水しぶき舞う北海道ダートラ、最終戦を控えて戦いはさらに混戦模様へ

レポート ダートトライアル

2023年9月13日

北海道ダートトライアル選手権第7戦が9月3日、北海道砂川市のオートスポーツランドスナガワのダートトライアルコースで開催された。全8戦中の7戦目ということで、本戦を含めて残すところ2戦。前回の第6戦まででタイトルが確定したクラスはなく、シリーズは混戦を極めている。

2023年JAF北海道ダートトライアル選手権 第7戦
2023年JMRC北海道Winmaxダートトライアルシリーズ 第7戦
2023年JMRCオールスター選抜 第7戦
EZO DIRT 2023

開催日:2023年9月3日
開催地:オートスポーツランドスナガワ ダートトライアルコース(北海道砂川市)
主催:EZO

 各クラスとも大きな山場となる第7戦。大会当日は朝から晴天となったが、河川敷を利用したオートスポーツランドスナガワのダートトライアルコースは、これまでに降った雨の影響を受け、大きく深い水たまりがコースの至る所に出現していた。

 本来予定していたコースレイアウトを設定することができず、比較的路面状況の良いところを選んでのレイアウトとなったが、それでも避けられない区間があり、いつものスナガワに加えて水たまり区間をいかにロスなく走るかも重要な攻略要素となった。残暑厳しい中、豪快な水しぶきを上げながら熱い攻防戦が繰り広げられた。

豊富なコースバリエーションがあるスナガワながら、至るところに水たまりがある状況となり、攻略のハードルが高くなった。

JAF北海道ダートトライアル選手権

4WD-2クラス

 第6戦終了時点でシリーズ4番手の選手までチャンピオンの可能性がある4WD-2クラス。シリーズ上位陣のタイムに注目が集まった。その第1ヒート、クラスファーストゼッケンで東北地区から遠征してきた遠藤誠選手が1分14秒台の好タイムをマークして、4WD-2クラスの戦いの火蓋が切られた。

 この遠藤選手は東北地区戦で常に上位争いを繰り広げるドライバーで、そのタイムは中々更新されずに第1ヒートは進行していく。そしてようやく1分13秒台に突入したのがラスト3で、シリーズ3番手の笠原陸玖選手がトップを奪う。ラストゼッケン、ポイントリーダーの小林茂則選手も1分13秒台を刻むが、笠原選手に届かず暫定2位で第1ヒートを終了。

 続く第2ヒート、遠藤選手は1分11秒台と自己タイムを更新して再び暫定トップに立ち、第1ヒートと同じ状況で競技が進行する。そしてやはりベストタイムを更新したのが笠原選手だ。1分09秒台のタイムを叩き出してトップ奪回。シリーズ2番手の村上周選手は1分12秒台、そして小林選手は遠藤選手のタイムは抜くものの2位に止まり、笠原選手が今季4勝目を上げてポイントリーダーに立った。

「前回からセッティングも変更し、第1ヒートから良い感じで走れました。とくに今回は水たまりの避け方が“カギ”になると思ってましたので、慣熟歩行も念入りに時間をかけたのが功を奏したと思います」と勝因を語った笠原選手。

 2位の小林選手は「7月から全くクルマに乗れず、練習不足でぶっつけ本番っていうのもありますが、笠原選手は速かったですね。全日本にステップアップしてほしいのですが(笑)」と苦笑い。地元勢に割って入った遠藤選手は「フルムーン旅行を兼ねて夫婦で北海道に来ました(笑)。スナガワを走るのは2回目ですが、景色は良いし、ハイスピードコースで楽しかったです」と、3位表彰台を獲得。

 なお今回2位の小林選手と、厳しい条件ながらわずかな可能性を残していた板岡史朗選手がチャンピオン候補から離脱。「断続する路面変化に対応できませんでした」と、今回は4位に終った村上選手が最終戦まで望みをつなぎ、笠原選手とのタイトル争いに挑むこととなる。

優勝は笠原陸玖選手(TRSワシダ HRp DLランサー)。
2位は小林茂則選手(TRSシーンランサー)、3位は遠藤誠選手(INCDXLインプレッサHEx)。
4WD-2クラスの表彰式。左から2位の小林選手、1位の笠原選手、3位の遠藤選手、4位の村上周選手。

FF-1クラス

 今回、最多エントリーとなったのがFF-1クラスだ。シリーズ争いも熾烈を極めているが、第1ヒートで唯一、1分20秒台のベストタイムを刻んだのが、ストーリアを駆る三橋清哉選手だった。三橋選手はシリーズでは7番手と下位に沈んでいるが、スイフト勢を抑えてトップで第1ヒートを折り返す。

 第2ヒートでも1分18秒台まで自己タイムを更新し、後続へのハードルを上げた三橋選手。その後、シリーズ上位陣が猛追するも、誰一人として1分19秒台の壁を越えることができず、三橋選手が逃げ切って優勝を決めた。

「いつもやり過ぎて飛んでいってしまったりとか、失敗が多かったんです(笑)」と言う三橋選手。続けて「今回は抑えるところはきっちり抑え、でも他の人が抑えるであろう水たまりはラインを考えて車速を殺さず入っていこうと組み立てたのが良かったと思います。もちろんミスはありましたが、今回は両ヒートともに自分の中で安定した走りができました」と語った。三橋選手は22歳の若手ドライバーで、ダートトライアル初優勝という大金星を挙げる。シリーズ順位も4番手までジャンプアップ、笑顔で勝負を振り返った。

 一方、チャンピオン争いはシリーズ2番手の竹花豪起選手が2位、ポイントリーダーの岡村巧選手が3位となったことで、第7戦でタイトルは決まらなかった。

「今回はタイヤのエア圧を変えたり、走行中はクラッチを揉んだりして試行錯誤したのですが、実力負けですね。最終戦が楽しみです(笑)」と竹花選手。また「第1ヒートのミスを修正して思った通りに走れたのですが、負けちゃいましたね。若手選手はもう少しオジさんを労ってくれたらいいんだけど(笑)」と、かろうじてポイントリーダーを死守した岡村選手。そして今回4位となった内山壮真選手の三つ巴で最終戦のチャンピオン争いとなる。

優勝は三橋清哉選手(プロジェクトガレージストーリア)。
2位は竹花豪起選手(Pガレ☆YH☆反逆のスイフト)、3位は岡村巧選手(YHダイシンKCタクミスイフト)。
FF-1クラスの表彰式。左から2位の竹花選手、1位の三橋選手、3位の岡村選手、4位の内山壮真選手、5位の土佐岡慎選手。

FF-2/4WD-1クラス

 FF-2/4WD-1クラスは、第1ヒートでシリーズ10番手の柴田純選手がクラス唯一の1分19秒台を刻みトップタイムをマーク。2番手はシリーズ6番手の田丸豪選手がつけて第1ヒートを折り返すが、第2ヒートでは順位が大きく入れ替わる。

 中盤ゼッケンの村上海斗選手が柴田選手のタイムを更新して1分17秒台で暫定トップに立つと、ラスト前のシリーズ2番手である張間健太選手が1分16秒台を刻んでトップ交代。このまま逃げ切るかと思われたが、ラストゼッケンでシリーズ3番手の菊地真選手が張間選手のタイムを0.3秒更新し、逆転で優勝となった。

「第1ヒートは水たまりを避けて走ったのですが、第2ヒートは突っ込む走りに変えました」という菊地選手は、この優勝で張間選手をかわしてシリーズ2番手にポジションアップ。ポイントリーダーの内藤修一選手が、同日に開催されている今庄の全日本ダートトライアル選手権に出場したため不在となったが、最終戦はその内藤選手、菊地選手、張間選手の3名でチャンピオン争いが繰り広げられる。

優勝は菊地真選手(DL北條塾SCENEセリカ)。
2位は張間健太選手(Pガレ☆DL☆WM☆スイフト)、3位は村上海斗選手(Pガレ・ASYL・ストーリア)。
FF-2/4WD-1クラスの表彰式。左から2位の張間選手、1位の菊地選手、3位の村上選手、4位の柴田純選手。

RWDクラス

 RWDクラスはポイントリーダーの古谷欣竹選手と2番手の和泉泰至選手が、今シーズン2勝ずつ勝ち星を分け合って鎬を削っているが、和泉選手も全日本ダートトライアル選手権に出場のため不在。第1ヒートから頭ひとつ抜きん出たタイムでトップタイムを刻んだ古谷選手は、第2ヒートでも自己タイムを2秒以上更新して圧勝となった。

「今回は水たまりが多くて走るのが大変でしたね。和泉選手がいなかったので、タイムはFF-1クラスと比較しましたが、まぁ良かったと思います」という古谷選手は今季3勝目となり、このポイント獲得でシリーズチャンピオンを確定させた。

優勝は古谷欣竹選手(Revl・LOVCA・BRZ)。
RWDクラスの表彰式。左から2位の山田裕一選手、1位の古谷選手。

JMRC北海道Winmaxダートトライアルシリーズ

 併催のJMRC北海道Winmaxダートトライアルシリーズは、AT-1クラスは宇野祐哉選手が両ヒートともに安定した走りで優勝。J-1クラスは、すでにシリーズチャンピオンが確定している栗原啓伍選手が4勝目を挙げて優勝。J-2クラスは、ポイントリーダーの坂井理崇選手と5ポイント差で2番手につけている山口達也選手の戦いとなったが、第1ヒートをトップで折り返した山口選手は第2ヒートで痛恨のタイムダウン。坂井選手が0.7秒のタイムアップを果たし、逆転で坂井選手が優勝となった。

AT-1クラス優勝は宇野祐哉選手(DL・TRSアクア)。
J-1クラス優勝は栗原啓伍選手(スイフト)。
J-1クラスの表彰式。左から2位の結城凌選手、1位の栗原選手。
J-2クラス優勝は坂井理崇選手(PガレNGOファクトリーランサー)。

 クローズド部門となるビギナークラスは、長尾綱也選手がビギナーとは思えない豪快な走りで完走。またヴィッツとジムニーの対決となった賞典外クラスは、ヴィッツの鎌田幹宏選手に軍配が上がった。

ビギナークラス1位は長尾綱也選手(STi Legacy JP4 Rally2)。
賞典外クラス1位は鎌田幹宏選手(ルート6終活ビッツ)。
賞典外クラスの表彰式。左から2位の井澤らいら選手、1位の鎌田選手。

フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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