S2クラス藤本隆ランサーが開幕から負けなし満点チャンピオンを確定
2023年9月21日

京都府京都市の京都コスモスパークで9月10日に開催された近畿ダートトライアル選手権の第5戦。全6戦のスケジュールのうち4戦がすでに終了しているが、タイトルが確定しているのはAE・PNクラスのみ。残る6クラスはタイトル争いは継続中だ。最終戦を待たずしてタイトルが決まるクラスはあるのか、その行方に注目したい。
2023年JAF近畿ダートトライアル選手権 第5戦
2023年JMRC近畿ダートトライアルチャンピオンシリーズ 第5戦
2023年JMRC全国オールスターダートトライアル選抜 第5戦
2023年JMRC近畿ダートトライアルジュニアシリーズ 第5戦
2023 ホワイトダートトライアル in コスモス
開催日:2023年9月10日
開催地:京都コスモスパーク(京都府京都市)
主催:WHITE
舞台となる京都コスモスパークは、6戦中4戦が開催される近畿ダートトライアルシリーズの主戦場となっており、今季3回目の開催となる。今回は全体的には中高速コーナーを主体としたレイアウトだが、鬼門となったのがコース後半に設定された鋭角の左コーナーだ。このような鋭角コーナーはあまり設定されることがないようで、ここで大幅なタイムロスを喫してしまう選手が数多く見受けられた。
当日は朝から強い日差しが照りつける残暑厳しい状況で競技がスタート。午後には雨の予報もあったが天気はなんとか持ちこたえ、両ヒートともにドライコンディションで、タイトルをかけた攻防戦が繰り広げられた。

JAF近畿ダートトライアル選手権/JMRC近畿ダートトライアルチャンピオンシリーズ
S2クラス
開幕から3連勝を挙げてS2クラスのポイントリーダーに立っている藤本隆選手は、72ポイントを獲得してタイトルに王手をかけているが、今回の成績次第によって藤本選手のタイトル獲得を阻止できるのがランキング2番手の松下拓未選手だ。しかし松下選手は今回欠場となったため、出走前に藤本選手のタイトルが確定となった。
第1ヒート、トップタイムを刻んだのは全日本ダートトライアル選手権でNクラス上位ランカーの矢本裕之選手。唯一、1分30秒を切る1分29秒台で貫禄の走りを見せつける。2番手には久保川裕行選手、3番手に上土井康朗選手が続く一方、藤本選手はミスコースでノータイムとなってしまう。
続く第2ヒート、第1ヒートのベストタイムはなかなか更新されず、矢本選手はトップを保持したまま出走となるが、ここでも自己タイムを1秒以上更新して1分28秒台に突入。そして迎えたラストゼッケンの藤本選手。タイトルが確定しているとはいえ、ミスコースのままでは終われない。第2ヒートの一発勝負となったが、叩き出したタイムは1分27秒659。矢本選手のタイムを0.8秒更新し、逆転で優勝となった。
「今シーズンはクルマをしっかりオーバーホールしてポテンシャルを引き出すよう心がけて、前半戦から優勝を重ねることができました。第2ヒートは心を無にして自分の走りに徹することができたのが良かったと思います(笑)」と語った藤本選手。今季4勝目を挙げ、満点チャンピオンを確定させた。



Dクラス
シリーズ上位4選手がタイトル獲得の権利を持っているDクラス。その第1ヒートをトップで折り返したのは、ランキング2番手の金井宏文選手。2番手にランキング3番手の小川浩幸選手、そして3番手にポイントリーダーの田中伸彦選手がつける。
小川選手と田中選手の1分35秒台に対し、トップの金井選手は1分30秒台と、頭ひとつ抜きん出るタイムをマークしており、この第1ヒートの順位でいくと金井選手にタイトル確定となる。第2ヒートでどこまで金井選手に迫るかが注目された。
そして第2ヒート、小川選手は自己タイムを約3秒更新して暫定2位を守るも、タイトル争いから離脱。そして注目の金井選手の出走となるが、コース序盤でミッショントラブルに見舞われて失速。そのままリタイアとなってしまい、第1ヒートのタイムでラストゼッケン田中選手のタイムを待つことになった。
ここで田中選手が金井選手のタイムを抜けば最終戦までタイトル争いを持ち越すことができるが、2秒のタイムアップに止まり、順位は変わらず3番手。金井選手が第1ヒートのタイムを守り切って優勝、そしてシリーズでは逆転でタイトル確定を決めた。
「第2ヒートは第1ヒートで失敗した鋭角コーナーをキレイに走ろうと意気込んだのですが、その前にリタイアしてしまって……。運良く逃げ切れて良かったです。第1ヒートからしっかりタイムを残す大切さを実感しました」と語った金井選手。若干悔いが残る内容だったが、昨シーズンに続く連覇も達成した。



S1クラス
ポイントリーダーの北野匡佑選手を筆頭に、ランキング5番手の田口都一選手までチャンピオンの可能性を残しているS1クラス。第1ヒートでトップタイムをマークしたのは、その田口選手だった。2番手にはランキング4番手の能塚義豊選手、3番手はランキング2番手の今村太亮選手がつける。北野選手は7番手と出遅れ、田口選手も最終戦まで望みをつなげる順位で第1ヒートを終える。
そして第2ヒート、田口選手は約1.5秒のタイムアップを果たしてトップをキープ。続く能塚選手は田口選手に0.1秒まで迫るも、2番手のまま変わらず。今村選手も自己タイムは更新したが、第1ヒートの順位で3番手止まりとなる。ラストゼッケンの北野選手は今回優勝すればタイトル確定となるが、やはり自己タイムは更新するもポジションをひとつ上げた6位に終わり、田口選手が両ヒートを制する形で優勝となった。
「今年は全然ダメでした。優勝は昨年の開幕戦の今庄以来で、ここ(コスモスパーク)での優勝は20年振りです(笑)。今日は午後から雨の予報もあったので、第1ヒート勝負と思ってました。結果的に第2ヒートが決勝タイムとなりましたが、第1ヒートからきっちりタイムを出せたのは良かったと思います」と戦いを振り返った田口選手。
なお北野選手が6位に入ったことで田口選手はタイトル争いからは離脱してしまったが、一矢報いる今シーズン初優勝を飾った。そしてこの結果を受け、最終戦は北野選手と今村選手がタイトルをかけた一騎打ちとなる。



RWDクラス
RWDクラスも混戦を極めており、S1クラスと同じくシリーズ上位5名がタイトルの権利を持って第5戦を迎えた。今回、ポイントリーダーの須川裕二選手の優勝かつ、ランキング2番手の藤原涼太郎選手が3位以下であれば、須川選手のタイトルが確定する。その第1ヒート、トップタイムを刻んだのはランキング5番手につける千賀達也選手。須川選手は暫定2位、藤原選手は暫定5位となり、第1ヒートが終了。
なんとか最終戦まで望みをつなげたい千賀選手は第2ヒートで1.4秒のタイムアップを果たし、トップを保持して後続の結果を待つ。藤原選手は3秒以上のタイムアップで追い上げるが、順位は変わらず5位止まり。そして注目のラストゼッケン須川選手の登場だ。
この時点で藤原選手の3位以下が確定しているため、千賀選手のタイムを更新すればタイトル獲得となる大一番に挑む須川選手。しかし、3.2秒のタイムアップも空しく、0.4秒及ばず2位。千賀選手が今季初優勝で、タイトル争いを最終戦まで持ち越した。
「今年は仕事の関係であまり参戦できませんでした。その間に若手選手の成長が著しく、今回は勝てましたがコンマ差なので最終戦はさらに気を引き締めようと思います」と千賀選手。一方、惜しくもタイトルを決められなかった須川選手だが、ポイントリーダーは死守。最終戦はその須川選手と藤原選手、そして千賀選手がタイトル争いに挑む。



Nクラス
ダイハツのブーンとストーリアが鎬を削るNクラスは、ブーンを駆る藤嶋義孝選手とストーリアを駆る山本浩司選手が同ポイントでランキングトップに立つ。今回、どちらが勝ってもタイトル争いは最終戦まで持ち越す戦況だ。
その第1ヒート、藤嶋選手は3番手、山本選手は4番手。両選手ともにやや出遅れる。そして第2ヒート、このクラスもほとんどの選手が第1ヒートの自己タイムを更新してくるも、順位の大きな変動はなく競技が進行。しかし、勝負を決めたのがラストゼッケンの藤嶋選手。唯一、1分38秒台のタイムを叩き出し、逆転で優勝を飾った。
「第1ヒートはスタートと鋭角コーナーで大きな失敗をしたので、そこを上手く修正できたのが良かったのではないかと思います。ただ、走っているときはトップタイムが出せたという手応えは感じなかったのですが(笑)」と走りを振り返った藤嶋選手。
一方、4位で終った山本選手は、「今回は全然ダメでした。やはりブーンの方が速いのかな。ただ、雨が降れば良い勝負になると思いますので、最終戦に向けて今から雨乞いします(笑)」と山本選手。タイトル争いは藤嶋選手が一歩リードする形で最終戦勝負となった。



AE・PNクラス
今季開幕から4連勝で早々とシリーズチャンピオンを確定させたのがAE・PNクラスの執行信児選手。その執行選手は欠場となったため、シリーズ2位を巡る争いとなった。
第1ヒート、1分44秒台の争いの中で唯一、1分43秒台でトップタイムを刻んだのが西岡章夫選手。暫定2位には入谷有星選手、暫定3位にランキング2番手の坂田智選手がつける。坂田選手と8ポイント差でランキング3番手の坂本英彦選手が欠場のため、ここで一気に差を広げてシリーズ2位を不動のものにしたい坂田選手。
第2ヒートになると各車大幅なタイムアップを果たす中、ラストゼッケン坂田選手は5番手まで順位を落とされる。ターゲットタイムは入谷選手の1分40秒台に入れ替わり、トップを獲るには約3.5秒のタイムアップが必須だが、ここで坂田選手は5秒近く自己タイムを更新して唯一1分39秒台まで突入、逆転で優勝を決めた。
「今季は執行選手に一度も勝てなかったのが悔しいですね。彼がいないときに優勝できました(笑)。今回はやはり鋭角コーナーが肝でしたね。第2ヒートはそこをしっかり抑えて修正できました」と坂田選手。今季初優勝のポイントが加算され、最終戦を待たずにシリーズ2位を確定した。



JMRC近畿ダートトライアルジュニアシリーズ
併催の近畿ダートトライアルジュニアシリーズ第5戦。JPN+クラスは、レディスドライバーの穂村燎華選手が優勝。「今まで成績は最下位に近い状態が続いていたのですが、チーム員や周りの方々にアドバイスをいただき、やっと優勝できてとてもうれしいです」と初優勝に笑顔でコメント。
J1クラスは、自動車運転免許を取得してわずか1か月半の18歳の超若手ドライバー、一宮悠人選手が圧巻の走りで優勝。「父の影響で、ダートトライアルは小学校6年生のときから練習してました。今回はその成果が出せたと思います」という一宮選手は、最終戦は地区戦のS1クラスに出場予定。今後の活躍に注目したい。
J2クラスは近藤俊之選手が優勝し、「昨年は体調を崩してダートトライアルから離れてました。今年になって久しぶりに復帰して、順位関係なく楽しく走ることができました(笑)」とダートトライアルを満喫し、笑顔でコメント。







フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部