逆襲の切谷内ラウンド、タイトル争いは次戦に持ち越し。また全日本初優勝ドライバーも誕生!

レポート ダートトライアル

2023年7月27日

全日本ダートトライアル選手権 第6戦「2023年東北ダートトライアル IN KIRIYANAI」が、7月15~16日に青森県五戸町のサーキットパーク切谷内で開催された。競技の結果によっては、早くも今シーズンのチャンピオンが確定するクラスがいくつかあるという状況だ。

2023年JAF全日本ダートトライアル選手権 第6戦「2023年東北ダートトライアル IN KIRIYANAI」
開催日:2023年7月15~16日
開催地:サーキットパーク切谷内(青森県五戸町)
主催:MSCはちのへ、AKITA

 今シーズンの全日本ダートトライアル選手権は全8戦が組まれていたが、第2戦の恋の浦ラウンドが中止となったため、7戦で争われることとなる。選手権は成立した競技会の70%(小数点以下四捨五入)が有効戦数となり、今シーズンは5戦が有効戦数。このラウンドは実質的な5戦目にあたる重要な一戦だ。

 丘稜の斜面を切り開いて造成されたサーキットパーク切谷内は、コース全体に高低差があるのが大きな特徴。ストレート区間は短いものの、コース全体が硬質路面で覆われているため、ハイスピードコーナリングが可能なコースとなっている。

 ところが、公開練習が行われた15日は東北地方を襲った大雨の影響を受け、コースコンディションはマッド状態。翌日の16日に行われた決勝ヒートは雨が小康状態となったものの、午前中の第1ヒートはウェットコンディションとなり、全クラスとも路面が乾き出した第2ヒートでベストタイム更新ラッシュが相次いだ。

土曜は豪雨、日曜は曇りの予報だったが、決勝は時折小雨が振る状況となった切谷内ラウンド。
切谷内名物の黒い路面。決勝はウェット路面から始まり、2本目後半には超硬質ドライ路面に変化した。
暑い季節ならではの氷の無料配布が行われ、主にインタークーラーの冷却に用いられた。
激戦が予想される第6戦、選手たちも朝から気合が入る。開会式で挨拶するのは、開催地・五戸町の若宮佳一町長。
選手の熱い走りをひと目見ようと、多くのダートラファンがサーキットパーク切谷内を訪れた。
アップダウンにテクニカルコーナーが組み合わさった切谷内。路面特性を読み切って、ドライタイヤまたは超硬質ドライタイヤを選んだ選手が2本目でタイムを残した。

PN2クラス

 スズキ・スイフトスポーツワンメイクのPN2クラスは、シリーズランキングトップの中島孝恭選手を追いかける若手の鶴岡義広選手が第1ヒートのトップを奪うものの、第2ヒートは切谷内をホームコースとする東北の竹村由彦選手が第1ヒート4番手から逆転。竹村選手は1989年から全日本にスポット参戦し、1998年に一時ダートトライアル活動を休止。2008年から再び全日本に復帰し、自身初となる全日本優勝を飾った。

 2位には鶴岡選手が入賞し、シリーズポイントでは今回7位に低迷した中島選手を抜いてランキングトップに浮上。そして全日本デビュー戦の第4戦スナガワラウンドで3位表彰台を獲得した張間健太選手が、全日本2戦目となる切谷内ラウンドでも3位表彰台を獲得した。

PN2クラス優勝は竹村由彦選手(秋田スズキ・DL・Ω・スイフト)。
地元東北・秋田の竹村選手がうれしい全日本初勝利を遂げた。
PN2クラスの表彰式。左から2位の鶴岡義広選手、1位の竹村選手、3位の張間健太選手、4位の鳥居晴彦選手、5位の谷尚樹選手。

SC1クラス

 山崎迅人選手(三菱・ミラージュ)がタイトルに王手をかけているSC1クラスは、第1ヒート2番手の深田賢一選手(ホンダ・シビック)が第2ヒートで逆転優勝。全日本初優勝を飾るとともに、山崎選手のチャンピオン確定に待ったをかけた。2位に山崎選手、3位には東北ダートトライアル選手権にも出場する関東の佐藤史彦選手(スバル・インプレッサ)が入賞した。

SC1クラス優勝は深田賢一選手(BFAベリティ摩摺セラシビック)。
サラリーマンドライバーの深田選手が悲願の全日本初優勝。これまでの苦労を知る関東の仲間から祝福を受けた。
SC1クラスの表彰式。左から2位の山崎迅人選手、1位の深田選手、3位の佐藤史彦選手、4位の松田宏毅選手。

PNE1クラス

 ノワールシゲオ選手(スズキ・スイフトスポーツ)が3勝を挙げ、タイトル獲得に王手をかけているPNE1クラスは、第5戦門前ラウンドで今季初優勝を挙げた葛西キャサリン伸彦選手(スズキ・スイフトスポーツ)が2勝目を獲得。葛西キャサリン伸彦選手はノワールシゲオ選手に第1ヒートで約3秒、第2ヒートでも1秒以上引き離す走りを見せての勝利となる。タイトル確定は次戦以降に持ち越され、展開次第では葛西キャサリン伸彦選手にも逆転チャンピオンの可能性が出てきた。

PNE1クラス優勝は葛西キャサリン伸彦選手(YHGC ATSスイフトRSK)。
ノワールシゲオ選手が勝てばタイトル確定の場面で、葛西キャサリン伸彦選手が1本目タイムで優勝。
PNE1クラスの表彰式。左から2位のノワールシゲオ選手、1位の葛西キャサリン伸彦選手、3位の鈴木正人選手。

PN1クラス

 今シーズン、4人のウィナーが生まれた混戦状態となっているPN1クラスは、第2ヒートで渥美孝太郎選手(ホンダ・フィット)がマークしたベストタイムを、シリーズランキングトップの徳山優斗選手(トヨタ・ヤリス)が更新。

 クラス最終走者の工藤清美選手(ホンダ・フィット)は、中間タイムで徳山選手に約0.7秒遅れるものの、後半区間で逆転。待望の今季初優勝をホームコースの切谷内で獲得した。徳山選手も2位に入賞し、ランキングトップの座を死守。第5戦門前で4位に入賞した渥美選手は、今シーズン初の表彰台を獲得した。

PN1クラス優勝は工藤清美選手(工藤ホンダDLワコーズフィット)。
地元・八戸の工藤選手は、PN2クラス優勝の竹村選手と握手。北東北の選手が全日本切谷内を制した。
PN1クラスの表彰式。左から2位の徳山優斗選手、1位の工藤選手、3位の渥美孝太郎選手、4位の川島秀樹選手、5位の原靖彦選手、6位の飯島千尋選手。

PN3クラス

 今シーズン3勝を挙げている竹本幸広選手(トヨタ・GR86)がシリーズチャンピオンに王手をかけているPN3クラスは、浦上真選手(トヨタ・GR86)がクラス唯一となる1分39秒台のタイムで2位以下を大きく引き離し、今季初優勝を獲得した。竹本選手は2位に入賞したものの、タイトル確定は次戦以降に持ち越しとなっている。3位にはAT仕様のスバル・BRZを駆る佐藤秀昭選手が、第1ヒート8番手から大きく順位を上げ、表彰台の一角を獲得した。

PN3クラス優勝は浦上真選手(DL奥山Mスポーツ86)。
勝てそうでなかなか勝てず、ときには悩んでいた浦上選手。満面の笑みで優勝を喜んだ。
PN3クラスの表彰式。左から2位の竹本幸広選手、1位の浦上選手、3位の佐藤秀昭選手、4位の和泉泰至選手、5位の三枝聖博選手、6位の小関高幸選手。

Nクラス

 Nクラスは、タイトル争いを展開する岸山信之選手(トヨタ・GRヤリス)が第1ヒートでトップ、そしてランキングトップで切谷内では高い勝率を誇る北條倫史選手(三菱・ランサーエボリューションX)が2番手、同じく三菱・ランサーエボリューションXの信田政晴選手が3番手につける。

 路面が乾き出した第2ヒートは上位のリザルトが大きく変わった。まずは切谷内で優勝経験を持つ東北のベテラン、星盛政選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が、ベストタイムを更新してトップに立つ。その後、大橋邦彦選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が星選手のタイムを0.042秒塗り替えトップに浮上。

「切谷内は苦手意識がある」と語っていた矢本裕之選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が大橋選手のタイムを0.271秒上回り、今季初優勝を獲得した。岸山選手は突然の雨に祟られて6位、北條選手も同じく11位に終わり、シリーズランキングトップの北條選手、2番手の岸山選手、3番手の矢本選手のポイント差が一気に縮まる結果となった。

Nクラス優勝は矢本裕之選手(河童ZEALヤッコYHランサー)。
2位の大橋邦彦選手、1位の矢本選手、3位の星盛政選手と、アドバン勢が表彰台を独占した。
Nクラスの表彰式。左から2位の大橋選手、1位の矢本選手、3位の星選手、4位の信田政晴選手(代理)、5位の伊藤久選手。6位の岸山信之選手は欠席。

SA1クラス

 SA1クラスは、シリーズランキングトップの佐藤卓也選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、第2ヒートで逆転優勝を飾った。前走車のアクシデントにより再出走となった佐藤選手だが、約15分のインターバルでも集中を切らすことなく、地元の切谷内で待望の今季2勝目を挙げた。

 2位には河石潤選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞し、シリーズランキング2番手に浮上、3位にも同じくスズキ・スイフトスポーツの志村雅紀選手が入賞し、SA1クラスはスズキ・スイフトスポーツ勢が表彰台を独占した。

SA1クラス優勝は佐藤卓也選手(DLΩKYBオクヤマ・スイフト)。
河石潤選手の1本目のタイムを誰も上回れなかった中、再出走のプレッシャーがかかる佐藤選手が会心の一撃で逆転勝利。
SA1クラスの表彰式。左から2位の河石選手、1位の佐藤選手、3位の志村雅紀選手、4位の古沢和夫選手、5位の花見誠選手、6位の細木智矢選手。

SA2クラス

 中国地区の浜孝佳選手(三菱・ランサーエボリューションIX)がシリーズランキングトップ、九州期待の星、岡本泰成選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が同2番手につけるSA2クラスは、ベテラン勢が逆襲することとなった。

 日が差し、路面が急激に乾き始めた第2ヒートは、地元の金田一聡選手(三菱・ランサーエボリューションX)がトップに立つものの、シードゼッケンに入ると林軍市選手(三菱・ランサーエボリューションX)から次々とベストタイムの更新ラッシュが続く。

 荒井信介選手(三菱・ランサーエボリューションX)が林選手のタイムを0.595秒、さらに黒木陽介選手(トヨタ・GRヤリス)が荒井選手のタイムを0.694秒更新するという展開の中、クラス最終走者の北村和浩選手(三菱・ランサーエボリューションX)が、黒木選手のタイムを0.27秒更新。手に汗を握る戦いを制した北村選手が今季初優勝を挙げ、ポイントランキングも4番手から一気に2番手に浮上した。

SA2クラス優勝は北村和浩選手(MJT☆HKS☆DLランサー)。
逆転に次ぐ逆転でベストタイム更新ラッシュとなったが、最終走者の北村選手が大逆転で締めた。
SA2クラスの表彰式。左から2位の黒木陽介選手、1位の北村選手、3位の荒井信介選手、4位の林軍市選手、5位の金田一聡選手、6位の鈴木信地郎選手。

SC2クラス

 第1ヒートは目黒亮選手(トヨタ・GRヤリス)と大西康弘選手(三菱・ランサーエボリューションX)が0.004秒という僅差でトップを分け合ったSC2クラスは、第2ヒートで大西選手が逆転優勝。2021年のタカタラウンド以来、2年ぶりとなる全日本優勝を地元の切谷内で獲得した。そして吉村修選手(三菱・ランサーエボリューションX)が、今シーズン2回目となる2位に入賞。3位には亀田幸弘選手(スバル・インプレッサ)が入賞し、シリーズランキングトップの座をしっかりと守った。

SC2クラス優勝は大西康弘選手(YH・TEIN・AGランサー)。
久々の全日本優勝となった大西選手。同じアドバンユーザーでランキングトップの亀田幸弘選手と健闘を称え合った。
SC2クラスの表彰式。左から2位の吉村修選手、1位の大西選手、3位の亀田選手、4位の目黒亮選手、5位の奥村直樹選手、6位の磯貝雄一選手。

Dクラス

 Dクラスは、シリーズランキングトップの炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)を追いかける谷田川敏幸選手(スバル・BRZ)がトップを奪うものの、第2ヒートはショートホイールベースの三菱・ランサーエボリューションXを駆る亀山晃選手が大逆転。

 亀山選手は2019年の丸和ラウンド以来、4年ぶりとなる全日本優勝を果たした。2位は第4戦スナガワラウンドを制した田辺剛選手、3位には第1ヒート2番手の炭山裕矢選手が入賞。炭山選手がランキングトップを死守するとともに、同2番手の谷田川選手とのポイント差を3点差から5点差に広げた。

Dクラス優勝は亀山晃選手(ベストDLランサーDS1)。
1本目で失敗した亀山選手は、2本目に超硬質ドライタイヤのDZ95Rを履き、唯一の1分27秒台でオーバーオール勝利。
Dクラスの表彰式。左から2位の田辺剛選手、1位の亀山選手、3位の炭山裕矢選手、4位の谷田川敏幸選手、5位の河内渉選手、6位の田口勝彦選手。

フォト/CINQ、大野洋介、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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