勝てばチャンピオン確定! 鈴鹿のジュニア部門最終戦を勝利したのは遠藤新太選手

レポート カート

2023年9月27日

ジュニアカート選手権コースシリーズが行われる鈴鹿選手権シリーズのジュニア部門の最終戦が、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット南コースで開催。遠藤新太選手(AAA motor sports)が2勝目を飾り、同時にチャンピオンを確定させた。

2023年JAF地方カート選手権 FS-125/X30部門 第4戦
2023年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門 第5戦
2023 鈴鹿選手権シリーズ 第6戦 KART RACE IN SUZUKA

開催日:2023年9月17日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:KSK、SMSC

ジュニアカート選手権 ジュニア部門(Junior MAX)

 今年スタートした鈴鹿選手権シリーズ内で行われるジュニアカート選手権 ジュニア部門。これは全日本に併催されるジュニアカート選手権とは異なり、ひとつまたは複数のサーキットでシリーズが構成される“コースシリーズ”のひとつで、鈴鹿南コースを舞台に行われる全5戦のシリーズだ。また、このレースは同コースのローカルレース“鈴鹿選手権シリーズ”のJunior MAXクラスも兼ねている。

 このジュニア部門が9月17日、最終戦を迎えた。ここまでの4戦では毎回ウィナーが替わっており、石部壮太郎選手(ERS with SACCESS)、クインテン・ルー選手(TEAM EMATY)、遠藤選手、澤田龍征選手(LUCE MOTOR SPORTS)がそれぞれ勝利。チャンピオン争いでも、この4名のみが戴冠の権利を持っている。

 ポイントレースは接戦で、4名のうち誰かが今回優勝すれは、その選手が自動的にチャンピオン確定となる状況だ。そして迎えた決勝日。もう9月も半ばだというのに、場内は真夏と変わらない厳しい暑さに満たされていた。とは言え、最終コーナー方面から1コーナーに向けて吹く風にはいくらか秋の気配が感じられる。

 7分間計測のタイムトライアルでは、石部選手がトップタイムをマーク。それに遠藤選手、クインテン選手と続いた。4番手は常川将太郎選手(チームぶるーと)。澤田選手は9番手とやや出遅れている。

 決勝のスターティンググリッドを決する予選ヒートは10周。参加22台全車がスタートを切ると、遠藤選手が好スタートを決めて1コーナーをトップで通過。クインテン選手もオープニングラップで2番手に上がる。一方、石部選手は序盤で5番手まで順位を下げた。

 遠藤選手の真後ろにはクインテン選手が貼りついていたが、折り返し点あたりからその間隔は開き、遠藤選手が真っ先にゴールして決勝のポールを獲得。クインテン選手がそれに続いて2番グリッドを獲得した。

 その後方では、澤田選手が3番手まで急浮上したのだが、後半調子を取り戻した石部選手が残り2周で逆転し、石部選手が3番手、澤田選手が4番手に。5番手は白石麗選手(HRS JAPAN)。それに続いてゴールした常川選手はフロントフェアリングのペナルティを受け、1週間前に全日本と併催のジュニアカート選手権ジュニアカデット部門でチャンピオンを確定させたばかりの元田心絆選手(AP SPEED with SOVLA)が11台抜きの6番手となった。

 決勝はこの大会でもっとも長い18周のレースだ。スタートでは澤田選手が石部選手の前に出て3番手へ。3周目、クインテン選手が遠藤選手をパスして先頭に立ったが、遠藤選手は翌周にトップを取り戻す。それに続いて澤田選手がクインテン選手をかわした。

 チャンピオン候補の4台は数車身の等間隔で先頭集団を構成して周回を続ける。そこに迫ってきたのが、9番グリッドからハイペースで追い上げてきた田邊琉揮選手(HRS JAPAN)だ。それとは逆にクインテン選手のペースが振るわず、中盤戦に差しかかるあたりから後続の逆転を次々と許してポジションを下げていった。

 8周目、石部選手が澤田選手を抜いて2番手に上がり、トップの遠藤選手に迫る。澤田選手はやがて田邊選手にも先行されて4番手に下がった。そしてレースが終盤戦に入ると、無心でトップを走り続けてきた遠藤選手に流れが傾き始め、0.3秒強だった石部選手との間隔がじわじわと開いていく。

 対して石部選手は田邊選手に真後ろまで迫られ、遠藤選手を追うどころではなくなった。残り2周は遠藤選手の独走状態だ。真っ先にチェッカーを受けると、遠藤選手は軽く右手を上げた。初代コースシリーズ鈴鹿ジュニア部門チャンピオン確定の瞬間だ。

 石部選手は田邊選手の追走を振り切って2位のままゴール。田邊選手は6ポジションアップで3位表彰台に。4位フィニッシュの澤田選手に続いて、Junior MAXデビュー戦の元田選手が5位でチェッカーをくぐり、ファステストラップも記録してみせた。ポイントリーダーとして最終戦に臨んだクインテン選手は6位でこのレースを終えた。

「僕はアウトラップが遅いので、それを速くしようとして必死でした」と語る遠藤新太選手(AAA motor sports)。「でも、後ろの石部選手やクインテン選手が速くて逃げ切れなくて……」と難しいレースだったとコメント。「前回の優勝は横並びになるような接戦だったけれど、今回はちょっと引き離して勝つことができたのでうれしいです」と優勝を喜んだ。
2位は石部壮太郎選手(ERS with SACCESS)、3位は田邊琉揮選手(HRS JAPAN)。
ジュニア部門表彰の各選手。
遠藤選手がジュニア部門のチャンピオンを確定させた。

地方カート選手権 FS-125/X30部門

 同時開催の地方カート選手権 FS-125/X30部門には18台が出走。これは全5戦シリーズの第4戦で、鈴鹿選手権シリーズのFS-125/X30クラス第4戦も兼ねている。

 ポールから16周の決勝に臨むのは、予選で4つポジションを上げた酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)。セカンドグリッドは鈴木恵武選手(MASUDA RACING PROJECT)。グリッドの2列目に並んだのは、タイムトライアル8番手から順位を上げてきた箕浦稜己選手(BirelART West)と武藤雅奈選手(TAKAGI PLANNING)だ。タイムトライアル首位の中井悠斗選手(TEAM EMATY)は予選を3番手でゴールしたのだが、スタート違反のペナルティで10番グリッドとなった。

 決勝は、スタートで2番手に上がった箕浦選手が2周目に酒井選手をパスしてトップに立ち、それを酒井選手、鈴木選手、武藤選手、松本琉輝斗選手(HRS JAPAN)が追う展開となった。

 レース終盤、箕浦選手と酒井選手が鈴木選手以下を引き離し、優勝争いはマッチレースに。酒井選手は0.3~0.4秒前を行く箕浦選手を懸命に追うが、その差は縮まらない。最終ラップ、酒井選手は1コーナーで必死のオーバーテイクを仕掛けたが、これは実らず、逆に箕浦選手とのギャップが開いた。

 こうしてレースは決着。15周に渡って先頭の座を守り抜いた箕浦選手が、右手を掲げて勝利のチェッカーをくぐった。開幕戦こそリタイアだった箕浦選手だが、これで第2戦から怒涛の3連勝だ。

 酒井選手は鈴木選手に接近されたものの2位の座を守ってフィニッシュ。鈴木選手は今季3度目の表彰台となる3位に。その後方では3台一丸の争いが繰り広げられ、松本選手が武藤選手と中井選手を振り切って4位に入賞した。

 全5戦中有効4戦で決まるチャンピオンシップでは、酒井選手が未勝利ながら79点で首位に。それに78点の中井選手、76点の鈴木選手、75点の箕浦選手、72点の松本選手が続いて、ポイントレースは大接戦だ。今回のウィナー箕浦選手はランキング4番手ながら、次回の最終戦でポイント上積みのベースとなる“持ち点”が満点の75点で、もっともチャンピオンに近い位置で最終戦に臨むこととなった。

箕浦稜己選手(BirelART West)が4勝目を飾る。「アウトラップで仕掛けてトップに立って、そのまま逃げ切ることができたので良かったです。後半は後ろが近づいてきたけれど、冷静にポジションを守ることができました」と言うものの、決勝のレース内容については90点と自己評価が辛口だ。「最終戦も優勝してチャンピオンを獲りたいです」と笑顔で語った。
2位は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)、3位は鈴木恵武選手(MASUDA RACING PROJECT)。
FS-125/X30部門表彰の各選手。

 この大会ではJAFの選手権が懸かった2レースの他に、鈴鹿選手権シリーズとして5クラスのレースが行われた。

SLカートミーティング YAMAHAカデットオープン

 24台が出走した最年少カテゴリーのYAMAHAカデットオープンでは、森谷永翔選手(ERS with SACCESS)と新橋武選手(Sigma Racing)が1周目からゴールまでマッチレースを展開。ラスト2周の攻防では新橋選手が森谷選手の前に出るひと幕もあったのだが、森谷選手はトップを守り抜いて今季無敗の4連勝を遂げた。

 一方、逆転優勝こそ果たせなかった新橋選手だが、自己最上位の2位でフィニッシュ。島津舞央選手(ERS with SACCESS)と藤原迪永選手(SD-STYLE with SUPER CREWS)の3位争いは、0.03秒差の決着で藤原選手が3位表彰台をゲットした。

最後にバトルになったときの心境を尋ねると「一瞬ヤバいな」と思った森谷永翔選手(ERS with SACCESS)ながら、焦らず冷静に頑張ったようだ。「勝てたときはめちゃめちゃうれしかったです」と喜びを爆発させた。
2位は新橋武選手(Sigma Racing)、3位は藤原迪永選手(SD-STYLE with SUPER CREWS)。
YAMAHAカデットオープン表彰の各選手。

SLカートミーティング YAMAHA SS

 大量39台が参加したYAMAHA SSの決勝では、5台がもつれ合う熱いトップ争いが繰り広げられた。この戦いを制したのは寺島知毅選手(ERS with SACCESS)。7番グリッドからトップに躍り出た村松伸一選手(ハラダカートクラブ)に対し、最終ラップの最終コーナー進入でブロックラインを取ったところにクロスをかけ、0.069秒差の逆転で歓喜の初勝利をつかみ取った。村松選手は2位ゴールで3連勝ならず。藤村太郎選手(ハラダカートクラブ)が3位に入賞。ウィナーから6位までが1秒のうちにゴールへなだれ込む大接戦だった。

最後の最後でクロスラインを取って抜け出した寺島知毅選手(ERS with SACCESS)が、悲願の初優勝を遂げる。「今まで勝てなくて2位ばかりだったので……、初優勝できてめっちゃうれしいです」と率直な感想を述べた。
2位は村松伸一選手(ハラダカートクラブ)、3位は藤村太郎選手(ハラダカートクラブ)。
YAMAHA SS表彰の各選手。

SLカートミーティング YAMAHAスーパーSS

 こちらも39台が出走、5台が予選不通過となったYAMAHAスーパーSS。ポールからトップを行く佐々木克行選手(がががが”が”むしゃら ひすとりー)と、4番グリッドから2番手に上がった坂裕之選手(のりものレンタカー沖縄那覇TIGRE)のマッチレースは、坂選手が最終ラップの最終コーナーで逆転に成功して決着。

 終盤のトップ争いに乗じて先頭集団に加わっていた植田春樹選手(Msistem)が、坂選手に続いて佐々木選手を鼻の差でかわして2位を獲得した。坂選手から3位の佐々木選手までは0.2秒弱しか差のない好バトルだった。

「佐々木選手を後ろから見ていて、自分より速いところと遅いところがあったので……」と勝負のポイントをしっかり見極めて攻めた坂裕之選手(のりものレンタカー沖縄那覇TIGRE)が優勝。速さに自信のあった最終コーナーで逆転となった。
2位は植田春樹選手(Msistem)、3位は佐々木克行選手(がががが”が”むしゃら ひすとりー)。
YAMAHAスーパーSS表彰の各選手。

AVANTI

 AVANTIは125cc空冷リードバルブ吸気エンジンのワンメイクレース。16台による決勝は、最年少18歳の奥村泰生選手(ハラダカートクラブ)が背後のバトルを利して独走状態をつくり上げ、ポール・トゥ・ウィンで2連勝を飾った。2ポジションアップの2位は44歳の井上繁和選手(KC NAGAHARA)。3位には6番グリッドから発進の奥村真選手(RSスギムラ)が入った。

ポール・トゥ・ウィンを遂げた奥村泰生選手(ハラダカートクラブ)は「自分のプランどおりに勝てたレースでした」とコメント。「予選の様子を見てもペースは自分がいちばん速いと思っていましたから」と勝利に自信があったようだ。
2位は井上繁和選手(KC NAGAHARA)、3位は奥村真選手(RSスギムラ)。
AVANTI表彰の各選手。

Senior MAX

 25台が出走したSenior MAXでは、ポールから決勝に臨んだ田崎脩馬選手(AAA motorsports with FORZA)が1周目から後続を引き離して独走優勝。植田晴斗選手(KP BUZZ)が2番グリッドからの単独走行で2位に。それに続いてゴールした木村真宙選手は車検で失格となり、冨田蓮選手(Team EMATY)が7番グリッドから3位入賞を果たした。

「これまでなかなか勝てなくて悩んでいたけれど、今回は前に出られてペースも良かったので、勝てて良かったです」とは、田崎脩馬選手(AAA motorsports with FORZA)。メカニックとのマシンづくりも、うまくいったことが勝因とのことだ。
2位は植田晴斗選手(KP BUZZ)、3位は冨田蓮選手(Team EMATY)。
Senior MAX表彰の各選手。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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