ともに悲願の初優勝! 野村勇斗選手が第9戦、卜部和久選手が第10戦を制す
2023年9月26日

FIA-F4地方選手権の第5大会、シリーズ第9戦と第10戦がスポーツランドSUGOで、9月16~17日に開催された。このところ全国的に猛暑が続いたが、9月も半ばに差し掛かったことで、ようやく秋の気配を漂わせるように。エントリーは44台で、これだけの台数がSUGOのグリッドに並ぶと、下位はもう坂道発進! そのためフォーメーションラップが終わると、リアタイヤの後ろに発泡スチロールがオフィシャルによって置かれるのが、このコースのフォーミュラカーレースならではの光景だ。
2023年FIA-F4選手権シリーズ 第9戦/第10戦
(2023 SUPER GT Round.6内)
開催日:2023年9月16~17日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:株式会社菅生、SSC、株式会社GTアソシエイション
予選
公式練習は木曜日と金曜日に行われ、その最後のセッションのみウェットコンディション。ドライコンディションが保たれたセッションすべてでトップタイムを記録した野村勇斗選手が予選でも好調で、B組のトップタイムを叩き出す。だが、惜しむらくはセカンドベストタイムでは4番手に留まっていたことだ。
「SUGOは初めて走るコースでしたが、走り始めからいい感じで、自分が得意とするコースのような気がしていました。なので、絶対に2戦ともポールポジション(PP)を獲りたいと思っていましたが、コンディションが難しく、終盤に引っかかってしまい、セカンドベストタイムを出せなかったのが悔しいです」
「今日のレースは絶対に勝ちたいと思います。明日もできるだけ追い上げる展開に持っていきたいです」と野村選手。コメントにある難しいコンディションとは、未明に降った雨で路面の一部が濡れたいわゆるダンプコンディションとなっていたことを指す。
B組はほぼドライタイヤで走れる状態になっていたが、先に走行したA組はまさに微妙な状態で、大半がウェットタイヤを選ぶも、果敢にドライタイヤで臨んだドライバーのひとりは、アウトラップのコースアウトで赤旗原因とされ、1周も走れずじまい。どうやらその判断は早すぎたようだ。
A組トップは、ベストタイム/セカンドベストタイムともに三井優介選手が獲得。前大会の連勝でランキングトップの小林利徠斗選手に6ポイント差にまで迫り、しかもその小林選手は同じ組の5番手に甘んじていたから、一気にトップ浮上のチャンスが訪れた。
一方、B組のセカンドベストタイムがトップとなり、初のPPを獲得したのが卜部和久選手。これまで6位が最上位のドライバーは「残り3周、一番美味しいときにひっかってしまっているので、明日のPPは素直にうれしいですけど、自分の実力を全部発揮できたわけではないので、ちょっと悔しいです」と、その心境はかなり複雑な様子。この気持ちが果たしてどちらに転がるか?

第9戦決勝
前述のとおり、野村選手と三井選手のチームメイト同士がフロントローに並び、その後ろにはスポット参戦の奥住慈英選手とルーキーの佐野雄城選手が続く。スタートは野村選手がしっかり決めて、誰にも逆転を許さず。三井選手も遅れず続いて、1周目を終えた時点で早くも一騎討ちの様相を呈するようになる。
だが2周目の4コーナーで接触があり、1台がコース脇にストップ。早くもセーフティカー(SC)が導入される。このSCの先導は3周に及び、6周目にバトルは再開。野村選手のSPコーナーからの加速に三井選手がぴたりと合わせ、またしても後続を引き離す。
3番手につけていたのは奥住選手ながら、リスタートの加速が鈍り、佐野選手に1コーナーでの逆転こそ許さなかったが、その後に並ばれて3コーナーの立ち上がりで前に出られてしまう。思うようにペースの上がらぬ奥住選手は、8周目の1コーナーで中村仁選手に抜かれた後、徐々に順位を落としてしまった。
その間にもトップ争いは熾烈を極めた。常に野村選手の背後につけて逆転の機会を待つも、「僕の方がたぶんコンマ1秒速いんですが、それだけの差だとダウンフォースが抜けてしまって、追い抜きができなくて……。後ろからプッシュし続けて、相手のミスを待つのが限度でした」と三井選手。
「プレッシャーはありました」と語るも、辛くも逃げ切りを果たしてうれしい初優勝を野村選手が飾る。「もちろん開幕戦から優勝目指していて、最初の1戦つまずいてしまいましたが、そこからはコンスタントに表彰台に乗ることができました」
「でもまだ優勝できていない状態だったので、今回勝てて本当に良かったです。ペースが変わらないのは分かっていたので、抜かれないように、ミスしないように気をつけていました。残り5戦あるので、これからもしっかり戦っていきたいと思います」と野村選手。
3位争いもチームメイト同士で壮絶に繰り広げられるも、やはり佐野選手が中村選手を抑え切って表彰台の一角に。5位は森山冬星選手が、そして小林選手が10番手から追い上げて6位を獲得した。
インディペンデントカップでは、藤原誠選手が予選トップから一度も先頭の座を譲らず。今田信宏選手の猛攻を振り切り、2勝目をマーク。「うれしいです! とにかく抜かれないように、ブロックはちょっとやりすぎたかなと思うぐらいしてしまったんですが、今田選手は『これがレースだ』って言ってくれたので、際どいながらいいレースができたと思います」と藤原選手。





第10戦決勝
第10戦は卜部選手と三井選手がフロントローに並んで、2列目には奥住選手と佐野選手が再びそろう。初のPPスタートにも関わらず、そつなく決めた卜部選手が1コーナーへのホールショットに成功。その後ろでは佐野選手が奥住選手とポジションを入れ替える。
第9戦の雪辱を果たしたい奥住選手ながら、「思いきり振ったセットが、思いきりダメな方向に行っちゃって、ペースが上がらなくなって」と、再び徐々に順位を落としてしまう。一方、連続表彰台を狙った佐野選手も、3周目の4コーナーで森山選手にかわされていた。
序盤のハイライトは卜部選手と三井選手によるトップ争いだ。第9戦以上に、トップに迫った三井選手だったが、8周目の1コーナーで痛恨のオーバーラン。「抜ききれない、仕掛けるまで追いつかないところがあったので、いろいろ試した中、ちょっとブレーキングポイントを遅らせましたが、そこでオーバー出してしまって」というのが、その理由だ。
これで卜部選手は一気に楽になり、逆に三井選手は森山選手に応戦一方となったため、そのまま悠々と逃げ切るかと思われたが、まさに好事魔多し。目の前にバックマーカーが現れたのだ。バックミラーを見ていなかったのか、余裕がなかったのか定かではないが、結果的に卜部選手の行く手を阻んでしまう。
これで三井選手と森山選手が急接近。ラスト3周のバトルが予想されたのだが……。なんと1コーナーでコースアウトした車両が。SCが入って、先導されたままチェッカーを受けることとなった。
「チェッカーが振られた後はさすがにうるっと来ました。苦労が実りました。前回の鈴鹿からマシンが良くなって、自分も新しい運転を見つけて、努力してやっと勝てて、本当にうれしいです。予選はちょっと濡れていて、みんな怖いと思うところでも踏んでいけたので、それでこのレースのPPが獲れたのが一番の勝因ですね」と卜部選手。
フォーミュラビートでは何度も勝っている卜部選手だが、「観客の中から『おめでとう!』って声をかけてくれる人が多くて、過去最高の勝ちになりました、本当にうれしいです」と素直な印象を述べてくれた。
2位は三井選手で、3位は森山選手。4位、5位で中村選手と佐野選手が続いた。なお、2戦連続の2位で三井選手はランキングのトップに浮上。小林選手がコースアウトでノーポイントに終わったため、野村選手が1ポイント差ながら前に出ることになった。残り2大会はどうやら三つ巴でのチャンピオン争いになりそうだ。
インディペンデントカップでは藤原選手が2連勝。ランキングでも2番手に浮上し、トップの仲尾恵史選手に13ポイント差にまで迫ることとなった。「でも、まだランキングは意識せず、次のオートポリスもガッツリ行きます。オートポリスも良ければ最終戦は意識してもいいと思うんですけど、まだ早いんで。とにかく今年は練習の年だと思って頑張ります」と藤原選手。





フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部