激戦の全日本ダートトライアル最終戦、残る6クラスのタイトルが確定

レポート ダートトライアル

2023年10月18日

全日本ダートトライアル選手権 第8戦「ダートトライアル in タカタ」が、10月7~8日に広島県安芸高田市のテクニックステージタカタで開催された。2023年シーズンの最終戦となるこの1戦には、全国各地から160台以上がエントリーする盛り上がりを見せた。

2023年JAF全日本ダートトライアル選手権 第8戦「ダートトライアル in タカタ」
開催日:2023年10月7~8日
開催地:テクニックステージタカタ(広島県安芸高田市)
主催:CCN、T TS

 第7戦までにPNE1、PN3、N、SC1の4クラスでタイトルが確定している全日本ダートトライアル選手権。残るPN1、PN2、SA1、SA2、SC2、Dの6クラスは、この最終戦でタイトルが確定する。その中にはチャンピオン候補が4名という激戦区のクラスもあり、最後まで目が離せない状況だ。

 コースレイアウトは、昨年新設された新コーナーを含むタカタらしいハイスピードレイアウト。路面は、例年の全日本開催時よりも砂利の量が多く敷き詰められているという状態だ。決勝日の天候は曇り。散水は両ヒートとも行われず、時折小雨が降るものの、路面を濡らすまでには至らない。ただし、午前中から午後にかけてさほど気温が上がらず、この砂利が多い路面と路面温度が低いコンディションに、多くの選手がタイヤ選択に頭を悩ます状況となった。

午前中からわずかに雨が降り続けるもウェットとはならず、砂埃が上がる路面状況となった第8戦のタカタラウンド。
タイトル争いで混戦の様相を見せたクラスでは、取材メディアやタイヤメーカー担当者がポイント計算に大慌てする様子も。
外周区間を使用した中高速設定が採られた。2022年の全日本ダートトライアル選手権最終戦と同じレイアウトとなった。

Dクラス

 炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)、谷田川敏幸選手(スバル・BRZ)、田口勝彦選手(三菱・ランサーエボリューションX)によるチャンピオン争いとなったDクラス。シリーズポイントでは炭山選手が谷田川選手と田口選手をリードするものの、有効ポイントでは谷田川選手や田口選手にも逆転チャンピオンの可能性がある。

 この三つ巴の勝負は、両ヒートでベストタイムをマークした田口選手が今季3勝目を獲得。2位に谷田川選手、3位に炭山選手が入賞し、田口選手がシリーズ最終戦で逆転チャンピオンを獲得する結果となった。

Dクラス優勝は田口勝彦選手(HKSランサーエボリューション)。
田口選手は第1ヒートで優位に立つと、第2ヒートでさらにベストタイムを更新。クラス唯一の1分42秒台で勝利し、プロドライバーとしての意地を見せた。
2位は谷田川敏幸選手(トラストADVANクスコBRZ)、3位は炭山裕矢選手(ZEALbyTSDLミラージュ)。
Dクラスの表彰式。左から4位の亀山晃選手、2位の谷田川選手、1位の田口選手、3位の炭山選手、5位の田辺剛選手、6位の河内渉選手。
田口選手がDクラスのチャンピオンを確定させた。2018年以来4回目で、Dクラスでは初となる。

SC2クラス

 チャンピオン候補が亀田幸弘選手(スバル・インプレッサ)、坂田一也選手(三菱・ランサーエボリューションX)、吉村修選手(三菱・ランサーエボリューションX)、上村智也選手(三菱・ランサーエボリューションX)の4名という大混戦のSC2クラス。自力チャンピオンの可能性があるのは亀田選手、坂田選手、吉村選手の3名で、上村選手は仮に優勝したとしても他の3選手の結果次第という状況だ。

 亀田選手が前日の公開練習でエンジンを損傷したため、急遽、奥村直樹選手のスバル・インプレッサWRX STIとのダブルエントリーで決勝ヒートに出場する中、第1ヒート2番手の上村選手が第2ヒートで坂田選手のタイムを上回ってトップに浮上。

 吉村選手と亀田選手に逆転チャンピオンの可能性が残されていたものの、吉村選手の第2ヒートは5位、亀田選手が6位と有効ポイントを伸ばすことができず、第2ヒートの逆転劇で上村選手が自身初の全日本タイトルを確定させることとなった。

SC2クラス優勝は上村智也選手(ナナハitzzYHランサー)。
第1ヒート2番手タイムから躍進を果たし、ぶっちぎりのベストタイム更新で勝利をつかんだ上村選手。
2位は坂田一也選手(DLグローバルランサー)、3位は岩下幸広選手(DLアルテック・KYBランサー)。
SC2クラスの表彰式。左から4位の大西康弘選手、2位の坂田選手、1位の上村選手、3位の岩下選手、5位の吉村修選手、6位の亀田幸弘選手。
上村選手がSC2クラスのチャンピオンを確定させた。シリーズ4番手からのわずかな望みだったタイトルを、自ら引き寄せた。

SA2クラス

 浜孝佳選手(三菱・ランサーエボリューションIX)と北村和浩選手(三菱・ランサーエボリューションX)と黒木陽介選手(トヨタ・GRヤリス)の3名にチャンピオン候補が絞られたSA2クラス。自力チャンピオンの可能性を持つのは浜選手と黒木選手のふたりで、北村選手は有効ポイントの関係でこのラウンドを制しても、チャンピオン確定は浜選手と黒木選手の結果次第という状況だ。

 第1ヒートから硬質路面となったこのクラスは、前半ゼッケンのクラスのように第2ヒートで大幅にベストタイム更新というわけにはいかず、両ヒートで僅差の勝負が展開された。

 三つ巴の勝負は、北村選手が両ヒートでベストタイムを奪う走りで今季2勝目を獲得。浜選手が0.368秒差で2位に食い込み、自身初となるシリーズチャンピオンを確定させる結果となった。

SA2クラス優勝は北村和浩選手(MJT☆HKS☆DLランサー)。
ベストタイム更新のトップでフィニッシュした北村選手。だがタイトルを逃したこともあって複雑な表情だった。2024年はGRヤリスに乗り換えることを表彰式で公言。
2位は浜孝佳選手(XPL・ADVANランサー)、3位は黒木陽介選手(MJT五十嵐クスコKDLランサー)。
SA2クラスの表彰式。左から4位のマイケルティー選手、2位の浜選手、1位の北村選手、3位の黒木選手、5位の宮入友秀選手、6位の林軍市選手。
浜選手がNクラスのチャンピオンを確定させた。優勝で締めることができず少し落胆した表情を見せるも、ライバルを打ち破ってのタイトルに感極まった様子だった。

SA1クラス

 シリーズランキングトップの佐藤卓也選手(スズキ・スイフトスポーツ)と、同2番手につける細木智矢選手(スズキ・スイフトスポーツ)のふたりにチャンピオン候補が絞られたSA1クラス。第1ヒートはシリーズランキング3番手の河石潤選手(スズキ・スイフトスポーツ)がトップに立つ。

 ベストタイム更新ラッシュとなった第2ヒートは、タカタをホームコースとする川本圭祐選手(ホンダ・インテグラ)がベストタイムを更新。川本選手のタイムがなかなか更新されない状況が続き、第1ヒート5番手の佐藤選手も、川本選手に次ぐ2番手につける。第1ヒートトップの河石選手は、第2ヒートのタイムが伸びず5位。

 残すは細木選手のみとなり、仮に細木選手が佐藤選手のタイムを上回ったとしても、暫定トップの川本選手のタイムに届かなければ、有効ポイントで佐藤選手がチャンピオンとなる。その状況の中、細木選手は前半区間で川本選手のタイムに0.73秒届かなかったものの、後半区間で川本選手を逆転し、0.05秒差でベストタイムを更新。シリーズポイントも佐藤選手を2点差で逆転し、最終戦でシリーズ逆転チャンピオンを確定させた。

SA1クラス優勝は細木智矢選手(MJTDLSWKレイルスイフト)。
最終走者の細木選手が逆転をキメて、パルクフェルメで出迎えたメカニックの今村宏臣氏とがっちり握手。
2位は川本圭祐選手(C・ADVANATSインテグラ)、3位は佐藤卓也選手(DLΩKYBオクヤマ・スイフト)。
SA1クラスの表彰式。左から4位の北野壱歩選手、2位の川本選手、1位の細木選手、3位の佐藤選手、5位の河石潤選手、6位の松岡修司選手。
細木選手がSA1クラスのチャンピオンを確定させた。今シーズンは全日本ジムカーナ選手権にも参戦、W優勝を果たすなど躍進の1年となった。

PN2クラス

 現行型スズキ・スイフトスポーツのワンメイク状態となっているPN2クラスは、第1ヒートでシリーズランキングトップの中島孝恭選手がトップに立つ。第2ヒートは、若手の増田拓己選手がトップに立つ中、中島選手のシリーズポイントを追いかける鶴岡義広選手が増田選手のタイムを更新できず、この時点で中島選手のシリーズチャンピオンが確定する。

 優勝争いは、全日本には約1年ぶりの出場となった濱口雅昭選手が、第2ヒートで増田選手のタイムを更新して今季初優勝を果たす。2位に増田選手、3位にはシリーズチャンピオンを確定させた中島選手がそれぞれ入賞した。

PN2クラス優勝は濱口雅昭選手(DLタクミWMワーク スイフト)。
久々の全日本ダートトライアル選手権参戦となった濱口選手、ブランクを感じさせない走りでトップを奪取。
2位は増田拓己選手(オクヤマYH☆FAスイフトμ)、3位は中島孝恭選手(DLルブロスTEIN☆スイフト)。
PN2クラスの表彰式。左から4位の鶴岡義広選手、2位の増田選手、1位の濱口選手、3位の中島選手、5位の竹村由彦選手、6位の荒牧健太選手。
中島選手がPN2クラスのチャンピオンを確定させた。若手の鶴岡選手との最終決戦は、ベテランの中島選手に軍配が上がる。

PN1クラス

 チャンピオン候補が徳山優斗選手(トヨタ・ヤリス)と工藤清美選手(ホンダ・フィットRS)、奈良勇希選手(スズキ・スイフトスポーツ)に絞られたPN1クラス。第1ヒートはタカタ2連覇中の太田智喜選手(マツダ・デミオ15MB)がトップに立つ。注目のチャンピオン争いは、奈良選手が2番手、工藤選手が3番手、徳山選手が6番手となり、奈良選手がタイトルに王手をかける。

 第2ヒートは、前半ゼッケンからベストタイム更新ラッシュが続く中、第1ヒート5番手の飯島千尋選手(スズキ・スイフトスポーツ)がトップに立つ。一方、第1ヒートトップの奈良選手は、中間地点をトップで通過するものの、後半区間で遅れて5位でフィニッシュ。逆転チャンピオンの夢は潰えた。シリーズランキングトップの徳山選手は、超硬質タイヤで攻めるものの、まだ路面の砂利が掃ききれず8位。

 第1ヒートトップの太田選手は、第2ヒートもベストタイムを更新し、ふたたびトップに立つ。クラスラストゼッケンの工藤選手は、2位以上に入賞すると逆転チャンピオンの可能性があるが、前半区間で大きく遅れ、後半区間で挽回するものの2番手の飯島選手に0.803秒届かず3位でフィニッシュ。太田選手がタカタ3連覇を達成するとともに、タイトル争いは8位に終わった徳山選手が逃げ切り、自身初となる全日本タイトルを確定させた。

PN1クラス優勝は太田智喜選手(DLMotysクスコS+デミオ)。
第1ヒートでベストタイム、第2ヒートでも再びベストタイムを奪う好走を見せた太田選手。これで全日本タカタ3連覇となった。
2位は飯島千尋選手(Moty's☆DLスイフト神速)、3位は工藤清美選手(工藤ホンダDLワコーズフィット)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の南優希選手、2位の飯島選手、1位の太田選手、3位の工藤選手、5位の奈良勇希選手、6位の児島泰選手。そして前列中央に徳山優斗選手。
徳山選手がPN1クラスのチャンピオンを確定させた。最終戦の表彰台登壇は叶わなかったが、これが初タイトルとなる。

PNE1クラス

 PNE1クラスは、前戦で今シーズンのタイトルを確定させたノワールシゲオ選手(スズキ・スイフトスポーツ)がベストタイムを奪うものの、第2ヒートは葛西キャサリン伸彦選手(スズキ・スイフトスポーツ)がベストタイムを更新。その後、葛西キャサリン伸彦選手のタイムは更新されることなく、葛西キャサリン伸彦選手が今季3勝目を挙げた。2位は1.251秒差でノワール選手、3位には優勝の葛西キャサリン伸彦選手とダブルエントリーの葛西芙美恵選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞した。

PNE1クラス優勝は葛西キャサリン伸彦選手(YHGC ATSスイフトRSK)。
各選手とも2本目で大幅にタイムが更新されたPNE1クラス。1分53秒台をたたき出した葛西キャサリン伸彦選手が勝利。
2位はノワールシゲオ選手(ADS☆VTX☆DL☆スイフト)、3位は葛西芙美恵選手(YH☆ATSスイフト@RSK)。
PNE1クラスの表彰式。左から4位の藤田直人選手、2位のノワールシゲオ選手、1位の葛西キャサリン伸彦選手、3位の葛西芙美恵選手、5位の鈴木正人選手、6位の山部恭裕選手。

PN3クラス

 PN3クラスは、前戦で今シーズンのシリーズチャンピオンを確定させた竹本幸広選手(トヨタ・GR86)が、両ヒートを制する走りで今季4勝目を獲得。2位には第1ヒート4番手の浦上真選手(トヨタ・GR86)が第2ヒートで大きくタイムを伸ばして入賞、3位は第1ヒート2番手につけていたパッション崎山選手(トヨタ・GR86)がそれぞれ入賞した。

PN3クラス優勝は竹本幸広選手(FKS・YH・KYB・GR86)。
第7戦でタイトルを確定させた竹本選手が最終戦を制し、シーズン4勝を挙げて締めくくった。
2位は浦上真選手(DL奥山Mスポーツ86)、3位はパッション崎山選手(DL♡ラブカ♡テイン♡RR86)。
PN3クラスの表彰式。左から4位の和泉泰至選手、2位の浦上選手、1位の竹本選手、3位の崎山選手、5位の小関高幸選手、6位の三枝聖博選手。

Nクラス

 Nクラスは、第7戦今庄ラウンドで6年連続8回目の全日本チャンピオンを獲得した北條倫史選手(三菱・ランサーエボリューションX)がトップタイムをマークするが、第2ヒートは「超硬質路面用のタイヤに賭けました」という宝田ケンシロー選手(トヨタ・GRヤリス)がベストタイムを更新。

 第1ヒートは前半区間で大きく遅れて10番手タイムだった矢本裕之選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が宝田選手のタイムに迫るものの1.16秒届かず2位。第1ヒートトップの北條選手は、前半区間の遅れを取り戻すことができず3位に終わり、宝田選手が第3戦丸和ラウンド以来となる今季2勝目を挙げた。

Nクラス優勝は宝田ケンシロー選手(YHオクヤマFT小松GRヤリス)。
各選手がベストタイムを更新した第2ヒート、大幅にタイムを詰めた宝田選手が1分46秒台に突入して勝利。
2位は矢本裕之選手(河童ZEALヤッコYHランサー)、3位は北條倫史選手(MJT☆DL☆NTランサーXP)。
Nクラスの表彰式。左から4位の三枝光博選手、2位の矢本選手、1位の宝田選手、3位の北條選手、5位の三浦陸選手、6位の岸山信之選手。

SC1クラス

 SC1クラスは、タカタを知り尽くす地元スペシャリストの鈴鹿浩昭選手(ホンダ・インテグラ)がベストタイムを奪うものの、第2ヒートは前戦でシリーズチャンピオンを確定させている山崎迅人選手(三菱・ミラージュ)が、後半区間で追い上げて逆転優勝を飾った。2位にはタカタをホームコースとする山下貴史選手(三菱・FTO)が入賞、第1ヒートトップの鈴鹿選手が3位となった。

SC1クラス優勝は山崎迅人選手(YHマックスゲンシンミラージュ)。
地元選手を抑え、今季5勝目の勝利をつかんだ山崎選手。前戦で確定させたタイトルに華を添えた。
2位は山下貴史選手(YHセラメタμnagi FTO)、3位は鈴鹿浩昭選手(DL-SPIRITインテグラ)。
SC1クラスの表彰式。左から4位の坂井秀年選手、2位の山下選手、1位の山崎選手、3位の鈴鹿選手、5位の一柳豊選手、6位の深田賢一選手。

フォト/CINQ、大野洋介、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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