逆転劇を見せた小林利徠斗選手が富士大会2勝でタイトル争いに大きな弾みをつける

レポート レース

2023年8月18日

7大会・全14戦で争われるFIA-F4選手権の第3大会が、8月5~6日に富士スピードウェイで開催された。富士でFIA-F4が行われるのは第1大会以来2度目。レギュラードライバーであればすでに経験しているコースとあって、言い訳が通用しない戦いでもある。ここまでの4戦で優勝を飾っているのは小林利徠斗選手、中村仁選手、そして前大会の鈴鹿で連勝の三井優介選手の3名。中でも小林選手の安定感が光り、ランキングを一歩リードする。今大会は果たして?

2023年FIA-F4選手権シリーズ 第5戦/第6戦
(2023 SUPER GT Round.4内)

開催日:2023年8月5~6日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:株式会社GTアソシエイション、富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C

予選

 このところ猛烈な暑さが続くが、この週末の富士も例外とはならなかった。週末に先立ち、木曜日と金曜日に行われた練習走行は、その暑さのせいでコンディションが安定せず、セットアップに苦しむドライバーも少なくなかったが、ほとんどのセッションでトップにつけ、躍進を遂げていたのが洞地遼大選手だった。

「富士はやっと慣れたというのと、しっかりクルマのセットを決められたのが大きいんだと思います。前戦からの2か月の間にはシミュレータに乗ったり、走れないときはトレーニングしたりと、できる限り有効に時間を使ってきました。レースウィークに入ったらすごく調子がいいです。ですが、これまで練習走行が良くても予選でダメということが多かったので、今回は予選もしっかり決めたいと思います」と強く語っていた洞地選手ではあったが……。

 その不安は的中してしまう。予選が始まってすぐに洞地選手はピットイン。ドライブシャフトの破損が原因だった。FIA-F4では1回の予選で2戦分のグリッドが決まるため、1周も走れなかったことは2レースとも最後尾スタートを意味する。戻ったパドックでは号泣する洞地選手の姿があった。

 代わって予選で主役の座を射止めたのは野村勇斗選手だった。2組に分けられた予選、A組のトップはしばらく野村選手のチームメイトである三井選手だったが、終盤になって野村選手が逆転し、ベストタイム、セカンドベストタイムともにトップ。続くB組では小林選手がベストタイム、セカンドベストタイムだったが、温度の違いが影響したのか、タイムで優ったのは野村選手で、ポールポジション(PP)を2戦とも獲得した。

「昨日の午後の走行では上位に入れなかったのであまり自信はありませんでしたが、新品タイヤでの走行は調子が良かったので、『行ってやる』って気合いを入れてアタックしました。終盤にスリップ(ストリーム)を使ってベストなアタックができて良かったです。今日の決勝はとにかく全力で戦って、まず1勝を挙げたいと思います」と野村選手。

 一方、その脇に並ぶ格好となる小林選手は、「一緒の組で走って2番手なら悔しいって感じになったんでしょうけど、天候がどうしても違いますし、自分ではそんなものだろうと割り切っています。ですが、グループ内でトップを狙いつつ、結果的にPPだったらいいなとも思っていました」と。それも本音だろう。

全日本カート選手権参戦時代からともに争ってきたライバルを抑え、野村勇斗選手が第5戦と第6戦のポールポジションを獲得。

第5戦決勝

 レース1こと第5戦決勝レースでは、フロントローの野村選手と小林選手の背後、2列目に並んだのがいずれも両選手のチームメイトである三井選手と中村選手。もはや激戦の予感しかない。スタートが切られると直後の1コーナーで小林選手に迫られた野村選手だったが、白煙が上がるほどのハードブレーキングで逆転を回避。逆に一発で仕留められなかった小林選手は、ヘアピンで中村選手の先行を許していた。その直後には接触があり、止まった車両を回収するためにセーフティカー(SC)が2周にわたって導入される。

 リスタートが切られると、1コーナーではトップを守った野村選手だったが、コカコーラコーナーで中村選手、そしてヘアピンで小林選手に抜かれてしまう。その後も激しいトップ争いは続き、7周目の100Rで小林選手が中村選手の前に、そして野村選手も続く。さらに森山冬星選手と三井選手も加わり、5台でのバトルは最後まで続いた。13周目に三井選手が4番手に上がるも、トップ3は不動のまま。小林選手が2勝目を挙げ、野村選手、中村選手の順でフィニッシュとなった。

「ある意味、FIA-F4らしいバトルをしてしまったというか、できればもっとスマートに抜きたかったですね。そこはもっと成長できるところだと思うので、頑張りたいですね。盛り上がったとは思いますが、やっぱりレースをやるならスタートで勝ちたいので。変なこだわりだと言えばそうなんですけど」と小林選手。これが18歳になったばかりのドライバーの考えだとは!

 一方、洞地選手は15位でゴールし、実に30台抜きを果たしていた。そしてインディペンデントカップでは、鳥羽豊選手が今季2勝目に向けて独走状態だったものの、突然のエンジントラブルからピットに戻ってリタイア。代わってトップについた今田信宏選手が優勝し、「実は初優勝なんですよ。今まで勝てそうなレースを落としたりしていたので。でも鳥羽選手のトラブルの中での勝利なので、本当はきちっと勝ちたかったですね」と本音を漏らしていた。

第5戦優勝は小林利徠斗選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)。
2位は野村勇斗選手(HFDP RACING TEAM)、3位は中村仁選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)。
第5戦表彰の各選手。
第5戦インディペンデントカップ優勝は今田信宏選手(JMS RACING with B-MAX)。
第5戦インディペンデントカップの表彰式。左から2位の仲尾恵史選手、1位の今田選手、3位の齋藤真紀雄選手。

第6戦決勝

 レース2こと決勝レース第6戦も、1列目と2列目に並んだのは第5戦と同じドライバー。トップはその4人で競われた。まず野村選手がスタートを決めて1コーナーへのホールショットに成功。小林選手、そして中村選手が三井選手と順位を入れ替えて続いていく。

 3周目のストレートで小林選手が野村選手に並び、1コーナーでは完全に前へ。野村選手は4周目のダンロップコーナーで中村選手にもかわされていた。そして5周目からは1コーナーで止まった車両を回収するためSC導入。2周の先導の後、切られたリスタートで小林選手の加速が鈍る。それを見逃してくれるはずもなく、1コーナーで中村選手に抜かれ、続く2コーナーでは野村選手に並ばれるも、そこは踏ん張って小林選手は2番手に。

 11周目から2周にわたって黄旗が1コーナーで振られていたことは、中村選手にとって福音となるかと思われた。だが、最終ラップになって解除。スリップストリームから抜け出した小林選手が最後のチャンスを逃さず、そのまま逃げ切って今シーズン3勝目を挙げた。3位は野村選手が獲得。洞地選手はドライビングスルーペナルティを課せられ、第6戦は37位で終わっている。

「昨日ごちゃごちゃレースをやっていたので、もっとスマートなレースがしたいと考えていて、いくらかは達成できたんですけど、反省点もまだまだありますね。SC明けとかとくにですけど、今後に向けて改善していきたいと思います。先を見据えた走りというか、実際にただ速く走りたいというのが第一にあるんですけど、SCやスタートなどレースでしか経験できないことを今後たくさん経験して、もっと強くなりたいと思っています」と小林選手。

 インディペンデントカップでは、今度こそ鳥羽選手の圧勝に。序盤は齋藤真紀雄選手の猛追を食らうも、引き離してからはまったく危なげない走りを見せていた。鳥羽選手は「今日は問題なしでした。メカニックが落ち込んでいたけど、細かいところまで目配せしてくれて、直してくれたからには絶対に優勝しようって。いいレースができて良かったです」とコメント。

第6戦優勝は小林選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)。
2位は中村仁選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)、3位は野村勇斗選手(HFDP RACING TEAM)。
第6戦表彰の各選手。
第6戦インディペンデントカップ優勝は鳥羽豊選手(HELM MOTORSPORTS F110)。
第4戦インディペンデントカップの表彰式。左から2位の齋藤選手、1位の鳥羽選手、3位の仲尾選手。

フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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