中部・近畿ラリー第5戦はDE-2東隆弥/原野雅子組が総合トップでフィニッシュ!

レポート ラリー JAFWIM

2023年8月25日

2023年JAF中部・近畿ラリー選手権の近畿地区での開催の最終戦となる「丹後半島ラリー2023」が8月19~20日の二日間、京都府京丹後市周辺のルートを舞台として開催された。中部・近畿ラリーは2023シーズンも中部3戦、近畿3戦の計6戦のシリーズが組まれている。近畿地区での開催については、ここ数年、まずJAF全日本ラリー選手権の一戦である「YUHO RALLY TANGO」に併催して初戦が行われるかたちが通例となっており、今季も6月に行われたRALLY TANGOで中部・近畿ラリー第2戦として併催された。この第5戦、丹後半島ラリーも第2戦とほぼ同じエリアでの開催となり、SSも全日本でも使われたステージが採用された。

2023年JAF中部・近畿ラリー選手権 第5戦
2023年JMRC近畿SSラリーシリーズ第3戦
丹後半島ラリー2023

開催日:2023年8月19~20日
開催場所:京都府京丹後市周辺
主催:OECU-AC、FERIAS

 ラリーはまず19日土曜日にレッキを行なった後、20日日曜日に、2つのセクションで計4本のSSにアタックするという設定で競われた。セクション1はまず成相線を往復で2本走行。サービスを挟んだセクション2は、角突線を往復で2本走ってフィニッシュとなる。両ステージとも、距離は全日本とほぼ変わらず、成相が12.47km、13.01km、角突が8.92km、9.20kmと、地区戦としては非常に走り応えのあるSSが用意された。

 今回のラリーが行われた週の前半に台風7号が近畿地方を縦断したため、SSでは倒木が道を塞ぎ、吹き飛ばされた枝や葉がガードレールを隠すほどの吹き溜まりとなるなど、大きな被害を受けた。しかし関係者の多大な尽力により、レッキが行われた19日の朝までには、コースは隅々まで清掃され、台風の痕跡がまったく感じられないほどの良好なドライターマックが用意された。一部のクルーは、「まるでサーキットを走っているようだった」と今回の路面を絶賛していた。

台風の被害に遭ったとは思えない程、整備されたターマックロード。この路面を整備した主催の大阪電気通信大学体育会自動車部(OECU-AC)とチームフェリアス(FERIAS)はじめ関係者の努力が、このラリー影のMVPといえるだろう(左)。開会式ではステージを提供した京丹後市から、大会会長も務めた中山泰市長も登壇した(右)。

DE-1クラス

 DE-1クラスは、前戦の第4戦で1.3秒差という僅差の優勝争いを展開した、ともにGRヤリスを駆る小泉敏志/川名賢組と廣嶋真/廣嶋浩組の走りに注目が集まった。SS1は今季のRALLY TANGOでは全日本にエントリーした小泉選手と、川名選手のクルーが廣嶋組を3.4秒差で下すベストタイムを奪取。続くSS2でも11秒突き離す連続ベストで成相を完全制覇する。

 RALLY TANGOを欠場した廣嶋組は、丹後の地のラリーは2022シーズンのこのラリー以来のドライブ。しかし角突に移ったセクション2から反撃を開始し、SS3では小泉/川名組を3.3秒差で従えてこの日初のベストを奪うと、最終のSS4では総合でもベストとなるタイムで再び小泉/川名組を上回る。しかし成相で背負ったビハインドは大きく、9.1秒差まで詰めるも優勝には届かず、前戦のリベンジは果たせなかった。

 今回のラリーで小泉選手が組んだコ・ドライバーの川名選手は、全日本ラリーJN-2クラス(現JN-5クラス)の元ドライバーチャンピオンで、ドライビングインストラクターとしても活動している。コ・ドライバーを務めながら、実戦の中で具体的な指示を行うスタイルがラリーストからも高い評価を得ているのだ。小泉選手によれば、RALLY TANGOから車両の仕様を大きく変えたため、その方向性の確認もあって今回は川名選手にコ・ドライバーを依頼したという。

「もちろん優勝は狙っていたので最初から攻めましたが、同時に10月の全日本最終戦に向けて試したかったこともあったので、川名さんのアドバイスを受けながら、SS毎にセッティングと走りを変えて走りました。その割には安定したタイムが出せたと思っているので、収穫の多い一戦でしたね」と振り返った。

2023シーズンのJAF中部・近畿ラリー選手権には第4戦から参戦しているDE-1クラスの小泉敏志選手(若甦DLドリームドライブGRヤリス、右写真左)は、川名賢選手(右写真右)をコ・ドライバーに招いて今回のラリーに挑戦。セクション1で築いたマージンを活かして二連勝を達成した。
DE-2ディフェンディングチャンピオンの廣島真/廣嶋浩組(フェリアスGRヤリス)は、2戦連続で小泉選手に敗れて2位となるもランキングトップに2ポイント差まで迫り、王座争いを最終戦に持ち込んだ(左)。第1戦から優勝が遠ざかっている全日本ドライバーでもある金岡義樹選手と、関本貴史選手のクルー(オサムファクトリー ヤリス)は3位を獲得し、ランキングトップを死守した。

DE-2クラス

 DE-2クラスには、昨季に続いて全日本ドライバーの東隆弥選手がスポット参戦してきた。今年5月に行われた全日本第4戦、「久万高原ラリー」のJN-4クラスで優勝を果たし、続いて開催されたRALLY TANGOでも最終SSまで三つ巴の優勝争いを演じた実力者だ。

 東選手が駆るスズキ・スイフトスポーツは、コ・ドライバーの原野雅子選手とは初コンビであるにも関わらず、SS1で総合ベストをマーク。SS2、SS3も同様の速さを見せ、最終のSS4はDE-1の廣嶋組に総合ベストは譲るも、格上のDE-1勢を凌ぐスピードを見せて総合トップで優勝。全日本ドライバーの貫録を見せた。

 東選手は「昨年は総合2位だったので、今回は一番を狙ってSS1から攻めました。SS4はちょっとチグハグになってしまいましたが、最後まで攻めの走りができたと思います。路面も全日本の時よりも良い感じだったので、今年から履くタイヤの性格もよく掴めたし、全日本最終戦に向けてセッティングデータも集められました」と納得の一戦を振り返った。

「今日は3位に終わったRALLY TANGOのリベンジに来ました(笑)」と言う全日本ドライバーの東隆弥選手(DLクスコRIGIDい~ちゅ~んスイフト)はコ・ドライバーの原野雅子選手と組んでDE-2クラスに参戦。4本のSSのうち3本で総合ベストタイムをマークする圧巻の走りでDE-2を制し、総合トップでフィニッシュした。
DE-2で開幕4連勝を果たし、王手をかけて今回のラリーに臨んだ貝原聖也選手と、コ・ドライバーの西﨑佳代子選手のクルー(ADVICS多賀製作所K1GR86YH)。5連勝こそならなかったものの2位に入り、貝原選手がチャンピオンを確定させた(左)。3位はスポット参戦したトヨタ・MR-Sを駆る渡部弘樹/前川富哉組(純白♡無垢なMR-S)が獲得した(右)。

DE-5クラス

 開幕から4戦すべてウィナーが異なる混戦となっているDE-5クラスは、今回も18台がエントリーする激戦区となった。SS1をベストで上がったのは、全日本ではJN-1クラスの福永修選手のコ・ドライバーを務める齊田美早子選手を招いた塙将司選手のトヨタ・ヴィッツ。RALLY TANGOではSSを1本走ったのみでリタイアとなったが、そのRALLY TANGOで全日本のオープンクラスにエントリーした阪口知洋/毛受広子組の日産・マーチに9.4秒差をつけるスーパーベストをマークする。

 SS2では阪口/毛受組が塙/齊田組を0.4秒しのいでベストを奪うが、角突のSS3では塙/齊田組が3.5秒差で阪口/毛受組を下してこの日2度目のベスト。最終のSS4では阪口/毛受組が再びベストを奪うが、塙/齊田組も1.6秒差の2番手につける。SS1で築いたリードを最後まで守り切った塙/齊田組が、DE-5での今季2勝目一番乗りを果たした。

「足回りを今回から変えたんですが、情報が凄く入ってくる足になったのでSS1から攻められました。ベストを獲れなかったSSでは自分に課題を与えて試しながら走っていたので、ある意味、納得できるというか、全体を通して満足の行く走りができたと思います」と勝因を振り返った塙選手は、「ペースノートについても、齊田さんに色々とダメ出しをしてもらったので(笑)、走りやすかったです。そのお陰で、前回のこのラリーのようにクラッシュすることなく走り切れました」と、全日本のTOPコ・ドライバーに感謝しきりだった。

DE-5クラスの塙将司選手(ヴィッツ・CUSCO・WM・DL・TOF)は全日本コ・ドライバーの齊田美早子選手を招いて今回のラリーに挑戦。SS1・3で速さを見せてマージンを築いて二連勝を達成し、ランキングでも2番手に上がり、王座争いに踏みとどまった。
DE-5クラスの2位に入ったのは、関東地区から遠征の阪口知洋/毛受広子組(MidlandMEGALiFeDLマーチ)。SS2・4で塙/齊田組を下してベストを奪うも勝利には届かなかった(左)。ランキングトップを走る島根剛/藤沢繁利組(ADVICS新興K1 YHヤリス)は優勝争いには加われなかったものの、3位を獲得。島根選手は塙選手と、藤沢選手は今回のラリーでリタイアに終わった一柳修馬選手(クロノスYHμヤリス)との最終戦決戦となる(右)。

DE-6クラス

 DE-6クラスは洪銘蔚/坂井智幸組が駆るトヨタ・ヤリスのCVT車両が、「85%程度の出来だったけど、ベストが獲れたのでペースが掴めた」と、SS1から首位に立つ。前戦で2位のドライバー、三宅康正選手とコ・ドライバー多比良二三男選手のクルーのヴィッツCVTが今回のラリーでも食らいついたが、ディフェンディングチャンピオンの洪/坂井組は最後まで隙を見せず、終わってみれば4SSすべてを制覇して三連勝を飾った。

 第2戦では激戦のDE-5クラスに敢えてエントリーした洪選手は、「勝てたのは嬉しいですけど、上のクラス(DE-5)のタイムを見ると、もっといいタイムを出したかったという思いもあります。でも本当に最高の路面だったので、今日は楽しめました」とラリーを振り返った。

「DE-5クラスのタイムを意識しながら走りました」と言うDE-6クラスのディフェンディングチャンピオン、洪銘蔚/坂井智幸組(G-EYES.LD.CVTヤリス.DL)。DE-5上位勢のタイムには届かなかったものの、全てのSSでDE-6のベストをマークし、洪選手が二連覇を確定させた。
関東勢の一角、DE-6の三宅康正選手(黒ヴィッツCVT)が前戦に続き参戦。サイドシートに多比良二三男選手を迎えて4SSとも2番手タイムをマークし、2戦連続の2位フィニッシュを果たした(左)。ホンダ・フィットRSのCVT車両で挑んだ杉本治/石田裕一組(ZERO☆FIT☆RS-CVT 139)が3位を獲得。石田選手は最終戦にチャンピオン確定の可能性を残した(右)。

チャレンジクラス

 チャレンジクラスは、今季第4戦で優勝した田中佑樹/中島秀一朗組のマツダ・デミオが、3本のSSでベストタイムを獲得。総合のタイムでも、DE-5クラスの6位に相当する好タイムでラリーを走り切り、今季2勝目を挙げた。

チャレンジクラスは若手クルーの田中佑樹/中島秀一朗組(TEAM SWIFTグリーンデミオ)がトップ。GRヤリス、スバル・インプレッサWRX STIの四駆ターボ勢も参戦する中、マツダ・デミオを駆ってSS3以外の3SSを制し、DE-5の中位に食い込むタイムも残した。
チャレンジ2位の松波登/草加浩平組(日本ヴューテック ダンロップGRヤリス)はSS3を制し、田中/中島組に一矢報いた(左)。モノトーンカラーのトヨタ・スプリンタートレノ、通称“パンダトレノ”で挑んだ蛭子毅/山本裕子組(えびりん・ゆーぴー 猫熊トレノ)が3位を獲得した。

フォト/田代康、山口貴利 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部

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