ベテランの逆襲! 佐々木孝太選手が4連勝中の卜部和久選手を抑えて優勝

レポート レース

2023年7月25日

全12戦で争われるFormula Beat地方選手権は、早くも6戦目を迎えてシリーズの折り返しを迎えた。今回の最大の話題は、第2戦から出場して以来、負け知らずの卜部和久選手の連勝が続くのか、それともベテラン佐々木孝太選手が意地を見せるのかだ。佐々木選手は開幕戦からの2戦でリタイアを喫しているものの、第3戦以降は連続2位表彰台獲得。そして岡山国際サーキットでの予選では卜部選手を抑えて連続ポールポジションを奪っている。両者にとって負けられない戦いであるのは間違いなく、この大会が正念場になりそうだ。

2023 Formula Beat地方選手権シリーズ Round.6
(ENEOS スーパー耐久シリーズ 2023 Supported by BRIDGESTONE 第3戦内)

開催日:2023年7月8日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:株式会社菅生、SSC

予選

 Formula Beatは予選/決勝を土曜日のうちに行う1デイ開催。事前の練習はすべてドライコンディションで走行できたが、午前に行われた予選は雨に見舞われてしまう。そんな状況において、ドライバーの経験値や引き出しの多さが大いに活かされる予選となった。

 中でもベテランの佐々木選手はストレートでハイドロプレーニングが起こる雨量の中、計測1周目から一度もトップを譲らない走りを披露する。2番手につけた卜部選手にコンマ8秒の差をつけ、今季3回目のポールポジションを獲得した。

「昨シーズンは練習中にあったかもしれないけど、フォーミュラで雨のレースなんて20年以上ぶり(笑)。ストレートでは水に食われて全然伸びない状況でしたが、とりあえず踏み切りました。結構ヤバかったです。ウチのチームはSUGOが苦手みたいで、昨年も一昨年もすごく苦労していたんですが、最後にやっとドライの良いセットが見つかりました。できればドライのレースで勝ちたいですね」と佐々木選手。

 一方、「昨年のFIA-F4でSUGOの雨は経験しているんですけど……」と卜部選手。続けて「これからまたマシンのいろんなところを見直していきます。決勝はやっぱりスタートが命だと思っているので、そこをしっかり決めて前に出ることが大事だと考えています。今回も負けられません」と、佐々木選手にやすやすと優勝を許す気はなさそうだ。

 3番手は卜部選手同様、FIA-F4と併せて出場する大宮賢人選手で、4番手はモビリティリゾートもてぎの第3戦以来の出場となる金井亮忠選手。なお、ジェントルマンクラスの予選最上位は、7番手の河野靖喜選手だった。

若手ドライバーの飛躍も目覚ましい中、ポールポジションを獲得したのは、これまで数多くのレース参戦で豊富な経験を持つ佐々木孝太選手。

決勝

 注目された決勝では、一転して路面がほぼドライへと転じていた。それでも雨雲レーダーではスタートから数分後に雨が降ると表示されていたことから、中団以降でウェットタイヤを装着していたドライバーが4人。しかし、結論から先に言えば、決勝中に雨は降ったが、ほんの一瞬のお湿り程度。この大ギャンブルは失敗となってしまう。

 佐々木選手が望んだドライ対決では、卜部選手もスタートを決める。だが佐々木選手はポールポジションの利を活かしてトップを譲らず。それどころか、オープニングの1周だけで卜部選手をコンマ7秒も離してきた。このふたりに対して、大宮選手は痛恨のエンジンストールでほぼ最後尾まで順位を落としてしまう。自動的に3番手に浮上したのは金井選手だったが、その背後からスタートした徳升広平選手、ハンマー伊澤選手も離れず。そして1周目を終えたばかりの1コーナーで徳升選手がスルッと前に出る。

 じわりじわりと逃げ続ける佐々木選手の後方で、卜部選手は悪戦苦闘。「晴れ方向のセットだったんですが、変えたところがうまくいかなかったようです。高速コーナーは大丈夫だったのですが、低速コーナーでニュータイヤの美味しいところ、とくにフロントが弱くて全然向きが変わりませんでした。なんとかして自分で曲げたんですけど、そのうちに離れてしまって……。リアタイヤのグリップが減ってきた後半、バランスが良くなってペースも良くなっていたんですけどね」と語るも、時すでに遅しの感はあった。

 実際、卜部選手にやや詰められた佐々木選手ではあったが、難なく逃げ切りに成功する。「やっと勝った(笑)。雨がまた降るんじゃないかって想定していたので、とりあえず後ろだけドライ仕様、少し雨寄りにしてアウトラップで様子を見たんです。ですが、これはドライに寄せた方が良いと思い、グリッドでスタビとかを変えたのが効きました。チームのみんなで改善して、いいマシンに仕上がりました」と会心の展開に、満足そうな顔を見せた。

 2位の卜部選手は次回の十勝スピードウェイでの2連戦のみ参戦し、その後のオートポリスとSUGOで2連戦となるレースはFIA-F4との日程の重なりで出場できない。「そこで優勝しても勝率では上回れませんが、もう(卜部選手が)出なくなる前に、最後に存在感を示しておきたいです」とまでベテランに言わしめた。

 もちろん卜部選手も「マシンを大幅に変えてきて、佐々木選手も良くなってきている感じがするので、僕もチームの人としっかり話し合って、もっと仕上げていきたいと思います」と最後の戦いに向け、リベンジを誓ってくれた。

 3位は早々に単独走行となった徳升選手。その後ろでは3周目に伊澤選手が金井選手を抜くなど、中盤まで激戦が繰り広げられた。しかし、以降は伊澤選手の逃げ切りに。そしてこのふたりに続いていたのがジェントルマンクラスの河野選手。11周目に後方から激しく追い上げてきた大宮選手にかわされてしまうも、ジェントルマンクラスでは5戦4勝。河野選手はついにランキングのトップに浮上した。

「昨年と比べてマシンの状態が著しく変わったことで、いいところを走れるようになり、気持ちにも余裕ができたというのがひとつ。それとマシンの状態を伝えることはできても、セットでどう対処したらいいのか分からないのですが、それをメカさんが全部やってくれるので気づいたらレベルが上がっていました」と河野選手。こちらの快進撃もどこまで続くのか注目される。

優勝は佐々木孝太選手(ファーストガレージ&ISP)。
2位は卜部和久選手(H・R F108)、3位は徳升広平選手(フジタ薬局アポロ電工高山短大)。
フォーミュラ・ビート表彰の各選手。
ジェントルマンクラス優勝は河野靖喜選手(ファーストガレージ&ISP)。
2位はKAMIKAZE選手(ファーストガレージ&ISP)、3位は植田正幸選手(Rnsports制動屋KKZS)。
フォーミュラ・ビートジェントルマンクラス表彰の各選手。

フォト/今村壮希、吉見幸夫 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ