東北ジムカーナ第4戦、全日本でも活躍した上野健司選手がクラス転向後初優勝!

レポート ジムカーナ

2023年7月4日

梅雨真っ最中の6月25日、青森県のモーターランドSP、通称MSPで2023年JAF東北ジムカーナ選手権の第4戦が、2023年JMRC東北ジムカーナシリーズ第5戦とともに開催された。朝霧に包まれたものの、選手たちが慣熟歩行を始める頃には霧も晴れて見通しも良くなり、絶好のジムカーナ日和となった。

2023年JAF東北ジムカーナ選手権 第4戦
2023年JMRC東北ジムカーナシリーズ第5戦
2023年JMRC全国オールスター選抜 第4戦
DIREZZA CUP

開催日:2023年6月25日
開催地:モーターランドSP(青森県南部町)
主催:奥州VICIC

 この一戦、当初は福島県のエビスサーキットでの開催が予定されていたが、スケジュールの都合によりMSPへと変更された。

 MSPは長いストレートと回り込むコーナーが幾重に連なった、ドリフト向けのコースレイアウトだ。しっかりとスピードを乗せ、荒れた路面でもしっかり車両を制動させる技術が勝負の鍵を握るコース。特に正コースから外れる渡りの部分は傾斜が変わるなど、癖もあり、地元スペシャリストが存在するのもポイントだ。

モーターランドSPで迎えた第4戦は梅雨時の開催にもかかわらず、見事な夏空に恵まれた。回り込むコーナーに我慢を強いられる、難しいコースでもある。

 そんなMSPでの一戦でコースを設定したのは、競技長を務めた中村義彦氏。「今日は1分40秒を超える想定の、走りがいのあるコースにしました。いつもはコース全体を使うこともあるのですが、今回はサイドターンをしなくても走れる設定にしているのがポイントです。勝負どころは後半テクニカルセクションで、しっかりと加速ができるかどうかだと思います」とコース設定の意図を語ってくれた。

2分近い超ロングコースとなったレイアウト。前半のハイスピードセクションと後半のテクニカルセクションの切り替えが肝となった。

JAF東北ジムカーナ選手権PN1クラス

 2023シーズン初成立となったPN1クラス。JAF全日本ジムカーナ選手権ではトヨタ・ヤリス勢の活躍が目立つが、東北ではZC32S型スズキ・スイフトスポーツと日産・ノートの一騎打ちの様相を呈している。

 第1ヒートでトップタイムをマークしたのはクラスファーストゼッケンの甲田勇選手。一方、ただ一人ノートで参戦した藤澤満選手は中間ベストタイムをマークしたものの、後半セクションでシフトリンケージが破損してしまい、フィニッシュできず。

 しかし、慣熟歩行までの時間を使って応急処置を施し、シフトチェンジができる状態に修復。いつ、トラブルが再発してもおかしくない満身創痍の状態で、第2ヒートに臨んだ藤澤選手だったが見事トップタイム更新に成功。今季初成立のPN1を制した。

「クルマのオーバーホールをして、LSDのイニシャルトルクも調整してもらったのが、今日のコースにはまった感じですね。1本目シフトリンケージが粉砕してしまったときはどうしようかと思いましたが、なんとか2本目走れました。各コーナーでしっかりアクセルを踏めたのが勝因ですね」と、喜んだ藤澤選手。

 さらに、「北東北のメンバーにPN1クラスが多いので、残りの大会でも成立してくれたら嬉しいです」と次戦以降のクラス成立に期待を寄せていた。

第1ヒートでまさかの車両トラブルに見舞われ、タイムを残せなかったPN1クラスの藤澤満選手(プライズ ノート)。応急処置が間に合った第2ヒートで2位以下を2秒近く離す会心の走りを見せて、ようやく成立したPN1の2023シーズン初ウィナーとなった。
PN1に参戦した 3選手。左から優勝した藤澤選手、2位の甲田勇選手(サンモーター小原切谷内スイフト)、3位の渡辺由彦選手(YH-CSW-スイフト)。

JAF東北ジムカーナ選手権PN3クラス

 ベテランも集まり、激戦のPN3クラス。このクラスで注目を集めたのは、2022シーズンの全日本ジムカーナでJG6クラスのランキング4位を獲得した、佐藤宏明選手の復帰2戦目となったことだろう。今季初めに病魔に襲われ、今なお病魔と闘いながら懸命なリハビリを経て、第3戦でジムカーナへとカムバックを果たしたのだ。

 そんな佐藤選手はマツダ・ロードスターRFを駆って、第1ヒートからいきなりクラスのターゲットタイムとなる1分46秒472をマーク。「まだ、十分なドライビングができてるとは言えないので、正直復帰戦というにはおこがましい状態です」と走行後に語った。

 しかし、佐藤選手のタイムを誰一人抜くものは現れない。そんな中、最終ゼッケンでZC33S型スイフトに乗り込んだ巻口洋平選手が第1ヒートのスタートを迎えた。

「個人的に思ったのはパワーを活かせるコースだったので、踏めるのであればスイフトにも勝機があると思いました。ただ、後半セクションはギア比が全然合わなくて苦しかったですね…」と振り返った巻口選手だったが1分45秒台に叩き込み、0.466秒差で佐藤選手のトップタイムを更新した。

 そして第2ヒート勝負、と思われたが路面温度が急上昇したこともあり、ほぼ全ての選手がタイムを落としてしまう。巻口選手は第1ヒートのタイムで逃げ切り、この優勝でチャンピオンに王手をかけた。

苦しかったと言う後半のテクニカルセクションも我慢してまとめあげ、第1ヒートで好タイムを叩き出して逃げ切った、PN3クラスの巻口洋平選手(BSクイックGRIPスイフト)。第3戦から二連勝、今季3勝目を挙げた。
PN3の上位4選手。左から優勝した巻口選手、復帰戦に続き2位の佐藤宏明選手(DLItzzエリアロードスター)、3位の成澤裕太選手(DL跳エリア和光compBRZ)、4位の後藤知宏選手(BS TB北宇治スイフト。

JAF東北ジムカーナ選手権SATW-2クラス

 シバタイヤユーザーが大勢を占めるSATW-2クラス。第1戦を制したEK9型シビックを駆る関勝哉選手と、S2000をドライブする阿部崇治選手、ホンダ勢の一騎討ちとなっている。その構図は第5戦でも健在。第1ヒートからふたりが後続を1秒近く、あるいはそれ以上突き放すタイムを叩き出した。

 まず第1ヒートでリードしたのはランキング2番手につける関選手。約0.4秒差でランキングトップの阿部選手が追いかける展開だ。続く第2ヒートは、PN3で軒並みタイムダウンが目立ったこともあり、逆転の可能性は薄いかと思われた。

 しかし、関選手が自らのトップタイムを0.156秒更新すると、「1本目リアが動きすぎるようだったので、車高を調整して臨みました」という阿部選手がひと筆書きのようなスムースなラインで中間ベストを叩き出す。

 ライバルたちが2速で進入するコーナーに3速で飛び込み、ボトムスピードを高く維持したままクリアする安部選手。その結果、関選手を0.219秒上回り見事逆転に成功した。「頑張りました!とにかくコーナーから脱出するときに、早くアクセルを開けることを意識しました。これでタイトルにリーチをかけられたので、さっさとチャンピオンを確定させて逃げ切りたいですね」と阿部選手は王座を睨んだ。

 一方、無念の2位に終わった関選手は「前半のイケイケ部分がスイフトにも負けていたんでダメでしたね。なんとか最終戦のMSPまでタイトル争いをして、このサーキットで阿部選手を引っ張り出したいですね!」と次戦以降の意気込みを語ってくれた。

第2ヒートでの渾身の走りで逆転優勝を果たしたSATW-2クラスの阿部崇治選手(GメカS2000 GT)。第1戦こそランキング2番手の関勝哉選手(ツールARシバProμシビック)の後塵を拝したものの、第2戦から三連勝を挙げて王座に手をかけた。
SATW-2の上位4選手。左から優勝した阿部選手、2位の関選手、3位の豊本将希選手(速歩フォルテックWMスイフト)、4位の吉岡真選手(マキシマFC・WM・シバBRZ)。

JAF東北ジムカーナ選手権SATW-4クラス

 ここまで佐柄英人選手が三連勝を決めているSATW-4クラス。しかし、MSPで佐柄選手の独走を止めたのは、昨季のチャンピオン中村武留選手だった。

 中村選手は第1ヒートからトップに立つと、第2ヒートでも自身のタイムを僅かに上げて、最終ゼッケンの佐柄選手を待つことに。しかし、佐柄選手はこの中村選手の第1ヒートのタイムも抜けず、悔しい2位に沈んだ。

 今季初優勝を飾った中村選手は「セッティングが上手い具合に決まってくれたのが良かったですね。前日練習でのセットを見直したのがバッチリはまった感じです。気温が高かった分、少し修正しましたがタイヤのグリップは全体的に悪かった印象ですね。残り全勝するしかないので頑張ります」と自身の走りを振り返った。

第2戦は3位、第3戦で2位と尻上がりに調子を上げていた昨季のSATW-4クラスチャンピオン、中村武留選手(B・J☆ワコーズLANCER)がついに今季初優勝。残る3戦も背水の陣の戦いが続く。
SATW-4の上位3選手。左から優勝した中村選手、2位の佐柄英人選手(DLレイズマルイCLランサー)、3位の豊下勝彦選手(あきたびとん☆桃豚☆ヤリス)。

JAF東北ジムカーナ選手権BSC-2クラス

 そして、この一戦で最も盛り上がりを見せたのは、改造車が接戦を繰り広げるBSC-2クラス。開幕二連勝を飾った宍戸政宏選手は欠場したものの、新協和サーキットでの第3戦で日産180SXを駆って優勝を収めたベテラン、菊池功悦選手も参戦。

 そんな中、今季は参戦した2戦とも2位に甘んじていた上野健司選手が気合の走りを披露する。パワー勝負の前半セクションでは後れをとるものの、テクニカルな後半セクションで、コンパクトなロードスターの長所を生かしてタイムを刻んできた。そして、上野選手は1本目から2番手以下を1.5秒以上突き放すトップタイムで折り返す。

 この大勢は2本目になっても変わらず、誰ひとり上野選手のタイムを更新することができない。上野選手も敬愛する菊池選手も、テクニカルセクションで遅れをとってトップタイム更新ならず。

 そして、上野選手がこのクラス転向後、初の表彰台の頂点に立った。さらにこの一戦の総合トップタイムとなり、ダブルで嬉しい結果となった。「MSPで優勝するのも実は初めてなんです。ここはパワーコースなんで正直難しいかな……と思っていたんですが、コース設定にも助けられて優勝することができました」とMSP初優勝だったことを明かした上野選手。

 さらに「タイヤも最初から一本目勝負と決めていました。前半セクションでも無理をさせず、タイヤが嫌がったら無理をさせずに転がしてあげて、サイドターンも優しく引いてあげるなどできたのが良かったと思います」とタイヤについても語ってくれた。

 最後に「これで菊池さんとタイトル争いになった感じなんで、セブン(マツダRX-7)とインテグラで戦ったときのように、また勝負をしたいですね」と上野選手は嬉しい勝利をまとめてくれた。

今季は第1戦と第3戦で2位を獲得するも、優勝にあと一歩届いていなかったBSC-2クラスの上野健司選手(DLガルフWmMXロードスター)。第1ヒートで1分44秒873とこの一戦で唯一1分45秒の壁を破り、PN車両からB車両に転向後初優勝を果たした。
BSC-2の上位3選手。左から優勝した上野選手、2位の藤原雄司選手(QUICKロードスターGRIP)、3位の菊池功悦選手(DLガルフマキシマ180SX)。

JMRC東北ジムカーナシリーズクラス2

 8台が参戦して争われた、併催されたJMRC東北ジムカーナシリーズのクラス2。ベテランの伊藤研選手が昨季のMSPでの第8戦以来となる、久しぶりの優勝を果たした。

「去年もここで勝てたので相性は良いですね。特に今日はあまり難しいサイドターンがなかったことに助けられました。前回、雨の中ユーズドタイヤで四苦八苦したんで、タイヤを新調してきたのも良かったですね。特に後半セクションのテクニカルの相性が良かったんだと思います」と伊藤選手は勝因を語ってくれた。

JMRC東北ジムカーナシリーズのクラス2を制したのは、鮮やかなボディカラーのアバルトを駆る伊藤研選手(アバルト595)。第1ヒートのタイムで逃げ切り、パイロンと脱輪のペナルティで下位に沈んだ第3戦のリベンジも果たした。
クラス2の上位4選手。左から優勝した伊藤選手、2位の木村文哉選手(DsportHWコペンADMS)、3位の吉田友明選手(プライズインテグラ)、4位の三上知彦選手(FIT3)。

JMRC東北ジムカーナシリーズクラス3、クラス6

 JMRC東北シリーズのクラス3では、クラス6の佐々木光選手とダブルエントリーした米田茂選手がダントツのトップタイムで、第3戦の新協和カートランドと第4戦の岩木山スキー場で2位だった雪辱を晴らす優勝を決めた。米田選手は「目標としている阿部さんたちのアドバイスのおかげで勝つことができました」と喜んだ。

 そして、クローズドクラスとなるクラス6に参戦した佐々木選手もトップタイムをマーク。Wエントリーした米田選手と嬉しいダブルウィンを決めた。

今季JMRC東北シリーズのクラス3初成立となった第3戦、そして第4戦では連続して2位に甘んじた米田茂選手(マキシマFC S2000)だったが、この一戦では第2ヒートで大きくタイムを伸ばし、2位以下を2秒以上離して勝利を収めた。
クラス3の上位3選手。左から優勝した米田選手、2位の岩谷武選手(DLマキシマクスコロードスター)、3位の越後谷圭一選手(ASC津軽NA MR2)。
JMRC東北シリーズのクラス6はクローズドクラスとなるが、一騎討ちとなった一戦を佐々木光選手(チームA(CマキシマS2000)が制した。
クラス6に参戦した、左から1位の佐々木選手、2位の木村俊介選手(アートフォース ワンビア)。

 この一戦を主催した奥州VICIC事務局長の畑山忠彦さんは「もう40年近く続いているクラブですが、オフィシャル皆がキビキビとしっかり動いてくれていい大会になったと思います。MSPさんとは公認コースとして登録した頃からのお付き合いで、現在はエビスサーキットさんとこのMSPさんで大会を主催させてもらっています」とクラブの現状を語った。

 さらに「今大会はコースも長くとれて、走りがいのあるコースで良かったんじゃないかなと思っています。朝、霧が立ち込めていたときはどうしようかと思いましたが、晴れてくれてMSPらしい天気になりましたね」とこの一戦を振り返った。

 そして「最終戦もうちが担当させてもらうんですが、チャンピオンが決まって参戦しない選手もいらっしゃるとは思いますが、きょう以上に走りがいのあるコースを用意してお待ちしているので、ぜひ参戦してください」とこの後主催する、ここMSPでの東北地区戦の第7戦と、エビスサーキット西コースでのJMRC東北シリーズ第9戦についてもふれてくれた。

 また、午後には同会場で同じオフィシャルのみなさんの手によるオートテストが開催され、こちらも大いに盛り上がった。

晴れて気温も上がる厳しい環境の中でもこの一戦を円滑に運営された、奥州VICICのオフィシャルのみなさん。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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