全4戦の短期決戦の中四国ラリー第2戦で、インディゴパワー勢が3クラスで躍動!
2023年8月4日

5月に開幕した2023年JAF中四国ラリー選手権は、約2カ月のインターバルを経て、第2戦「四国のてっぺんラリー2023in嶺北」が7月29日に高知県で開催された。かつては舗装主体、また舗装とグラベルのミックスラリーとして開催された時期もあったが、現在はグラベルをたっぷり走り込めるラリーとして、遠く関東や関西、九州からもラリーストが駆け付ける人気の一戦となっている。
2023年JAF中四国ラリー選手権 第2戦
2023年JMRC中国・四国ラリーシリーズ第2戦
西日本グラベルラリーツアー2023第2戦
四国のてっぺんラリー2023in嶺北
開催日:2023年7月29日
開催場所:高知県大川村、いの町
主催:MSCS
四国のてっぺんラリーと言えば、毎シーズン、酷暑の7月下旬から8月上旬に開催されることで知られる、中四国ラリーではすっかりお馴染みのラリーだ。
2023シーズンのてっぺんラリーで一番の話題は、長くホストタウンを担ってきた高知県土佐郡の大川村に、このラリーが戻ってきたことだろう。スタートとゴール、サービスパークも、このラリーのメイン会場として知られた、同村内の「自然王国 白滝の里」に久しぶりに置かれた。
SSは今季もいずれも名物ステージである、「ASHIDANI」と「KANPUU」の2本が設定された。ASHIDANI SHORTは緩い上り勾配を駆け上がる3.6kmのSSで、標高1,000mを突破する高地を走る。約1kmのリエゾンを経て挑むKANPUU R(Reverse=リバースの略) LONGは、スタート後、急激なダウンヒルを一気に駆け降りる、6.01kmの度胸試しのSSだ。
ラリーは、午前中のセクション1で、この2本をまず2回走ってサービスイン。午後のセクション2はセクション1と同じく、ASHIDANI SHORT、KANPUU R LONGの順で1回アタックしてフィニッシュという設定だ。このラリーのSSは、例年、激しい砂埃が舞ってグラベルラリーらしい光景が展開されるが、今季は前日28日の夕方にゲリラ豪雨が来襲。道の上の砂を一気に洗い流したため、一部では小石等が浮き上がったタフな路面がクルーたちを待ち構えた。

FG-1クラス
9台が参加したFG-1クラスは、このラリー三連覇中の長江修平/中岡和好組がSS1のASHIDANI SHORTから、2番手のマクリン大地/大橋正典組を5秒差で下してベストタイムを獲得し、好調なスタートを切る。長江/中岡組はSS2のKANPUU R LONGでも、6.9秒差でマクリン/大橋組を突き離して連続ベスト。SS3、SS4も後続を大きく引き離して独走態勢を築いた。
長江/中岡組は午後のセクション2でも、3ループ目となり、荒れた路面でペースダウンを強いられるクルーが多い中、2ループ目とほぼ同じペースで走り切って、さらにリードを拡大。マクリン/大橋組に40秒近い大差をつけて“てっぺんマイスター”の速さを見せつけるとともに、今季初優勝を飾った。マクリン/大橋組に続く3位にはベテランドライバーの渡部洋三と井関美貴のクルーが続き、序盤にベストを連発しながらもリタイヤに終わった第1戦の溜飲を下げた。
7月7~9日に開催された2023年JAF全日本ラリー選手権の第6戦「2023 ARKラリー・カムイ」では、JN-2クラスで3位表彰台を獲得。総合でも5位の好成績を得た勢いで、この一戦に挑んだ長江選手は「カムイの前に変えた仕様が良くて、今日もそのままの足で車高だけ変えて走りました。道の形状も路面も違いましたが、いいフィーリングで走れました」と圧勝を振り返った。
長江組は地元徳島で開催された第1戦「つるぎ山アルペンラリー2023」は主催側に回ったため、この一戦が今季の中四国ラリー初戦。その第1戦を制した堀川竜二/池田茂組がこのラリーでは主催を担当し、不参加となった。次戦の第3戦「MACラリーin久万高原」では堀川/池田組も復帰して役者が揃い踏みする予定で、シリーズ後半戦のFG-1は熾烈なバトルが期待される。



FG-2クラス
FG-2クラスは、長江/中岡組と同じくラリー・カムイ帰りで、近畿地区からシリーズ参戦する山口貴利/山田真記子組のダイハツ・ブーンX4がSS1でベストを奪取。同じくブーンX4を駆る2022シーズンのこのラリーの覇者、小西健太郎 /藤島義孝組が3.4秒遅れて続いた。
また昨季は4WD勢がひしめく中、ベストを2本奪って気を吐いた中部地区、北陸から挑む板本敬二/鹿肝利明組のホンダ・インテグラ タイプRが小西/藤島組に0.9秒差で食らいつく。そしてこのラリーで優勝経験もある、関東地区の高田修/箕作裕子組の三菱・ミラージュが板本/鹿肝組と同秒で3位に並び、今季も4WD勢対2WD勢のバトルが繰り広げられるかと思われた。
しかし、頭ひとつ抜けた速さを見せたのは山口/山田組だった。「SS1の1コーナーを抜けた時に“今日は行ける!”と確信できたほど、クルマの動きが良かった」と、終わってみればSS5以外のSSでベストを奪ってライバルに隙を与えず、快勝。
連覇を狙った小西/藤島組は20秒ほど及ばず、2位。2WD勢では板本/鹿肝組は優勝争いには絡めず3位にとどまり、高田/箕作組がサイドブレーキのトラブルでリタイアと、ともにこの一戦では4WD勢を脅かすことはできなかった。



FG-3クラス
FG-3クラスは、「いつも最初が遅いので、今日はSS1から攻めた。路面はぬかるんでたけどグリップしてくれました」と振り返った松原久/和田善明組が、後続を12秒以上も引き離す圧巻のベスト。その後もベストを連発して、全6SSを完全制覇。マツダ・デミオながら、FG-2も含めたこの一戦に参戦した2WD勢最速タイムを叩き出して圧勝した。
9月に行われる全日本の第7戦「RALLY HOKKAIDO」を見据えての参戦にもなった松原選手は、「北海道に行く前にセッティングを見直すつもりなので、今日はダメ出しするつもりで攻めたのが結果的には良かった。路面の荒れた3ループ目で、考えて走りを変えてみたらタイムが上がったのが今回の一番の収穫」と実り多き一戦となったラリーを振り返った。
松原組に続く2位は関東在住ながら、中四国ラリーではすっかり常連となった辻井利宏/東駿吾組。下りのKANPUU R LONGで速さを見せて、地元四国の桒村浩之/住友哲郎組を抑えて獲得した。
なおこの一戦ではFG-1とFG-2、そしてこのFG-3で、徳島に本拠を置くインディゴパワーチームが3クラス制覇を達成した。



FG-4クラス
排気量1,500cc以下のRPN車両と、排気量問わずハイブリッドなど電動車のAE車両が対象のFG-4クラスは、中国地区と四国地区のラリーの明日を担うクラス。第1戦はGRヤリスからトヨタ・アクアに乗り換えた昨季のFG-2王者、松岡竜也/縄田幸裕組が順当勝ちを収めた。
松岡/繩田組はこの一戦もセクション1の4SSを全て制してサービスに戻ってきたが、車両トラブルが判明。セクション2を前にまさかのリタイアとなってしまう。代わって首位に立ったのは、佐藤由香/大西直彦組のトヨタ・ヴィッツ。もう1台の参加車である加藤克也/安藤恭平組もすでに戦線離脱していたため、完走すれば優勝が転がり込むラリーとなった佐藤/大西組。「攻めたかったけどクルマを壊しては終わりなので、我慢しました」と最後までヴィッツを慎重にフィニッシュまで運んで、優勝を果たした。
佐藤選手は、キャリア5年目にしてラリー初優勝。「最初は怖くてキャアキャア言いながら走ってましたが(笑)、先輩の方々から路面の捌き方を教えてもらったら、グラベルを走るのが楽しくなりました」と、グラベルラリーひと筋で腕を上げてきた。
「初優勝はホントに嬉しいんですけど、終わってクルマを見たらバンパーは曲がってるし、アンダーガードも壊れた所があって、あぁ、って感じです(笑)。でも周りの方々からは、それが優勝の代償なんだ、と言われました。今まで続けてきたご褒美として、この一勝は素直に喜びたいと思います」と、勝利の味を噛み締めていた。
2戦を終えた今季の中四国ラリーは、9月16日に愛媛県上浮穴郡の久万高原町周辺を舞台に開催される第3戦から後半戦に突入する。残り2戦となり、各クラスでのチャンピオン争いがヒートアップし、白熱のラリーが繰り広げられることに期待したい。

フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部
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