路面コンディションが変化する中、Niterra MOTUL ZとGAINER TANAX GT-Rが優勝して日産が2クラス制覇
2023年8月16日

ウェット~セミウェット~ドライ~ウェット~セミウェット~ドライと、目まぐるしく路面コンディションが変わったスーパーGT 第4戦は、8月5~6日に富士スピードウェイにおいて450kmレースとして開催された。GT500クラスはNiterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組)が、58kgのサクセスウェイトを搭載しながらも後続を引き離して独走優勝。またGT300クラスでは終盤のタイヤ交換のタイミングが絶妙だったGAINER TANAX GT-R(富田竜一郎/石川京侍/塩津佑介組)が逆転で優勝。日産車がGT500&GT300の両クラスを制した。
2023 SUPER GT Round.4 FUJI GT 450km RACE
開催日:2023年8月5~6日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:株式会社GTアソシエイション、富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C
第3戦の鈴鹿450kmから2か月のインターバルを挟んで開催となった今季2回目の富士450kmレース。前回、大きなクラッシュで怪我を負った23号車MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)の松田選手は、やや足を引きずりながらも元気な姿を見せた。
その23号車Zは新しいモノコックに交換したため、レース中に5秒間のピットストップというペナルティを受けることとなる。また38号車ZENT CERUMO GR Supra(立川祐路/石浦宏明組)の立川選手が、レース直前に今季限りでスーパーGTからの引退を表明した。



予選
予選日の5日は、朝の公式練習が始まるころにはすでに気温が30度を超え、公式予選の始まる15時20分には33度、路面温度45度に達していた。ポイントリーダーでサクセスウェイト72kg(規定により車載ウェイト38kg+燃料流量リストリクター径2段階調整)の36号車 au TOM'S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋組)はQ1で最下位の15番手、ポイント3番手でサクセスウェイト58kg(規定により車載ウェイト41kg+燃料流量リストリクター径1段階調整)の23号車Zは13番手。ともにQ1敗退を喫した中、シリーズ2番手でサクセスウェイト50kgの3号車Zは6番手でQ1を突破。そしてNSX勢は全5台がQ2進出を決めた。
Q2ではサクセスウェイト6kgと軽量な24号車リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平組)の佐々木選手がトップタイムをマーク。前回の鈴鹿では平手選手がトップタイムを叩き出しながらも、予選後の再車検で失格になって悔しい思いをしたが、今回は堂々のポールポジション獲得となった。佐々木選手のポールポジションは昨年第7戦オートポリス以来。2番手は16号車ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹組)、3番手は8号車ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹/木村偉織組)と、朝の公式練習でトップ2だったARTAの2台が続く。そして4番手は3号車Zがつけた。
GT300クラスでは朝の公式練習でトップだった4号車グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)の谷口選手が、2017年第2戦富士以来6年ぶり(4号車メルセデスは同年最終戦もてぎ以来)のポールポジションを獲得。2番手は61号車SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)。暫定3番手は31号車apr LC500h GT(嵯峨宏紀/小高一斗/根本悠生組)だったが、指定燃料ではなく前戦鈴鹿の燃料を使ったとして予選タイムが削除され、最後尾スタートとなった。繰り上がった3番手は11号車 GT-Rで、進化型のEVOモデルを投入した88号車JLOC ランボルギーニ GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)が4番手につける。


6日の決勝日は子供たちが夏休み中ということもあり、朝から3万人を超えるファンが富士スピードウェイに詰めかけた。天気予報では時折りスコールのような雨が降るということだったが、各車がグリッドについてグリッドウォークが行われている時間に雨が路面を濡らす。これでコースはウェットコンディションとなり、グリッド上ではウェットタイヤへの交換が行われた。

GT500クラス
気温26度、路面温度33度というコンディションの13時45分、セーフティカー(SC)の先導により100周の決勝レースはスタート。コースコンディションを確認した2周完了でSCが外れてバトルが始まった。なお今回は先頭車両が4周を完了するまでのピットインはカウントされないことになっている。
ここでウェットコンディションを得意とするミシュランタイヤを履いた3号車Zの千代選手がダンロップコーナーで3番手、スープラコーナーで2番手へと順位を上げると、翌4周目のダンロップコーナーでトップに立ち、後続を引き離して行った。
やがてコースが乾き出した11周目からピットインしてスリックタイヤに交換する車両が出てくる。16周目には16号車NSXの福住選手がトップに立ち、これを14号車ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太組)の大嶋選手が追う展開となり、大嶋選手はメインストレートで並び24周目の1コーナーでトップを奪った。これで14号車スープラ、16号車NSX、10番手スタートの39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一組)の関口選手、3号車Zの千代選手の順に。
大嶋選手が福住選手との差を3.2秒まで広げて独走態勢を築こうとしていた矢先の35周目、GT300車両が黒煙を上げてコカ・コーラコーナー手前でストップ。この消火と車両の撤去作業のためにSC導入となる。隊列を整えて40周完了でレースはリスタート。一気に差の詰まった間隔から39号車スープラが16号車NSXをかわして2番手へ順位を上げ、さらにトップに迫った。
14号車スープラは46周でピットインして山下選手に交代。39号車スープラも47周でピットインして中山選手へ交代した。これでトップには16号車NSXが立ち、3号車Zが追う展開に。3号車Zも56周でピットインして高星選手へ、16号車NSXも57周でピットインして大津選手へと交代する。
60周目には14号車スープラがトップで、5秒後方に39号車スープラ、その10秒後方では37号車Deloitte TOM'S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組)と3号車Zが3番手争いを展開していた。だがこれに水を差すかのごとく、66周目の13コーナーで車両火災を起こしたGT300車両がストップ。その消火作業のためにこの日2度目のSC導入となり、その3分後には赤旗が掲出されてレースは中断する。これで再び各車両の差が一気に詰まることになった。
約30分後にレースは再開と発表されたが、ここで大粒の雨がコースを濡らしてコースコンディション不良と悪天候のために再開は2度にわたりディレイ。そしてグリッドでのレインタイヤへの交換がOKとなり、16時30分にSC先導でレースが再開された。
71周でレースはリスタート。ウェット路面では3号車Zが有利な走りを展開。高星選手は1周ごとにひとつずつ順位を上げて74周目には再びトップに立ち、そこから一気に独走態勢に持ち込んで行く。やがて路面は徐々に乾き出し、2番手の14号車スープラは83周でピットインしてスリックタイヤに交換するが、タイミングが早すぎたか順位を落とすことになった。
3号車Zは最終的に2番手の16号車NSXに45秒もの差をつけてトップチェッカー。前戦の鈴鹿では優勝の判定が覆されたが、今回は表彰台の真ん中で喜びを噛み締めた。ドライバー交代後にダンロップコーナーへ足を運びコースコンディションをチェックしていた千代選手が、赤旗中断中に交換するタイヤのコンパウンドをドライバー目線で的確に判断し指示したことが、レース再開後の独走優勝につながったという。
レース後に2番手16号車NSXと、終盤に一気に順位を上げて3番手の100号車STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)に対し、ピットでの給油中にタイヤ交換作業があったということで40秒のペナルティが加算され、16号車NSXは3位、100号車NSXは6位に降格。4番手チェッカーの64号車Modulo NSX-GT(伊沢拓也/太田格之進組)が繰り上がり2位、ポイントリーダーの36号車スープラが4位となった。この結果、3号車Zがポイントリーダーに立ち、36号車スープラは5点差の2番手となっている。



GT300クラス
バトル開始となった3周目のダンロップコーナーで61号車BRZの井口選手がトップを奪うと、スープラコーナー先で11号車GT-Rの石川選手も2番手へ。しかし数周でタイヤが温まると、3番手へドロップした4号車メルセデスの片岡選手が巻き返し、7周目の1コーナーでトップを奪い返す。また88号車ランボルギーニの元嶋選手も2番手へ順位を上げた。
路面が乾き始めた7周目からピットインしてタイヤを交換する車両が出始め、9周目にタイヤを交換した4号車メルセデスが13周目には再びトップに立ち、88号車ランボルギーニ、11号車GT-Rが続く。ミシュランタイヤを履いた16番グリッドからスタートの7号車Studie BMW M4(荒聖治/柳田真孝組)、20号車シェイドレーシング GR86 GT(平中克幸/清水英志郎/山田真之亮組)、10号車PONOS GAINER GT-R(安田裕信/大草りき組)が4番手争いを展開した。
ポイントリーダーで90kgのウェイトを積む56号車リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/名取鉄平組)が6番手へ順位を上げた直後の33周目に、1台の車両が黒煙を上げてストップ、SCが導入される。これで各車両の差は一気に縮まったが、最後尾スタートの31号車LC500hの小高選手は8番手まで順位を上げていた。
38周完了でリスタートとなると、48周目には31号車LC500hは4番手へ浮上。そして50周目から上位陣のピットインが始まる。ピット作業が落ち着いた57周目には4号車メルセデスがトップで、10号車GT-R、ピット未消化の65号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗組)、88号車ランボルギーニ、11号車GT-R、20号車GR86、56号車GT-R、31号車LC500h、7号車BMWの順となった。
88号車ランボルギーニと65号車メルセデスがやや順位を落とした直後の62周目、1台の車両が火災を起こしてSC導入から赤旗中断となる。また中断の間に激しい雨となり、待機中に各車レインタイヤに交換。16時30分でレースはSC先導で再開して67周でリスタートとなったが、トップの4号車メルセデスの谷口選手がコカ・コーラコーナーでコースをはみ出して3番手へ。これで10号車GT-Rと11号車GT-Rと同じチームの2台がトップを争うことになった。
72周目の1コーナーで11号車GT-Rの富田選手がトップを奪うと、これに追いついた4号車メルセデスの谷口選手が78周目に逆転。すると路面が乾き始めた81周で11号車GT-Rがピットイン、スリックタイヤに交換して終盤の逆転を狙ったが、11番手まで順位を落とすことになった。
84周でトップの4号車メルセデス、85周で7号車BMW、88号車ランボルギーニ、56号車GT-Rがタイヤを交換。しかし4号車メルセデスは100Rでまさかのコースアウトを喫して大きく順位を落としてしまう。するとタイヤ交換をしない61号車BRZの山内選手がトップ、60号車Syntium LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑組)の吉本選手が2番手に順位を上げた。
そして早めにスリックタイヤに履き替えて一旦11番手まで順位を落としていた11号車GT-Rが、レインタイヤのまま走る車両に1周あたり10秒近い差で一気に追いつき、92周目にはついにトップに返り咲く。
ファイナルラップとなった93周目の第3セクターでスリックタイヤに交換した7号車BMWと6号車DOBOT Audi R8 LMS(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン/神晴也組)が、61号車BRZと60号車スープラをかわして表彰台圏内へ。さらに最終コーナーでは4番手争いの61号車BRZに60号車スープラがヒットし、山内選手はスピンを喫してしまう。結果、4番手の60号車スープラはペナルティを受けて56号車GT-Rがしぶとく4位、31号車LC500hが5位、61号車BRZが6位となった。
11号車GT-Rは、決勝前のフリー走行でタイヤの替え時をチェックしていたエンジニアの指示でのタイヤ交換がズバリ決まったという。これで7号車BMWの荒選手がポイントリーダーに立ち、56号車GT-Rの両ドライバーが2点差で追うことになった。



スーパーGT真夏の耐久ラウンド、次戦は8月26~27日に鈴鹿サーキットにて450kmレースとして開催予定だ。
フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部
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