FS-125JAF部門は熾烈なトップ争い! 佐藤佑月樹選手と伊藤聖七選手が優勝を分け合う結果に

レポート カート

2023年8月3日

全日本カート選手権 FS-125JAF部門/FP-3部門の第5戦と第6戦が、真夏の本庄サーキット(埼玉県本庄市)で開催された。FS-125JAF部門の第5戦では、佐藤佑月樹選手(RT WORLD)がゴール間際の逆転で2連勝。同第6戦では伊藤聖七選手(Formula Blue Ash)が3勝目を飾った。

2023年JAF全日本カート選手権 FS-125JAF部門/FP-3部門 第5戦/第6戦
2023年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門 第5戦/第6戦

開催日:2023年7月22~23日
開催地:本庄サーキット(埼玉県本庄市)
主催:T.KBF

 5大会/全10戦で行われる全日本カート選手権 FS-125JAF部門/FP-3部門の2023シリーズは、この大会で折り返し点を迎えた。会場は埼玉県の北部、群馬県の近くに位置する本庄サーキット。真夏のまぶしい日差しに照らされたサーキットは気温が35度近くに達し、暑さの厳しい一日となった。

 本庄サーキットは自動車やバイクのイベントにも使われる、いわゆるミニサーキットで、カートレースの舞台としては異例に大きな規模を持つ。1098mのコースには長い2本のストレートがあり、コース幅も広い。スリップストリームが抜群によく効き、ライン取りの自由度も高いコースでの戦いは、大集団による目まぐるしいポジションチェンジが繰り返される展開になることが多く、勝負を仕掛ける場所とタイミングがレース結果を大きく左右する。

 すべての公式セッションが行われる7月23日には、併催イベントとして『390ccスプリントエキシビションレース』も開催された。これは本庄サーキット所有のレンタルカートを使用するレース形式のイベントで、参加者にはJAFゴーカートライセンスが発給される。選手権の合間に行われたエキシビションレースの走行時間には、参加者が広大なコースでのカートドライブを満喫していた。

Sodiの390ccカートでエキシビションレースが行われた。JAFゴーカートライセンスも取得可能で、一般参加者には好評の様子。

全日本カート選手権 FS-125JAF部門 第5戦/第6戦

 FS-125JAF部門には10台が参加した。タイムトライアルでは第4戦のウィナー佐藤佑月樹選手がトップタイムをマーク。0.048秒差の2番手は佐藤こころ選手(チームナガオ)、0.054秒差の3番手は白石いつも選手(HRS JAPAN)と、西から遠征してきた女性ドライバーふたりがそれに続いた。上位3台に限らず、トップから7番手までが0.2秒差に収まる接戦状態だ。

 第5戦の予選では、ポイントリーダーの伊藤選手が3番手走行中にマシンの不具合でオレンジボール旗を振られ、このヒートをリタイアすることに。レースは6度のトップ交代劇が繰り広げられ、松本琉輝斗選手(HRS JAPAN)が決勝のポールにつくこととなった。

 20周の決勝では、松本選手が先頭の座を守って発進したのに対して、2番グリッドの佐藤佑月樹選手は4番手に下がってしまった。2番手は酒井翔太選手(FIRST GARAGE BEMAX)、3番手は佐藤こころ選手だ。その先頭集団に、グリッド最後尾からスタートした伊藤選手が急接近してくる。ここから2番手争いが過熱し、その間に松本選手が1秒近いリードを手に入れた。

 しかし、松本選手は逃げ切れない。セカンドグループを抜け出した伊藤選手が、松本選手に急接近してきたのだ。レースの折り返し点で2台は一丸となり、16周目に伊藤選手がついにトップへ。その先頭集団に、3番手までポジションを取り戻した佐藤佑月樹選手もじわじわと近づいてくる。

 残り2周、佐藤佑月樹選手が前2台のテールを捕らえた。最終ラップ、コース後半のセクションで伊藤選手と松本選手が競り合い、2台はもつれ合うように失速。そこを佐藤佑月樹選手がするりとかわしていく。ゴール間際の逆転で、勝利は佐藤佑月樹選手のものとなった。佐藤佑月樹選手は、これで2連勝だ。

 0.053秒差の2位は伊藤選手。3番手でゴールした松本選手にはプッシングのペナルティが下り、酒井選手が繰り上がりで2戦連続の3位となった。佐藤こころ選手もトップから0.4秒差の僅差でチェッカーを受けて4位に。白石選手もポイント圏内の5位でフィニッシュした。

「この優勝は大きいです」と語る佐藤佑月樹選手(RT WORLD)は「ラッキーな感じのレースでした」と決勝を振り返る。「自分でも運が良かったと思います。勝ったときは奇跡が起きたなと感じました。前にいた2台とは同じタイムだったから、何もなければ逆転は難しかっただろうけれど、レース中は前で何かが起きるだろうと思って、(優勝を)諦めてはいませんでした。最終ラップにやり合うかなと思っていたら、そのとおりになって!」と読みが的中、優勝を手繰り寄せた。
2位は伊藤聖七選手(Formula Blue Ash)、3位は酒井翔太選手(FIRST GARAGE BEMAX)。
FS-125JAF部門 第5戦の表彰式。左から2位の伊藤選手、1位の佐藤佑月樹選手、暫定3位の松本琉輝斗選手はペナルティで降格。代わって酒井選手が3位となった。

 第6戦の予選では、伊藤選手が終盤に先頭集団を抜け出して決勝のポールを獲得。佐藤佑月樹選手が2番手に、白石選手が3番手に続いた。そして決勝では先頭をキープして発進した伊藤選手に、佐藤佑月樹選手と1ポジションアップの松本選手が続き、3台で先頭集団を形成する展開に。レースが中盤に入ると、ここに白石選手と塩田惣一朗選手(HRS JAPAN)も追いつき、トップグループは5台に膨らんだ。

 レースが残り3分の1になると、2番手争いがにわかに熱を帯び、トップ伊藤選手の後ろにギャップができる。そのリードは周を追って広がり、最終ラップには伊藤選手のアドバンテージは約1.5秒にも拡大していた。背後のプレッシャーから解放された伊藤選手は、ガッツポーズを披露しながら最終コーナーを回り、3勝目のチェッカーをくぐった。

 伊藤選手の後方のバトルは最後まで白熱し、2位は佐藤佑月樹選手、3位は松本選手のものに。2番手で最終ラップを迎えた白石選手は4位に終わったものの、このヒートで目を引く速さを発揮してみせた。なお、伊藤選手はこれまで3つの勝利以外のレースもすべて2位表彰台を得ており、有効ポイントを146点に伸ばして、ポイントレースでも大きなリードを手にした。2番手は有効116点の佐藤佑月樹選手、3番手は同102点の中尾正義選手(Energy Japan)だ。

伊藤選手がシリーズ3勝目でタイトル争いをリード。「最初は振り返ったら真後ろに(佐藤)佑月樹選手がいたので驚いて焦ったけれど、最後の4周か5周で急に離れていったので、後ろでバトルしてるんだなと思いながら走っていました。残り2周で差が大きくなっていたので、これは勝てるなと思いました。残るふたつの大会も優勝してポイントで余裕のある形でチャンピオンを獲りたいので、次もブッチ切りで優勝できるように頑張ります」と次大会の勝利に意欲を見せた。
2位は佐藤佑月樹選手(RT WORLD)、3位は松本琉輝斗選手(HRS JAPAN)。
FS-125JAF部門 第6戦表彰の各選手。

全日本カート選手権 FP-3部門 第5戦/第6戦

 FP-3部門にも10台が参加した。決勝はFS-125JAF部門と同じ20周だ。その第5戦の決勝は、2番グリッドからトップに立った酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)と、ポールスタートの鈴木悠太選手(TEAM EMATY)が、序盤から先頭集団を形成してタンデム走行を続けていった。

 レースが終盤に入ると、そこに3~5番手のマシンが接近してくる。残り4周、ここを機と見た鈴木選手が先頭に出る。すると、残り2周で2番手をめぐる争いが激化。鈴木選手はこれに乗じてリードを1秒以上に広げ、勝利を遂げた。全日本OK部門の第1戦/第2戦にも参加して2戦連続ポールを獲った鈴木選手。全日本初勝利はFP-3部門だった。

 セカンドグループの戦いがゴール間際でもつれた結果、2位は横山優之介選手(SPS川口)、3位は小野大地選手(チームTKC)のものとなった。残り4周までトップを走り続けた酒井選手は、このバトルで発生したアクシデントによって腕を骨折し、第6戦をリタイアすることに。酒井選手はFIAカーティングアカデミートロフィーでもランキング4番手の好位置につけていたのだが、翌週に控えた最終戦イタリア大会も欠場となった。

「このコースは2番手にいる方が楽なんで、ずっと2番手にいて、後ろを離してふたりだけの空間にしようと思っていました」と当初の作戦を明かした鈴木悠太選手(TEAM EMATY)。だが、思ったよりも後ろが近づいてきたのは想定外だった様子で「ぎりぎりまで後ろを従えて走って、後ろがぐちゃぐちゃになっている間にトップを抜いて僕が逃げる形にしたかったけれど、思った展開になってくれなくて……。でも結果的に勝てたので良かったです」と余裕を持っての勝利だったようだ。
2位は横山優之介選手(SPS川口)、3位は小野大地選手(チームTKC)。
FP-3部門 第5戦表彰の各選手。

 第6戦の決勝は鈴木選手、山代諭和選手(quaranta sei YRTwithGEMINI)、藤村太郎選手(Formula Blue HKC)の3台が序盤からトップグループを形成。中盤にはここに小野選手が加わってきた。先頭は鈴木選手から山代選手、再び鈴木選手と変遷していく。

 残り6周、5~6番手の柳沼光太選手(ガレージC)と渡邉賢人選手(SuperRacingJunkie!)が前に追いつき、先頭集団は6台一列に膨張した。残り2周、山代選手がトップに立つ。2番手に下がった鈴木選手は背後の様子をチラリと見ながら最終コーナーを回ると、最終ラップの1コーナーでトップを奪還する。

 そして迎えたゴールには、7台がひと塊でなだれ込んだ。ウィナーは、またも鈴木選手。これで鈴木選手は、この大会パーフェクトの70点を獲得した。山代選手が0.089秒差で2位となり、今季最上位に。速さが光った小野選手は、3位フィニッシュで連続表彰台に立った。

 6戦を終えてポイントレースの首位に立ったのは、有効121点の横山選手。そこに鈴木選手と柳沼選手が有効115点の同点で続いている。ただし、鈴木選手は第7戦以降のFP-3部門参戦予定がないのだという。次回は西日本に戻り、岡山県和気町・中山カートウェイでの戦い。チャンピオン争いは先行き不透明な混戦模様を呈している。

2連勝で本庄大会を完全制覇した鈴木選手(TEAM EMATY)。「FP-3部門はローパワーなので、OK部門とは違う難しさがありました。タイヤもハイグリップではないので、もたせることは難しくはないけれど、タイムを出すのは難しいというかクセがありましたね。でも1日目でアジャストできたので良かったです」とFP-3の参戦で新たな経験値を積んだようだ。だが、今シーズンはOK部門に照準を合わせていることもあり、FP-3部門へのエントリーは多分もうないとのこと。
2位は、山代諭和選手(quaranta sei YRTwithGEMINI)、3位は小野選手(チームTKC)。
FP-3部門 第6戦表彰の各選手。

ジュニアカート選手権 ジュニア部門 第5戦/第6戦

 同時開催のジュニアカート選手権 第5戦/第6戦では、ジュニアカデット部門が不成立となり、ジュニア部門のレースが参加7台で行われた。

 第5戦では、木原太一選手(FLARE with HRT)が後続に0.4秒強の差をつけて優勝を飾り、3連勝を達成。石田馳知選手(SUPER CREW’S with ZEAL・WM)が2位、ポールスタートの村田鉄麿選手(Ash)が3位となった。第6戦では3台によるトップ争いの結果、残り4周の逆転で村田選手がトップゴールを果たして初優勝を達成。石田選手が今季4度目の2位、木原選手が3位でフィニッシュした。

 ポイントランキングは、木原選手が有効95点で首位に立ち、同88点の石田選手と同70点の中西凜音選手(Energy Japan)がそれに続いている。最終ランキングは全10戦中有効5戦で決まるため、この順位にはまだまだ変動の余地がある。チャンピオン争いは予断を許さない状況だ。

新東京サーキットでの第3戦から連勝を重ねる木原太一選手(FLARE with HRT)が勝利。「3連勝、うれしいです。決勝では冷静に、まずスタートを絶対にミスしないように集中して前に行くことを心掛けました。そして初めから争ってしまうと後ろが追いついてきてしまうので、争いすぎずにどんどん前に逃げて、優勝を目指そうと思っていました」と語る。「まぁまぁ思いどおりの展開になりましたね。次も必ず優勝できるように頑張ります」
2位は石田馳知選手(SUPER CREW’S with ZEAL・WM)、3位は村田鉄麿選手(Ash)。
ジュニア部門 第5戦表彰の各選手。
「ゴールしたときは、とにかくうれしかったです」と木原選手の連勝を阻止したのは村田選手(Ash)だった。「神戸の第2戦で3位、今日の第5戦も3位で、3位の壁は高いなと思っていたんですけれど、なんとかぎりぎり勝てたので良かったです。(木原選手が)早めに抜いてくれたので、最後の3周か4周で抜き返そうかなと思っていました。最後はぎりぎりで展開に恵まれました。次の中山でもいいレースができるように頑張ります」
2位は石田選手(SUPER CREW’S with ZEAL・WM)、3位は木原選手(FLARE with HRT)。
ジュニア部門 第6戦表彰の各選手。

フォト/JAPANKART、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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