タイトル争いは拮抗! 予断を許さないオートポリスのFIA-F4選手権

レポート レース

2023年10月21日

オートポリスで10月14~15日に開催されたFIA-F4地方選手権の第6大会となる第11戦と第12戦。前回のSUGOでは秋の気配が感じられたが、今大会はもう上着なしではいられないほどに。こと日曜日には、日中の気温ですら20度を切るほど下がり、併催のスーパーGT走行直後の路面変化とも合わせ、練習走行での好調ぶりが予選、決勝に結びつかなかったドライバーもいたほどだった。

2023年FIA-F4選手権シリーズ 第11戦/第12戦
(2023 SUPER GT Round.7内)

開催日:2023年10月14~15日
開催地:オートポリス(大分県日田市)
主催:株式会社GTアソシエイション、APC、株式会社オートポリス

予選

 激戦のFIA-F4選手権シリーズもいよいよ残すところ2大会に。チャンピオン候補も徐々に絞られつつある。予選は未明に降った雨が路面に残り、A組はダンプコンディションでの走行に。ここで速さを見せたのが、第10戦で初優勝を飾ったばかりの卜部和久選手だ。しかしベストタイムはトップながら、セカンドベストタイムでは7番手に。そのセカンドベストタイムでは奥本隼士選手がトップだった。

 ウェットタイヤを選んでいたドライバーがいたA組に対し、B組では全車がドライタイヤを選択。こちらもトップは分かれ、ベストタイムでは小林利徠斗選手が、セカンドベストタイムでは中村仁選手が最速タイムを記す。一方、ランキングトップの三井優介選手もB組での走行だったが、ベストタイムこそ3番手だったが、その直後にセクター3でコースアウト。セカンドベストタイムを決め切れず、15番手に甘んじていた。

小林利徠斗選手がベストタイム、中村仁選手がセカンドベストタイムで、それぞれポールポジションを獲得。

第11戦決勝

「決勝はコンディションも上向くと思うし、自信を持って臨みます。ランキング上位2名の前からスタートできることで、逆転のチャンスでもありますが、油断することなく自分の走りをしようと思います」と語るのは、第11戦のポールシッターである小林選手。

 そのコメントに挙がった三井選手は5番手、野村勇斗選手は7番手からのスタートになるが、背後には卜部選手と中村選手、いずれも優勝経験のあるドライバーが続いており、激しい戦いとなるのは必然となっていた。

 しかし、小林選手はスタートをしっかり決め、続いた卜部選手も1コーナーにイン側から飛び込もうとするが、ここはガードを固めて逆転を許さず。卜部選手は瞬時にアウト側からの攻略に切り替えるも、さらにアウトからアプローチをかけてきた中村選手と接触。ダートに足を落として失速、大きく順位を落としてしまう。これによりトップ6は小林選手、中村選手、奥本選手、三井選手、佐野雄城選手、野村選手という順に。もちろん1周目を終えた時点では、上位が一列大縦隊。

 だが、2周目からセーフティカー(SC)導入。第2ヘアピン脇にストップした車両が出たためだ。先導は3周におよび、6周目からバトル再開。これを好機としたのが三井選手だった。リスタートを決め、1コーナーでクロスをかけて奥本選手をパス。次の周には後ろを離してトップを3台で争うように。9周目の第2ヘアピンで三井選手が仕掛けるも、中村選手のガードは固く、逆転は許されず。その間に小林選手は1秒のリードを確保し、そのまま逃げ切って今季5勝目をマークした。

「SCのリスタートは今まで散々やらかしていて、『また試練か』と思いましたが、そのやらかした経験のおかげで今回はうまくいきました。そこを含めて成長できた部分もあるし、新しくつかんだこともあるので、また明日以降の戦いにつなげていきたいです」と小林選手。4位は奥本選手で、以下、佐野選手、野村選手の順でフィニッシュ。

 一方、インディペンデントカップでは、クラス2番手からの発進だった鳥羽豊選手が、スタートで藤原誠選手をかわしてトップに立ち、そのまま逃げ切って今季3勝目をマークし、「途中からアンダーステアでまったく曲がらなくなりましたが、オートポリスの優勝トロフィーだけ持っていなかったので、確実に獲りにいきました。久々の優勝はいいですね」と語っていた。

第11戦優勝は小林利徠斗選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)。
2位は中村仁選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)、3位は三井優介選手(HFDP RACING TEAM)。
第11戦表彰の各選手。
第11戦インディペンデントカップ優勝は鳥羽豊選手(HELM MOTORSPORTS F110)。
第11戦インディペンデントカップの表彰式。左から2位の藤原誠選手、1位の鳥羽選手、3位の齋藤真紀雄選手。

第12戦決勝

「ポールスタートの第12戦はスタートでトップを守れれば、問題なくそのまま行けるはず。今日のレースペースを踏まえて、さらに改善していきたいと思います」とは、第11戦を終えた直後の中村選手のコメント。結果として有言実行、いや、それ以上の展開となっていた。

 グリッド上位はその中村選手を筆頭に、奥本選手、小林選手、佐野選手の順でチームメイト同士が固まる中、野村選手は5番手、三井選手は29番手からのスタートとなる。「2018年にここで角田(裕毅)選手が最後尾からポイント圏内まで上がったことがあるので、自分もそれに続いて1点でも多く稼ぎたいですね」と追い上げを誓っていたが、果たして……。

 宣言どおり中村選手はスタートを決めて1コーナーへのホールショットに成功。1周目を終えた時点でのリードはコンマ8秒、次の周には1秒4と着実に広げていく。対照的に奥本選手と佐野選手、小林選手による2番手争いが激しく、しばし膠着状態が続いていく。

 レースが折り返しを迎えるころには、9番手スタートだった洞地遼大選手も加わって、何かアクションを見せてくれるのでは……と思われた8周目、SCが導入される。またも第2ヘアピン脇で止まった車両があったからだ。

 SC先導は2周で終わり、中村選手は5秒近くに達したマージンを失いこそしたが、残り3周の激しいバトルが期待できそうだ、と思われた矢先にアクシデントが発生する。2番手の奥本選手をかわそうと、スリップストリームから抜け出した佐野選手が絡んでしまい、2台が接触する。

 コントロールを失った奥本選手が激しくコンクリートウォールに激突してしまう事態に。即座に赤旗が出され、やがて規定の30分間に達したことでレースは終了。肝を冷やす光景だったが、後に奥本選手は歩いてパドックに戻り、大事に至らなかったことを明らかに。

 この9周目終了時の順で結果が定められ、2勝目を中村選手が挙げて、2位は奥本選手。佐野選手にはペナルティが課せられ、順位を落としたことで小林選手が3位に。そして三井選手は11位まで追い上げ、さらに佐野選手の降格で、貴重な1ポイントを獲得した。

「速さは見せられたので、そこは良かったかなと。昨日のレースで自分がタイヤを守っていたのもありましたし、練習の段階から自分のペースが良いのは分かっていたので、レースペースでチームメイトにも差をつけられたのだと思います。ポイント的にもちょっと追いついたので、そこも良かったです」と中村選手。

 そのポイントだが、もてぎでの最終大会を前にして小林選手が再びトップに立つも、わずか2ポイント差で続き、さらに中村選手と野村選手にだけ逆転の権利が残された。

「僕は開幕のころからシリーズをあまり意識せず、各レースの過程、自分の走り、各所でミスをしないように精度を意識しています。その結果、今のシリーズ争いをしているというだけです。だから何か特別なことをせずに、あくまで次戦ならもてぎを速く走る、精度を上げる、速い車をうまくつくるなど、そういう姿勢を変えずにやっていきたいと思います」と語る小林選手。

 これに対し「僕はチャンピオンを意識することはあります。ただ走行中に意識することはなくて、目の前にある優勝を目指してやっている感じです。予選でスピンしたときは『これで20数ポイントとか離れちゃうのかな』と思いましたが、運自体はまだ突き放されていないので、まだまだチャンスはあると思っています。最低限、1ポイント持ち帰れたのが大きく影響したらいいですね」と三井選手。意識としては対照的でありつつ、共通している部分もあるのが明らかになった。

 インディペンデントカップではクラス5番手から大逆転で鳥羽選手が連勝。またもスタートを決め、さらにオープニングラップのうちにトップに浮上という離れ技を見せた。「スタートはまたいい感じでした。トップに立ってからは、あとはもう離れるばかりで。このいい流れを続けて持っていきたいですね」と満足そうに語っていた。

第12戦優勝は中村選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)。
2位は奥本隼士選手(TGR-DC RS フィールド F4)、3位は小林選手(TGR-DC RS トムススピリット F4)。
第12戦表彰の各選手。
第12戦インディペンデントカップ優勝は鳥羽選手(HELM MOTORSPORTS F110)。
第10戦インディペンデントカップの表彰式。左から暫定2位の仲尾恵史選手はペナルティで降格、1位の鳥羽選手、暫定3位の藤原選手は繰り上がって2位。また3位は今田信宏選手となった。

フォト/遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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