住友ゴム工業がサステナブル原材料比率43%のレースタイヤを全日本カート選手権 EV部門に投入!
2023年11月1日

10月21~22日、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで開催された全日本カート選手権 EV部門 第3戦で、そのワンメイクタイヤを供給している住友ゴム工業株式会社が、従来のものよりサステナブル原料(持続可能な原料)の比率を大幅に上げた、新しいダンロップ・レースタイヤを投入した。
2023シリーズ最終戦となる全日本カート選手権 EV部門 第3戦の決勝を前日に控えた10月22日、各車に装着されたタイヤのサイドウォールには、いつもの黄色い“DUNLOP”ロゴに加え、見慣れないグリーンのチェッカーフラッグがペイントされていた。
住友ゴム工業株式会社が投入したこの新しいカート用のレースタイヤについて、開発に携ったという同社モータースポーツ部課長代理の菅野展寛氏に話をうかがった。
住友ゴム工業では、サステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」において、サプライチェーン全体を通じたCO2の削減を目指し、製造するタイヤのサステナブル原材料比率を2030年に40%、2050年には100%にすることを目標としている。菅野氏によれば、今回投入された新タイヤもこの指針に沿って開発されたものだと言う。
「私どもの会社ではスーパーGT用の開発タイヤですでに公表されているとおり、一般のタイヤだけでなく、レース用タイヤもカーボンニュートラル化を進めていて、もちろんカート用のタイヤもそこに含まれています。EV部門ではトムスさんがカーボンニュートラルの車両を投入されていますので、同じ方向を向いているトムスさんにご協力をいただいて、このような取り組みをさせていただくことになりました」

「一般車に用いられる従来のタイヤだと天然由来の材料の比率が20数%なんですが、カート用だとそれがちょっと低くて10%台で、合成ゴムの割合が高いんです。今回の新しいタイヤでは、天然ゴムや天然由来の原材料、サステナブル合成ゴム、鉄スクラップから再生した材料などを使用することで、サステナブル原材料費率が43%となりました」
実はこのタイヤの開発がスタートしたのは2023年の春のことだ。
「サステナブルのレーシングタイヤの開発は昨年から進めていたんですが、それをカート用に展開しようとなったのは今年になってからで、4月ごろに開発が始まりました。今までほとんど使ったことのない材料もいろいろあって、グリップだとか耐久性だとか、カート用タイヤに求められる性能のバランスをうまく取っていくのは難しかったです」
「それでもテストを重ねて、当社の開発部門にもいろいろな材料を開発してもらって、従来のタイヤ以上のレベルものがつくれています。自信のあるものができたので、トムスさんにお願いをしてテストで使ってもらって、高い評価をいただくことができたので、2024年のレース投入という予定を前倒しして今回のレースに投入することになりました」と経緯を明かした。

こうして実戦デビューを果たしたタイヤはドライバーたちにも好評で、従来のタイヤより良いという声も挙がっていた。性能面に問題がないとなると、ユーザーたちにとって気になるのは価格なのだが……。
「天然由来の材料やリサイクルされた材料は、メーカーもまだ大量生産をしていなくてコストが高いんです。サステナブルの材料でつくったカート用タイヤを明日売りますとなったら、価格は従来のタイヤの倍くらいになる可能性もあると思います」
「ただ、世界情勢の流れはサステナブル化の方向に進んでいますから、今後こういう材料が大量生産されて供給が安定すれば値段は落ち着いていくでしょうし、安価でより性能の良い材料が出てくる可能性も期待できると思います。今後はコスト面を抑えることも考慮しながら性能とのバランスを取って開発していきたいですね」
天然由来の原材料は、菜の花など非常に多様なものがタイヤに使用でき、その原材料によって実現できる性能も異なるのだという。カーボンフリーのタイヤは、未知のことがまだまだ多い未開の分野。それは環境問題の解決のみならず、タイヤのパフォーマンス自体にも大きな進歩をもたらす可能性があるようだ。
数年後に市販されるであろうそのカート用タイヤが、どのようなものになってユーザーたちの前に姿を現すのか、期待を込めて見守りたい。

フォト/長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部