マニュファクチャラー部門三連覇達成のTGR-WRTに勝田貴元選手は総合5位で貢献!
2023年10月5日

2023年FIA世界ラリー選手権(WRC)の第11戦「ラリー・チリ・ビオビオ」が9月28日~10月1日、南米のチリを舞台に開催。2019シーズン以来、WRCとして復活したこのラリーにTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム一期生の日本人ドライバー、勝田貴元選手もコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とともに参戦、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のマニュファクチャラー登録ドライバーとして、3台目のGR YARIS Rally1 HYBRIDでチャレンジした。
2023年FIA世界ラリー選手権 第11戦「ラリー・チリ・ビオビオ」
開催日:2023年9月28日~10月1日
開催地:チリ・コンセプシオン周辺
9月28日・シェイクダウン / 9月29日・デイ1
ラリー・チリは2019シーズンにWRC初昇格を果たしたグラベルラリーで、フィンランドやニュージーランドのように流れるようなコーナーが続く森林地帯にステージを設定。中高速レイアウトを主体としたながらも非常にツイスティなセクションも併せもつほか、グラベルの下に硬い岩盤をベースにもつなど、特殊な路面のラリーだ。
2019シーズンのこのラリーにフォード・フィエスタR5でWRC2クラス(現ラリー2)に参戦し、クラス優勝した経験を持つ勝田貴元選手は、「WRC2で優勝したこともあって、非常に思い入れがあるラリーですし、ファンが暖かいことも印象に残っています」と好印象。28日に開催されたシェイクダウンでも「金曜日のステージとまったくキャラクターが異なるのでタイムを詰めていくよりは、タイヤを温存しながら走っていましたがフィーリングは悪くありませんでした」と語るように、5番手タイムをマークした。
しかし、いざラリーが始まると勝田貴元選手は苦戦の展開を強いられた。「2019年とはタイヤのマニュファクチャラーが違いますし、季節も変わっていたのでデータが残っていませんでした。レッキが終わった段階ではフィンランドとウェールズ(ラリーGB)の中間ぐらいといった印象を持っていたんですけど、思った以上にグリップ感がなくて、クルマのバランスが合いませんでした」と語るように9月29日のデイ1では、SS1、SS2ともに7番手タイムに低迷。なんとかSS3で5番手タイムをマークするものの、苦しい立ち上がりを強いられた。
SS3までをふまえて「午後に合わせてデフのセッティングを大きく変えました。フロントを強めに変更したところ、フィーリングが良くなりました」と勝田貴元選手はセッティング変更で挽回を図った。事実、SS4で4番手タイム、SS6で5番手タイムをマークするなどセカンドループで復調。だが、「午前中のタイムロスで、始まり方として良くなかったと思います」とのことで、勝田貴元選手はデイ1を総合6番手で終えた。

9月30日・デイ2
30日のデイ2はSS7/SS10が27.19km、SS8/SS11が21.09km、SS9/SS12が28.72kmといったようにロングステージで構成されたことから、「タイヤマネジメントが重要になる1日だったんですけど、Rally1の最初の出走だったので、ラインを作りながら走らなければいけませんでした」という走りとなった勝田貴元選手。
さらに「路面がアグレッシブで攻撃的なSSだったんですけどね。気温が5℃~6℃と低いこともありましたし、ルーズグラベルが多いセクションのなか、スターティングポジションが前の方だったので、ソフトタイヤを使ってプッシュしていかないと勝負にならないということから、トヨタ勢はソフトタイヤをチョイスしていたんですけど、それが大きなミスでした。予想以上にタイヤの摩耗が激しくて、この日の最初のステージを終えた段階でタイヤが残っていない状況でした」とのことで苦戦を強いられた。
それでも、勝田貴元選手はこの日のオープニングステージとなるSS7を6番手タイム、SS8を5番手タイムにつけたのだが、SS9で「タイヤが剥離してパンクして、約2分タイムロスをしました」と語ったように、21番手タイムに沈んだのである。
セカンドループではハードタイヤを装着したものの、「ヨーロッパにはない攻撃性の高い路面で、硬い地盤に砂利が乗っているような状態。ファーストループは滑りやすかったんですけど、砂利が履けてしまえば、硬いベースの路面が出てタイヤに影響を与えていたので、ハードタイヤでありながらもタイヤマネジメントをしながら走りました」と勝田貴元選手は振り返った。
さらに「マニュファクチャラータイトルがかかっていたし、パンクをしてリタイアしたら3台目としての役割を果たせないので、最後まで走ることに徹していました」とのことで、勝田貴元選手はクレバーな走りを披露、デイ2では総合6番手をキープした。

10月1日・デイ3
そして10月1日のデイ3では、「日曜日はパワーステージでポイントを獲得することに集中していましたが、スターディングポジションが3番目ということもあったし、ルーズグラベルで砂利が多く乗っていたので、うまく合わせることができませんでした」と振り返ったように、勝田貴元選手はSS13で6番手タイム、SS14で7番手タイムに伸び悩むなどファーストループで苦戦した。
さらに「パワーステージでプッシュしても厳しそうな状況でもあったし、他チームのアクシデントでマニュファクチャラータイトルが近づいてきていた状況だったので、チームと話をしたうえでクルマを最後まで運ぶようなイメージで走りました」と語った勝田貴元選手は、SS15で3番手タイムをマークして総合5番手に浮上すると最終SSのパワーステージ、SS16で5番手タイムをマーク。その結果、総合3位で表彰台に上がったエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組、総合4位に入ったカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組たちチームメイトに続いて勝田貴元選手は総合5位に入賞し、パワーステージでも1ポイントを獲得した。
そして、3クルーともにポイントを獲得したTGR-WRTは、マニュファクチャラー部門で三連覇を確定させた。チャンピオン獲得に貢献した勝田貴元選手は、「(セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組とのシェアによる)ハーフシーズンではありますが、マニュファクチャラーのドライバーとして初めてのシーズンで、タイトルを獲得することができたので、嬉しいし、ほっとしました。エンジニア、メカニック、デザイナーを含めてファクトリーにいる全てのスタッフのおかげで得られた結果なので感謝したい」と心境を語った。その一方でラリー・チリについては、「個人的に課題の残るラリーでした。タイヤ選択のミスを含めてチーム全体で見直していきたいと思います」と振り返った。
次戦の「セントラル・ヨーロッパ・ラリー」について勝田貴元選手は、「4月のクロアチア・ラリー以来となるターマックイベントですし、初開催のラリーでステージのキャラクターも異なるようです。エンジニアからはインカットが多いうえに、狭くてハイスピードと聞いているので大きなチャレンジになると思いますが、ラリー・ジャパンに向けて万全の準備をしたいので、ターマックでの改善点にフォーカスして走りたいと思います」と語った。10月26~29日にドイツ、オーストリア、チェコの3カ国で開催される第12戦「セントラル・ヨーロッパ・ラリー」でも勝田貴元選手の動向に注目したい。
なお、ラリー・チリの勝者は、2019シーズンもこのラリーを制したM-SPORT FORD WORLD RALLY TEAM(M-SPORT)でフォード・プーマRally1 HYBRIDを駆るオイット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組。苦戦が続くM-SPORT勢の中で、貴重なシーズン2勝目を獲得した。


フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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