GT500/GT300両クラスのトップチェッカーが失格の波乱、ARTA MUGEN NSX-GTと埼玉トヨペットGB GR Supra GTが優勝
2023年9月25日

開幕戦の岡山ラウンド同様、シリーズで最も距離が短い300kmレースとして、9月16~17日にスポーツランドSUGOで開催されたスーパーGT 第6戦。レース中盤に大きなアクシデントがあり、赤旗が掲示されて中断となったが、再開後はスリリングでドラマチックなバトルが展開される。しかしGT500、GT300の両クラスの暫定1位がいずれも失格となる波乱に……。
2023 SUPER GT Round.6 SUGO GT 300km RACE
開催日:2023年9月16~17日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:株式会社菅生、SSC、株式会社GTアソシエイション
スーパーGTは残り3戦、いよいよタイトル争いも絞られる時期となった。第6戦の舞台は宮城県仙台近郊のスポーツランドSUGOで、ここはコース幅、ランオフエリアが狭く、また1周の長さが短いことが特徴だ。GT500クラスとGT300クラスの車両がレース中に接近する回数も多く、これまで多くのアクシデントが起きて”魔物が棲む”と比喩されることが多い。また、次のオートポリスでは半減となるサクセスウェイトも、このSUGOではフルウェイトのままであり、軽量な車両は好結果を残す大きなチャンスとなる。
予選
16日の公式予選は、直前に小雨が落ちて路面はうっすらと濡れた状態で、曇りの空模様。気温26度、路面温度29度というコンディションで始まった予選では、徐々にコースが乾いていく気候となった。
GT500クラスのポールポジション争いは終盤あたりから激しくなり、残り2分でポイントランキング6番手の17号車Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治組)の松下選手が1分9秒607のコースレコードでトップを奪うも、直後に同7番手の23号車MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)のクインタレッリ選手が1分9秒486で更新。だが、ウェイト22kgと軽量な8号車ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹組)の大湯選手が1分9秒413をマークして自身初のポールを獲得した。2番手は23号車Z、3番手は17号車NSX。
以下、39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一組)、38号車ZENT CERUMO GR Supra(立川祐路/石浦宏明組)、37号車Deloitte TOM'S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組)と3台のスープラが続く。
一方、GT300クラスでポールポジションを奪ったのは96号車K-tunes RC F GT3(新田守男/高木真一組)の53歳の高木選手で、これは前回の鈴鹿で山内英輝選手が記録更新した14回目に並ぶもの。2番手は20号車シェイドレーシング GR86 GT(平中克幸/清水英志郎組)の20歳の清水選手、3番手は61号車SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内組)の山内選手。
以下、ランキング6番手の52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)、同3番手の56号車リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/名取鉄平組)、ポイントリーダーの18号車UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻組)が続いた。
GT500クラス
17日の決勝日は曇天ながら湿度が高く、気温28度、路面温度33度で少々蒸し暑い天気となった。13時35分に84周のレースがスタートすると、まずはポールの8号車NSXの野尻選手が飛ばして後続を引き離しにかかる。5周目からは周回遅れも出始め、コースは大混乱ながら大きな接触はなくスリリングな展開が続いた。
8号車NSXは12周目には2番手の23号車Zに早くも12秒の大差をつけて独走状態とした。しかし23号車Zがその差をじわりと詰め、29周目には8.3秒差をつけて30周でピットイン。トップの8号車NSXは32周、3番手の17号車NSXは33周でピットインすると、17号車NSXのピット作業が速く、コースには8号車NSXの前で戻った。
38周目に入ったストレートで、ピットインしようとしていた56号車GT-Rと100号車STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)が接触し、100号車NSXがクラッシュして大破。すぐにセーフティカー(SC)が導入され、3分後には赤旗が掲示されてレースは中断となる。100号車NSXをドライブしていた山本選手は意識があったものの、大事を取りヘリコプターで病院へ緊急搬送となったが、当日の夜には骨折もなく無事退院となったのは幸いだった。
中断から53分後の15時20分にレースはSC先導で再開となったが、この時点でピット作業を済ませていた17号車NSX、8号車NSX、23号車Zの3台は隊列の後方におり、4番手以下の車両はほぼこれでトップ3台からは1周遅れに近い形となったことで、優勝争いはこのトップ3台に絞られることとなった。
44周でレースはリスタート。52周目の1コーナーで8号車NSXの大湯選手が17号車NSXをかわして2番手を奪うと、暫定トップにいた39号車スープラがピットイン。ここから8号車NSXの大湯選手、17号車NSXの塚越選手、23号車Zの松田選手による三つ巴の優勝争いが最後まで展開された。
77周目に入るストレートで塚越選手が大湯選手の右側から並ぶと、1コーナーを先にターンしてついにトップに浮上。78周目のストレートでは松田選手も大湯選手に並びかけるが、ここは大湯選手が2番手を守る。17号車NSXの塚越選手はトップに立ってからは2番手以下を引き離し、7.0秒差でトップチェッカー。2番手8号車NSX、3番手23号車Zの順でゴールした。
しかしレース後の最車検で、17号車NSXのスキッドブロック厚み規定違反ということで、前戦2番手チェッカーの23号車Z同様失格に。これで繰り上がって8号車NSXが今季初優勝で、2位23号車Z、3位39号車スープラとなった。
この結果、ドライバーランキングは9位の3号車 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組)が51点でポイントリーダーのまま、7位の36号車 au TOM'S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋組)が49点でポイントリーダーに肉薄。ランキング3番手に23号車Zが40点で迫ることとなった。



GT300クラス
GT300クラスは、フロントロースタートの96号車RC Fの新田選手と20号車GR86の清水選手がトップ争い、その後方では61号車BRZの井口選手と52号車スープラの川合選手が3番手争いを演じ、そこへ6号車DOBOT Audi R8 LMS(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン組)の片山選手と56号車GT-Rの名取選手が3番手争いに加わった。
20周目の2コーナーで20号車GR86の清水選手がトップを奪い、23周目からは2番手以下を引き離しにかかる。タイヤの摩耗が厳しかった52号車スープラが23周、96号車RC Fが25周でピットインすると、56号車GT-Rが2番手、6号車アウディが3番手へ。61号車BRZも28周でピットインすることになった。31周でトップの20号車GR86と3番手の6号車アウディがピットインすると、56号車GT-Rが暫定トップに躍り出る。
そして35周で56号車GT-Rがピットインしようとイン側に寄った際、GT500クラスの100号車NSXが接触してクラッシュ。これを見ていた2番手の18号車NSXは咄嗟にピットイン。すぐにSC導入となり、56号車GT-Rと18号車NSXはSC導入でコース上の車両が速度を落としているときにピット作業を済ませ、大きなマージンを稼ぐことになった。
SC導入の3分後、赤旗中断で全車ストレートに停車となったが、56号車GT-Rのオリベイラ選手は車両から降りた際に接触の箇所を確認しようと車両にタッチしてしまった。約1時間後にレースは再開となったが、56号車GT-Rには危険なドライブ行為、赤旗中の作業違反と2回のドライブスルーペナルティが科され、優勝争いから脱落。
この時点で実質上のトップは3番手を走行していた52号車スープラで、序盤のピット作業ではリアタイヤの交換だけで作業時間を短縮していた。これに続いていたのは5番手を走行していた18号車NSX。53周で暫定トップの車両がピットインをすると、52号車スープラの吉田選手がトップに躍り出て、その2秒後方に18号車NSXの小林選手、その真後ろに20号車GR86の平中選手となった。
その後、52号車スープラの吉田選手は2秒ほどのマージンを保って終盤を走り、トップで最後のストレートへ。しかしストレートを上っている最中にスローダウン。吉田選手は車両をゆすってガス欠症状を解消しようとしたが、コントロールラインを真っ先に駆け抜けたのは18号車NSXで、今季3勝目。52号車スープラは0.851秒差で2番手、20号車GR86が3番手となった。
しかしレース後の最車検で18号車NSXは最低地上高違反のために失格。繰り上がって52号車スープラが今季初優勝となった。2位は20号車GR86でチーム初の表彰台を獲得、3位は6号車アウディで第4戦・富士以来2度目の表彰台だった。
この結果、ドライバーランキングは52号車スープラが50点でトップに浮上。2番手は18号車NSXで40点、3番手は同ポイントで7号車Studie BMW M4の荒聖治選手、4番手はしぶとく10位で1ポイントを加算した56号車GT-Rとなった。



両クラスの優勝車両が最車検で失格となるのは、1993年に全日本GT選手権が発足して以来初のこと。前の大会でもGT500クラス暫定2位の車両が失格になっている。原因は規定ギリギリまで低く攻めすぎた車高、タイヤの内圧低下、スキッドブロックの縁石へのヒットなど、さまざまな要因が重なったと考えられるが、今後このような事態が起きないよう各チームの対策が重要となる。
次の第7戦は10月14~15日、オートポリスで450kmレースとして開催予定。サクセスウェイトは半減となり、各車の性能が接近する注目のレースとなりそうだ。
フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部