タイトル争いの重要な1戦は序盤のアクシデントで赤旗終了の結末。野尻智紀選手が貴重なハーフポイント獲得

レポート レース

2023年11月8日

2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権最終大会は、開幕戦以来の1大会2レース制フォーマット。その1レース目となる第8戦は、レース序盤に2台が絡む大クラッシュが発生、赤旗をもって終了となった。レース距離の75%を消化していないことからハーフポイントがつけられ、ポールポジションからスタートした野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が勝利し、ランキングトップの宮田莉朋選手(VANTELIN TEAM TOM'S)とのポイント差をわずかに詰めた。

第22回JAF鈴鹿グランプリ
2023年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第8戦

開催日:2023年10月28日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:NRC、SMSC、ホンダモビリティランド株式会社

 真夏のもてぎラウンドから2か月という長いインターバルを挟み、今シーズンのスーパーフォーミュラ最終大会が開催。昨年同様の1大会2レース制のフォーマットで、まずは28日に第8戦の予選と決勝が行われた。

 この大会を前に、チャンピオン争いに残ったのは3名。ランキングトップの宮田莉朋選手(VANTELIN TEAM TOM'S)、シーズン3勝を挙げているリアム・ローソン選手(TEAM MUGEN)、そして1度のリタイアと1度の病欠でノーポイントレースがあったものの、前戦もてぎ大会で今季2勝目をマークして大量得点をもぎ取った野尻智紀選手(TEAM MUGEN)だ。

 宮田選手はローソン選手に8ポイント差、野尻選手には10ポイント差をつけているが、鈴鹿サーキットを得意とする野尻選手とTEAM MUGENは、予選からポイント獲得を狙ってくるだけに油断はできない。

 なお、今大会はスーパーGTで発生したクラッシュによる怪我で欠場する山本尚貴選手に代わり大津弘樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)が出場。またレース直前に大湯都史樹選手の欠場も発表され、こちらは代役としてスーパーGTのGT300クラスで活躍する大草りき選手(TGM Grand Prix)が急遽スーパーフォーミュラデビューを果たすことになった。

スーパーGTのSUGOラウンドで負傷した山本尚貴選手が欠場し、TCS NAKAJIMA RACINGの空いたシートには大津弘樹選手が収まる。
大湯都史樹選手が欠場を発表したTGM Grand Prixは、スーパーGTのGT300クラスで活躍する大草りき選手を起用した。
第8戦の前日に行われた記者会見には、宮田莉朋選手、リアム・ローソン選手、野尻智紀選手のランキングトップ3が集った。28日の決勝に向け、そしてその先のタイトル獲得への意気込みを語る。

 好天のもとで行われた予選は、やはり野尻選手が速さを見せた。タイトル候補者3名のうち、Q1のA組にはローソン選手が、B組には野尻選手と宮田選手が出走して難なくQ2へ進出。そのQ2は、各車がアタックに入っているまさにその周に佐藤蓮選手(TCS NAKAJIMA RACING)がデグナーでコースオフ。セッションは赤旗中断となってしまう。

 残り時間が3分に延長され、仕切り直しのアタックでトップタイムをたたき出したのは野尻選手だった。そしてフロントローに並んだのは宮田選手で、その差は0.3秒。2列目には牧野任祐選手と太田格之進選手のDOCOMO TEAM DANDELION RACINGのコンビが並ぶ。

 一方、ローソン選手はまさかの8番手。新品タイヤの手持ちがなく、再アタックにはユーズドタイヤで挑むしかなかったため、大きくタイム更新ができなかったのだ。これで野尻選手が予選3ポイントを獲得し、ランキングもローソン選手を抜いて2番手に浮上した。

予選では赤旗中断もあったが、3連覇の期待がかかる野尻選手が盤石の走りで第8戦のポールポジションを獲得。今季4回目のポールスタートとなり、ここで貴重な予選3ポイントを稼いだ。

 約3時間半後に決勝レースがスタート。シグナルのブラックアウトとともに、ポールシッターの野尻選手は見事なスタートダッシュを決めて見せた。2番手の宮田選手も悪くないスタートだったものの、後方の太田選手がロケットスタートで襲いかかる。

 太田選手はスタート直後に3番手の牧野選手をかわし、宮田選手を1コーナーでアウト側からオーバーテイク、一気に2番手に浮上した。そんな背後の攻防をよそに、2コーナーまでに太田選手とのギャップを広げた野尻選手は軽快に飛ばし、オープニングラップで2番手に1秒の差をつける。

 その2番手争いは、太田選手にかわされてしまった宮田選手がバックストレートからオーバーテイクシステム(OTS)を使って加速し、太田選手に接近。テールに貼りついて最終コーナーを立ち上がると、1コーナーで再び順位を取り戻した。

 野尻選手、宮田選手、太田選手、牧野選手のトップ4に戻った2周目。5番手は坪井翔選手(P.MU/CERUMO・INGING)、6番手にスタートで平川亮選手をかわしたローソン選手が上がっている。ローソン選手は2周目のヘアピンコーナーで坪井選手にテール・トゥ・ノーズまで近づきオーバーテイクのチャンスをうかがった。

 3周目に入ったところで坪井選手との差は0.6秒。坪井選手と、その前を走る牧野選手との差も0.4秒ほどで、3台一丸となった状態。坪井選手は4周目、OTSを使って牧野選手に襲いかかるも抜ききれず、逆にOTSが使えないタイミングでローソン選手の接近を許してしまった。シケインで並びかけてくるローソン選手を坪井選手は必死にブロック。2台が接近したままホームストレートに戻ってきたまさにその時、後ろの130Rで大クラッシュが発生した。

 これは17番手を走行する笹原右京選手(VANTELIN TEAM TOM'S)と18番手を走行する大津選手の接触アクシデントで、2台はハイスピードのまま130Rのタイヤバリアにヒットし、笹原選手のマシンはさらに宙に浮き、デブリフェンスにまで飛んで行ってしまった。レースはすぐにセーフティカーボードが出され、時を置かずに赤旗中断となる。

 大津選手はマシンを降りて歩いている様子がモニターに映し出され、笹原選手も意識はあるというアナウンス。ドライバーの無事はすぐに伝えられたものの、笹原選手のマシンがぶつかってしまったデブリフェンスは支柱から曲がっており、短時間での修復は難しいとの判断から、レースはこの赤旗をもって終了となった。

 レース結果は、3周完了時点での順位をもって確定となり、1位は野尻選手、2位は宮田選手、3位は太田選手という順。4位の牧野選手に続いて5位が坪井選手、6位にローソン選手が入った。

14時34分にスタートし、セーフティカー導入を経て14時42分にクラッシュによる赤旗が掲示されて中断。再開が見込まれない中、フェンス等の設備に大きなダメージを受けたことによる安全性の確保が困難と判断され、15時30分にレース終了が発表された。
3周完了時点の順位で決着してしまった第8戦。ポールスタートの野尻選手(TEAM MUGEN)がポジションを守って勝利した。
スタート直後に太田格之進選手の先行を許してしまった宮田莉朋選手(VANTELIN TEAM TOM'S)だったが、すぐに逆転し、2位でフィニッシュ。
4番グリッドから好スタートを切った太田選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が1ポジションアップの3位。キャリア初の表彰台を獲得した。
第8戦の表彰式。左から2位の宮田選手、1位の野尻選手、TEAM MUGENの田中洋克監督、3位の太田選手が登壇した。

 なお、レース距離が75%に満たなかったことから獲得できるポイントは半分となり、野尻選手が10ポイント、宮田選手が7.5ポイント、ローソン選手は2.5ポイントを獲得する。タイトル争いは、宮田選手103.5ポイント、野尻選手97ポイント、ローソン選手88.5ポイントで、いよいよ翌日にはシーズン最終戦を迎えることとなった。

クラッシュの現場は130Rのアウト側にあるフェンス。翌日の第9戦の開催に向け、急ピッチで修復作業が行われていた。
レース終了後、日頃より安全なレース運営に尽力するオフィシャルがメインストレートに集まり、バーベキューで互いの労をねぎらいつつ、明日に向けての英気を養った。

フォト/遠藤樹弥、吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/浅見理美、JAFスポーツ編集部

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