オートパーク今庄最後の戦いは、4クラスでチャンピオンが確定!
2023年9月14日

9月2~3日、福井県南越前町郊外のオートパーク今庄で開催された全日本ダートトライアル選手権 第7戦「スーパートライアル in 今庄」。シリーズも佳境となる第7戦、そしてオートパーク今庄での全日本選手権開催が今回で最後ということもあり、多くの観客が会場に足を運んだ。
2023年JAF全日本ダートトライアル選手権 第7戦「スーパートライアル in 今庄」
開催日:2023年9月2~3日
開催地:オートパーク今庄(福井県南越前町)
主催:SHALET、FASC、CCST
7月3日に公式ウェブサイトで2023年末をもって閉鎖することを発表したオートパーク今庄。2009年のコースオープン以来、翌年にはJAFカップオールジャパンダートトライアルを開催、そして2020年はコロナ禍の影響により大会が中止となったものの、2011年から2023年までの13年間は全日本ダートトライアル選手権を継続して開催してきた名コースだ。
2日の公開練習、3日の決勝ヒートとも残暑が厳しく、最高気温が30度を超えるコンディションの中で第7戦は行われた。埃の飛散防止のために各ヒートで5回ずつ散水が行われたものの、照りつける日差しの強さで焼け石に水の状態。クラスによってはドライバーの視界を奪うほど埃が舞いあがったが、それでも各クラスで0.1秒を争う熱戦が繰り広げられた。
コースコンディションは両ヒートともドライ。入念に整備された路面は、2日間で延べ450台が走行したにも関わらず、決勝第2ヒートが終了しても超硬質路面は保たれたままというベストコンディションの中での戦いとなった。



PNE1クラス
AT仕様のスズキ・スイフトスポーツがワンメイク状態となっているPNE1クラス。第4戦を終えた時点で3勝を挙げたノワールシゲオ選手がチャンピオンに王手をかけている状態だが、葛西キャサリン伸彦選手が第5戦と第6戦を連取してチャンピオン確定を阻止してきている。
この第7戦もノワールシゲオ選手がタイトルに王手をかけていることに変わりはないが、葛西選手もなんとか最終戦までチャンピオン争いを持ち越したいところだ。
両者の戦いが注目される中、ノワールシゲオ選手が両ヒートで超硬質路面に対応してベストタイムをマーク。待望の今季4勝目を獲得し、2022年のJD11クラスに続きAT車両のクラス2連覇を飾った。2位はノワールシゲオ選手に0.064秒差にまで迫った葛西キャサリン伸彦選手、3位には葛西キャサリン伸彦選手とダブルエントリーの葛西芙美恵選手が入賞した。





PN3クラス
今季3勝を挙げている竹本幸広選手(トヨタ・GR86)が選手権をリードするPN3クラスは、シリーズランキング2番手ながらも有効得点の関係ですでにタイトル争いから脱落している和泉泰至選手(トヨタ・GR86)が、第2ヒートの逆転劇で今季初優勝を獲得。
和泉選手は2019年の第3戦以来となる4年ぶりの全日本優勝を飾った。2位に竹本選手が入賞し、こちらも2019年以来4年ぶりとなるシリーズチャンピオンを確定させる。3位にはAT仕様のスバル・BRZを駆る佐藤秀昭選手が、第6戦に続き2戦連続の表彰台を獲得した。





Nクラス
Nクラスはシリーズランキングトップの北條倫史選手(三菱・ランサーエボリューションX)が、第1ヒート3番手から第2ヒートで大逆転。6年連続8回目となる全日本チャンピオンを、逆転優勝で決めた。
2位には第1ヒートのトップタイムを奪った新鋭の三浦陸選手(三菱・ランサーエボリューションVIII)が入賞。3位は「今庄は攻めすぎるとタイムが出ない」と言いつつも、トヨタ・GRヤリスで激しい攻めの走りを見せた三枝光博選手が獲得した。





SC1クラス
SC1クラスは、タイトルに王手をかけている山崎迅人選手(三菱・ミラージュ)が、両ヒートでベストタイムを奪う完璧な内容で今季4勝目を獲得。2018年以来となる5年ぶりのチャンピオンを確定させた。2位はウェット路面での速さに定評がある松田宏毅選手(ホンダ・シビック)で、「実はドライでも速いんです(笑)」とコメント。3位には第5戦で優勝を飾った森大士選手(ホンダ・シビック)が入賞した。





PN1クラス
シリーズランキングトップの徳山優斗選手(トヨタ・ヤリス)を筆頭に、工藤清美選手(ホンダ・フィット)、奈良勇希選手(スズキ・スイフトスポーツ)、川島靖史選手(スズキ・スイフトスポーツ)、太田智喜選手(マツダ・デミオ15MB)の5選手がチャンピオン争いの権利を持つPN1クラスは、奈良選手が今季2勝目を獲得。最終戦の逆転チャンピオン獲得に望みをつないだ。
2位には太田選手が入賞するものの、タイトル争いからは脱落。3位は第5戦門前を制している本道治成選手(マツダ・デミオ15MB)が入賞。シリーズランキングトップの徳山選手は4位となり、チャンピオン候補は徳山選手、工藤選手、奈良選手の3人に絞られた。




PN2クラス
ZC33S型のスズキ・スイフトスポーツがワンメイク状態のPN2クラスは、シリーズランキング2番手の中島孝恭選手が、オートパーク今庄の超硬質路面をしっかりと攻略。両ヒートで2番手以下を1秒以上引き離す走りで今季3勝目を獲得し、シリーズランキングもトップに浮上。シリーズチャンピオンに逆王手をかけた。
第6戦を終えてシリーズランキングトップだった鶴岡義広選手は、第1ヒートで5番手、第2ヒートはポジションを3つ上げて2位に入賞。シリーズランキングは2番手に下がったものの、チャンピオン争いには踏みとどまった。3位はベテランの鳥居晴彦選手で、開幕戦2位入賞以来となる表彰台の一角を獲得した。




SA1クラス
シリーズポイントでは5人のドライバーにチャンピオン獲得の可能性があるSA1クラスだが、第6戦を終えてランキングトップの佐藤卓也選手(スズキ・スイフトスポーツ)が8位、同2番手の河石潤選手(スズキ・スイフトスポーツ)が5位、同3番手で全日本ジムカーナ選手権では第7戦で5年ぶりの優勝を飾った志村雅紀選手(スズキ・スイフトスポーツ)が6位と、思うように有効得点を伸ばすことができない状況。
そんな中、第3戦以来の出場となった小山健一選手(ホンダ・シビック)が超硬質路面のオートパーク今庄を豪快に攻め、今季初優勝を獲得。2位に細木智矢選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞し、シリーズランキングは2番手に浮上。3位には第1ヒートトップの川本圭祐選手(ホンダ・インテグラ)が入賞した。この結果、チャンピオン争いは佐藤選手と細木選手の2台に絞られる結果となる。




SA2クラス
第6戦を終えてシリーズランキングトップの浜孝佳選手(三菱・ランサーエボリューションIX)からランキング8番手の増村淳選手(トヨタ・GRヤリス)までがチャンピオン争いの権利を持つという混戦状態のSA2クラス。
第1ヒートは、ランキングトップの浜選手がベストタイムを奪い、関東のベテラン宮地雅弘選手(三菱・ランサーエボリューションX)が2番手、九州のホープ岡本泰成選手(三菱・ランサーエボリューションⅨ)が3番手という展開。
第2ヒートは今庄をホームコースとするマイケルティー選手(三菱・ランサーエボリューションIX)がベストタイムを更新。さらに黒木陽介選手(トヨタ・GRヤリス)がマイケルティー選手のタイムを0.185秒上回り、今季初優勝を飾った。
2位はマイケルティー選手、3位に第1ヒートトップの浜選手が入賞。この結果、チャンピオン候補は浜選手、今回は5位の北村和浩選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)、黒木選手の3名に絞られ、最終戦のタカタラウンドを迎えることとなる。




SC2クラス
SC2クラスは、第1ヒートのトップタイムを奪った岩下幸広選手(三菱・ランサーエボリューションX)が、第2ヒートではギャラリー前のS字コーナーをオーバーラン。5位まで順位を落とすという波乱の展開となった。
上位陣の順位が激しく変わる中、第1ヒート2番手の吉村修選手(三菱・ランサーエボリューションX)が、それまで第2ヒートのトップだった坂田一也選手(三菱・ランサーエボリューションX)を逆転。待望の今季初優勝を飾った。
2位は坂田選手、3位に第1ヒート11番手から大きく順位を上げた目黒亮選手が入賞した。この結果、チャンピオン争いは今回4位に終わったランキングトップの亀田幸弘選手(スバル・インプレッサ)、同2番手の坂田選手、同3番手の吉村選手、同4番手の上村智也選手(三菱・ランサーエボリューションX)の4名に絞られた。




Dクラス
Dクラスは第1ヒートでシリーズランキングトップの炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)が、2番手タイムの田口勝彦選手(三菱・ランサーエボリューションX)を2秒近く引き離すタイムをたたき出すが、第2ヒートで田口選手が逆襲。炭山選手に0.159秒という僅差で開幕戦以来となる今季2勝目を獲得した。
2位に炭山選手、3位にシリーズランキング2番手の谷田川敏幸選手(スバル・BRZ)が入賞した。最終戦タカタでは、炭山選手、谷田川選手、田口選手の3名がタイトルを争う。





中部・近畿エリアのダートラのメッカとして約15年に渡って営業を続けてきたオートパーク今庄だが、2023年末をもって閉鎖することがアナウンスされている。今大会は、今庄で行われる最後の全日本選手権大会ということで、多くの選手がエントリーし、一部の選手は車両に「ありがとうオートパーク今庄」とステッカーを貼りつけて走行。会場には多数のダートラ関係者も駆けつけて、慣れ親しんだコースとの別れをそれぞれが惜しんでいた。
そして、全日本ダートトライアル選手会では、公開練習より参加選手からの寄せ書きを集めており、閉会式の最後にはコースオーナーである平澤政夫氏へ贈呈された。平澤氏は灼熱の大会中も、パドックを駆け巡って選手の印象を聞き、コース状況を逐一確認して、最後の全日本選手権大会にふさわしい路面維持に奔走していた。
「ここは勢いだけでは勝てない、難しいコースだと思う。いい路面をつくりたい。自分はそれだけでやってきたんです。とにかく、走ってクルマが壊れないコースにしたかった。クルマが壊れるコースはダートコースじゃない。自分で言うのも何だけど、450回走ってもこの路面。それを見てほしいね」とは、第2ヒート終了後に伺った平澤氏のコメントだ。
その平澤氏は今後もダートラ界に関わっていくそうなので、このノウハウが広く共有されていくことに期待したい。






フォト/CINQ、大野洋介、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部