンドで優勝を飾ってランキング3番手につける鈴木勇一郎選手だった。1分10秒台にあと一歩と迫る1分11秒080をマーク。だが、この鈴木選手をさらに上回ってきたのがシードゼッケンを有する磯村良二選手で、1分10秒981で逆転。

 そして勝負の第2ヒート、各車続々とタイムアップするものの、磯村選手のタイムを更新する選手はまだ現れない。そのまま鈴木選手の出走となり、鈴木選手は自らのタイムをコンマ9秒近く更新してトップに立つ。磯村選手の走りに期待がかかるも、磯村選手は痛恨の脱輪ペナルティに終わった。

 1本目はパイロンタッチで沈んでしまった柏木良文選手が一気に浮上するが、トップの鈴木選手にはわずかに届かない。最終ゼッケンの武藤英司選手も「今回やっとクルマがまともになってきて行けるかと思ったんですが、2本目は力みすぎましたね。あちこちでいろいろやりすぎた感じです」と4番手タイム。

 これで鈴木選手の優勝が確定。ポイントランキングでは首位の柏木選手に大きく水をあけられているが、鈴木選手にとって価値ある1勝となった。有効ポイント的にもまだ伸びしろがあるだけに、残り2戦の勝負の行方に注目が集まることだろう。

「このコースは1回も走ったことがなく、周りがすごくグリップするというので信じて突っ込んでいったらカウンターばっかりで、やらかしちゃいました。2本目は雨が小降りになっていたんですが、行きすぎてはいけないと思い、1本目の悪かった部分を修正して走りました。とにかくスラロームがいやらしかったですね。1速か2速か、走り終わった今でも正解がなんだったのかは分かりません」と苦笑しながら応えた。

PN3クラス優勝は鈴木勇一郎選手(AZUR熊王マキタGR86DL)。
PN3クラスの表彰式。左から2位の柏木良文選手、1位の鈴木選手、3位の磯村良二選手、4位の武藤英司選手。

PN4クラス

 トヨタ・GR86とスバル・BRZ、そしてマツダ・ロードスターRFで争われるPN4クラス。ランキング首位を走る川田優選手が、2ヒートともにまさかのパイロンタッチ。一方、同ポイントで首位タイの安仲慶祐選手が、第1ヒートのパイロンペナルティから第2ヒートで逆転優勝を決めた。

「1本目でパイロンタッチをしてしまい、タイムを置きに行った走りだったんですが、優勝できてうれしいです。スラロームが多かったこともあって、ロードスターに有利なコースだったと思います。でも2本目の生タイムではタイムダウンしてしまったのが悔しいですね。シリーズチャンピオンに王手をかけたので、次も勝って決めたいと思います」と安仲選手は自身の走りを振り返った。

PN4クラス優勝は安仲慶祐選手(DLμSPMロードスターRF)。
PN4クラスの表彰式。左から2位の小林輝史選手、1位の安仲選手。

PN5クラス

 トヨタ・GRヤリスとスバル・WRXの一騎打ちとなっているPN5クラスは、高木健司選手の独壇場となった。前戦イオックスアローザで快勝した勢いそのままに、1本目から圧倒的なタイム差でトップを奪うと、そのまま逃げ切って優勝を決めた。

 そんな高木選手は「優勝したのはうれしいんですが、2本目にタイムダウンしてしまったのが謎です。今季2勝目でシリーズトップになれたものの、まだまだ怖い人たちがいるので、もう少しセットを煮詰めてチャンピオンを獲りたいですね。残りのキョウセイとイオックスは正直得意ではないんですが、離されないようについていきたいです」と残り2戦の意気込みとシリーズタイトルへの想いを寄せた。

PN5クラス優勝は高木健司選手(DL速心PRSコーワヤリス)。

SA1クラス

 大学自動車部卒業生を中心に争われる中部地区のSA1クラス。開幕戦を制した稲岡凌平選手と、ここまで2勝を挙げて稲岡選手を追いかける近藤瑛貴選手、そして稲岡選手の先輩にあたる小武拓矢選手がそれぞれ勝利を挙げ、三つ巴の戦いを繰り広げている。今大会もこの3人を中心にタイム更新合戦が繰り広げられた。

 まずトップタイムをマークしたのは近藤選手で、稲岡選手にコンマ5秒近い差をつけて第1ヒートを折り返す。勝負の第2ヒートでは小武選手が近藤選手にコンマ1秒差まで詰め寄ると、近藤選手はさらにコンマ2秒突き放す肉薄の展開。最終ゼッケンの稲岡選手はそんな近藤選手をコンマ5秒もぶっちぎるベストタイムでゴールするが、まさかのパイロンペナルティ……。

「出走前で表彰台獲得は決まってたので、思いっきり行ったのが吉とでました。最後の最後でパイロンに触ってしまったのが悔しいですけど。シリーズタイトル王手をかけられちゃいましたが、あと2戦で2連勝すればいいんで大丈夫です!それより怖いのは小武さんですね」と稲岡選手は笑う。

 これで近藤選手が今季3勝目を挙げてシリーズタイトルに王手をかけた。「今日、本当は8秒前半を出して生タイムでも稲岡選手を突き放す予定でした。でも、伊賀牛をもらえたので奥さんのご機嫌は取れる点は良かったです。タイヤがちょっと古いこともあって、やれることはやって優勝できたと思います」

SA1クラス優勝は近藤瑛貴選手(YH/DXL/CRX/TKs)。
SA1クラスの表彰式。左から2位の小武拓矢選手、1位の近藤選手、3位の稲岡凌平選手。

SA2クラス

 昨年のJAFカップウィナーで、今年の全日本ジムカーナ開幕戦もてぎラウンドを制した最上佳樹選手の参戦、というインパクトで活性化したSA2クラス。昨年シリーズチャンピオンに輝いた隅田敏昭選手が苦しい戦いを強いられた中、シード勢で孤軍奮闘の活躍していたのが榎本利弘選手だ。

 ここまでシーズン3勝を挙げ、タイトル争いに王手をかけている。そんな榎本選手を止めるために、最上選手は全日本選手権も開催されるここ鈴鹿南でなんとか勝利をつかみたいところ。しかし、第1ヒートから榎本選手が最上選手をコンマ5秒も突き放す展開。第2ヒートも精細さを欠いた最上選手はパイロンペナルティで撃沈。労せず優勝を手にした榎本選手が今季4勝目、そして今シーズンのシリーズタイトルを確定させた。

 そんな榎本選手は「鈴鹿南の新舗装のウェットを初めて走ったんですが、思いのほかグリップしなくてびっくりしました。2本目に入って雨が小降りになってくれたこともあり、ハイドロプレーニングが起こるところがなくなって良くなった感じですね。タイヤの応答も良くなって2本目勝負でした」

「最上選手が参戦してくれるようになって、自分もセットアップからもう1度見直して進化できたシーズンだったと思います。とても刺激になって、自分もレベルアップできました。これからももっともっと速くなれるように努力していきたいと思います」と今シーズンを振り返る。

 一方、2位に終わった最上選手は「この間、名阪を走ったときもそうなんですが、ターンも含めてコース全般が遅いんですね。単純にシフトダウンからターンインのステアリング操作も全ての動作が遅いです。大会にただ出ているだけで、走り込みのような練習が全くできていないのが問題ですね。キョウセイは榎本選手も参戦されるようなので、パイロンコースで一矢報いたいです」と悔しさを滲ませた。

SA2クラス優勝は榎本利弘選手(AZURμYHインテグラ)。
SA2クラスの表彰式。左から2位の最上佳樹選手、1位の榎本選手、3位の橋本克紀選手、4位の下田尚貴選手。

SA3クラス

 中部の古豪が集まるSA3クラスは、ここまで全ての大会で優勝者が変わる大激戦クラスだ。第1ヒートトップの中田博信選手を第2ヒートで見事逆転して見せたのは前島孝光選手だった。「1本目はまずまずの走りで良かったんですが、中田選手が妙に速くて今日は無理かな?と思っていました。でも逆転できてめっちゃうれしいです」

「2本目、とにかく全力で行けば勝機があると思って攻めたのが良かったと思います。最初のスラロームからS字にかけてしっかり入れて波に乗れました。前回のイオックスで散々だったので、この優勝は本当にうれしいです」と前島選手。歓喜の言葉でうれしさを表していた。

SA3クラス優勝は前島孝光選手(YH☆M-I☆RX-7)。
SA3クラスの表彰式。左から2位の中田博信選手、1位の前島選手、3位の平野聡選手。

B・SC1クラス

 ハイパワー2WD車両が集まるB・SC1クラスは、今年地区戦デビューの藤井やしろ選手が今季4勝目。出場した大会は全て優勝という快挙で今シーズンのタイトルも手にした。「今年からSタイヤのクラスに移行して、Sタイヤで初めてのウェット走行でした。今日は自分では全く考えつかないようなセッティングをアジュールの川村さんに提案されたのがハマってすごく良かったです」とコメント。

B・SC1クラス優勝は藤井やしろ選手(AZURシルビア)。

B・SC2クラス

 トーヨータイヤのサポート受ける全日本ドライバー鳥居孝成選手の開幕2連勝で幕を開けたこのクラス。鳥居選手の独走かと思われたが、第3戦で松尾勝規選手、第4戦で西田哲弘選手が勝利を収め、混戦の様相を呈している。そんなB・SC2クラスで第1ヒートから圧倒的速さを見せつけたのは、前戦イオックスアローザで反撃の狼煙を挙げた西田選手だった。

 他車がウェット路面に悩み、1分10秒台とタイムメイクに苦しむ中、西田選手がひとり7秒台へ突入。さらに2本目でも西田選手は自身のタイムを更新し、今大会のオーバーオールタイムを記録して2勝目を挙げ、シリーズタイトル争いに名乗りを挙げた。

 そんな西田選手は「ヤリスに乗り換えてずっと調子が悪く、まともに走れていなかったところもあったんですが、前戦からやっと走れるようになってきました。1本目から思った以上にタイヤがしっかりグリップしてくれたので、スタートしたときから『行ける』と思って走りました」

「2本目も1本目のタイムがしっかりしていたので、S字の進入など1本目の修正だけで安心していけました。今年は様子見だと思っていたんですが、次のキョウセイも最終戦のイオックスアローザも得意なので、異種格闘技クラスではありますが一矢報いてチャンピオンを獲りに行きたいですね」と抱負を語った。

B・SC2クラス優勝は西田哲弘選手(DL☆GいちPRS☆Ωヤリス)。
B・SC2クラスの表彰式。左から2位の大内大選手、1位の西田選手。

Dクラス

 中部伝統のDクラスは参加台数7台で争われた。優勝はシードゼッケン「01」を持つ佐藤宗嗣選手で、第1ヒート、第2ヒートともにトップタイムを記録しての勝利だ。佐藤選手は暫定表彰で「雨はあまり影響がなく、どちらかというと今年急遽ノーマルエンジンになったことで鈴鹿南はダメだと思っていたんですが、パワーのなさと接地荷重で勝てました」とコメントを残した。

Dクラス優勝は佐藤宗嗣選手(丸久クジメモータース☆TG47)。
Dクラスの表彰式。左から2位の五十嵐豊光選手、1位の佐藤選手。

JMRC中部ジムカーナ選手権 Lクラス

 女性ドライバーの参加をより促し、機運醸成を図ろうとする名古屋レーシングクラブは、日本メナード化粧品の協賛を得て今大会のレディスクラスに特別な副賞を用意。中部独自のLクラス算出方法として、各クラスに参加した女性ドライバーの当該クラスの優勝者と、その女性ドライバーのタイム差を比較して順位をつける。そんなJMRC中部の地区戦Lクラスを制したのは工藤実里選手だった。

Lクラス優勝は工藤実里選手(山本タイヤ久與RX-7 BS)。
Lクラスの表彰式。左から2位のメイ選手、1位の工藤実里選手、3位の橋本祥代選手。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ ATクラス

 シリーズランキングトップの妖怪J清本選手が欠場したことによって、誰が勝っても今季初優勝というクラスとなった。今村隆昭選手が第1ヒートからトップタイムをマークし、第2ヒートも自身のタイムを更新して優勝を飾った。

「1本目のタイムを抜かれたのが分かっていたので、2本目は行くしかないと思って走りました。ブレーキを我慢してしっかり突っ込めたのが良かったですね。これで清本選手がやる気になっちゃったので、北陸のパワーポイントも出ていることですし、イオックスで勝って逆転するしかない状況です。なんとか今年はATクラスを成立させてチャンピオンを出して、来年も続くようにしたいと思います」と今村選手は今後の展望を語った。

ATクラス優勝は今村隆昭選手(速心☆中西接骨院CVTヤリスD)。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ CPN1クラス

 JMRC中部が指定するコントロールタイヤを装着した、2WDのPN車両で競われるCPN1クラス。このコントロールタイヤは価格設定で区分されており、15インチ以下の場合は1.1万円以下で購入できるものでなくてはならない。具体的にはトーヨータイヤのR1Rを筆頭に、シバタイヤやヴァリノタイヤなどの海外製タイヤがその候補となる。

 そんなCPN1クラスでは迫昌文選手が第1ヒートでトップタイムをマークする。迫選手は第2ヒートもターンをしっかり決めてタイムアップを果たすが、道下貴広選手がこれをかわして逆転に成功。道下選手は「1本目はサイドターンで止まってしまったので、2本目はスタートからしっかり入っていきました。ギヤ選択を少し高めにしてボトムスピードを上げる方向で走ったのが正解でしたね。1本目は60点、2本目は85点です」と自身の走りを評価した。

CPN1クラス優勝は道下貴広選手(PRSFAシフトスポーツS+)。
CPN1クラスの表彰式。左から2位の迫昌文選手、1位の道下選手。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ RPN1クラス

 1600㏄以下の2WD・PN車両で争われるこのクラスは、第1ヒートにFF車両の優位性を最大限発揮した岡直輝選手が1秒以上の大差で首位をキープ。第2ヒートも各車タイムアップする中、岡選手は自身のタイムをコンマ6秒上げての逃げ切りで、今季2勝目を決めた。

「1本目は想定通りの走りができたのですが、S字でアンダー出したりちょこちょこミスが多かったので、2本目はそこを修正するように考えたんです。が、他のところでミスってしまって……。土手選手に抜かれるかと思ったんですが、無事優勝できて良かったです」と胸を撫で下ろした。

RPN1クラス優勝は岡直輝選手(SUAC★MIコ犬スイフトYH)。
RPN1クラスの表彰式。左から2位の土手啓二朗選手、1位の岡選手、3位のKeita選手。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ RPN2クラス

 アバルト・124スパイダーとトヨタ・GR86、スバル・BRZが鎬を削るRPN2クラス。第1ヒートでトップに立ったのは124スパイダーの積田順一選手。しかし、第2ヒートで積田選手はわずかなタイムアップしかできない。その隙をつくようにジャンプアップしてきたのは、第1ヒートでも中間ベストをマークしていたBRZの森田大介選手だった。2番手の西祐一選手を100分の7秒差で抑えて優勝を果たした。

 そんな森田選手は「タイヤ以外すべてノーマルのクルマで勝てると思っていなかったので、正直驚いています。最後のスラロームでどん詰まってしまったので、それを修正しました。もう十何年ぶりの優勝なんで、とてもうれしいです」と喜びをあらわにした。

RPN2クラス優勝は森田大介選手(マルモ食堂のチキンカツBRZ)。
RPN2クラスの表彰式。左から2位の西祐一選手、1位の森田選手。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ RPN3クラス

 東海シリーズ最多となる11台を集めたRPN3クラス。前モデルのトヨタ・86とスバル・BRZの一騎打ちとなっているこのクラスでは、逆転に次ぐ逆転劇が展開された。まずはいきなり大倉辰弥選手がターゲットタイムをマークする。後半ゼッケンに入っても中間タイムを更新する選手は現れるが、結果として大倉選手を上回る選手はなかなか現れない。この状況を打破したのは白の86の則包壮大選手だった。圧倒的な速さで大倉選手を置き去りにし、トップタイム更新。

 すると雨の弱まった第2ヒートにさらなる逆転劇が幕を開ける。大倉選手が第1ヒートの則包選手のタイムを1秒近く上回れば、さらに佐竹延之選手がその上を行くタイムをマークする。そして、そのタイムを則包選手がさらに更新。最終ゼッケン八田晴道選手に視線が注がれるが、八田選手は精彩を欠いてしまいWパイロンタッチに沈んでしまう。

 度重なる逆転劇の結果、勝利を手にしたのは則包選手だった。「1本目トップだったんですが、2本目でそれに甘んじず攻め切ったのが良かったですね。全体的にスピードレンジを上げていけたのが勝因です。とくに大きなミスがなかったのもポイントですね。ランキングトップの若い八田選手に負けないように、チャンピオン目指して頑張ります!」と則包選手。後半戦に向けての熱い意気込みが感じられた。

RPN3クラス優勝は則包壮大選手(白の86)。
RPN3クラスの表彰式。左から2位の佐竹延之選手、1位の則包選手、3位の大倉辰弥選手。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ CRA1クラス

 JMRC中部ジムカーナ部会が定めるコントロールタイヤを装着する、2WDのRA車両で争われるこのクラス。第1ヒートパイロンペナルティからの大逆転で勝利を収めたのは、インテグラを駆る森下弘之選手。そんな森下選手は暫定表彰式で「1本目のサイドターンで回しきれずに止まってしまったんですが、2本目はしっかりまとめることができました。これで今季2勝目なのでチャンピオンを獲れるように頑張ります」とタイトル争いに余裕を見せた。

CRA1クラス優勝は森下弘之選手(PTAマキタスピードインテグラ)。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ RA1クラス

 Sタイヤなどの使用制限がかかった2WDのRA車両で争われるこのクラスは、ホンダ・インテグラとホンダ・シビックが主役。第1ヒートトップの岡田和規選手を第2ヒートで逆転したのは、最終ゼッケンの土岐武也選手。

 走行後、「2本目勝負になりましたね。路面改修してからウェットは初めてだったんですが、いろんなところでフルカウンター当てるくらい攻めたのが良かったですね。今シーズン2勝目なのですが、北陸シリーズのスーパーポイントが効いてくると分からないので、残りの東海シリーズでチャンピオンを獲れたらいいと思っています」と土岐選手はまとめてくれた。

RA1クラス優勝は土岐武也選手(ON! ルマンインテグラ)。
RA1クラスの表彰式。左から2位の岡田和規選手、1位の土岐選手。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ RA2000クラス

 東海シリーズ独自のRA2000クラスは、2000㏄以下のNAエンジンを搭載するRWD車両で争われるクラスだ。そんなRA2000クラスを制したのは藤井孝輔選手。第1ヒート、第2ヒートともにトップタイムでの完全優勝だ。

「関西学院大学自動車部に所属していて、今年の全日本学生ジムカーナ選手権の練習として参加しました。初めての鈴鹿南コースだったんですが、OBの皆さんにもお手伝いいただき、なんとか優勝できました。自分は商学部の4年生で最後の大会となるので、全日本学生ジムカーナでも優勝したいと思います」と藤井選手。

RA2000クラス優勝は藤井孝輔選手(DL☆KGAC☆赤ん坊ハチロク)。
RA2000クラスの表彰式。左から2位の本家智久選手、1位の藤井選手。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ RA2クラス

 トヨタ・MR-2(SW20型)やマツダ・RX-7(FD3S型)など、多彩な車種で争われるRA2クラスは7台のエントリーで戦いの火蓋が切って落とされた。しかし、ファーストゼッケン綱島寛太選手のMR-2が出走直後にミッショントラブルが発生。後続の選手の集中力が途切れてしまう。

 そんな中、第1ヒートで着実にタイムを残したのは最終ゼッケン伊藤雄二選手。しかし、第2ヒートに入ると伊藤選手のターゲットタイムを続々と前半ゼッケンの選手が更新していく。中でも頭ひとつ抜け出したのは伊藤選手のチームメイトでもあるホンダ・S2000をドライブする長江文樹選手だった。

 結果、伊藤選手もこの長江選手のタイムには届かず、長江選手が優勝。暫定表彰式後に長江選手は自分の走りを「6年ぶりくらいの優勝でうれしいです。ウェットだったこともあるんですが、そこら辺もあって上手く走れたのかなと思います」と振り返った。

RA2クラス優勝は長江文樹選手(きゅうよ白S2000)。
RA2クラスの表彰式。左から2位の下内渉選手、1位の長江選手。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ RA3クラス

 AWD車で競われるこのクラスは八重梅崇選手の独壇場となった。第1ヒートからトップタイムをマークすると、第2ヒートでも安定した走りでトップタイムを死守。ランキング上位の山田広明選手をかわして開幕戦に続く今季2勝目を手にした。

「2本目、周りがタイムアップしている中、皆さんが立ち上がりでアクセルを開けるのを躊躇していたところ、自分はしっかり開けていけたのが勝因だったと思います。これで2勝目なので残りも全開でチャンピオンを獲りたいと思います」と八重梅選手。シリーズタイトル争いも激化の予感だ。

RA3クラス優勝は八重梅崇選手(ラック★OTICS★ランサー)。
RA3クラスの表彰式。左から2位の山田広明選手、1位の八重梅選手。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ SA-1クラス

 東海シリーズの最後を締めくくるのはSA-1クラス。このクラスも接戦となったが、勝利を収めたのはジムカーナ歴40年を超えるベテラン安藤昇司選手だった。「雨だから技術が出ますもんで、思い切って走りましたら、それで優勝することができました。2本目は1本目よりもアクセルをより早く開けて、ブレーキも我慢したのが良かったですね。昨年もNRCさんの大会で優勝させてもらいましたので、鈴鹿南は得意と言っておきます」と笑顔でこの大会を締めくくってくれた。

SA-1クラス優勝は安藤昇司選手(YHμHIRSシビックSKRS)。

JMRC中部ジムカーナ東海シリーズ Women'sクラス

 東海シリーズでも多くの女性ドライバーが参戦。参戦クラスで優勝した選手のタイムと、自らが記録したタイムの差によって計算されるJMRC中部独自のウィメンズクラス。このクラスを制したのは、SA-1クラスでシビックをドライブした児島祐子選手だった。

Women'sクラス優勝は児島祐子選手(シビックシァμ)。
ウィメンズクラス表彰の皆さん。主催者から参加者全員に日本メナード化粧品社の副賞が手渡された。

 名古屋レーシングクラブで本大会の競技長を務めた山内泰氏は、大会を終えて「昨年からJAF中部ジムカーナ選手権とJMRC中部ジムカーナ東海シリーズを併催することになり、前回は150台、今回は170台を超えるエントラントが集まってくれました。台数が多くてもなるべく長いコースを走ってもらいたいと思い、今日のレイアウトになりました」

「そんな中でもなるべく皆さんに早く帰り支度をしてもらえるように、暫定表彰式というスタイルを採らせてもらいました。雨が降って難しいコンディションの中、選手もオフィシャルも頑張ってもらえたと思います。大きな事故もなくスムーズに運営できたのはとても良かったです。そして、全日本ジムカーナ最終戦の鈴鹿にひとりでも多くの選手に参加し、上の大会にチャレンジしてもらいたいですね」と本大会をまとめてくれた。

名古屋レーシングクラブで本大会の競技長を務めた山内泰氏。
雨の中、見事な運営を行ってくれた名古屋レーシングクラブとオフィシャルの皆さん。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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