北海道ラリー第5戦は久しぶりの復活となった東胆振地域のグラベルロードが舞台!

レポート ラリー JAFWIM

2023年8月31日

全6戦が組まれる2023シーズンのJAF北海道ラリー選手権は、今季2度目のグラベルラリーとなる第5戦「RALLY EAST-IBURI 2023」が、8月26~27日に北海道勇払郡の厚真町、安平町をラリーフィールドとして行われた。厚真町と安平町が位置する東胆振地域は、今季の冬に地区戦の第1戦、第2戦のスノーラリー2戦でSSが設定されて話題を呼んだが、本格的なグラベルラリーは数十年ぶりという長いブランクを経ての開催。厚真町の厚真スポーツセンター内の、あつまスタードームにHQが置かれ、同スポーツセンターの駐車場が、スタート&フィニッシュ、サービスパークの会場となった。

2023年JAF北海道ラリー選手権 第5戦
2023年JMRC北海道TEINラリーシリーズ第5戦
2023年XCRスプリントカップ北海道 第4戦
RALLY EAST-IBURI 2023

開催日:2023年8月26~27日
開催場所:北海道厚真町、安平町
主催:ROC.H

 SSは、「KASUGA」3.83kmと、「ASAHI」1.91kmの2本のステージを、2回のサービスを挟んで3本ずつ走る設定が採られた。KASUGAはアップダウンに富んだ狭いテクニカルな道が続く、北海道ではあまり見ないパターンのステージ。途中にはジャンピングスポットもある。徐々にワダチが掘られる軟質な路面を持ったステージだ。

 一方のASAHIは対照的に、硬く引き締まった路面を持つ高速のステージ。総合のベストタイムの平均時速で比較すると、KASUGAが約63km/hであるのに対し、ASAHIは約90km/hと屈指のハイスピードステージであることが分かる。路面は、降雨の天気予報が見事に外れて、スタート時には青空も広がるドライコンディションとなり、フィニッシュまで晴天が続くラリーとなった。

長き時を経て復活となった、東胆振地域でのグラベルラリー。6本のSSの舞台となった2つのステージは、コーナーも路面も対照的に異なり、攻め応えのあるラリーとなった(左)。今回のラリーの中心となったのは、厚真町に建つ厚真スポーツセンター。HQが置かれた、特長のある屋根を持つあつまスタードームをはじめ、様々なスポーツがプレイできる設備を整えている(右)。

2023年JAF北海道ラリー選手権 第5戦

RA-1クラス

 RA-1クラスは、JAF全日本ラリー選手権にも参戦する関根正人/松川萌子組が、SS1 KASUGA 1でまずベストタイムを奪うが、SS2 ASAHI 1では藤澤和弘/岩淵亜子組がベストをマーク。そしてSS3 KASUGA 2では、全日本で駆るシトロエンC3 R5から今回は三菱・ランサーエボリューションXに乗り換えた今井聡/安東貞敏組が、スーパーベストを叩き出して一気に首位に躍り出た。

 しかし関根/松川組は続くSS4 ASAHI 2で今井/安東組を1.2秒凌ぐ2番手タイムで首位を奪回すると、3ループ目となるSS5 KASUGA 3、SS6 ASAHI 3を連取して首位をキープ。最終的には2.9秒差で逃げ切り、今季初優勝を飾った。ランキングトップの和氣嵩暁/高橋芙悠組は、KASUGAでトップ2台に遅れを取ったことが響いて、首位から9.1秒遅れの3位でラリーを終えた。

 2週間後に開催される全日本第7戦の「RALLY HOKKAIDO」に向け、変更した足回りのテストを兼ねて参戦したと言う関根選手はフィニッシュ後、「今日はクルマの感触を確かめるために走るつもりでしたが、僅差の戦いとなったので、つい最後は攻めてしまいました。(タイトルを争っているクルー達の)邪魔をしてしまって、申し訳なかったです」と苦笑しつつ、コメント。「ただASAHIはもちろんですが、KASUGAも、RALLY HOKKAIDOでよく使われるヤムワッカや音更のステージに似た所が一部あったので、得るものがありました」と今回のラリーの印象を語った。

2023年JAF全日本ラリー選手権の第7戦「RALLY HOKKAIDO」参戦を見据えて、前戦に続けてRA-1クラスに参戦した関根正人/松川萌子組(Gセキネン・DL・WM GRヤリス)。終盤2つのSSでのベストタイムが決め手となり、RA-1クラスを制するとともに、総合優勝も果たした。
RA-1の2位に入ったのは、関根/松川組とは全日本でも争っている今井聡/安東貞敏組(AKM MOTORSPORTSランサー10)。SS3でベスト、SS1とSS5では2番手タイムをマークした(左)。SS4でベストを奪った和氣嵩暁/高橋芙悠組(DUNLOP・IRS・Gセキネンランサー)が3位を獲得し、最終戦を前にチャンピオンを確定させた(右)。
RA-1の上位3クルー。左から2位の今井/安東組、優勝した関根/松川組、3位でチャンピオンを確定させた和氣/高橋組。

RA-2クラス

 RA-2クラスはランキングトップの谷岡一幸/岸田勇人組が、ラリー前半に足回りを破損してリタイア。谷岡/岸田組と同ポイントで並ぶ近藤太樹/中村真一組もスタート前から車両が不調をきたして、ペースを上げられない波乱の展開となる。この中、序盤から抜きん出た速さを見せたのは、三菱・ミラージュを駆る室田彰仁/川村朋有組。前戦優勝の勢いを持ち込んで、終わってみれば全SS制覇の走りを見せて勝利を飾った。

 2022シーズン、25年ぶりにラリーに復活した室田選手は、「今日はKASUGAは最後まで難しかったですけど、ASAHIは自分の欠点であるリアを振りすぎる走りを抑えることが3本目はできたので、納得の走りができました。ただ、まだRA-3クラスには負けているので、そこを改善したいですね」と、地元釧路に近い十勝地域で開催される最終戦の第6戦「とかち2023」に意欲を見せていた。

RA-2クラスの室田彰仁/川村朋有組(CSI・WAKOS・ミラージュ)は「今年から乗り換えたミラージュが割としっかりした造りになっているので、かなり踏めるんです」と今回のラリーでも好調をキープし、第4戦から二連勝を果たした。
近藤太樹/中村真一組(Gセキネン・ミラージュ)は不調を抱えた車両をフィニッシュまで運び、RA-2の2位を獲得。リタイアに終わった谷岡一幸/岸田勇人組(タイヤ館ビィワークスヴィヴィオAKT)を逆転、ランキングトップで最終第6戦を迎える(左)。3位には遠征組の板倉麻美/木原雅彦組(丸徳商会ネオチューン86)が入った(右)。
RA-2の上位2クルー。左から2位を獲得し、ランキングトップに立った近藤/中村組、二連勝達成の室田/川村組。

RA-3クラス

 RA-3クラスでは、7月に開催された全日本第6戦「ARKラリー・カムイ」で念願の全日本初優勝を飾った松倉拓郎/尼子祥一組が参戦してきたが、KASUGAで苦戦を強いられ、SS1、SS3とも昨季、関東地区から遠征してチャンピオンをもぎ取った藤田幸弘/藤田彩子組にベストを譲る展開となる。

 しかし松倉/尼子組は高速のASAHIでは2本ともベストで盛り返し、SS4までに藤田組に2.8秒のリードを築いて、3度目のKASUGAとなる勝負のSS5へ。ここで松倉/尼子組は藤田組を0.6秒差で抑えてリードを広げ、最終的には5.3秒差で藤田組を振り切り、地区戦では今季3度目となる勝利を獲得した。

「KASUGAは北海道にはあまりないパターンの道なので難しかったですね。RALLY HOKKAIDOを考えると絶対にクルマを壊せない状況で、何とか勝ち切れて良かったです」と松倉選手は安堵の表情。一方、藤田幸弘選手は、「KASUGAは僕らのような関東で育ったラリードライバーには違和感のない道なので、SS5で逆転を狙ったのですが、何度かタイトな所でクルマが道から、はみ出しそうになってしまって。それがなければ…」と、悔しいラリーとなった。

2023シーズンの北海道ラリーには第2戦と第3戦にもRA-3クラスに参戦している、松倉拓郎/尼子祥一組(DL☆Gセキネン☆鹿ソニックラブカデミオ)。北海道のグラベルロードでは珍しい特徴を持つKASUGAに苦戦するも3回目の走行となるSS5ではベストを奪取、そのSS5を含む終盤3SSを連取して全日本クルーの貫禄を見せ、優勝を果たした。
RA-3ディフェンディングチャンピオンの藤田幸弘/藤田彩子組(MスポーツBRIG YHデミオ)はSS5で勝負を賭けたものの、松倉/尼子組と0.6秒差で2番手タイムに甘んじたことも響き、2位。二連覇確定は最終第6戦の成績に委ねられた(左)。トヨタ・ヤリスのCVT車両で挑んだ吉原將大/渡邉明穂組(カヤバDL UPG CVT Yaris)は優勝争いには加われなかったものの、3位を獲得した(右)。
RA-3の上位4クルー。左から2位の藤田組、今季の北海道ラリーは3戦全勝の松倉/尼子組、3位の吉原/渡邉組、4位の笠原彰人/宗片さおり組(Gセキネン カヤバDLヴィッツ)。

RA-4クラス

 RA-4クラスでも関東地区から遠征した室田仁/鎌田雅樹組のトヨタ・ヴィッツのCVT車両が3本のKASUGAですべてベストを奪取。ASAHIではトヨタ・ヤリスCVTを駆る富田正美/一條龍之介組が室田/鎌田組を凌ぐスピードを見せたが、室田/鎌田組がKASUGAで稼いだマージンを生かして最後まで富田/一條組を抑え、8.1秒差で逃げ切った。

「北海道のグラベル戦は今年は今回が初だったので、勘が戻らずキツかったですけど、やっぱり地元の人はハイスピードは速いですね」とASAHIについては富田/鎌田組に脱帽した室田選手。「でもKASUGAは地元の茨城にそっくりな道があったので、タイムを稼がせてもらいました(笑)。ワダチも全然、気にならなかったです」と、最後は笑顔を見せていた。

RA-4クラスは関東地区遠征組の室田仁(右写真左)/鎌田雅樹(右写真右)組(BRIGちのねDUCルート6札幌Vitz)が優勝。走り慣れた関東のステージに似た、タイトなKASUGAでの3SSすべてでベストをマークした走りが効いた。

2023年JMRC北海道TEINラリーシリーズ第5戦

ジュニアRA-1クラス

 2023年JMRC北海道TEINラリーシリーズ第5戦のジュニアRA-1クラスは、今季ともに2勝ずつを分け合い激しい王座争いを演じている、北倉裕介/萱原直子組と原田直人/藤波誠一組が序盤からベストタイムを奪い合うシーソーゲームを展開したが、終盤に原田/藤波組がエンジントラブルでリタイアとなったため、北倉/萱原組が3勝目をゲットした。

 ジムカーナから昨季、ラリーに転向した北倉選手は、「ワダチができたSS5は踏めなくてタイムを落としてしまったし、KASUGAは、ペースノートを作るのも難しかったです」と、勝利したとは言え、苦戦を強いられた一戦に反省しきり。「ずっとパワーのあるクルマに乗ってきたので、まだまだ行けると思って運転しています(笑)。またダートになる最終戦ではもうちょっと成長したいですね」と、達成すれば2年連続となるチャンピオン確定を見据えていた。

一騎討ちとなっているジュニアRA-1クラスは北倉裕介/萱原直子組(Gセキネン・孫ランサー)が優勝。最終戦で決着となる王座争いをリードする、大きな一勝を挙げた。

ジュニアRA-2クラス、オープンクラス

 ジュニアRA-2クラスは、開幕三連勝を飾ったスズキ・スイフトスポーツを駆る小野寺浩史/小野寺由起子組と、前戦でその小野寺組に土をつけたホンダ・インテグラタイプRを操る福島凜平/小野昴組のバトルに注目が集まった。しかしSS1でこの2台を突き離すベストタイムで上がったのは、今季初参戦の学生コンビ、山崎隼/菊地祥吾組のミラージュだった。

「ダートラもやっているので、高速のASAHIは踏んでいけました。KASUGAはかなり苦戦しましたが、走る毎にアプローチの仕方が分かってきて、ダートラとは違ったワクワク感も味わえたので楽しかったです」という山崎選手と菊池選手は大差で優勝を達成。2位争いは小野寺組が15秒差で福島/小野組を振り切った。

 なおOpenクラスは、トヨタ・カローラスポーツCVTを駆った佐藤拓郎/吉岡愛恵組が無事完走を果たした。

ジュニアRA-2クラスで「最初から最後まで全開」という目標通りの激走を見せた山崎隼/菊地祥吾組(室工大レスポNKLミラージュ)。ASAHIでのSS2とSS6は地区戦勢に匹敵する速さも見せて、5SSを制してデビューウィンを飾った。
前戦で第1戦からの連勝が3で止まったが2位に入り、ジュニアRA-2二連覇を確定させた小野寺浩史/小野寺由起子組(GセキネンDLゆきかぜシマモンスイフト)。このラリーでは4SSで2番手タイムをマークして、2戦連続の2位を獲得(左)。二連勝を狙った福島凜平/小野昴組(DL・SPMマグナムインテグラ)はSS4でベストタイムをマークするも、3位に終わった(右)。
ジュニアRA-2の上位2クルー。左から2位の小野寺組、優勝した山崎/菊池組。
Openクラスの佐藤拓郎/吉岡愛恵組(トヨタ自動車北海道CVTカローラスポーツ)は6つのSSを駆け抜けて完走を果たした。

2023年XCRスプリントカップ北海道 第4戦

XC-2クラス

 2季目を迎えたXCRスプリントカップ北海道は、ラリー・カムイに併催された第3戦から約一カ月半のインターバルを経て、第4戦が行われた。注目は今回のラリーと、RALLY HOKKAIDOに併催される第5戦への参戦を表明した哀川翔監督が率いるFLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYO TIRES。AKI HATANO/中谷篤組が今回のラリーでシェイクダウンとなる2023年仕様のトヨタ・ランドクルーザープラドで、竹岡圭/中田昌美組がトヨタFJクルーザーでXC-2クラスにエントリーしてきた。

 なおHATANO/中谷組のプラドは第5戦では、昨季もこのチームでステアリングを握ったD1ドライバー、川畑真人選手がドライバーを担当する。HATANO選手は、自らも足回りの開発に関わったプラドのセッティングテスターを兼ねての参戦だった。

 その注目のXC-2は、前戦から復帰したCUSCO RACINGの番場彬/寺田昌弘組のトヨタ・ハイラックスが、SS1でHATANO/中谷組を12.9秒突き離すベストをマークし、ディフェンディングチャンピオンの貫録を見せる。

 番場/寺田組は続くSS2 、SS3 と3連続ベストをマーク。SS4 ではHATANO/中谷組のプラドが1.3秒、番場/寺田組を凌いで今回のラリー初のベストを奪うが、番場/寺田組も最後のASAHIとなるSS6では0.3秒差でHATANO/中谷組を斬り返してトップを堅守。トータル26.2秒差でHATANO/中谷組を振り切って二連勝を飾った。

 番場選手は「パワー的にはプラドの方が勝っていると思いますが、去年一年、このシリーズを追った経験を生かせたので勝てたと思います。KASUGAは変化する路面にアジャストする運転ができたし、ASAHIは最後でいいセットが見つけられたので、RALLY HOKKAIDOに向けて収穫の多いラリーになりました」と振り返った。

 一方、クロスカントリーカーでのラリーは初走行となったHATANO選手は、「今回はあくまでテストなので、ループごとに大きくセッティングを変えて走りました。KASUGAのような道はもう少し詰めが必要ですが、ASAHIで番場選手と勝負できたのは今後に向けてもよかったと思います」と、こちらも手応えを掴んだ様子。TOYOTA GAZOO Racing Rally ChallengeではGR86などを駆るトップドライバーだが、「この手のクルマでのラリーも意外と面白いですね」とラリーを楽しんだ様子だった。

XC-2クラスの番場彬選手(CUSCO YH HILUX Revo)は今回のラリーでコ・ドライバーに寺田昌弘選手を迎えて臨んだ。「自分のクルマとタイヤにはベストマッチのラリーでした」と振り返ったとおり、SS4以外のSSを制する快走を見せて、今季シリーズ2勝目を挙げた。
XC-2のAKI HATANO/中谷篤組(FLEX翔TOYO TIRESプラド)RALLY HOKKAIDOに併催される第5戦に向けたテストも兼ねて参戦。SS4でベストもマークして2位を獲得、テストも成果があったようだ(左)。揚村悠/笠井開生組(YH北海道三菱エクリプスクロスPHEV)は3位に入り、ランキングトップの座を守った(右)。
XC-2の上位2クルー。左から2位に入ったHATANO/中谷組、優勝を果たした番場/寺田組。

XC-3クラス

 XC-3クラスは、前週にラオスとタイで開催されたアジアクロスカントリーラリーから帰国したばかりの塙郁夫選手が、コ・ドライバーの佐竹尚子選手と組んで、今季からドライブするトヨタ・ライズで3度目の参戦。「時差ボケする暇もないくらいだったけど、“いま自分は、どの国にいるんだろう?”ってのは、すっかり慣れてるから(笑)、まったく問題はない」と今回のラリーも変わらず果敢な走りを披露し、優勝を果たした。

 2度目のダートドライビングとなったライズについては、「3ループ目のKASUGAは結構、道が荒れたけど2ループ目より0.1秒しか落ちなかった。多分、FFではもうキツいというような荒れた路面でもタイムは変わらないんじゃないかと思う。ジャンプも大丈夫だったし、改めて万能なクルマだと痛感しました」と、そのポテンシャルを評価していた。

XC-3クラスの塙郁夫選手(岩手トヨタ ライズ ラリーコンセプト)は3列シートを備えるSUVのトヨタ・フォーチュナーをベースにしたラリー車両で挑んだアジアクロスカントリーラリーから一転、コンパクトなトヨタ・ライズでコ・ドライバーの佐竹尚子選手とともに参戦して優勝。今季は参戦した3戦全てで勝利を挙げている。

フォト/田代康、小坂和生 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部

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