九州ラリー激戦区のRH-2クラスはロードスターで挑む林大河/有川大輔組が3勝目をマーク
2023年6月28日
全7戦でカレンダーが組まれた今年のJAF九州ラリー選手権は、シリーズを折り返す第4戦「第35回FMSCマウンテンラリー2023」が、6月17~18日の2日間にわたって佐賀県で開催された。
2023年JAF九州ラリー選手権 第4戦
2023年JMRC九州ラリーチャンピオンシリーズ 第4戦
「第35回FMSCマウンテンラリー2023」
開催日:2023年6月17~18日
開催地:佐賀県神埼市および吉野ヶ里町周辺
主催:FMSC
今回もラリーの拠点となったのは、佐賀県神埼市・吉野ケ里町の吉野ケ里歴史公園。ラリー開催直前に新たな遺跡が発見され、注目を集めた吉野ケ里遺跡に隣接する広大な公園だが、その一角にある駐車場にヘッドクォーター、サービスパークが置かれた。
全行程129.94kmのラリールートに設定されたSSは7本で、総距離は33.86km。走り込めるラリーとして知られるFMSCマウンテンラリーのスタイルは今年も踏襲されている。メインとなるステージは今年も「サザンカ」SSで、午前のセクション1でまず、後半に急な下りが連続する方向の「サザンカリバース」で5.70kmを2回走行。そして今回は午後のセクション2で、逆走となる「サザンカ」5.92kmを再び2度走る設定が採られた。最速タイムをマークした車両のアベレージスピードは、両SSとも約74km/hと中高速のステージとなる。
注目はもう1本の「アジサイ」ステージ。ステージ後半はFMSCの名物ステージである「トムソーヤ」ステージに合流するが、前半区間はかなり以前に数度設定されたのみとあって、ほとんどの参加者にとっては事実上、初見のセクションとなった。サザンカステージに対して、道も狭くコーナーもタイトではあるが、一部に高速セクションがあるため、こちらもアベレージスピードは70km/hを超えるステージとなっている。
RH-2クラス
シリーズ序盤はマツダ・ロードスターを駆る林大河/有川大輔組と、トヨタ・86の鶴田健二/門田実来組がマッチレースを展開したRH-2クラス。開幕2連勝と好スタートを切った林選手に対して、鶴田/門田組は前戦で1秒差の接戦を制して林/有川組を抑え、今季初優勝。連勝を飾ってタイに持ち込みたいところだ。
SS1は林/有川組が総合でもベストとなるタイムを奪取するが、鶴田/門田組も0.3秒差の2番手でしっかりと食らいつく。しかし林/有川組はその後もトップタイムを譲らず、2度目のサザンカリバースとなるSS4では鶴田/門田組を7.7秒差で下すこの日2度目の総合ベストをマーク。14.5秒のマージンをつくってラリーを折り返した。
鶴田/門田組はセクション2に入るとSS6でこの日初のベストを奪い、林/有川組をしのぐスピードを見せるも、セクション1での遅れは最後まで取り戻せず、2番手でゴール。セクション2で2度のベストをマークした筒井克彦/古川智崇組のスイフトが、鶴田/門田組に1.9秒差まで迫る3位を獲得した。
今季3勝目をマークした林選手は「FMSCのラリーは初参戦ですが、アジサイは自分の好きなタイプの道で、ロードスターのホイールベースの短さも活かせたので、いいタイムが出せたと思います。前半のリードで逃げ切る自分の勝ちパターンに持って行けたのも大きかった」と勝因を振り返った。
全国的にも稀なロードスターを駆るラリーストである林選手はまだ大学生。「ドライビングもクルマもまだ色々試している段階なので、これからも走り切ることを忘れずに、スピードを上げていきたいですね」と、後半戦を見据えていた。
RH-1クラス
RH-1クラスは開幕2連勝を飾った松尾薫/平原慎太郎組が残念ながら今回は不参加。ただし昨年のチャンピオンである津野裕宣選手が今季初参戦を果たした。津野ランサーは昨秋のJMRCオールスターラリーに九州代表でエントリーしたが、リタイア。マシンの修復に時間がかかり、今季4戦目にしてシリーズ復帰となった。
その津野選手は「トルク感がないというか、クルマもまだ本調子ではないし、ドライバーもラリー勘が完全には戻っていない。セクション2ではだいぶ良くなったんですが……」との言葉通り、後半の3本のSSはすべてベストタイムをマークする走りを見せたが、セクション1の遅れが響いて今回は3位に留まった。
代わって最終SSまでトップ争いを演じたのは、ともにGRヤリスに乗る中村均/廣田敦士組と城戸新一郎/遠藤彰組の2台。セクション1はSS1アジサイでベストを奪った中村/廣田組が城戸/遠藤組に0.8秒差をつけてトップで折り返すが、3度目のアジサイとなったSS6で城戸/遠藤組が逆転。
その差0.6秒という僅差で最終のSS7サザンカに決着が持ち込まれたが、中村/廣田組は「何度か行き過ぎてしまって(タイムを)詰められなかった」とクラス4番手でゴール。対する城戸/遠藤組は津野/岡崎辰雄組に1秒遅れのセカンドべストで走り切り、優勝を決めた。
「最後は気合一発の走りができました。トンネルは長かったけど、やっとGRヤリスで勝つことができたので最高です」と城戸選手。「前戦が最下位とボロボロだったので、セッティングを大きく見直したら、リアタイヤがしっかり仕事をしてくれる仕様を見つけられたのが大きかった。乗り方を大きく変えたのもタイムにつながったと思いますが、対照的な路面を持つ2つのステージでともにタイムを出せたので、これからは大丈夫でしょう(笑)」と、手応えをつかんだ様子だった。
RH-3クラス
RH-3クラスは開幕戦を制した後藤章文/山本祐介組のマツダ・デミオ(DJLFS)がSS1、SS2を連取して順調なスタートを切るが、SS3アジサイでDE5FSデミオを駆る河本拓哉/柴田咲希組が6.0秒差で後藤/山本組を下すスーパーベストをマークして一気に逆転。後藤/山本組に3.2秒のリードをつくってラリーを折り返した。
しかしセクション2に入ると、「今回初めて履いたタイヤの特性が午前の4本のSSを走ってつかめた」という後藤/山本組がSS5サザンカで、今度は河本/柴田組を9.5秒も突き離すベストを叩き出して一気に逆転に成功。河本/柴田組もSS6アジサイで再びベストを奪って追撃するも、最終のSS7サザンカは後藤/山本組が4.9秒差をつけて、この日5度目のベストをマーク。10.4秒にリードを広げて新旧デミオ対決を制した。
「元々、好きな道」というサザンカSSを完全制覇した形となった後藤選手は「キツい上りになるSS5の前半区間がどうかなと思ったけど、ずっと踏んでいけた。(SS3で)逆転されたので、頑張ったらぶっちぎれた感じです(笑)。河本選手には今年になってずっとタイムで負けていたので、勝ててうれしい」と、会心のラリーを振り返った。
一方、5月に開催された全日本久万高原ラリーを制して一躍、期待の若手となった河本選手は「サザンカは、自分が苦手とする所も今回は克服できたと思ったんですが、思いのほかタイムが出なかった。全日本で勝ったとは言え、今年から乗り換えたデミオをまだ乗り切れていないので、もっと自分のスピードを上げて、次は勝ちを狙っていきたいですね」とリベンジを誓っていた。
RH-4クラス
RH-4クラスは、前戦でホンダ・フィットをデビューさせたベテランの三苫和義/春日美知子組が全SSベストと、終始、ライバルを圧倒する走りを見せて優勝。このクラスでは今季3人目の勝ち名乗りを上げた。最終SSまで激しい三つ巴が続いた2位争いは、廣瀬友久/小原ひろみ組が2.5秒差で本城崇志/大城明人組を下して自身の今季最上位を更新した。
近年は北海道で開催されるグラベルの全日本戦、地区戦にグラベル仕様のもう1台のフィットで九州から参加している三苫選手だが、舗装ラリーは前戦が4年ぶりの参戦であったため、「セッティングもタイヤ選択も散々だったので、しっかり見直してきた」とのこと。「でも最後のSS7でフィットの本来のいい動きを、ようやく思い出せた感じでした。次は上のクラスにも勝てるタイムを出したい」と話した。
RH-5クラス
一方、RH-5クラスは久保慶史郎/美野友紀組が、こちらも全SSベストの快走を見せて優勝をさらった。久保選手は普段はスバル・インプレッサでRH-1クラスを戦うドライバーだが、前戦でマシンを痛めてリタイアしたため、今回は急遽、地元九州の全日本ドライバーである中西昌人選手のAT仕様のマツダ・RX-8で参戦した。
インプレッサの修復が終わり次第、RH-1クラスに復帰の予定とあって、このクラスは仕切り直しのバトルとなるが、久保選手は「うまく乗れたと思った割にはタイムが出なかったので、機会があればまたドライブさせてもらいたいですね」と、再挑戦に意欲を見せていた。
RH-6クラス
RH-6クラスは、開幕3連勝と今季無敵の速さを見せている学生ドライバー、納富瑠衣/出雲正朗組のホンダ・CR-Zが今回も絶好調。「自分の好きなサザンカSSの下りの区間と、クルマの良さを活かせる高速区間でタイムを稼ぐという作戦通りの走りができました」と、終わってみれば全SSベストの快走を見せて、今回もライバルにつけ入る隙を与えなかった。また日産・リーフを駆る常慶明秀/齊藤蓮組がデビュー戦の前戦に続いて2位に入賞し、川中天兵/土谷英治組のトヨタ・アクアも3位入賞を果たすなど、このクラスはAE車両のポテンシャルが注目を集める結果となっている。
オープンクラス
3台が参加したオープンクラスは、かつて九州地区戦のトップドライバーとして活躍した三宅博之/梶山剛組が、ラリー後半に犬丸卓/岩本裕輝組の追撃を受けるも、9.6秒差で逃げ切り、久々の優勝を飾った。
フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部
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