最終戦決戦の四国ダートラSD2は、トラブルを乗り越えた梶田昌弘選手が2位で戴冠!

レポート ダートトライアル

2023年8月2日

2023年JAF四国ダートトライアル選手権の第5戦が、7月23日に香川県さぬき市の香川スポーツランドで開催された。3月12日に開幕した2023シーズンの四国地区戦は、この一戦で早くも最終戦となるが、短期決戦ゆえに1戦あたりのポイントが王座争いの行方を大きく左右するシビアな戦いだ。シーズン中は参加台数の不足から、クラスによっては不成立となった一戦もあったが、第5戦は全クラス成立しての開催となった。

2023年JAF四国ダートトライアル選手権第5戦
2023年JMRC四国ダートトライアルシリーズ第5戦
2023年JMRC全国オールスター選抜ダートトライアル第5戦
2023年MACダートトライアル

開催日:2023年7月23日
開催地:香川スポーツランド(香川県さぬき市)
主催:MAC

 この一戦のコースは、左回りの林道区間、上段のコース区間、そして右回りの林道区間と、主に3部構成のレイアウト。それぞれのセクション間にはペナルティ対象のパイロンが置かれ、テクニカル要素も盛り込まれた設定となった。今季最後の熱戦は、梅雨明け間もない夏空の下で繰り広げられた。

コースは香川スポーツランドの全長を目一杯使ったレイアウト。広場に規制パイロンをひとつ置いて各セクションの区切りとしてターンさせることも、このレイアウトの特徴のひとつだ。

SD2クラス

 全4クラス中、唯一最終戦まで王座を争うSD2クラス。王手をかけた梶田昌弘選手とランキング2番手の豊田薫選手の争いだが、梶田選手は順位に関係無く完走すればチャンピオン確定と、豊田選手にとっては、かなり絶望的な状況だ。

 逆に、ほぼチャンピオン確定と言ってもよい梶田選手だが「こんな時にぎっくり腰やっちゃって(笑)。でもチャンピオンを獲るために無理して来ました」と、思わぬアクシデントに見舞われながらも、どうにか参戦した。

 そしてヒート1。2分20秒台のタイムを刻みトップで折り返したのは、クルマの修理が間に合わず、急遽借り物の三菱・ランサーエボリューションⅨでエントリーした谷正史選手。谷選手は2WDで競うSD1クラスで上位争いをしているが、4WDでもその速さを発揮する。

 ぎっくり腰に加えてエンジン不調も重なった、満身創痍の梶田選手が2番手タイムをマーク。3番手にはパイロンペナルティを喫するも、生タイムで梶田選手から0.074秒遅れのタイムを刻んだ豊田選手がつける。この時点で梶田選手のチャンピオンが確定したが、優勝争いは混沌としてきた。

 ヒート2での谷正史選手は痛恨のタイムダウンに終わり後続を待つが、一気に2分17秒184を叩き出してトップに立ったのが豊田選手。このタイムを聞いてスタートした最終ゼッケンの梶田選手は、中間計測で豊田選手から約1秒の遅れをとってしまう。後半区間で追い上げるも、0.579秒届かず2番手タイムでフィニッシュした。

「第2ヒートは、プラグを変えてエンジンも問題なく、そんなに悪い感じではなかったと思うのですが、しょうがないですね(笑)」と、勝って有終の美を飾れなかった梶田選手。そして逆転優勝を決めた豊田選手は「梶田選手は本調子ではなかったけど、それでも勝てたのは嬉しいですね。来年はもっと良い成績を出せるように頑張ります」と、2024シーズンへの抱負も語った豊田選手。梶田選手に一矢報いる今季2勝目で最終戦を締めくくった。

SD2クラスでは「近年はコロナ禍で競技には参戦出来ず、今年から本格的に復帰しました」という豊田薫選手(トヨティンランサー)がチャンピオンこそ逃したものの、2023シーズン最終戦で優勝を飾った。
2020シーズン以来のチャンピオン確定を勝利で飾りたかったSD2の梶田昌弘選手(SACランサー)だったが、ぎっくり腰とエンジン不調のダブルパンチに苦しみながらも2位を獲得(左)。DC5型ホンダ・インテグラ タイプRでSD1クラスに参戦している谷正史選手(借り物ランサー)が、この1戦ではSD2に参戦。ヒート1でトップタイムを叩き出して3位獲得と、駆動方式を問わない速さを見せた(右)。
SD2に参戦した、左から4位の上谷英男選手(愛信M・SSACIRWランサー)、2位でチャンピオン確定の梶田選手、優勝した豊田選手、3位の谷正史選手、5位の山平実選手(ダッシュ大阪エーテックランサー)、6位の今城邦彦選手(SACランサー上谷号)、7位の和気哲弘選手(IRW・肱川自動車ランサー)。

SD1クラス

 谷芳紀選手と谷正史選手、ふたりの“谷選手”が王座争いを展開したSD1クラス。第1戦は谷正史選手が制すも、第2戦から谷芳紀選手が三連勝し、この一戦を待たずに谷芳紀選手がチャンピオンを確定させた。

「シーズン中盤はパイロンペナルティやミッショントラブルで成績を残せず、今年は厄年ですね(笑)」とは、チャンピオンを逃した谷正史選手。そして「自分の走りはそれなりに出来たと思いますが、谷(正史)選手のトラブルあってのチャンピオンなので、その点は不完全燃焼ですね」と今季ここまでの戦いを振り返った谷芳紀選手。

 この一戦では谷正史選手はSD2に参戦したため、谷芳紀選手の独壇場とも思われた。しかし、ヒート1でトップタイムを刻んだ谷選手に0.148秒差で2番手に着けたのは、萩原豪選手。今季PNクラスのチャンピオンが確定している萩原選手は、いつもの車両で第5戦はこのクラスにエントリーすると、谷選手と僅差のタイムを叩き出した。

 しかし、ヒート2では萩原選手はタイムダウンを喫してしまい逆転ならず。一方の谷芳紀選手はトップタイムを更新し、両ヒートを制して優勝となった。「第2ヒートはタイムダウンすると予想していたので、第1ヒートから全開で攻めました。結果的に第2ヒートもタイムアップできたので、今回は満点ですね」と谷芳紀選手は貫禄の勝利となった。

N1クラスから続く7連覇を第4戦で確定させていた、SD1の谷芳紀選手(CMSC.ホワイツ泥★)は「今日の路面は今年初めての完全ドライで、自分的には好きな路面です」と、ヒート2で1秒以上タイムアップを果たし、4連勝で今季を締めた。
PNクラスの連覇を確定させた萩原豪選手(菓舗ふくおかDLフジイスイフト)は、2024シーズンにSA車両への変更を予定しているが、PN車両のままSD1に参戦すると、2位を獲得(左)。ランキング3番手につける國久和也選手(TRIBALタクミDXLコルト)は3位を獲得し、ランキングでも3位確定となった(右)。
SD1に参戦した、左から2位の萩原選手、優勝した谷選手、3位の國久選手。

PNクラス

 PNクラスは近畿地区から参戦を続ける西岡章夫選手が、ヒート1のミスコースから逆転で優勝を果たした。「第1ヒートは暑さに負けてやってしまいました(笑)」という西岡選手はランキング2番手。既にチャンピオンを確定させた、萩原豪選手の牙城を崩せないまま最終戦を迎えていた。

「今回、萩原選手は別クラスなので、タイム比較だけでもと思っていたのですが、第1ヒートの良い路面でタイムを残せなかったのが残念です」と、やや悔いが残る様子。しかし、この優勝でランキング3番手につけていた豊岡明宏選手を抑え、2位を死守した西岡選手。さらに、愛車のスズキ・スイフトスポーツでは、地元の近畿地区での競技会を含めて初優勝という記念すべき勝利を飾った。

今季は第1戦と第2戦で2位を獲得し、PNクラスでランキング2番手につける西岡章夫選手(TAKUMI猫WORKスイフト)。この一戦はSD1に参戦した、このクラス二連覇確定の萩原選手とのタイム差はまだあるものの、3度目の参戦でついに今季初優勝を挙げた。
PNクラスの2位を獲得したのは、豊岡明宏選手(タクミFKFデミオ)。ヒート1でトップタイムをマークし、ヒート2でもタイムアップを果たしたが西岡選手に逆転を喫し、ランキングでは3位が確定した(左)。石井雅行選手(DL☆匠☆CVT☆デミオ)はマツダ・デミオのCVT車両で豊岡選手とダブルエントリー。第3戦に続く今季2度目の3位獲得でシーズンを締めた(右)。
PNに参戦した、左から2位の豊岡選手、優勝した西岡選手、3位の石井選手。

Nクラス、クローズドクラス

 この一戦はライバルの橋本充弘選手が欠場となり、今季のNクラスチャンピオンが確定となった竹下俊博選手。ヒート1、ヒート2ともに後続を大きく引き離して、竹下選手が有終の美を飾った。「今シーズン、Nクラスは参加台数が少なくて寂しかったね。タイムではSD2クラスの梶田選手に勝ちたかったけど、今回も含めて結局1回も勝てなかったのが残念だね(笑)」と、今季を振り返った竹下選手は、2022シーズンのSD2に続き二連覇を飾った。

 ランエボⅤとAE86型トヨタ・カローラレビンの一騎討ちとなったクローズドクラスは、ランエボⅤを駆った速水龍太選手がトップタイムをマークした。

今季はNクラスで4戦3勝を獲得している竹下俊博選手(ダンロップBRIGランサー)は、この一戦を前にチャンピオン確定も手は緩めず。2ヒートとも2番手以下を圧倒するタイムで今季4勝目を挙げ、満点チャンピオンを確定させた。
今季のNでは、第1戦から3位が指定席になっていた吉川直毅選手(ランサー)。ヒート1で自己ベストタイムをマークして、最終戦にして今季最上位の2位を獲得した(左)。松原宏選手(ランサーパンダ号)は竹下選手とのWエントリーによる今季2度目の参戦で、3位に入った(右)。
Nに参戦した、左から2位の吉川選手、優勝した竹下選手、3位の松原選手。
クローズドクラスを制した速水龍太選手(ITOストロベリーランサーFX)は、SD2の中位勢と遜色ないトップタイムをマークした。

フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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