夏至の候のSUGO決戦でシリーズ前半戦が終了。上位入賞ドライバーがタイトル争いでアドバンテージ
2023年7月7日

全日本カート選手権 OK部門およびFS-125CIK部門の第3戦/第4戦が、6月24~25日に宮城県村田町・スポーツランドSUGO国際西コースで開催。OK部門では藤井翔大選手(DragoCORSE)が、FS-125CIK部門では髙田陽大選手(Super Racing Junkie!)が、ともに2連勝を飾った。
2023年JAF全日本カート選手権 OK部門 第3戦/第4戦
2023年JAF全日本カート選手権 FS-125CIK部門 第3戦/第4戦
2023年JAF全日本カート選手権 EV部門 第2戦
開催日:2023年6月24~25日
開催地:スポーツランドSUGO国際西コース(宮城県村田町)
主催:SSC
レースフォーマットやシリーズの部門構成を刷新して大きな変貌を遂げた全日本カート選手権。その最高峰のOK部門と、次に位置するFS-125CIK部門の、今季2度目の大会が行われた。その舞台はシリーズ中で最北に位置するスポーツランドSUGO国際西コース。
全長984mのトラックには多くのオーバーテイクポイントがあり、これまで幾多のドラマを生んできた伝統のカートコースだ。決勝日のSUGOは上空を雲が覆う時間帯もあったが、降雨の不安はなし。雲が切れるとまぶしい初夏の日差しがアスファルトを照らし、暑さの厳しい一日となった。

全日本カート選手権OK部門 第3戦/第4戦
OK部門の参加は5台で、暫定ランキング首位の吉田馨選手と同2番手の堂園鷲選手は欠場している。第3戦と第4戦のレースで予選のスターティンググリッドを決めるタイムトライアル(TT)では、14歳のルーキー菊池貴博選手(K.SPEED WIN)がライバルたちを0.25秒近くも上回るトップタイムをマークした。
その菊池選手は前回のもてぎ大会にもエントリーしていたのだが、レース前日の練習走行で負傷して欠場に。今回がOK部門のデビュー戦となり、負傷明けの不安を吹き飛ばすような速さを披露。だが菊池選手は第3戦の予選で独走を演じながら、終盤の駆動系トラブルでまさかのリタイア。それでも、続くスーパーヒート(SH)では最後尾からの逆転でトップゴールを果たし、決勝の3番グリッドを得た。
迎えた第3戦の決勝。ポールは予選トップの地元勢、五十嵐文太郎選手(Formula Blue エッフェガーラ)。2番グリッドには菊池選手のチームメイトの藤井選手がつけている。そして24周の戦いが始まると、落合蓮音選手(TAKAGI PLANNING)が4番グリッドからの好スタートで菊池選手をかわし、さらに藤井選手をパスして2番手に上がった。これでトップの五十嵐選手は0.7秒ほどのリードを手にしたが、そこに後続がじわじわと接近、11周目には2番手に戻った藤井選手が五十嵐選手のテールを捕らえた。
すると12周目、藤井選手は5コーナーで巧みにオーバーテイクを決めてトップに浮上。五十嵐選手、落合選手、菊池選手が一列で2番手を競い合うのを尻目に、快調にリードを広げていった。レースが残り3分の1を切ると、藤井選手のアドバンテージは1秒以上に拡大。そのまま独走を続けた藤井選手は、24周目のコントロールラインに到達すると、弾けるように拳を突き上げた。
15歳の藤井選手は、OK部門参戦2年目での初優勝。加えてカートレースでは、ローカルレースでジュニアクラスを走っていたころから4年ぶりの優勝だったという。2位は、真後ろにつける菊池選手の逆転を許さなかった落合選手。SHまで圧倒的なスピードを誇っていた菊池選手は、消耗したタイヤに苦しみ3位でレースを終了した。



全車フレッシュタイヤを装着して仕切り直しの第4戦。予選とSHでは再び菊池選手が速さを見せつけ、両ヒート1位で決勝のポールを獲得した。2番グリッドは落合選手、3番グリッドは藤井選手だ。
この大会最後のヒートが始まると、オープニングラップのバックストレッチエンドで藤井選手が落合選手を急襲して2番手に浮上。五十嵐選手と綿谷浩明選手(SPS川口)もそれに続き、行き場を失いダートに飛び出した落合選手は最後尾に下がってしまう。独り順調にレースを開始した菊池選手は、1周で0.8秒ほどのリードを獲得した。そこにセカンドグループを抜け出した藤井選手が接近。2台は中盤過ぎに0.2~0.3秒差まで近づくと、そのまま膠着状態でラップを重ねていった。
事態が動いたのは残り6周。逆転のタイミングをじっくり待った藤井選手が、一発で菊池選手を抜き去り、その勢いのまま菊池選手を引き離していったのだ。ゴールの瞬間、そのリードは1.6秒以上に。ロングランの優位性を生かした藤井選手の、完璧な2連勝だった。これで藤井選手はシリーズポイントを87点に伸ばし、ポイントリーダーに浮上だ。
菊池選手は2位でフィニッシュ。勝利こそならなかったものの連続表彰台に立ち、60点を稼いで参加2戦でランキング2番手につけた。落合選手は終盤、急にスローダウンしてリタイアに。五十嵐選手が綿谷選手の追走に耐え切って3位でゴールし、菊池選手と1点差のランキング3番手になった。



全日本カート選手権FS-125CIK部門 第3戦/第4戦
FS-125CIK部門には15台が参加した。TTでは開幕戦を制した鈴木恵武選手(Formula Blue 増田スピード)がトップ、ここSUGOをホームコースとする髙田選手が2番手に。両者の差はわずか0.045秒だ。続く予選では髙田選手がトップ、SHでは鈴木選手がトップと、ふたりはトップゴールを分け合って決勝のフロントローに並んだ。両者同点ながら、規定によってポールは予選で上位だった髙田選手だ。
22周の決勝が始まると、髙田選手と鈴木選手はそろって順調にスタートした。ここで優位に立ったのは髙田選手。1周目から鈴木選手を引き離し、5周で1秒強のリードを築くと、その後もじわじわとアドバンテージを広げていった。昨年はFP-3部門にシリーズ途中から参戦するや、デビュー2連勝を飾って注目を浴びた髙田選手。FS-125CIK部門の初優勝の地も、FP-3部門と同じホームコースのSUGOだった。
鈴木選手は髙田選手の逃げ切りこそ許したものの、単独走行で2位に。オープニングラップで4番グリッドから3番手に上がった伊藤聖七選手(Formula Blue Ash)は、オレンジボール旗で無念のピットイン。代わって安定した速さを見せる喜納颯矢斗選手(ガレージC)が3位でフィニッシュし、昨年の第4戦以来、自身2度目の表彰台に立った。



第4戦では、鈴木選手が予選とSHを制して決勝のポールに。対して髙田選手はどちらも2番手で、2番グリッドに並ぶこととなった。その勝負は、スタートで決することとなった。レースが始まると、髙田選手が好発進でトップを奪い、4番グリッドの佐藤佑月樹選手(RT WORLD)が2番手に浮上。スタートでやや出遅れた鈴木選手は3番手に後退してしまったのだ。
SHまでの不具合をセッティングの見直しで解消した髙田選手は快調そのもので、タンデム走行で2番手の座を競い合う佐藤選手と鈴木選手を徐々に置き去りにしていく。15周目、鈴木選手が2番手に上がった時には、髙田選手のリードは3秒半にも広がっていた。2戦連続の独走勝利だ。
鈴木選手はセカンドグループを抜け出し、2戦続けての2位フィニッシュ。ここまで4戦すべてで表彰台に立ち、121点でポイントリーダーの座をキープした。ポイントランキング2番手に浮上した髙田選手との差は26点だ。佐藤選手は終盤にスピードが鈍り、これをかわした岡澤圭吾選手(HRT with カローラ新茨城CSI Racing)が3位でチェッカーを受け、全日本デビュー4戦目で初表彰台をつかんだ。



全日本カート選手権EV部門 第2戦
同時開催の全日本カート選手権EV部門第2戦では、前戦までTT→決勝(ファイナル)だったレースフォーマットを改変。TTの後にセミファイナルを行い、その結果で決勝グリッドを決める形になった。セミファイナルは10周、決勝は12周だ。
夏季のテストでは、長い周回数を走ると暑さの影響から急激な性能低下が起きることもあったというが、2ヒート化によって各ヒートの周回数が抑えられたことで“熱ダレ”の不安も解消した模様だ。さらに今回のマシンには、モーターに空気を導くエアダクトを設け、バッテリーカバーには遮熱効果のあるステッカーを貼って、万全の暑さ対策が採られていた。技術面のサービスを担うトムスのスタッフによると、その効果は如実で、暑さによる不具合の心配は皆無だったという。
注目のセミファイナルでは、TTトップの渡邉カレラ選手(EIKO JAPAN)と中川賢太選手(TOM'S-EV Racing with LAM Racing)がトップ争いを展開し、残り2周の逆転で中川選手がトップとなった。そして決勝では、オープニングラップでトップ浮上を狙った渡邉選手がスピンを喫して最後尾に後退。これで楽になった中川選手は、独走のままゴールまで走り切って、デビュー2戦目で歓喜の初優勝を遂げた。
中川選手の後方では、浅見謙心選手(TOMMY SPORT RACING)と大槻聖征選手(TOM'S-EV Racing)がスタートからゴールまで接近戦を繰り広げたが、ここは浅見選手がポジションを守り切って2位、大槻選手が3位という結果になった。また、セミファイナルの0周リタイアで最後尾からのスタートになった翁長実希選手(RSS with TOM'S EV Racing)が、目覚ましいポジションアップを披露。最後は大槻選手に0.1秒強の差まで迫って4位フィニッシュを果たしている。
EV部門は残すところ1戦。ポイントリーダーは40点の大槻選手だ。他に34点の翁長選手、25点の渡邉選手と中川選手、22点の向畑疾走選手(KCNAGAHARA)と浅見選手もシリーズチャンピオンの可能性を有している。10月21~22日、三重県鈴鹿市・鈴鹿サーキット南コースでの最終戦では、どんな決着が待っているのだろう。



フォト/JAPANKART、長谷川拓司 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部