蕎麦切広大選手が無双状態の筑波連戦、植尾勝浩選手は最年長優勝記録を更新!

レポート ドリフト

2023年7月4日

5月中旬に開幕となったD1グランプリシリーズは、滋賀県米原市・奥伊吹モーターパークでの第1戦/第2戦に続き、第3戦/第4戦が茨城県下妻市・筑波サーキットコース2000で開催された。このサーキットが戦いの舞台となるのは2年ぶりとあって、多くのドリフトファンが会場に詰めかけた。

2023 D1グランプリシリーズ 第3戦/第4戦「2023 TSUKUBA DRIFT」
開催日:2023年6月24~25日
開催地:筑波サーキット コース2000(茨城県下妻市)
主催:株式会社サンプロス

 ハイスピードなドリフトが繰り広げられる筑波サーキット コース2000で、6月24~25日にD1グランプリシリーズの第3戦と第4戦が開催。この時期は梅雨真っただ中ながら、大会両日とも好天に恵まれ、今回も好勝負が期待された。

 筑波ラウンドではお馴染みとなっているストレート高速振り返しから1コーナー、そしてS字、ヘアピン立ち上がりまでが審査区間というのは2年前と同じだが、違ったのはゾーンの設定だ。前回はイン側だった1コーナーのゾーンが今回はアウト側へと移動した。その結果、コースアウト連発の難しいステージとなり、苦戦する選手が目立った。

筑波名物「ストレート3発」は、右、左、右と振り返して1コーナーに進入する走行ラインのこと。2発目の左から1セクターがはじまり、通過指定ゾーンは1コーナーアウトのランオフエリアのギリギリ。170km/h近い車速からの減速に失敗してコースアウトする選手が多かった。
2年前と今年でゾーン(車両前方の白いボックス)が変更になった理由は、筑波サーキット側からの要望で、タイヤの付着をレコードラインから遠ざけるため。160km/h前後からのアウトゾーン狙いはコースアウト続出となってしまったため、25日の第4戦ではゾーンをコース内側に寄せ、長さ(幅)も広げられた。

第3戦

 DOSSの特性を把握しつつ、1コーナー進入やS字の振り返しは比類なきクイックなモーションと深い角度だった蕎麦切広大選手(SHIBATIRE RACING)。第3戦では唯一の99点台をマークして単走優勝を果たした。蕎麦切選手は得点だけでなく、走りにも個性をしっかり盛り込んでいたのが印象的だ。

A、Bグループの選手が98点台の得点を獲得する中、Cグループの蕎麦切広大選手が99.05点をマーク。Dグループの選手はこの得点を上回ることができず、蕎麦切選手の単走優勝が決まった。
前戦の奥伊吹ラウンド第2戦では単走3位ながら取りこぼしてしまったとのことで、「リラックスして気負わずに走れた」ことが勝因だとコメントする蕎麦切選手。

 23日の練習走行でトランスミッションを壊したため、24日の第3戦はリタイアする予定だった植尾勝浩選手(VALINO VAZESTRA)。だがスペアミッションが拠点の熊本から航空便で早朝に届き、予選出走30分前にピットに到着。すぐに搭載して予選に間に合った。

 そしてぶっつけ本番の予選を辛くも16位で通過すると、予選トップの蕎麦切選手、田中省己選手(SHIBATIRE RACING SEIMI STYLE D)、目桑宏次郎選手(TMS Racing Team G-meister)を撃破して決勝に進出。松山北斗選手(+LenoRacing watanabe)との対戦も制し、優勝を遂げた。

「(トーナメントで)最初に当たった蕎麦切選手の走りを間近で見て参考にしました」と走りをトレースした結果、良い感触が得られたそうだ。VR38改のパワーと、元AE86乗りらしい機敏なステアリングさばきが融合したトリッキーな振り出しは、この日、他を圧倒していた。

現在51才で、初年度からD1グランプリに参戦している植尾勝浩選手は、2020年のオートポリス戦以来の優勝。自身が持つ最年長優勝記録を更新した。
奥伊吹のような特設コースでは「トルクがありすぎて扱いづらい」と苦戦していたが、今回の筑波ではその強大なトルクが武器になったと言える。
第3戦の優勝は植尾選手、2位は松山北斗選手、3位は横井昌志選手、4位は目桑宏次郎選手、5位は藤野秀之選手、6位は田中省己選手、7位はヴィトー博貴選手、8位は粂哲也選手、9位は蕎麦切選手、10位は末永正雄選手。

第4戦

 25日の第4戦、Aグループから出走となった蕎麦切選手は、第3戦を上回る得点を叩き出す。日比野哲也選手(SHIBATIRE RACING)や横井昌志選手(D-MAX RACING TEAM)が追いすがるも、99.46点という得点はそのまま誰にも抜かれることなく、蕎麦切選手が再び単走優勝。これで単走ランキングは横井選手に続く2番手だ。

 続く追走は、蕎麦切選手が第3戦のベスト16で敗れた植尾選手と準決勝で再び相まみえる。ここでは蕎麦切選手が見事リベンジを果たし、迎えた決勝戦の相手は単走2位で同チームの日比野選手。両車の特性は大きく違うが、蕎麦切選手がうまく合わせた追走を披露。先行では堂々たる予選トップの走りを見せて圧倒。美しいツインドリではあるが、その差はギャラリーにもわかりやすいものだった。

予選/決勝ともにワンツーを飾ったSHIBATIRE RACING。今年から加入した日比野哲也選手はD1GP黎明期から参戦するベテランで、勝てば10年ぶりの優勝だったが結果は14回目の2位。一方の蕎麦切選手は参戦31戦目での初優勝だ。
「昨年の後半からクルマの仕上がりがとてもいい。勝てる自信がついてきました」とコメントする蕎麦切選手。
第4戦の優勝は蕎麦切選手、2位は日比野選手、3位は横井選手、4位は植尾選手、5位は川畑真人選手、6位は田中選手、7位は藤野選手、8位はChanatpon Kerdpiam選手、9位はヴィトー選手、10位は中村直樹選手。
S15シルビアの植尾選手、Q60インフィニティの蕎麦切選手は、ともにR35GT-RのVR38DETT改4.3Lを搭載している。2JZエンジン搭載車が多いD1グランプリでは珍しい選択だ。ともにHKSの強化パーツを組んで1000馬力を超えるが、S15はツインターボ、Q60はシングルターボ。
D1ファンとの交流を深めるために選手会が企画した「みんなで乾杯!」。ノンアルコール飲料を片手に記念撮影が行われた。

■2023 TSUKUBA DRIFT注目ドライバー

 今年から参戦の粂哲也選手(HIRANO TIRE ★ VALINO RACING)は、第1戦&第2戦のD1デビュー戦は予選落ちだったが、今回の2連戦で連続予選通過を果たした。その第3戦では初の追走勝利で、ベスト8に進出。学生時代は雑誌・ドリフト天国が主催する学ドリ2013年で東大会優勝、その後は2018年のD1ライツでシリーズ2位の経歴を持つ。以降、D1グランプリ出場に向けてマシン製作など準備を整えてきた。

今年31歳の粂哲也選手が、ルーキーながら大健闘を見せた。愛機はS15シルビアで、搭載エンジンは2JZ改3.1L仕様。

フォト/藤原伸一郎(SKILLD) レポート/川崎隆介(SKILLD)、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ