大盛況となった富士での一戦は、コルベットとAMG GT3が総合優勝を分け合う!!
2023年6月28日
「ザ・ワンメイクレース祭り2023富士」が6月16~18日に、富士スピードウェイで開催された。梅雨時ではあったが、幸いレースウィークは雨に見舞われず、ドライコンディションでの戦いとなった。メインレースの「ファナテックGTワールド・チャレンジ・アジア・パワード・バイAWS(GTWCA)」は、その名称が示すとおり、アジアのサーキットを舞台にFIA-GT3及びGT4車両によって、60分のレースを原則ふたりのドライバーで競うシリーズ。全6大会12戦で開催され、うち4大会がジャパンカップとして富士、鈴鹿サーキット、モビリティリゾートもてぎ、岡山国際サーキットで行われる。
2023 FANATEC GT WORLD CHALLENGE ASIA POWERED BY AWS ROUNDS 3 & 4
(ザ・ワンメイクレース祭り2023富士 内)
開催日:2023年6月16~18日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ(株)、FISCO-C
タイのチャーン・インターナショナル・サーキットで開催された第1大会には25台が参戦したが、そのうち20台が来日し、日本からも15台、さらに香港からKCMGも加わるなど、40台が臨んだ。そのうち4台がGT4で、すべて日本からの参戦となった。
ちなみにGT3では13のメーカーの車両が競い、さらにGT4も含めてエントリー40台、GRスープラGT4も含めると14のメーカーが集ったのはシリーズ史上最多という、大盛況の大会となった。
レースフォーマットを改めて紹介すると、予選はQ1で決勝レース1の、Q2で決勝レース2のスターティンググリッドを決める。1レース60分の決勝では、ピットでのドライバー交代をスタートから25〜35分の間に行わなくてはならない。その際にはピットロード入口から出口まで車両を90秒滞在させねばならず、足りなかった場合はペナルティストップを課せられる。
ピットストップについては、サクセスペナルティという規則もある。前レースの1〜3位のチームには、ピットストップ時間の追加が課される、優勝は15秒、2位で10秒、3位は5秒となり、累積されることはない。
また、GT3ではプロドライバー同士の組み合わせは認められず、第1ドライバーはアジア各国の国籍を持つアマチュアドライバーに限られる。予選Q1とレース1のスタートも、この第1ドライバーが担当しなくてはいけない。
予選Q2とレース2のスタート担当は第2ドライバーだが、第2ドライバーに必ずしもプロを起用する必要はない。その場合は2人ともシルバーグレードのドライバーの場合はシルバークラス(GT3S)、それ以外の組合せはアマクラス(GT3AM)に属する。第2ドライバーにプロを起用した場合は、プロ-アマクラス(GT3PA)に属する。
なお、GT4ではアマドライバーしか参戦できず、シルバーとブロンズグレード以下のドライバーの組合せはシルバー-アマクラス(GT4SA)、ブロンズ以下のドライバーの組合せはアマクラス(GT4AM)に区分される。
練習走行/予選
16日に行われた2回の練習走行では、メルセデスAMG GT3エボを走らせるGT3PAの88号車Triple Eight JMRの第2ドライバー、ルカ・ストルツ選手が1分39秒092の最速タイムをマーク。特にプロドライバー中心で争われるQ2は、1分38秒台への突入が容易に想像できた。
Q1は、ポルシェ911GT3Rを駆るGT3Sの87号車R&B Racingのレオ-フェン・イー選手が1分40秒119で総合トップタイムながら、ペナルティポイントの累積で5グリッド降格。繰り上がってレース1の総合ポールポジション(PP)を獲得したのは、アウディR8 LMS GT3エボIIをドライブするGT3Sの29号車Phantom Pro Racingのカン・リン選手。そして総合2番グリッドはGT3PAのシボレー・コルベットC7 GT3-Rの9号車、BINGO Racingの武井真司選手となった。
Q2では、予想どおり1分38秒台に突入し、AMG GT3を走らせるGT3PAの37号車Craft-Bamboo Racingのダニエル・ジュンカデッラ選手が1分38秒825で総合トップ。同じAMG GT3の2号車、GT3PAのClimax Racingのデニス・リンド選手が続き、総合3番手には日本勢トップとして、GT3PAの1号車CarGuy Racingのケイ・コッツォリーノ選手がつけた。2022シーズンのチャンピオンチームはフェラーリ488GT3から新型車両の296GT3にスイッチ。デリバリーされたばかりの車両で、まずは上々の発進となった。
GT4は単独で予選が行われ、Q1では加納政樹選手が、Q2では織戸学選手と、GT4SAの50号車YZ RACING with BMW Team Studieがともにトップ。投入した新型車両のBMW・M4GT4が、圧巻のパフォーマンスを示していた。
レース1(Round3)
レース1では、4番グリッドからスタートを切るはずだった、大蔵峰樹選手と濱口弘選手を擁する、GT3AMの37号車The Spirit of FFF Racingのランボルギーニ・ウラカンGT3エボがクラッチトラブルでスタートできず。GT3AMの優勝候補の一角がいきなり姿を消した。
PPからスタートを切り、1コーナーにポジションを保って飛び込んだのは、29号車のリン選手。9号車の武井選手は1周目のうちに総合4番手に順位を落とすも、上位集団から離れず続いていた。2周目にはダンロップコーナーでスピンした車両を避け切れず、接触の光景が。車両回収のため、2周にわたってセーフティカー(SC)が出動した。
リスタート後もトップ争いは激しく繰り広げられるも、上位陣の多くがピットイン可能なタイミング、“ピットウィンドゥオープン”になると同時にドライバー交代を敢行。ジャストタイミングでコースに戻り、総合トップに立ったのは9号車の飯田章選手で、総合2番手はGT3PAでアストンマーティン・ヴァンテージAMR GT3を駆る47号車D’station Racingの藤井誠暢選手、さらにBMW・M4GT3を走らせるGT3PAの5号車PLUS with BMW Team Studieの荒聖治選手も総合4番手につけ、日本勢による表彰台独占も予想された。しかし、19周目に藤井選手はピットイン。バトル中の接触による、右フロントタイヤのトラブルだった。
さらに藤井選手には、1秒ストップのペナルティが。「タイマー上ではプラス表示だったんですが、実際には0.002秒足りなかったようです」と、ピット滞在時間の不足が理由とのこと。これで飯田選手は一気に楽になり、33周を悠々と走破。武井選手とともに表彰台の頂点に立った。
「とにかく前が見える範囲で、自分が得意なポイントはハードブレーキングだったので、そこで鬼詰めすることだけ考えて、走っていたのが良かったと思います」とキーポイントを語ってくれた竹井選手。
さらに「飯田選手と組んで『エンジョイクラスで頑張りましょう』って言っていたから、まさか総合優勝なんて思ってもいなくて、僕のレース人生の中でいちばん嬉しい優勝かな、って思っています」と語れば、飯田選手は「ちょっと一生懸命走ったら、勝たせてもらって申し訳ないです。スタートから武井選手の流れが良かったし、僕も状況分からなかったので前半プッシュして、途中からマネージメントして。最後、聞いたらトップだっていうから、ちょっとびっくりしました」と、ふたりともとびっきりの笑顔を見せてくれた。
GT4は、50号車の加納/織戸組が終始トップを快走。M4 GT4にデビューウィンをもたらした。「勝ちましたね。(レース)一発目だったので、なんとかきっちりできて良かったです」と加納選手。そして織戸選手も「もう完璧でしたね。加納さんが素晴らしいドライビングしてくれて。車も良くて、ホイールベースも長いから、すごく安定していました」と笑顔で勝因を語った。
レース2(Round4)
序盤にSCが一度出動したものの、比較的スムーズに展開されたレース1に対し、レース2は三度もSCが出動する波乱の展開になってしまった。しかも、フィニッシュ後に大どんでん返しも……。
最初のSC出動は、スタート直後に1コーナーで発生したアクシデントによって。二度目のSC出動は、9周目の1コーナー手前で2台が接触。そのうちの1台は、レース1を制した飯田選手だった。レース2はプロを含む第2ドライバーがスタートを担当していたが、特に中団以降で意地と意地のぶつかり合いが激化し過ぎていたようだ。
だが、そんな状況は二度目のリスタート後には、上位陣にも!総合トップを走っていたジュンカデッラ選手が1コーナーでリンド選手と接触し、リタイアとなったのだ。これで労せず911GT3Rを駆る911号車AAS Motorsport by Absolute Racingのアレッシオ・ピカリエロ選手が総合トップに立つも、ブッティコーン・イントラプワサック選手へのドライバー交代後に、2号車のジュウ・ビハーグ選手に追突され、大きく順位を落としてしまう。もちろん、これは危険行為とされ、2号車には2回のドライビングスルーペナルティが課せられた。
その直後に、今度はメインストレート上でタイヤトラブルを抱えた車両が、コントロールを失ってピットウォールにヒット!これで三度目のSC出動になる。車両と散乱したデブリの回収のため、全車ピットロードを通過するよう指示されるも、全てのチームに明確には伝わっていなかったようだ。これが最後の大波乱の理由となる。
三度目のリスタート後、総合トップに浮上していたのは22号車KCMG、ホンダNSX GT3のポール・イップ選手ながら、真後ろにつけていたのは47号車の星野敏選手。「SC中に、『トップになれそうだ!』って無線で聞いて、気合が入りました!」と、星野選手は最終コーナーでイップ選手のインを刺し、総合トップに浮上。その後も2台に猛攻を受けたが、ガードをしっかり固めて逆転を許さず。
「去年までは言っても日本のレースみたいだったんですが、今年は海外のワークスドライバーがいっぱい来ていて、ヨーロッパのレースみたいにレベルが上がっていたので、今年の優勝は非常に価値があると思います!」と、12番グリッドからの快挙を、大いに喜んでいた藤井選手だったのだが……。
レース終了後長い時間が経ち、ようやく出された正式結果には、実に27台に対するペナルティが!三度目のSCでピットレーン不通過だった全ての車両に対し、30秒が加算された。それでも47号車は総合3番手に踏み留まれるはずが、さらに走路外での追い越しがあったとの判定で10秒加算。そのため、総合7位となってしまった。
なんと総合14番手フィニッシュから繰り上がって総合優勝を決めたのは、88号車のH.H.プリンス・アブ・バカール・イブラヒム選手とストルツ選手だった。
GT4では50号車の織戸選手が序盤のレースをリードするも、電気系のトラブルが発生。エンジンを止めてリセットするも、それが3回にも及んだため、チームはリタイアを決断した。
代わってトップに立ったのは、ポルシェ718ケイマンGT4 RSクラブスポーツを走らせる、718号車Checkshop Caymania Racingの大塚直彦選手と小林翔選手。「ラッキーでしたね。BMWは速くて、トラブルが出ていなければ、絶対に勝てませんでしたから」と大塚選手は喜んだ。このレースウィークが公式戦デビューだった小林選手は、2レース目にして優勝を果たした。
大盛況と驚きの結末で、ドラマチックな大会となった富士での第2大会。第3大会は7月14~16日に開催される、鈴鹿サーキットでの「鈴鹿レースオブアジア2023」にて熱戦の火蓋が切られる。
参戦車種紹介
GT3とGT4を併せて14のメーカーから40台が集い、大盛況となった富士での第2大会で競ったメーカーと車種を写真で紹介したい。
FIA-GT3車両
FIA-GT4車両
フォト/髙橋学 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部