全クラス第2ヒート勝負で激戦の東北ダートラ第5戦、4WD-2加藤琢選手が連覇に前進!

レポート ダートトライアル JAFWIM

2023年8月8日

梅雨明けから約1週間、東北地方も夏本番となった7月30日、2023年JAF東北ダートトライアル選手権の第5戦が、福島県二本松市に建つエビスサーキットの新南コーススライドパークで開催された。全7戦中の5戦目ということで、佳境に入り王座争いが白熱。日中の気温は35℃を超える猛暑日の中、全てのクラスで第2ヒートが決勝タイムとなる熱戦が繰り広げられた。

2023年JAF東北ダートトライアル選手権 第5戦
2023年JMRC東北ダートトライアルチャンピオンシリーズ第5戦
2023年JMRC全国オールスターダートトライアル選抜 第5戦
SUPER DT in EBISU

開催日:2023年7月30日
開催地:エビスサーキット新南コーススライドパーク(福島県二本松市)
主催:Team-F

 会場となった新南コースは2023シーズンの東北地区戦では2回目の開催となるコースで、前半は島回りやパイロンを中心としたテクニカルセクション、後半は高速セクションという構成。バックストレートをフルに使い、ギャラリーコーナーを右回りで攻める豪快なレイアウトとなった。

前半はコース中央の島を回り、広場に設置されたパイロンを大きく回るステアリング操作が多いレイアウト、後半はコース外周を使ったスピードに乗れるレイアウトから、フィニッシュ直前にスラロームが待ち受ける、緩急兼ね備えたレイアウトで争われた。

4WD-2クラス

 全15台と、この一戦で最多エントリーとなった4WD-2クラス。その第1ヒートをトップで折り返したのが、唯一1分40秒台を刻んだ遠藤誠選手。ランキング4番手につけている遠藤選手は、このコースでの第3戦で優勝しており、ここで今季2勝目を挙げたいところだ。

 そして第2ヒート、前走までの各クラスではベストタイムが更新されるシーンが相次いでいたが、トリを務めるこのクラスは、中間タイムでこそ第1ヒートの遠藤選手のタイムを上まわる選手はいるものの、ゴールタイムは中々更新されずに競技が進行。

 しかし後半ゼッケン、地元の須田行雄選手が中間タイムを0.7秒更新すると、ゴールタイムは一気に1分37秒台まで詰めてトップに立つ。逆転を狙う遠藤選手の第2ヒートは、自己タイムを更新するも1分38秒台にとどまり再逆転ならず。

 須田選手の今季初優勝まであと二人となったが、それを阻止したのがラス前にスタートした、2022シーズンのS2クラスチャンピオン、加藤琢選手。中間では須田選手を0.1秒上まわるにすぎなかったが、後半区間ではさらにタイムを詰めて1分36秒台に突入、加藤選手も今季初優勝に向けて好タイムをマークする。

 続く最終ゼッケン、ランキングトップの四戸岳也選手は中間を0.004秒差と、加藤選手とほぼ同タイムで通過。最後まで目が離せない展開となったが、1分38秒台の4番手に終わり、加藤選手が第2ヒートの逆転で優勝を飾った。

「今回は借り物のクルマなので、シフトやサイドブレーキの位置に戸惑いました。第2ヒートはそれにも慣れて良かったと思います」という加藤選手は、今回は自身のGC8型スバル・インプレッサではなくGDB型インプレッサWRX STIで参戦。それでもきっちり乗りこなし、その速さを見せつけた。

 2位の須田選手は「また負けちゃいましたね(笑)。第2ヒートは、タイヤの選択を誤りました。」そして、エビス2連覇を逃した3位の遠藤選手は「負けてはいけない選手(加藤選手)に負けてしまいました(笑)。第2ヒートは失敗が多かったですね」と、それぞれ戦いを振り返った。この結果、王座争いでも加藤選手がトップに立ち、2連覇に向けて残り2戦に挑む。

4WD-2クラスを制し、ようやく2023シーズン初優勝を挙げた加藤琢選手(GネモトFINEクラフトインプレッサ)。「砂利が捌けた路面を外さずに丁寧に走った」と振り返った第2ヒートの走りは、ただひとり1分36秒台に突入して総合トップタイムもマーク、ディフェンディングチャンピオンがついにランキングトップに立った。
今季は第1戦の2位以降、トップ3が遠ざかっていた須田行雄選手(Sマジック須田DLランサー)。この一戦は第1ヒートで2番手につけると、第2ヒートでもタイムアップを果たして2位を守り、トップ3の一角を占めた(左)。第1ヒートのトップタイムをマークし、エビスサーキット新南コーススライドパーク二連勝を狙った遠藤誠選手(INDXLYHインプレッサHE)だが、逆転を喫して3位で今季2勝目はならず(右)。
4WD-2クラスの上位5選手。左から優勝した加藤選手、2位の須田選手、3位の遠藤選手、4位の四戸岳也選手(YH・MOTUL・MWランサー)、5位の藤田哲也選手(LINK82TRランサーYH)。

2WD-2クラス

 激しいタイムアップ合戦を展開した2WD-2クラス。まず第1ヒートをトップで折り返したのが、1分52秒台を刻んだランキング3番手の武藏真生人選手。2番手にはランキングでも2番手の今隆志選手、3番手には約2週間前に行われた、青森県のサーキットパーク切谷内での2023年JAF全日本ダートトライアル選手権 第6戦のPN2クラスで全日本初優勝を遂げた、竹村由彦選手がつける。

 第2ヒートになると、立川敬士選手が武藏選手のタイムを更新したのを皮切りに、古川雄貴選手、中山祐太郎選手、そして竹村選手が次々とトップタイムを塗り替えて、上位陣は1分48秒台の争いとなる。そして注目の武藏選手の第2ヒート。中間は3番手タイムで通過するも、1分47秒607を叩き出し、再びトップに返り咲く。

 残るランキング上位陣、今選手は1分49秒台で5位。ラストゼッケン菱谷克幸選手は精彩を欠き7位となり、武藏選手が今季初優勝を決めた。「今回は抑えるところをきっちり抑えて、踏めるところは気持ち良くいけたので満足です」と武藏選手は語った。

 この優勝で武藏選手は一気にランキングトップに立ち、6ポイント差の同ポイントながら菱谷選手が2番手で、今選手は3番手。二人を3ポイント差で4番手の竹村選手が追い、王座争いは混戦をきわめてきた。

2WD-2クラスは、SFアニメファンが喜ぶトリコロールカラーを施した、三菱・ミラージュを駆る武藏真生人選手(武藏屋連邦仮鮫ミラージュ)が2ヒートとも制した。「このミラージュに乗り換えて優勝するのは初めてなので、何年振りかな?(笑)」という久々の優勝は、愛機の初優勝となった。
第3戦と第4戦では2WD-2で8位と苦戦が続いていた、2022シーズンS0クラスチャンピオンの竹村由彦選手(秋田スズキ・DL・Ω・スイフト)。第1ヒートで3番手につけると、第2ヒートでタイムアップを果たして第2戦以来の2位を獲得、復調の兆しを見せた(左)。第1ヒート6番手の中山祐太郎選手(ナカヤマミラージュ)が、第2ヒートは気迫溢れる走りを見せて7秒以上タイムアップ、第3戦に続く3位を獲得した(右)。
2WD-2クラスの上位4選手。左から優勝した武藏選手、2位の竹村選手、3位の中山選手、4位の古川雄貴選手(TUMC☆三神峯インテグラ)。

2WD-1クラス

 2WD-1クラスは、ランキングトップのいりえもん選手と、2番手で追う猪股将太選手が5ポイント差でこの一戦を迎えた。今季2勝を挙げているいりえもん選手に対し、猪股選手は1勝。ここで勝ち星を並べたい猪股選手だが、第1ヒートをトップで折り返したのはいりえもん選手だった。

 そして、クラスファーストゼッケンの篠崎楓馬選手が早々とトップタイムを塗り替え、仕切り直しとなった第2ヒート。ここで篠崎選手を抜きたかった猪股選手だが、中間で篠崎選手から送れること0.8秒。その遅れを取り戻すことができず2番手でフィニッシュ。

 続くいりえもん選手も中間では篠崎選手から0.2秒の遅れをとる。しかし、後半で怒濤の追い上げを見せ、2WD-2でもトップ5に入る1分49秒262を叩き出し、再逆転で優勝を決めた。「前半区間で土手にヒットさせて、そこで気持ちが切れること無く、淡々と自分の走りができたのが良かったと思います」と、第2ヒートでの走りを振り返ったいりえもん選手。チャンピオンを引き寄せる大きな今季3勝目を挙げた。

2WD-1クラス、逆転を期したいりえもん選手(松月☆まかいの牧場☆コルト)の第2ヒートは「リズムを取り戻すのに必死でした(笑)」と、ミスをリカバリーするとともにタイムアップも果たし、2ヒートとも制して初チャンピオンに一歩近づいた。
同じ車両で2023年JAF東日本ラリー選手権のBC-3クラスにも参戦している、いりえもん選手とダブルエントリーの篠崎楓馬選手(長曽のコルトを勝手に乗るざんき)は、第2ヒートで8秒近いタイムアップに成功して2位を獲得(左)。第4戦に続く連勝を狙った猪股将大選手(工藤ホンダキスマイフィット2)は第2ヒートで篠崎選手に逆転を喫するも3位を獲得し、王座争いに踏みとどまった(右)。
2WD-1クラスの上位3選手。左から優勝したいりえもん選手、ダブルエントリーのいりえもん選手と1-2を決めた2位の篠崎選手、3位の猪股選手。

4WD-1クラス

 事実上GRヤリスのワンメイクとなっている、4WD-1クラス。第1ヒートは、ランキングトップの林健一選手がトップタイムを刻み、2番手には約0.7秒遅れでランキング3番手の伊藤久選手が続く。

 第2ヒートに入ると、伊藤選手がタイムを更新し、トップが入れ替わる。次にスタートした太田敏明選手は、中間で伊藤選手を0.6秒上まわり後半へ。しかし、前半で築いたアドバンテージを活かすことができずに2番手タイム。ラストゼッケン林選手は中間では3番手だが、伊藤選手からは0.6秒遅れ。決して逆転不可能な差ではなかったが、やはり後半区間で伸び悩み、3番手タイムでフィニッシュ。伊藤選手が逆転で優勝を飾った。

「全然タイヤが喰わなくてエア圧の調整で対応しましたが、それでも苦戦しました」と、苦しみながらも勝利を収めた伊藤選手は、第1戦と第3戦を欠場しており今季3戦目。出場した第2戦と第4戦、そしてこの一戦と全て優勝しており、ランキングの変動はなかったものの、チャンピオン獲得に望みを繋げる勝利となった。

第3戦を欠場し、「ここ(新南コース)は今回が初走行です」という4WD-1クラスの伊藤久選手(RZ☆DLフォルテRACヤリス)。第2ヒートでは2番手以下を1秒以上離す、タイヤに苦戦しながらの初走行とは思えない走りで逆転し、今季3勝目を挙げた。
ここエビスでの第3戦で4WD-1を制している太田敏明選手(ファイン自動車ヤリス)は両ヒートとも2番手タイムで今季4度目の2位を獲得(左)。両ヒートとも太田選手と2番手争いを繰り広げた林健一選手(e投票郡山レーシングヤリスDL)は、第3戦以来の2位はならず、3位となった(右)。
4WD-1クラスの上位3選手。左から優勝した伊藤選手、2位の太田選手、3位の林選手。

FRクラス

 4台で争われたFRクラスは、レディースドライバーの寺田みつき選手、レーシングドライバーの熱田行雲選手、ドリフトドライバーの柳杭田貫太選手、全日本PN3クラスでランキングトップを走る竹本幸広選手という、華やかなメンバーで争われた。

 第1ヒートでトップタイムをマークしたのは柳杭田選手。2番手の竹本選手に約1.5秒の差をつけ、まずはドリフトドライバーが一歩リード。その柳杭田選手は、第2ヒートでも自己タイムを7秒以上も更新してトップをキープ。寺田選手と熱田選手は柳杭田選手のタイムを抜くことができず、最終ゼッケンの竹本選手が出走。

 本職ダートトライアラーとして負ける訳にはいかない竹本選手だが、中間では柳杭田選手から遅れること0.7秒。さらに後半区間でも伸び悩んだ竹本選手のゴールタイムは1.898秒届かず2番手タイム。柳杭田選手が両ヒートを制覇する走りで優勝。

「さすがに竹本選手には勝てないだろうと思ってましたが、余裕でしたね(笑)。全日本選手に勝てて嬉しいです!」と、意気消沈する竹本選手の横で笑顔のコメント。異種格闘技の戦いは、ドリフトドライバー柳杭田選手に軍配が上がった。

ダートトライアルとドリフト、レースのドライバーたちによる異種格闘技の様相となったFRクラスは、D1参戦経験もあるドリフトドライバーの柳杭田貫太選手(エビスサーキット86)が2ヒートともトップタイム。本職のダートトライアラーを下して優勝を挙げた。
FRの竹本幸広選手(エビスサーキット86)は全日本戦とは異なる86を、柳杭田選手とシェアして参戦。まさかの2位に落胆の表情だった(左)。2023年JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権に参戦中のレーシングドライバー、熱田行雲選手(エビスサーキット86みつき号)は第2ヒートで10秒以上タイムを上げる急成長を見せて3位を獲得した(右)。
3つのカテゴリーのドライバーたちが競ったFRの上位3選手。左から優勝した柳杭田選手、2位の竹下選手、3位の熱田選手。

クローズド2クラス・クローズド4クラス

 クローズド2クラスには、レディースドライバーの小野寺奏恵選手が参戦。第2ヒートで自己タイムを9秒以上更新する走りを見せて完走した。

 GRヤリスを駆る菊田真弥選手と三菱・ランサーエボリューションIVを操る髙橋智選手が競ったクローズド4クラスは、第1ヒートで僅差のバトルを展開。第2ヒートでトップタイムを刻んだ菊田選手が髙橋選手を1秒以上突き放し、逆転で優勝を決めた。

青いDC5型ホンダ・インテグラ タイプRで参戦した、クローズド2クラスの小野寺奏恵選手(FINE巴工業マスターズ隠手蔵゛)は2ヒートとも無事フィニッシュ、第2ヒートでは大きくタイムアップを果たした。
新旧四駆ターボによる一騎討ちの様相となったクローズド4クラス。第1ヒートでは接戦になるが、第2ヒートで菊田真弥選手(GRヤリス)が逆転でトップタイムをマークした。

フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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