中国地区で最もハイスピードかつエキサイティングなTSタカタサーキットで最終決戦!!
2023年9月21日

シリーズ全7戦中6戦が終了し、すでに続々とチャンピオンが確定している中国ジムカーナ選手権は、最終戦まで白熱の戦いが続いた。この大会にタイトル争いが持ち越されたT28クラスは竹内靖佳選手に、R2クラスは石井拓選手に確定して、2023年のシリーズは終了となった。
2023年JAF中国ジムカーナ選手権 第7戦
2023年JMRC中国ジムカーナチャンピオンシリーズ 第7戦
2023年JMRC全国オールスター選抜 第7戦
2023年JMRC中国フレッシュマンシリーズ 第7戦
2023 スピリットジムカーナ
開催日:2023年9月10日
開催地:TSタカタサーキット(広島県安芸高田市)
主催:SPIRIT
ここまでスポーツランドTAMADA、なださきレイクサイドパーク、備北サーキットと転戦を続けてきた中国ジムカーナ選手権もいよいよ最終戦を迎えた。その最終決戦の舞台は、中国地区屈指のハイスピードコースを誇るTSタカタサーキットだ。
ここまでシリーズ6戦を終了し、チャンピオンが確定していないのはT28クラス(トレッドウェア280以上のタイヤを装着するクラス)とR2クラス(JMRC中国が指定するタイヤを装着した2WD車両のクラス)。とくにR2クラスは石井拓選手と影山幸輝選手が3ポイント差という僅差の争いを繰り広げている状況だ。
大会を主催するのは、自動車メーカーのマツダ社員によって構成されるスピリットオブマツダ。ひと足早くシリーズチャンピオンを確定させているPN2クラス柏昇吾選手と、BC2クラス藤井雅裕選手は、オフィシャルとして大会運営に専念することとなった。
その一方で、全日本ジムカーナ選手権にも参戦する柏選手がオフィシャルに回ったことで、現役ドライバーがコース設定を行うという珍しい試みも実施された。柏選手は「昨年はこのTSタカタサーキットでジムカーナが開催できなかったので、普段の走行会では走ることができない逆走を中心にコース設定を行いました」と語る。
「そこそこスピードが乗ったところから進入する場所にパイロンを配置したので、スピードコントロールが重要になってくるのではないでしょうか。また、逆バンクになっているコーナーが複数あるので、普通のカートコースのようにコース幅を目一杯使うことが正解とは限らないところもポイントです」
エントラントの中にはこの逆走の難しさを語る声も多く、見た目以上の勾配差からくるブラインドコーナーは、ドライバーのスキルもさることながら、メンタルも試されるコースのようだ。
朝霧が立ち込めるTSタカタサーキットには徐々に日が射し込んできたことでドライ勝負になると思われたが、この日の天気予報は午後から雨。慣熟歩行は70分間と長めに用意され、今年最後の走りを心残りのないようにしようと、各選手ともコースチェックには抜かりがない様子だった。



JAF中国ジムカーナ選手権/JMRC中国ジムカーナチャンピオンシリーズ
T28クラス
前戦のTSタカタサーキットでランキング2番手の西島公一選手が優勝し、一気にポイント差が縮まったものの、俄然有利な形で最終戦を迎えたのはランキングトップの武内靖佳選手。ここまで3勝を挙げており、今大会で4位以内に入ればチャンピオンが確定となる。
そんな第1ヒート、主催クラブであるSPIRIT所属の渡部峻佑選手がトップタイムをマークした。ここで絶対に優勝が欲しい西島選手は、勝負の第1ヒートでまさかの2番手タイム。最終ゼッケンの武内選手はここで冷静な走りを披露してトップタイムを更新する。
昼の慣熟歩行時には雨が降ると思われたが、ドライのままで第2ヒートを迎えることに。逆転しておきたい西島選手はシリーズチャンピオンを目前にした重圧からか、いつもはミスをしないターンセクションで大きなミス。大幅なタイムロスを喫した西島選手は、渡部選手の後塵を拝する3番手でフィニッシュすることになる。
結果、武内選手が今シーズン4勝目、そしてシリーズチャンピオン確定の有終の美となった。「第3戦の備北でパイロンタッチをしてからパイロン恐怖症になってしまっていたので、1本目は様子見でした。2本目は『いったれ!!』っとパイロンぎりぎりを攻め、タイムアップも果たせました。恐怖症もこの最終戦で払拭できたと思います」と武内選手。来年はステップアップを予定しているとのこと。



RCクラス
RCクラスはKAZUYA選手が開幕から5連勝で早々にチャンピオンを確定させている。しかしそのKAZUYA選手はTSタカタサーキットを苦手としている様子。前戦でもパイロンタッチで最下位に沈んでしまった。そんな苦手意識を払拭するように、第1ヒートから気合いが入ったKAZUYA選手だったが、まさかのミスコースに終わる。
目線の低いホンダ・ビートでは、TSタカタサーキットの勾配はすぐにブラインドコーナーと化してしまう。一瞬コースを見失ってしまったようで、KAZUYA選手はノータイムとなってしまった。一方、同じくビートをドライブするTARO選手が一発逆転を狙うべく、第1ヒートでKAZUYA選手の前に立ちはだかった。
「絶対、自分で納得できる走りをしたいです」と第2ヒートに臨んだKAZUYA選手は、過給機を搭載する自車の強みを活かし、しっかりとストレートで踏めるラインをトレースする。グリップの抜けやすい逆バンクではしっかりと頭を入れてからアクセルという基本に忠実な走り。その結果、2位に3秒以上の差をつけるトップタイムを叩き出し、逆転優勝を決めた。
「1本目は……気づいたときには手遅れでした。2本目は大きなプレッシャーがかかったんですが、自分の納得がいく走りをすることだけを心がけました。とにかく車速を落とさない走りと、過給機を搭載している強みを活かしたライン取りですね。その結果、納得のいく走りもできて満足です」とKAZUYA選手。



R2クラス
最多12台のエントリーを集めたR2クラス。熾烈なシリーズチャンピオン争いが最終戦まで持ち越されているクラスだ。ランキング暫定トップの石井拓選手の順位に関わらず、影山幸輝選手が3位以下で石井選手のチャンピオンが確定する。だが、石井選手と影山選手は互いに今季2勝ずつ挙げていることから、影山選手が最終戦で優勝すれば、無条件で逆転チャンピオンが確定できる。
そんな張り詰めた空気の中で始まった第1ヒート、トップタイムをマークしたのは伏兵ロータス・エキシージの板橋巧司選手だった。これに続くのは影山選手で、石井選手は4番手と奮わない。命運を分ける勝負の第2ヒートはなんとかドライのままスタートした。前のクラスでは軒並みタイムを上げていたが、R2クラスでは気負った選手が多かったのかタイムダウン連発。板橋選手も大きくタイムを落としてしまう。
この均衡を破ったのはベテラン中本信一選手だった。「1本目はターンで失敗して脱輪を取られてしまったので、2本目はそこを注意しました。でも、全体的に荒い運転になってしまったかもしれません」と語るように、車体を震わせながらコーナーを立ち上がった中本選手。しかし、そんな状態でもアクセルオンでゲインした分、トータルでトップタイムを更新する。
これに食い下がったのはランキング2番手の影山選手ながら、中本選手のトップタイムには大きく及ばない。影山選手がチャンピオンとなるには石井選手が3位以下になることが条件だ。プレッシャーのかかる中でスタートした石井選手だったが、そのプレッシャーを跳ね返すような見事な走りを披露する。
細かいミスはあるものの、車速を落とさず、ボトムスピードを高く維持してコーナーを抜けていく。中本選手のトップタイムには及ばなかったものの2番手タイムを記録。この結果、クラス優勝は中本選手となり、シリーズチャンピオンも確定した。
「影山選手とは同じ山口県人で非常に申しわけない思いもあるんですが、以前僕がチャンピオン争いをしているときに影山選手に上にいかれてチャンピオンを獲り逃してしまったことがあるので、これでお互い痛み分けだと思います(笑)。毎年1回くらいは勝ってると思うんですが、最終戦で勝てて良かったです。これで来年も頑張れます」と中本選手。
ランキング2位に終わった影山選手は「メンタルが足りませんでした。昨日の前日練習では石井選手に勝ってたので、普通に走れば勝てるだろうと思っていたんですが……やっぱり緊張は消せませんでした」と自身の走りを振り返る。これで最終戦までもつれたチャンピオン争いに終止符が打たれた。



R4クラス
JMRC中国ジムカーナ部会が指定したタイヤを装着する、4WD車両で争われるR4クラス。ランサーとインプレッサというハイパワーセダンの一騎打ちとなっている。ここまでシリーズ4勝を挙げている川上智久選手がチャンピオンを確定。しかし、今大会には第2戦で勝利を挙げているカードック中山の難波信義選手もエントリーしているため、最終戦でも激しい優勝争いが期待された。
そんなR4クラスの第1ヒート、トップタイムをマークしたのは川上選手だった。2番手の難波選手とはコンマ3秒差。この差を埋めるために第2ヒートで勝負をかけた難波選手だが、渡りを通るセクションでわずかに後れを積み重ねてしまい、自身1本目のタイムを上回ることができずに2番手のまま。その後、川上選手のトップタイムを更新する選手は現れず、川上選手が最終戦でも表彰台の頂点を獲得した。



PN2クラス
最も熾烈な争いが見られるPN2クラス、前戦では今季2人目の勝者に西村優輝選手が輝いた。そして今シーズン最後の勝者の座を争ってベテラン勢と若手の争いが繰り広げられた。中でも注目すべきは昨年満点チャンピオンを獲得したにも関わらず、今季まだ1勝も挙げられていない中国地区の顔とも言うべき髙屋隆一選手だ。
「昨年からタイヤが変わってしまい、まだ以前のようなハイグリップの感覚が体に残ってしまっているのか、調子が戻ってこないんです」と、自身の不調の原因を探っている状態。そんな髙屋選手を中心に動くと思われた最終戦は、思惑通り髙屋選手が2番手以下にコンマ5秒以上の差をつける圧倒的なタイムを叩き出し、第1ヒートをトップで折り返す。
勝負の第2ヒートとなるも、当然のことながら髙屋選手の第1ヒートのタイムを更新する者は現れない。このまま髙屋選手の逃げ切りかと思われたが、ラスト前のTomohide選手が滑らかな走りでパイロンをクリアしていく。テールがスライドするギリギリのラインで絶妙なトラクション。ブレーキを極力抑えた車速を落とさない走りに徹し、見事にトップタイムを更新する。
そしてクラス最終ゼッケンの髙屋選手。しかし気負ってしまったのか、自身のタイムを更新するもTomohide選手のタイムにはコンマ1秒届かない。この結果、Tomohide選手が今季初優勝を遂げた。「うれしいですね、久しぶりに優勝できました。髙屋さんありがとうございます」とTomohide選手は喜びをあらわにした。



PN3クラス
ここまで優勝4回、2位2回と頭ひとつ抜ける成績で、早々に内田敦選手がチャンピオンを確定させているPN3クラス。ロードスターとGR86の一騎打ちとなるこのクラスは、最終戦も内田選手が一歩先を行く展開となった。
第1ヒートで2番手の松村正吾選手にコンマ2秒差をつける内田選手。第2ヒートでは池澤亮太選手がコンマ1秒差まで迫るも追いつけず、第1ヒートのタイムで内田選手が優勝。内田選手は第2ヒートでさらにタイムを上げ、ひとり1分23秒台に突入する圧倒的強さを見せつけた。



BC2クラス
全日本ジムカーナ選手権にも参戦する井上洋選手の参戦でざわついたBC2クラス。一方で、JMRC中国ジムカーナ部会の部会長と副部会長の直接対決にも注目が集まった。第1ヒートではその井上選手がトップタイムをマークする。井上選手の快進撃を止められる選手は現れず、そのまま第1ヒートのタイムで逃げ切り優勝を決めた。
「全日本最終戦は仕事の都合で参戦できなくなってしまいましたが……。普段はスポーツランドTAMADAばかり走っているので、鈴鹿やもてぎなどのハイスピードコースに慣れるために参戦しました。まだまだ課題の残る走りでした」と井上選手。また、部会長と副部会長の争いは、部会長の難波眞選手が2位に入り「順当に勝てましたね」と小さな喜びを伝えてくれた。



BC3クラス
全戦優勝の期待がかかる佃真治選手に注目が集まったBC3クラス。今年からGRヤリスに乗り換えて、セットアップに試行錯誤するシーズンだったと言うが、今大会も佃選手を止めるものは現れず。GRヤリスの軽さを武器にトップタイムをマークする。第2ヒートも第1ヒートの走りを修正し、タイムアップに成功して文句なしの逃げ切り優勝。これで今シーズン全勝をマークした。



JMRC中国フレッシュマンシリーズ
Fクラス
開幕から5連勝で早々にシリーズチャンピオンを決めた廣田賢興選手が主導権を握るFクラス。欠場した前戦はランキング2位の今山輝選手が勝利を収めている。第1ヒートはND5ロードスターの奥山蘭選手がトップタイムをマークすると、後続ゼッケンの選手は誰もこのタイムを抜けないまま、クラス最終ゼッケンの廣田選手に。だが廣田選手は2番手に甘んじてしまう。そんな廣田選手は第2ヒートでトップタイムを大きく上回り、ターゲットタイムを更新。見事最終戦も勝利をつかみ取った。



FATクラス
ここまで3勝ずつを分け合っている乗本和子選手と木下裕司選手の一騎打ちとなっているFATクラス。最終戦で優勝した者がシリーズチャンピオンを獲得する。第1ヒートでトップを奪ったのは乗本選手で、木下選手はまさかのスピンでタイムを失ってしまう。この第1ヒートを受けて緊張が襲ったのか、木下選手は第2ヒートもやや精彩を欠く走り。乗本選手が第1ヒートのタイムで逃げ切り勝利を決めた。
「1本目、調子いい感じでいったのを赤旗で止められてしまったのは精神的にやられましたね。2本目は行けるだけ行かないと、と思って行きました。とくに後半のヘアピンはしっかり攻められました」と乗本選手。自身初のシリーズチャンピオン獲得に喜びをあらわにした。



大会を終え、田中光競技長は「スピリットとしては初めてのTSタカタサーキットでの主催でしたが、頭を使うコース設定で良い大会になったのではないかと思います。また、微妙なパイロンワークを楽しんでもらえたと自負しています。まだまだ暑さの残る中でオフィシャルの皆さんにも頑張ってもらえて運営できました」と今大会をまとめてくれた。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部
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