全日本ジムカーナ選手権は全9戦の激戦を経て、すべてのクラスでタイトルが確定

レポート ジムカーナ

2023年10月11日

2023年の全日本ジムカーナ選手権の最終戦となる第9戦「NRC鈴鹿BIGジムカーナ」が、9月30日〜10月1日にかけて三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット南コースで開催された。

2023年JAF全日本ジムカーナ選手権 第9戦「NRC鈴鹿BIGジムカーナ」
開催日:2023年9月30日~10月1日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:NRC

 今シーズンは全9クラス中、PE2クラスの選手権シリーズが成立しなかったため、8クラスによって戦われてきたが、すでにPE1クラスの山野哲也選手(アルピーヌ・A110S)、PN3クラスのユウ選手(マツダ・ロードスター)、PN4クラスの茅野成樹選手(トヨタ・GRヤリス)がタイトルを確定させている。この最終戦では、PN1、PN2、SC1、SC2、SC3の5クラスでシリーズチャンピオンが確定することとなる。

 164台という、全日本ジムカーナ選手権としてはもちろん、JAF公認競技の中でもここ数年例を見ないエントリーを集めた最終戦。鈴鹿サーキット南コースに設定されたコースレイアウトは、南コースの外周区間をショートカットでつなぎ、前半セクションに180度ターン、後半セクションにダブル180度ターンとシケインを経てゴールとなる。外周区間で走行ラインを規制するパイロンはダブル180度ターンのセクションに進入するイン側の1カ所しかなく、シリーズのなかでも屈指のハイスピード設定となった。

 公開練習が行われた9月30日は残暑厳しく、最高気温が30度に迫るドライコンディションだったが、決勝が行われた10月1日は早朝から今にも雨が降り出しそうな曇天模様。決勝第1ヒートがスタートするとともに小雨が降り出し、あっという間にウェットコンディションに。

 それでもBC3クラスが走行するころにはドライコンディションとなったが、第2ヒートが始まるとふたたび小雨が降り出し、ウェットコンディションに。降ったりやんだりという気まぐれな小雨の影響で、刻々と変わる路面コンディションにどう対応していくかが、勝敗を分ける大きな鍵となった。

最終戦の舞台は鈴鹿サーキット南コース。ハイスピードなコース設定となったが、要所にはパイロンも配され、気が抜けないレイアウトにもなった。

BC3クラス

 トヨタ・GRヤリスの津川信次選手と菱井将文選手、スバル・インプレッサの大橋渡選手による三つ巴のチャンピオン争いとなったBC3クラスは、第1ヒートで津川選手が2番手の一色健太郎選手(トヨタ・GRヤリス)を0.84秒引き離すベストタイムをマーク。菱井選手は津川選手と1.038秒差の3番手、大橋選手はさらに0.376秒遅れた4番手につける。

 ドライ路面になりつつある第1ヒートに対して、ハーフウェット路面のうえに時折弱い雨が路面を濡らした第2ヒートは、クラス前半ゼッケンの選手がタイムアップを果たせないという状況だ。その中、第1ヒート3番手の菱井選手は、津川選手の第1ヒートでマークしたベストタイムを抜き、ここでついにトップに立った。

 一方の津川選手も第2ヒートを激走。「前半で少しタイムを落としたけれど、後半で巻き返したと思う」という走りは、菱井選手にわずか0.004秒届かず2位。菱井選手が逆転優勝を飾るとともに、シリーズでも逆転チャンピオンを確定させた。

BC3クラス優勝は菱井将文選手(BS・クスコヤリス)。
「もう守るものもないから、最善を尽くそう」とフルアタックを敢行した菱井選手が勝利を手繰り寄せた。タイトル争いのライバルとなった津川信次選手が祝福の握手。
2位は津川選手(DL☆BRIDE☆URGヤリス)、3位は一色健太郎選手(ATSitzzDLRSKヤリス)。
BC3クラスの表彰式。左から4位の大橋渡選手、2位の津川選手、1位の菱井選手、3位の一色選手、5位の飯坂忠司選手、6位の堀隆成選手。
菱井選手がBC3クラスのチャンピオンを確定させた。

BC2クラス

 若林拳人選手(ロータス・エキシージS)が4勝、広瀬献選手(ホンダ・S2000)が3勝で迎えたBC2クラス。優勝以外、逆転チャンピオンの道がない広瀬選手だが、第1ヒートで若林選手に0.652秒差をつけてトップに立つ。一方の若林選手も第2ヒートで奮闘。広瀬選手が第1ヒートでマークしたベストタイムに迫る勢いでフルアタックをかけるものの、わずか0.225秒届かず。

 第1ヒートのタイムで逃げ切った広瀬選手が、若林選手と並ぶ4勝目を獲得する。有効得点は両者同点となったものの、有効得点中の2位に入賞した回数の差で、広瀬選手が3年連続チャンピオンを確定させた。2位に若林選手、3位には野本栄次選手(マツダ・RX-7)が、第3戦名阪以来となる表彰台を獲得した。

BC2クラス優勝は広瀬献選手(WMマロヤAR林歯科S二千YH)。
有効得点が同点のまま迎えた鈴鹿最終戦で、わずかなミスが致命傷となるプレッシャーのかかる中、広瀬選手が第1ヒートでキメた。天を仰いで渾身のガッツポーズを見せる。
2位は若林拳人選手(YH若自速心コ犬ZRエキシージ)、3位は野本栄次選手(BSエナペタルジアロRX-7)。
BC2クラスの表彰式。左から4位の藤井雅裕選手、2位の若林選手、1位の広瀬選手、3位の野本選手、5位の梅村伸一郎選手、6位の渡辺公選手。
広瀬選手がBC2クラスのチャンピオンを確定させた。

BC1クラス

 チャンピオン候補が野原博司選手(ホンダ・CR-X)、西井将宏選手(ホンダ・インテグラ)、山越義昌選手(ホンダ・シビック)の3台に絞られたBC1クラス。ハーフウェット路面で行われた第1ヒートは、今シーズンから本格的に全日本へのシリーズ参戦を開始した牧田祐輔選手(スズキ・スイフトスポーツ)がトップに立つ中、クラス最終ゼッケンの野原選手がクラス唯一となる1分17秒台のタイムをたたき出し逆転。

 ウェット路面となった第2ヒートは各選手とも軒並みタイムダウンに終わり、第1ヒートのタイムで逃げ切った野原選手が、今季2勝目とともに自身初となる全日本チャンピオンを確定させた。2位に牧田選手が入賞し、初表彰台を獲得。3位には今季3回目の表彰台獲得となった神里義嗣選手(ホンダ・シビック)が入賞した。

BC1クラス優勝は野原博司選手(YH丸久Moty's渦CR-X)。
三つ巴の戦いを制した野原選手は、クラス唯一の1分17秒台をマークして堂々の優勝を飾った。力強く握りしめた拳が、今シーズンの過酷な争いぶりを物語っている。
2位は牧田祐輔選手(協和整美YHマキタ速心スイフト)、3位は神里義嗣選手(DLMotys渦RACシビック)。
BC1クラスの表彰式。左から4位の山越義昌選手、2位の牧田選手、1位の野原選手、3位の神里選手、5位の澤平直樹選手、6位の最上佳樹選手。
野原選手がBC1クラスのチャンピオンを確定させた。

PN2クラス

 川北忠選手(マツダ・ロードスター)と小野圭一選手(マツダ・ロードスター)がチャンピオン争いの権利を持つPN2クラス。ベテランと若手の戦いは、第1ヒートで若手の小野選手がベストタイムを刻んでくるものの、パイロンタッチのペナルティが加算され、幻のベストタイムに。今シーズン好調の古田公保選手(マツダ・ロードスター)を0.235秒抑えた川北選手が、第1ヒートのトップに立つ。

 第1ヒートと同じくハーフウェットコンディションで迎えた第2ヒートは、クラス後半ゼッケンまで川北選手が第1ヒートでマークしたベストタイムを更新できない状況が続いたが、「ハーフウェット路面は自分が最も得意なコンディション」という小野選手が、ベストタイムを更新。

 一方の川北選手はパイロンタッチに終わるものの、第1ヒートのタイムで2位を獲得。これにより両者の有効得点は同点となり、さらに有効得点中の高得点獲得数もすべて同じとなったが、有効得点以外の得点差で、川北選手が今シーズンのタイトルを獲得することとなった。

PN2クラス優勝は小野圭一選手(DLクスコWm軽市ロードスター)。
タイトル争いには惜しくも敗れたものの、幻のタイムとなった第1ヒートを挽回する走りを見せ、小野選手が今シーズン3勝目を挙げる。
2位は川北忠選手(ORCHAL DLロードスター)、3位は古田公保選手(505ロードスター)。
PN2クラスの表彰式。左から4位の中田匠選手、2位の川北選手、1位の小野選手、3位の古田選手、5位の奥浩明選手、6位の渡邉將選手。
川北選手がPN2クラスのチャンピオンを確定させた。

PN1クラス

 朝山崇選手(トヨタ・ヤリス)と斉藤邦夫選手(トヨタ・ヤリス)が有効得点で同点に並ぶPN1クラス。どちらも優勝以外、有効得点を加算することができないという状況の中、第1ヒートは斉藤選手が朝山選手を0.6秒近く引き離し、トップに立つ。

 第2ヒートに入ると、斉藤選手はさらにベストタイムを0.067秒更新。これで勝負あったかと思われたが、クラス最終走者の朝山選手が、第1ヒートの自己タイムを1秒近く引き上げる走りで斉藤選手を逆転。鮮やかな逆転劇で、2017年以来となるシリーズチャンピオンを確定させた。2位に斉藤選手、3位には第1ヒートのタイムで逃げ切った中根卓也選手が入賞した。

PN1クラス優勝は朝山崇選手(DLETP・BPFヤリスITO)。
チャンピオン候補同士の戦いは、0.216秒差で勝負あり! 朝山選手の見事な第2ヒート逆転劇で決着。結果を知るや、喜びを爆発させていた。
2位は斉藤邦夫選手(ネッツ群馬ジースパイス ヤリス)、3位は中根卓也選手(DLwmRYP弟ヤリスITO)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の大仲敦選手、2位の斉藤選手、1位の朝山選手、3位の中根選手、5位の福田大輔選手、6位の井上賢二選手。
朝山選手がPN1クラスのチャンピオンを確定させた。

PE1クラス

 PE1クラスは、前戦で通算23回目のタイトルを確定させた山野哲也選手がウェット路面に苦戦を強いられる中、開幕戦を制した大橋政哉選手(アルピーヌ・A110S)が第1ヒートのベストタイムをマーク。

 小雨が降り出した第2ヒートは、大橋政哉選手とダブルエントリーの父・政人選手がいきなりベストタイムを更新してくる。その後、第1ヒート2番手の牧野タイソン選手(アルピーヌ・A110S)がベストタイムを更新し、トップに浮上。

 雨足が弱まることはなく、走行順が後ろの大橋政哉選手にとって厳しい路面コンディションとなる中、渾身の走りを見せてベストタイムを更新。逆転に次ぐ逆転劇で、大橋政哉選手が今季2勝目を飾った。2位に牧野選手、3位に大橋政人選手が入賞し、大橋親子が笑顔で表彰台に並んだ。

PE1クラス優勝は大橋政哉選手(DLμG-LFWA110S)。
今シーズンは安定して表彰台登壇を果たすも、開幕戦から優勝が遠ざかっていた大橋政哉選手。並みいる強敵を打ち破って最終戦を制す。父・政人選手と抱き合って勝利を喜んだ。
2位は牧野タイソン選手(DL★Rz速心A110S)、3位は大橋政人選手(DLμG-LFW柏アA110S)。
PE1クラスの表彰式。左から4位の深川敬暢選手、2位の牧野選手、1位の大橋政哉選手、3位の大橋政人選手、5位の大川裕選手。

PN3クラス

 35台のエントリーを集めたPN3クラスは、第1ヒートのタイムで逃げ切った奥井優介選手(トヨタ・GR86)が今季初優勝を獲得。有効得点で満点を狙ったチャンピオンのユウ選手(マツダ・ロードスター)は、「ノーミスというわけにはいかず、細かいミスはあったけど、精一杯走ることはできたと思います」と0.531秒届かず2位に終わった。3位は、西野洋平選手(トヨタ・GR86)が第5戦スナガワ以来となる表彰台を獲得した。

PN3クラス優勝は奥井優介選手(DL☆コサリRSK☆茨トヨ86)。
若手期待の奥井選手にとって今シーズンは苦しい戦いが続いたが、最終戦でようやく表彰台の頂に立つことができた。ナンバー1サインとともに笑顔を見せる。
2位はユウ選手(BS DRONE☆ロードスター)、3位は西野洋平選手(BSカローラ栃木GR宇都宮86)。
PN3クラスの表彰式。左から4位の若林隼人選手、2位のユウ選手、1位の奥井選手、3位の西野選手、5位の久保真吾選手、6位の鈴木勇一郎選手。

PN4クラス

 PN4クラスは、第1ヒートでクラス9台中6台がパイロンタッチという荒れた状況となる中、第6戦みかわを制した石原昌行選手(三菱・ランサーエボリューションX)が、第1ヒートのタイムで逃げ切って今季2勝目を獲得。2位も同じく、第1ヒートのタイムで片山誠司選手(トヨタ・GRヤリス)が入賞した。また、パイロンタッチからの仕切り直しとなった3位争いは、チャンピオン確定の茅野選手(トヨタ・GRヤリス)を約0.7秒抑えた松本敏選手(トヨタ・GRヤリス)が入賞した。

PN4クラス優勝は石原昌行選手(SエボTS☆DLランサーBPF)。
第6戦のみかわでの勝利と合わせ、今シーズン2勝を挙げた石原選手。パルクフェルメに入ると安堵の表情を見せ、サムズアップで応えた。
2位は片山誠司選手(GR水戸インターWmヤリス)、3位は松本敏選手(ADVICS☆VT☆DLヤリス)。
PN4クラスの表彰式。左から4位の茅野成樹選手、2位の片山選手、1位の石原選手、3位の松本選手、5位の西川佳廣選手。

フォト/CINQ、遠藤樹弥 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ