四国ジムカーナ激戦区のR4クラスは山下和実選手の優勝でタイトル確定へ

レポート ジムカーナ

2023年10月3日

「地区戦が全日本へのステップであって欲しい」と願う主催者が、全日本ジムカーナ選手権と同一のレイアウトを再現して開催された四国ジムカーナ選手権 第7戦。舞台となるハイランドパークみかわでは各クラス激戦が繰り広げられ、中でもR4クラスは開幕戦優勝の山下和実選手が3年連続となるチャンピオンを確定させた。

2023年JAF四国ジムカーナ選手権 第7戦
2023年JMRC全国オールスター選抜ジムカーナ 第7戦
エトワール スーパースラローム2023 IN みかわ

開催日:2023年9月24日
開催地:ハイランドパークみかわ ジムカーナコース(愛媛県久万高原町)
主催:ETOILE

 四国ジムカーナ選手権の最終戦は全6クラスのうちPNクラス、R2クラス、BSC1クラスと、すでにチャンピオンが確定しているクラスもあるが、残り3クラスは最終戦までタイトル争いがもつれ込んでいる。そんな最終戦にエントリーしたのは40台。多くのエントラントが今年のシリーズ走り納めを迎えた。

 この最終戦を主催するのは、愛媛県で最も歴史あるチーム.エトワール。全日本ジムカーナ選手権を主催するなど、四国地区を代表する名門クラブのひとつだ。会場はその全日本選手権が開催された久万高原町のハイランドパークみかわとなった。

「ここは僕が所属するRSK(レーシングサービス・コシミズ)でもテストで使っているコースです。いろんな要素が詰まっているので、仕様変更したときは必ずここでテストをします。路面は粗いんですが、しっかりグリップしますし、バンクもあって斜面を使ったサイドターンなどもできるコースです」とは、今年の全日本ジムカーナ選手権PN1クラスでタイトル確定の朝山崇選手。

 今大会のコースを設定したのはその朝山氏で、「最近、地区戦に出場する選手が全日本にステップアップすることが少なくなってきているので、今回は思い切って全日本で使ったコースをそのまま再現しました。もちろんパイロン配置も同一です」と明かした。

「全日本に出場した選手が有利では? という意見もありましたが、全日本と同じコースを競技として走って、自分がどれくらいのタイムが出せるのかを知って欲しかったんです。それで、現時点で自分がいる位置を知ってもらい、向上心を持ってもらえれば幸いです」と朝山氏。

 9月24日、気温は30度を超えることなく過ごしやすい気候となり、秋の陽気に包まれて開催された四国ジムカーナ選手権。真夏の灼熱よりは圧倒的にタイムが出やすいコンディションの中、最終戦までもつれ込んだタイトル争いはどうなるのかにも注目が集まった。

愛媛県久万高原町にあるハイランドパークみかわは、県内を代表するスキー場の駐車場を活用した公認コース。
「最終戦だからこそいつもとは違うことをしよう、ということになりました」と新たな試みに挑戦する、コース製作に携わった朝山崇氏。
エトワール スーパースラローム2023 IN みかわのコース図。2023年の全日本ジムカーナ選手権 第6戦と同一レイアウトでの開催となった。
今大会は他地区からのエントリーもあり、2023シーズン最終戦を締めくくるに相応しい盛り上がりを見せた。

R1クラス

 軽自動車やコンパクトカーで争われるR1クラス。これまで不成立の大会があり、ランキングトップの乃一智久選手から4番手の選手までチャンピオンの可能性があるクラスでもある。しかし、ランキング3番手の小森敦文選手が大会当日の朝に不慮の事故で欠場を余儀なくされるなどエントリーは4台にとどまり、タイトル争いは乃一選手と福田和秀選手の一騎打ちとなった。

 第1ヒートでトップタイムをマークしたのは乃一選手。外周で大回りをしてしまったにも関わらずトップタイムだ。そして勝負の第2ヒート、ライバルの福田選手がまさかのミスコース。労せず乃一選手が第1ヒートのトップタイムで逃げ切り優勝を決定する。しかし、自らのタイムに満足していなかった乃一選手は走りを修正し、第1ヒートのタイムを1秒近く押し上げる走りでターゲットタイムを塗り替えて優勝を手にした。

「福田選手がミスコースしていなければもっとタイムが出ていたと思うので、今回勝てたのはラッキーだと思います。2本目については、外周をしっかり2速に落として小さく走ったのが良かったのかもしれません」と乃一選手は走行後、自らの走りを分析した。

優勝は乃一智久選手(SPDビートBSコニひまわりM)。
R1クラスの表彰式。左から1位の乃一選手、2位の福田和秀選手、3位の日浦裕士選手。
タイトルを確定させた乃一選手は「足回りをオーリンズからコニに替えて大きく仕様変更したんですが、いつもお世話になっているひまわりモータースさんに手伝ってもらって徐々に仕上がってきました。今年は転勤などもありスポットでしか参戦できませんでした。来年も同じような参戦になると思いますが頑張ります」と1年を振り返った。

R2クラス

 R2クラスは1500㏄以上の前輪駆動車で争われる。JMRC四国が定める制限に合致したタイヤでの参戦が求められるこのクラスは、前戦たぢかわラウンドで土居清明選手が満点チャンピオン確定。そんな土居選手は最終戦を欠場した。今季、土居選手を除いて優勝を果たしたのはランキング3番手の菊地慎一郎選手のみ。一方で、是が非でも勝利を手にしたいのはランキング2番手につけるジュウガワ貴行選手。

 そんなジュウガワ選手が第1ヒートから先手を取る。しかし、第2ヒートに現れたのは奈良県からの刺客・ファインアート所属の道下貴広選手だった。中部、近畿、四国を転戦する道下選手は、第1ヒートのジュウガワ選手のタイムを大きく上回ってトップタイムを奪取する。そのタイムを聞いたプレッシャーからか、ジュウガワ選手はタイムメイクに苦しみ2位に陥落。

「1本目、ミスコースしかけてしまい、昼休みの間はずっとコースを反復しました。2本目は1本目に失敗したターンセクションが良くなった感じですね。僕はシバタイヤなんで、タイヤ代が安く済むぶん、参戦費に回して近くの地区戦にお邪魔しているんです。来年も同じように各地区を転戦して楽しみたいと思います」と、道下選手が今季最後の勝者の座を勝ち獲った。

優勝は道下貴広選手(ファインアートスイフトS+)。
R2クラスの表彰式。左から1位の道下選手、2位のジュウガワ貴行選手、3位の西村誠選手。

R3クラス

 ランキングトップのS2000を駆る仙波秀剛選手が3勝、ランキング2番手につけるエキシージの山﨑聡一選手が2勝で最終戦を迎えたR3クラス。特性の異なるマシンながら、ハイランドパークみかわのコース設定も手伝って、どちらにも勝利のチャンスがある。なお、山﨑選手が逆転チャンピオンを手にするには優勝が絶対条件。その上で仙波選手の順位を待つしかない状況だ。

 そんなR3クラスの第1ヒート、NSXの高芝大輔選手がマークしていたターゲットタイムを山﨑選手が更新する。仙波選手の走りに注目が集まったが、オーバースピードでパイロンを通過できず、まさかのミスコース。たぢかわとのグリップ差に悩まされたという。

 勝負の第2ヒート、仙波選手にさらにプレッシャーをかけるのは山﨑選手。第1ヒートのタイムをさらに詰めてくる。そのプレッシャーのせいか、仙波選手にいつもの勢いはない。小さい走りで上手くまとめてくるが、100分の6秒届かず2番手。この結果、勝者は山﨑選手ながら、2位に入った仙波選手にシリーズタイトルが確定した。

 山﨑選手は「ターンが苦手なもんで、リアのディスクとパッドを新品に交換してきました。アタリを出すのに通勤に使って大会に間に合わせました(笑)。しばらく走ってなかった中で、今シーズン一番の走りができたと思います」と満足な表情を見せた。

優勝は山﨑聡一選手(SPEC-DLオメガEXIGE)。
R3クラスの表彰式。左から1位の山﨑選手、2位の仙波秀剛選手、3位の高芝大輔選手。
「なんとかギリギリチャンピオンになりました」と喜びのコメントを発した仙波選手。「前回のたぢかわで勝てたのがチャンピオンを獲るためのターニングポイントでした。来年もこのクラスで頑張りたいですね。皆さん、どんどん速くなっているので負けないようにしないといけんですね」とチャレンジ精神が旺盛だ。

R4クラス

 四国地区でもっとも大激戦となっているのはR4クラス。ここまで7戦を争ってきて、全ての大会でポイントを獲得している山下和実選手が2勝を挙げてランキングトップ。一方、すでに2戦を欠場しながらも3勝を挙げ、有効ポイントでは山下選手に肉薄している佐藤忍選手。最終戦はこの2人の一騎打ちとなった。

 まず、ターゲットタイムをマークしたのは佐藤選手だった。元々は全日本ドライバーの天満清選手が使っていた車両を駆る佐藤選手は、テクニカルセクションで圧倒的なトラクションを発揮する。第1ヒートから1分16秒台を記録してトップタイムで折り返す。第2ヒートに入っても佐藤選手の走りは冴え渡っていたが、第1ヒートで失敗してしまった終盤のターンセクションでのミスを意識したのか、最後の最後でタイムを失ってしまう。

 ここで勝機を見出したのは山下選手だった。だが、山下選手はスタートでまさかのストールで失速。この失敗でプレッシャーから解放されたのか、生き生きとした走りを披露する。外周では小さく、インフィールドではダイナミックな進入と絶妙なブレーキング。最終セクションもきっちりとマシンを回しこみ、見事ターゲットタイムを更新。

 コンマ2秒差で山下選手が優勝するが、この勝利で山下選手は優勝3回、2位2回。一方、佐藤選手も優勝3回、2位2回と全くの同一ポイントで並ぶ。JMRC四国が定める『同一ポイントの場合、高得点を得た時期が早い順に順位を認定する』という規定により、開幕戦を制した山下選手がシリーズタイトルを確定させた。

優勝は山下和実選手(BS・SMCランサーエボ6)。
R4クラスの表彰式。左から1位の山下選手、2位の佐藤忍選手、3位の徳永秀典選手。
チャンピオン確定となった山下選手は「今年はいろいろ上手くいかないことが多かったシーズンでした」と振り返る。「そろそろ純正触媒も手に入らなくなってきたので、これをきっかけにA車両からB車両に移行しようと思っています。来年もこのクルマで走ります」と2024シーズンに向けて意気込みを語った。

PNクラス

 満点チャンピオンを確定した、JMRC四国ジムカーナ専門部会の部会長を務める徳永秀典選手は、R4クラスにスポット参戦したため、PNクラスはチャンピオン不在の最終戦となった。だが、このクラスには中国地区から西村優輝選手と下山昴晃選手がエントリーしたことで、いつもとは違う新たな風が吹き込んだ。

 典型的なパイロンコースが少ない中国地区から遠征してきた2人にとって非常に厳しい大会になると思われたが、西村優輝選手がいきなりターゲットタイムをマークする。しかし、これに待ったをかけたのは地元TEC所属の金森峰史選手だった。とくにターンセクションで明らかな差をつけ、ぶっちぎりのトップタイムをマークして見せた。

 一方、中国地区でも勝利を挙げている西村選手だったが、普段サーキットジムカーナが中心であることでセットアップが追いつかない様子。低μでのターンセクションが連発するこのコースには合わせきれなかったようだ。自身のタイムを1秒以上あげてくるものの、金森選手のタイムには届かず2番手のまま。金森選手は第1ヒートのタイムで逃げ切って今季2勝目を手にした。

「今回は中国地区の若手2人に来てもらって良い大会になったと思っています。中国地区の小林選手に『アクセルもみすぎじゃ』とアドバイスをもらったので、それを意識して走ったのが良かったかもしれませんね」と自分の走りを振り返る金森選手。全日本選手権よりもタイムが出せたことに満足の様子だ。

優勝は金森峰史選手(MOTIVE ROADSTER)。
PNクラスの表彰式。左から1位の金森選手、2位の西村優輝選手、3位の鎗内良壮選手、4位の西村修一選手、5位の下山昴晃選手。
最終戦はR4クラスにスポット参戦した、PNクラスでタイトル確定の徳永秀典選手。「今年は正直なところタイヤで不利なところもありました。雨が降ってたら全滅かと思っていましたが、なんとかチャンピオンを獲れました。路面温度が20度台のときに負けてしまいましたしね。来年も皆さんの邪魔をしないように遊びたいと思います」

BSC1クラス

 ここまで6戦すべてを勝利で飾っている窪田竜三選手が、最終戦でも勝利して全7戦のシリーズで全勝を決めるかに注目が集まったこのクラス。やはり窪田選手が第1ヒートから圧巻の走り。自身が全日本で出したタイムをも上回る、この日のオーバーオールタイムで大会を締めくくった。

 優勝した窪田選手は「全日本のときに体調を崩してしまい、マシンのセッティングを上手く出せなかったのが、前回のたぢかわでいろいろイジって思う動きに近づけたのもあって良いタイムが出せました。全日本でもこのタイムが出せていたらそこそこいけたんじゃないかと思っています」と苦笑いした。

優勝は窪田竜三選手(ダンロップ☆RSK☆インテグラ)。
BSC1クラスの表彰式。左から1位の窪田選手、2位の下川和大選手、3位の竹下俊博選手。
「今年はライバルの田中(康一)選手がいない中、クルマの動きを意識して走ったシーズンでした」と語る、シリーズチャンピオンを確定させた窪田選手。「リアがスーッと出るような動きに段々近づけてきたのが良かったですね。来年も頑張りたいと思います」と2024年に向けた意欲を見せた。

 大会を終え、主催クラブの代表を務める松本英夫氏は「最終戦にも関わらず多くの選手に参加してもらえて喜んでいます。他地区からも参戦してくれる選手もいて、良い大会になったのではないかと思います」と最終戦を総評。

 また、「全日本ジムカーナ選手権のときとは違い、地区戦ということでオフィシャルの数が少なく、同じコースでの開催に不安を持っていましたが、クラブの皆さんがしっかりと動いてくれたおかげで、何事もなく大会を終えることができました。来年も頑張りたいと思います」と大会をまとめた。

歴史あるチーム・エトワールの代表を務める松本英夫氏は「これからもクラブを末永く伝えていきたいです」と語る。
本大会を支えてくれたアナウンサー八塚勝博氏とチーム・エトワールの皆さん。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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